在住者が教える!長野の歴史ある伝統工芸品10選【体験できる場合も】
長野県各地にある伝統工芸。地域に根差した材料を使い、匠の技が現在でも受け継がれています。造られる工芸品は和紙や木工製品をはじめ、焼き物やガラス細工など様々。長野県の伝統工芸品をご紹介します。
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アイキャッチ画像出典:iidamizuhiki.main.jp
伝統の技を受け継ぎ次世代へ昇華させる工芸品
北から南まで長野県各地にある伝統工芸。その工芸品を造る担い手や、必要な技術・材料など様々な要素があります。一言で伝統工芸品といっても様々ですが、長野県という土地柄は木工品が多いようです。そして和紙や竹細工などもあり、新たにガラス工芸なども加わっています。
伝統工芸品に指定されているのは、経済産業大臣指定と長野県知事指定の2種類ですが、その他にも地域に根差した工芸品が多くあります。そのどれもが生活に密着した品が多く、近年ではよりアーティスティックな要素がある製品も増えてきました。この伝統の技を体験できる施設もありますので、より身近に感じることができるでしょう。
長野県の伝統工芸、体験できる工芸品も含めて各地から厳選した10の工芸品をご紹介します。
飯山市「内山和紙」
商品:和紙照明「TIKUMA ほのか」
価格:20,520円
商品:和帳/大
価格:950円
商品:和帳/小
価格:750円
長野県の北部に位置する飯山市。野沢温泉や志賀高原などリゾートエリアへのアクセスも良く、北陸新幹線の延伸によって発展している地域です。
ご紹介するのは飯山の「内山和紙」。発祥は「江戸時代に美濃国(岐阜県)で手漉き和紙の製法を会得した萩原喜右ヱ門が郷土に戻り自身で漉いた」というのが有力な説です。原料となるのは桑科の楮(コウゾ)と呼ばれる植物。この楮が飯山地域に自生していたことから入手しやすく、また楮をさらすために雪が必要だったことから豪雪地帯の飯山で普及したようです。
現在では内山紙協同組合が組織されており、伝統の技を受け継いでいます。「内山和紙」は一般に販売もされており、障子紙や手帳などの文房具をはじめランプシェードなどをラインナップ。また手漉き体験もでき、A3サイズの和紙を作成する体験ができます。
【基本情報】
組織:内山紙協同組合
住所:長野県飯山市大字瑞穂6385
TEL:0269-65-2511
体験:予約制(4名以上)
料金:2,000円
信濃町「信州打刃物」
出典:kougeihin.jp
スキー場やゴルフ場をはじめ、多彩なアクティビティが楽しめる信濃町。こちらにある野尻湖には遊覧船もあり、ヨットなどのレジャーも盛んです。
ご紹介するのは「信州打刃物」。「戦国時代に行われた川中島の合戦の際に、刀剣造りや修復のためこの地に移住してきた鍛冶職人が地元民に伝えたのがはじまり」と伝わっています。そしてこの地域を通る北国街道が、新潟県の直江津港から荷揚げされた荷を運ぶルートだったこと。信濃町は直江津港から比較的距離が近いため、安価に鉄などの材料が手に入ったこと。火入れに欠かせない木材が豊富であったこと。などの条件が重なりこの地で普及しました。
「信州打刃物」は鎌や鍬・鍬などの農機具をはじめ、包丁など様々な製品があります。包丁は出刃包丁や柳刃包丁・麺切包丁など用途毎に造られており、組合のオンラインショップでも購入が可能。好みに合わせてオーダーメイドにも対応しています。
【基本情報】
組織:信州打刃物工業協同組合
住所:長野県上水内郡信濃町古間359-2
FAX:026-255-6391(問合せはFAXで)
長野市戸隠「信州戸隠竹細工」
長野市の北側にありスキー場やキャンプ場をはじめ、様々なアクティビティが用意されている戸隠地区。自然豊かな高原地帯で、地域一帯に点在する戸隠神社はパワースポットとしても人気です。
ご紹介するのは「信州戸隠竹細工」で、この地方に自生する竹の一種「根曲がり竹」を利用して作られます。発祥は江戸時代と伝わっており、当初は農具の箕(み)やざるが造られていましたが、徐々に皿や籠など生活用品も造られるようになりました。「根曲がり竹」は復元性が強くしなやかな素材であり、製品は使い込むほどに味わいを増す逸品。戸隠蕎麦を盛るためのざるとしても重宝されています。
戸隠竹細工センターは各種の製品を販売していますので、購入することが可能です。また製作工程を見学・体験することもできますので、職人技を間近で体験することができます。
