スパイアクション映画の金字塔!007シリーズ徹底解説
1963年の映画1作目から50年以上にわたり、世界中の人々から愛されてきたヒーロー映画007。タイトルやテーマ曲は誰しも一度は耳にしたことがあると思います。今回は007を見たことのない人にも分かりやすく、今なお歴代興行収入を更新し続ける007の魅力を解説していきます。
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アイキャッチ画像出典:wpteq.org
007シリーズとは
007とは、イギリスの作家イアン・フレミングが亡くなるまでのおよそ10年で書いた、ジェームズ・ボンドを主人公にしたスパイ小説シリーズ及びそれを原作とする映画作品の総称です。基本的には、007シリーズやボンド映画などと呼ばれています。作者フレミング自身も第二次世界大戦中に諜報員としてスパイ活動を行い、その経験を基に書かれています。主人公ジェームズ・ボンドは2003年大々的に行われた「アメリカ映画100年のヒーローランキング」にて、ロッキーや数多のアメコミヒーローを抑え、第3位に選ばれました。
フレミングの死後も、シナリオライターによって設定を引き継いで書かれたシリーズは続き、その時代を反映した社会背景、常に最新の映像技術と注目の俳優を起用し、2018年現在24作にも及ぶロングシリーズ作品となっています。
007の意味
007と書いて「ダブル・オー・セブン」と読みます。主人公であるジェームズ・ボンドには、任務遂行中は自分の一存で容疑者を殺すことを許可する殺人許可証(いわゆる「殺しのライセンス」)として「007」が与えられており、彼のコードネームになります。これはイギリス秘密諜報部(MI6)に所属して、7番目に殺しのライセンスが与えられたということを意味します。
ジェームズ・ボンドとは
007シリーズの主人公。イギリスに実在する秘密情報部(MI6)の諜報員であり、誕生日や出生はシリーズの中でもその都度、設定が変化します。映画では1985年公開までは1920年代生まれ、その後はボンド役担当俳優と同じ年に生まれた設定とされています。またMI6のメンバーとしてボンドは、英国海軍中佐相当の地位が与えられているそうです。ジェームズ・ボンドという名前は、英国ではありふれた名前なんだとか。華やかなヒーロー像にしたくなく敢えて付けたそうですが、充分華やかなで偉大なヒーローになりました。
シリーズを通して登場するキャラクター
ボンドにはシリーズを通して活躍するキャラクターが出てきます。彼らはボンドと同じMI6のメンバーでありアドバイスをくれる心強い味方として、ボンドにも負けない人気で魅力的なキャラクター達です。
ボンドガール
シリーズ1作目にてボンドガールを演じたウルスラ・アンドレス
ボンドガールとは、007シリーズに出てくる女性キャラクターの総称で、セックスシンボルともいえます。MI6のメンバーではありませんがときにボンドの恋人であり、助手であり、敵の手先でありその立場は様々で、1つの作品に複数名登場します。シリーズ初期は女性を性的対象と捉えたり、セックスシンボルとしての印象が大きかったですが、最近ではボンド共に闘う自立した女性としての印象が強くなっています。
演じる女優は1990年代までは、下手にイメージが付かないよう、まだ国際的に知名度の少ない女優やモデルを起用していました。そのため多くの場合、観客の気を引くようなグラマラスな女優が起用され、007作品出演後は雑誌プレイボーイの表紙を飾るなどセクシーさを売りにすることが多かったです。しかし近年ではソフィー・マルソーやハル・ベリー、ミシェル・ヨーやレア・セドゥなど大物女優も積極的に出演し、007作品出演後も国際的な映画作品で活躍しています。脇役扱いでも注目されることも多く、出演することは女優たちにとって大きな名誉とされています。
M
1995年〜2012年の7作品にわたりM役を務めたジュディ・リンチ
2015年公開作品でも映像として出演
イギリス情報局秘密情報部(MI6)の局長であり、ボンドの上司として映画ではシリーズほぼ全作品に出演している唯一のキャラクターです。今まで男女4人の俳優が演じ、2012年からハリーポッターシリーズの”名前を言ってはいけないあの人”ことヴォルデモード役で有名なレイフ・ファインズが演じています。ときに頼り甲斐のある、ときに恐ろしい、ボンドにとって頭の上がらない人物です。