【基本情報】
施設:戸隠竹細工センター
住所:長野県長野市戸隠奥社入口
TEL:026-254-2947
体験:予約制
料金:1,600円~
長野市松代「松代焼」
長野市松代は戦国武将・真田氏が治めた松代藩があった地区。松代藩は江戸末期に佐久間象山を輩出した藩であり、エリアには松代城址公園や文武学校など多くの史跡が残っています。
ご紹介するのは「松代焼」。起源は江戸中期の第七代松代藩藩主・真田幸専の時代で、藩命で開窯したと伝わっています。使われる土は、鉄分を多く含む地元の粘土を使用。灰・白土・銅などの素材で釉薬を調合しているため、独創的な青緑色の焼き上がりとなります。「松代焼」は硬く割れにくい性質から、生活用品としても人気がある焼き物です。
松代陶苑では松井窯窯元の焼き物を取り扱っており、ネットショップでも製品を購入できます。陶芸体験は各種コースを用意していますので、好みの焼き物を体験することが可能です。
【基本情報】
会社:有限会社 松代 松代陶苑
住所:長野県長野市松代町清野2120
TEL:026-278-7302
体験:予約制
料金:1,000円~
軽井沢「軽井沢彫り」
商品:コーヒーテーブル サミットテーブル
サイズ:60.0×60.0×58.0(cm)
価格:320,000円
商品:一輪挿 三日月(小)
サイズ:11.5×3×10.5(cm)
価格:7,000円
国内有数のリゾートである軽井沢。宣教師アレキサンダー・クロフト・ショーによって、避暑地として広く知られることになり現在でも多くの別荘があります。
ご紹介するのは「軽井沢彫り」。別荘地として人気が出始めた1900年代に入って急速に需要が増えたのが西洋式のイスやテーブル、特に好まれたのが精緻な彫刻が施された製品でした。当時日本国内で美しい木彫り細工を行っていたのは日光の職人。彼らは軽井沢に招へいされ、この地で木彫り細工を施した家具などを製作するようになったのです。現在では家具はもちろん、花器やフォトスタンドなど様々な製品が造られており、その写実的な彫刻が人気を得ています。
大阪屋では家具や小物の販売をしており、修理も受け付けています。また大阪屋のギャラリーを使って「軽井沢木彫倶楽部 さくら会」が講習会を開催。実際に「軽井沢彫り」を体験することもできます。
【基本情報】
会社:有限会社 大坂屋
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢旧軽井沢629
TEL:0267-42-2550
体験:毎月 第2・第4火曜日
料金:5,000円
松本市「松本家具」
出典:matsumin.com
商品:クインアン型バタフライ卓
出典:matsumin.com
商品:#44型ウインザーチェア
国宝松本城を擁する松本市。長野県中部の中心的都市で奥座敷と呼ばれる浅間温泉があり、美ヶ原への玄関口でもある歴史情緒溢れる地域です。
ご紹介するのは「松本家具」。経済産業省に指定されている松本民芸家具を中心に製作されており、戦後の民芸運動の影響を受けた作品が現在の製品にも受け継がれています。「松本家具」は日本民芸の祖と呼ばれる柳宗悦や英国の陶芸家・バーナード・リーチらがその黎明期に関わっており、多分な影響を受けたようです。使用される木材は落葉高木のミズメザクラ、家具に適した材料でありながら加工が難しいため熟練の職人技を必要とします。塗装も漆やラッカーなどを使いすべて手作業で行われるため、独特の風合いを感じることができるでしょう。
現在はレギュラー商品だけでも800種を超えるとか。テーブルやイスなどのダイニング用品をはじめ、茶箪笥やサイドボードなど様々な製品が製作・販売されています。
【基本情報】
組織:松本家具工芸協同組合
住所:長野県松本市中央3-2-12
TEL:0263-36-1597
安曇野市「あずみのガラス」
商品:りんごの結晶 大
価格:2,250円
商品:りんごの結晶 小
価格:1,750円
商品:たまねぎ 大
価格:5,000円
商品:たまねぎ
価格:2,315円
北アルプスの清流によって造られた扇状地である安曇野。数多くの美術館や博物館が点在するアートの街であり、多くの観光スポットを擁する地域です。こちらでは綺麗な水でなければ栽培できないワサビが栽培されており、ブランド食材の信州サーモンなども養殖されています。