Q
出典:www.sarto.jp
2012年以降の2作品にてQ役のベン・ウィショー
イギリス情報局秘密情報部(MI6)の架空の研究開発Q課の課長であり、QとはQuartermaster(需品係将校)を意味し、小説では組織としてQ課が登場しますが映画ではQという人物として登場します。今まで3人の俳優が演じ24作中21作に登場するボンド映画に欠かせない名脇役です。作中で彼は秘密兵器を開発し、ペン型爆弾や指輪型カメラ、潜水艦にもなる車などその当時としては最新技術を持ってしても作ることのできない発明の数々に少年心くすぐられます。現在ベン・ウィショーが新たにQ役となってからは、PCを使ったハッキングなどでボンドを手助けしています。
ミス・マネーペニー
出典:eigaland.com
2012年以降の2作品にてマネーペニー役のナオミ・ハリス
イギリス情報局秘密情報部(MI6)の局長Mの秘書であり、ボンドの上司にあたります。彼女はシリーズ前半ではボンドに恋愛感情を持ち様々なアピールをしている描写が見られますが、2012年ナオミ・ハリスが演じるようになってからは、むしろボンドに興味がなく立場が逆転しているように描かれています。今まで4人の女優が演じ、ボンドとの掛け合いもまた映画を盛り上げてくれる欠かせないシーンとなります。
6人のジェームズ・ボンド
半世紀以上に渡り愛され続けている世界的ヒーロー、ジェームズ・ボンド。映画では成熟した6人のムービースターが演じています。また、007オタクが集まれば必ず始まるのが、誰が演じるボンドが一番か?という討論です。ここからは歴代6人の演じたそれぞれの特徴と、オススメの作品を紹介したいと思います。
ショーン・コネリー
1930年スコットランド出身。公式身長188cm。
1963〜1971年の6作品にてジェームズ・ボンド役を熱演。
彼はボンド役を一度他の俳優(後ほど紹介するジョージ・レーゼンビー)が演じた後に、もう一度ボンド役に復帰した唯一の俳優です。非公式作品ではありますが、その後またもう一度ボンドを演じています。
コネリー演じるボンドは長身を活かした男らしいワイルドでタフな魅力があり、今なお新たなファンを増やしています。ボンド役を引き受ける際に、出身のスコットランドの訛りを矯正しないことを絶対条件とし、原作の設定でもスコットランド出身という設定が付け加えられました。コネリー自身は21歳頃から生え際が気になり、かつらをかぶってボンドを演じていたと後年明かしています。
シリーズほぼ全作品に登場する名台詞”The name is Bond, James Bond.”を初めて使い、ボンド映画になくてはならない決め台詞となりました。
007 ドクター・ノオ(1962年 105分)
記念すべき1作目。100万ドルという低予算で製作されましたが、6000万ドル近い興行収入を上げ大成功し、1962年の世界の映画興行収入第1位となりました。当時は邦題として「007は殺しの番号」と別に付けられており、アメリカとソ連間の宇宙開発競争やキューバ危機など同時の国際情勢も描かれています。ダンディズム溢れるヒーロー像、水着姿のセクシーな美女、派手なカーチェイスや銃撃戦など1作目にして007としての映画ジャンルを確立しました。
007は二度死ぬ(1967年 117分)
ショーン・コネリー5作目、ボンド映画通算5作目にして、シリーズ唯一の日本が舞台となっています。
東京タワーや丸ノ内線、ホテルニューオータニなど馴染みのある風景が登場し、ボンドは片言の日本語を話しています。現代の設定としながら忍者が出てきたり、日本人から見ると少々リアリティに欠けますが、この時代は、映画館に娯楽として現実ではなく夢を観に行くのですから納得できます。エンターテインメントとして楽しみましょう。日本人初のボンドガールは若林映子と浜美枝であり、また日本の情報機関のボスとして丹波哲郎が出演しています。
ジョージ・レーゼンビー
出典:twitter.com
1939年オーストラリア出身。歴代ボンドの中で唯一ヨーロッパ圏外出身の俳優です。公式身長188cm。
シリーズ初の代替わりとして、数百人の中からアクションの素質を見出され選ばれたのですが、前任者ショーン・コネリー演じるボンドの人気が凄まじく、あまりの重役に一作品で降板してしまいました。歴代最年少の30歳でボンドを演じ、非常に可能性を感じたのに残念でなりません。