ご紹介するのは「あずみのガラス」。国や県の指定を受けていませんが、地域の発展と振興のために企図された工芸です。中でも「あづみ野ガラス工房」では、ガラス工芸家を目指す若きクリエイターが研鑽を積む場所としての位置付けもあり、地域と工芸の発展に力を入れています。
「あづみ野ガラス工房」では予約なしでガラス吹きを体験することができ、季節限定で「リューター・小物作り・風鈴作り」の体験もできます。こちらでは多くのガラス工芸品が展示販売されており、美しいグラスやマグカップなどのテーブルウェアを用意。他にも花器やアクセサリーなど多彩な作品が揃っており、オーダーメイドにも対応しています。
【基本情報】
施設:あづみ野ガラス工房
住所:長野県安曇野市豊科南穂高5076-17
TEL:0263-72-8030
体験:8名以上は予約
料金:3,240円
塩尻市奈良井「奈良井の曲物」
商品:合わせ小判弁当(中)
容量:570ml
価格:7,500円
江戸時代に整備された五街道の一つである中山道。東海道と並び江戸と京を結ぶ重要な交通路であり、こちらにある奈良井宿は現在でも古い町並みが残る風情ある宿場町です。
ご紹介するのは「奈良井の曲物」。御嶽山麓でとれる良質な木曽ヒノキを使って側面を造り、蓋や底板には吸湿性の高い木曽サワラを使用しています。木曽ヒノキを薄く加工してから円形や楕円形に曲げ、つなぎ目は山桜の樹皮で縫い合わせてから底板を取り付け。最後に漆を塗って仕上げます。様々な製品がありますが、おすすめは弁当箱。余計な水分が抜けるためご飯が美味しく保たれます。
奈良井宿に店舗を構える花野屋では様々な曲物を取り扱っており、オンラインショップでも購入が可能です。
【基本情報】
店舗:花野屋 本店
住所:長野県塩尻市大字奈良井837-80-5
TEL:0264-34-3708
木曽「木曽漆器」
御嶽山の裾野に広がる木曽。平安時代の武将・木曾義仲が知られており、木曽五木と呼ばれる木曽ヒノキや木曽サワラなど良質な木材の産地でもあります。
ご紹介するのは「木曽漆器」。木曽地方で造られる木曽漆器は、室町時代初期が発祥と伝われる歴史ある工芸です。明治期に錆土(さびつち)と呼ばれる鉄分の含有量が多い粘土が発見され、この錆土を漆と混合することで堅牢な漆塗りが造られるようになりました。また高原の冷涼な気候は漆塗りに適しており、幹線道路にも近いことから全国的に普及したようです。
木曽には多くの漆器店があり、碗や盆・重箱や箪笥といった伝統的な品をはじめ、カトラリーやワイングラスまで幅広い漆器が販売されています。
【基本情報】
組織:木曽漆器工業協同組合
住所:長野県塩尻市大字木曽平沢2272-7
TEL:0264-34-2113
飯田市「飯田水引」
商品:飾り 芽出鯛
サイズ:20×26×3.5(cm)
価格:1,543円
商品:宝入舟 特印
サイズ:23.5×25×2(cm)
価格:1,080円
長野県の南部にあり、岐阜県との県境にも近い飯田市。景勝地で有名な天竜峡をはじめ、かおり風景100選に選ばれたりんご並木などもあり、南信州の小京都とも呼ばれる風光明媚な地域です。
ご紹介するのは「飯田水引」。水引自体の歴史は古く、飛鳥時代発祥と伝わっています。飯田地方は元々和紙造りが盛んであったため、江戸時代後期に飯田藩が製造方法を庶民に習わせたのが発端だとか。そして1998年に長野県で開催された長野オリンピック。このとき入賞者に「飯田水引」で造られた月桂冠が授与されたことによって、世界にも知られるようになりました。
飯田水引協同組合では多彩な「飯田水引」を取り扱っており、オンラインショップでも販売しています。またウェブサイトには造り方も公開されており、材料や工具も購入できるようです。
【基本情報】
組織:飯田水引協同組合
住所:長野県飯田市上郷別府3338-8 地場産業センター内
TEL:0265-22-3363
技を受け継ぎ時代に即して発展する伝統工芸
長野県各地にある伝統工芸。伝統の技を受け継ぎ次世代へと継承していくことで、その文化が守られていきます。同時に時代に即して発展することで、新たな価値が見出され広く知られることになるでしょう。
※ 掲載内容は2017年4月現在、価格は参考価格です。
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この記事のライター
信州の曲者が集まるCLUB Autistaに所属する道楽者。車と酒と湯を愛し、ひと時を執筆に捧げる。