当時の世間には受けいられず、1作品のみの出演ということで存在感の薄いボンドでしたが、時間が経つにつれて、作品そのもののクオリティと1作品というプレミア感が相まって、コアなファンに高い人気を誇っています。フレッシュな若さとこの時代には少ないアクションを取り入れた魅力があります。
女王陛下の007(1969年 140分)
ジョージ・レーゼンビー演じる最初で最後のボンドであり、ボンド映画通算6作目。
他のシリーズ作品と比べると興行収入は芳しくはなかったものの、1969年の世界興行成績で第2位を記録しています(1位は明日に向かって撃て!)。今作はシリーズ唯一ボンドが妻帯者となり、プレイボーイとは違った顔を覗かせ、非常にクオリティの高い脚本となっています。ボンド映画には欠かせない、Qの発明品、またボンドが様々なシーンで運転する車・通称ボンドカーはアストンマーティン・DBSであり、次作でも画面隅に登場します。レーゼンビーは映画公開前に継続のオファーを蹴っていますが、ピーター・ハント監督は「彼こそが本物のボンドだ。」と語ったと言われています。
ロジャー・ムーア
1927年イギリス出身。公式身長185cm。残念ながら2017年、癌により89歳で亡くなりました。
1973〜1985年の歴代最多となる7作品にて出演、英国文学界の二大キャラクターであるシャーロック・ホームズとジェームズ・ボンドを演じた唯一の俳優です。もともと2代目ボンドのオファーが来ていましたが、スケジュールの都合上合わず実現しませんでした。コネリーより遅れてボンドを演じていますが、実際は彼より3つ年上であり、二人は俳優として無名の頃からの友人だったそうです。ムーアはなるべくコネリーの真似をしないように気を付けて、彼自身の優しい人柄が滲み出た甘く優しいユーモアのある大人の魅力たっぷりなボンド像を作り上げました。歴代最長期間ボンドを演じ、初めて見たボンドがムーアだという人も多く、一番好きなボンドに挙げられることの多いボンドです。
007 ユア・アイズ・オンリー(1981年 128分)
ロジャー・ムーア5作目、ボンド映画通算12作目。
推理もの、あるいは特撮作品と位置付けられていた前作までとは打って変わって空中スタントから、カーチェイス、スキーアクション、銃撃戦、そして水中での格闘、ロック・クライミングといったスタントを多用に構成し、この頃から徐々に現在のアクションが見どころの方向へ変化してきました。冷戦真っ只中の緊迫した当時が作中からも見てとれ、終盤にはよく似た俳優を探して当時のイギリス首相サッチャー首相を登場させています。今作のボンドガールに抜擢された女優キャロル・ブーケは、15歳で大学の哲学科に入学するほどの秀才であり作中でも知的で清楚なキャラクターを演じ、下着姿のシーンをカットするなどシリーズの中でも異例のボンドガールですが、彼女の持つ聡明な魅力にシリーズ内屈指の人気を誇っています。
ティモシー・ダルトン
1946年イギリス出身。公式身長188cm。
1987、1989年の2作品にてボンドを演じましたが、製作会社の放映権を巡る争いにてあまりに時間がかかったため降板してしまいました。彼自身もまだボンド役を続ける意欲はあったのですから非常にもったいない。2代目、3代目ボンドの時にもオファーがあったのですが、演じるには若すぎる、スケジュールが合わないなどを理由に断念し、3度目にしてようやくボンドを演じることになりました。
若々しくハードボイルドで活動的なボンドを演じ、彼の2作目「007 消されたライセンス」はイアン・フレミングの原作に最も近いと言われています。
007 リビング・デイライツ(1987年 130分)
ティモシー・ダルトン1作目、ボンド映画通算15作目。シリーズ誕生25周年の記念作品にあたり大型予算で製作されました。前任であるロジャー・ムーアのシリーズは全体的にコメディ要素が強く出ていますが、ソ連内部やアフガニスタン進行など当時の国際情勢を反映し、全編通してシリアスでハードな展開が多くなっています。故ダイアナ妃がこの作品を鑑賞した際、最もリアルなジェームズ・ボンドだと評したという逸話が残っています。
ピアース・ブロスナン
1953年アイルランド出身。公式身長187cm。
1995年〜2002年の4作品にてボンドを演じた彼もまた、ムーアがボンド役を引退した後にオファーを受けたのですが、スケジュールの都合上断念、その後ダルトンが辞退したのを機に、15年を経てボンド役に決まりました。
コネリーのタフでワイルドな魅力、ムーアのユーモアのあるエレガンスな魅力をうまく取り入れてバランス良く体現し、スマートな魅力も加わりました。彼までの全ボンド俳優と共演したQ役のデスモンド・リュウェリンはショーン・コネリー以来、最高のボンドと称し、2011年全米誌で行われた歴代ボンド人気投票にて初代コネリーに次ぐ2位となりました。
アクションシーンの体のキレの良さは歴代随一で、当時流行していたCGを多用した画面と相まって見応えのある作品になっています。その頃、新たなヒーローや別の娯楽の登場で人気が低迷していた007シリーズを立て直し、作品監督が毎回替わることで、シリーズ作品の宿命であるマンネリズムを回避しました。ブロスナンは、ボンドを演じることで俳優のイメージが固定されてしまうことを懸念し、ボンド役を引き受ける際にシリーズ合間に他作品にも出演できるよう、制作会社に許可を求めました。映画の中だけでなく現実世界でも、俳優たちが感じる人気ヒーローを演じることへの重圧を改善していった彼は真のヒーローだと感じます。
1995〜2002年の4作品。
007 ゴールデンアイ(1995年 130分)
ピアース・ブロスナン1作目、ボンド映画通算17作目。
1990年代に入って冷戦が終結し、製作スタッフの入れ替わりも重なりシリーズの大きな転換期を迎えます。ボンドが悪の組織と戦う構図は変わらないものの、社会情勢を反映させ作中の世界観やアクションシーン、カット割りなども変化し、下降気味であったシリーズの人気は復活、全シリーズを通しても傑作と言われる作品になりました。女優イザベラ・スコルプコ演じるボンドガールは今までとは違い、自立した女性として描かれ守られるだけでなく勇敢に戦う姿が描かれ、ボンドガールの方向性も転換する作品にもなりました。
ちなみに本作のボンド役に、後にアクション俳優として人気のリーアム・ニーソンが候補として挙がっていたようですが、残念ながらアクション映画には惹かれないと断っていたようです。
ダニエル・クレイグ
1968年イギリス出身。公式身長178cm。
2006年以降の4作品にてボンドを演じる現在のボンド俳優です。クレイグは歴代ボンドの中で最も身長が低く、原作とは違い唯一の金髪ということもあり、ボンド役に決定した時はバッシングの嵐でした。しかし、いざ彼にとっての一作目「007 カジノ・ロワイヤル」が公開されると、原作に限りなく近い寡黙でタフなボンドを演じ、シリーズ最高記録の興行収入を樹立しました。(その後、「007 スカイフォール」にてさらに同記録を更新)
また、シリーズ初、英国アカデミー主演男優賞にノミネートされたり、2012年のロンドンオリンピック開会式ではエリザベス2世をボンドとしてエスコートする粋な演出がなされ、名実ともに歴代最高峰のボンドとなりました。筋肉質な肉体から繰り広げられるリアルなアクションは非常に見応えがあります。
007 カジノ・ロワイヤル(2006年 145分)
ダニエル・クレイグ1作目、ボンド映画通算21作目。次作「007 慰めの報酬」と2作に話が続くのは、一作完結が主流のシリーズにおいて今作のみです。また、ボンド映画おきまりの銃口の中からボンドに撃たれる演出であるガン・バレルや名台詞の使いどころががカッコよく、新たな時代を象徴しました。
フレミングの007小説1作目を脚本とし、今までとはまた別の時間軸のボンド映画として、ボンドが007に任命されてすぐが描かれているので、はじめてボンド映画を観る人にもおすすめの作品です。長くなってきたシリーズですがそれまでと設定を大幅に変え、ボンドをクレイグと同じ1968年生まれ、冷戦時代にスパイ活動は行っていない設定に変更されました。
終わりに
今回は、007シリーズについて解説してみましたがいかがでしたでしょうか。
2020年公開予定の「ボンド25(タイトル未定)」で、ダニエル・クレイグがボンドを演じるのは最後と言われており、次にボンドを演じる俳優は誰なのかネット上ではすでに様々な予想が上がっています。また、創造性の相違により予定していたダニー・ボイル監督が降板、新たに日系アメリカ人のキャリー・フクナガ氏が監督に起用されたことも現在話題となっています。
次作まで時間のある今、是非この機会にボンド映画の世界に踏み入れてみましょう。