10年ぶりの新作でブーム再燃。カズオ・イシグロの静謐な世界を楽しもう
2015年に日本語版新作『忘れられた巨人』が発表され、ブームが再燃しているイギリス人作家カズオ・イシグロ。ここでは彼の著作3点を紹介し、その魅力に迫っていきます。
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カズオ・イシグロの特異な経歴
2000年代初頭、翻訳小説ファン以外にも多くのファンを獲得し、「世界文学の大家」のひとりとして注目を浴びた英国人作家、カズオ・イシグロ。
両親共に日本人で、5歳まで日本で過ごしていたという特異な経歴でも有名ですね。
2015年には10年ぶりの新作『忘れられた巨人』日本語版が上梓され、この夏には著者本人が来日もしており、カズオ・イシグロブームが再燃しています。
ここでは彼の代表作品3作をピックアップし、その魅力を紹介していきます。
遠い山なみの光
イギリス王室文学協会賞を受賞したデビュー作。
現在はイギリスに暮らす日本人女性の「記憶」を描いた作品で、舞台は戦後まもない日本です。
戦前に婚約者を失うも、今の自分は夫や義父と幸福な生活を送っていると信じる主人公、アメリカ人男性に未来を託そうとする隣人女性…価値観が大きく変わった世界で迷いながら自分を肯定しようとする人々を、静かなタッチで描いています
その品の良さ、本音を隠した日本独特の会話等がどこか小津安二郎監督の映画を思わせる作品です。
日の名残り
世界的に権威のあるブッカー賞を受賞した作品。
舞台はイギリスのお屋敷で、そこに務める老執事・スティーブンスの「世界大戦が終わった現在」と「戦前・戦中の記憶」を交互に描いていきます。
常に良い執事であろうと務める執事の姿が、時に献身的に健気に、時にはユーモラスに、時に悲しく感じられるかもしれません。
1993年には映画化され、スティーブンス役を『羊たちの沈黙』ハンニバル・レクター役などで有名なアンソニー・ホプキンス氏が好演しました。
こちらの映像作品もおすすめです。
わたしを離さないで
2000年台初頭に「第一次カズオ・イシグロブーム」を日本でも巻き起こした世界的ベストセラー。
一見するとイギリスの伝統的な寮生活を描いているように始まるこの物語は、徐々に読者に「違和感」を与えていきます。なぜここまで生徒達の「健康」に厳格な規律があるのか、彼らの未来には何が待ち受けているのか…SF的なアプローチを大胆に取り入れ、人の生きる意味を問いかける問題作です。
読みやすい文体は読書ビギナーにもおすすめ
将来のノーベル賞有力候補とも言われるカズオ・イシグロ氏の著作ですが、その文体は穏やかかつシンプルで読みやすいもの。
また日本語翻訳でも雰囲気を壊さぬ工夫がなされており、ビギナーでも気軽に作品世界に足を踏み入れることができます
夏の読書の一冊として、静謐で穏やかなカズオ・イシグロの世界を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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この記事のライター
大手通信プロバイダやモバイルゲーム企業にて、PRを担当してきました。3年前からWEBライターの仕事を開始。エステ、美容、転職、健康食品、医療、映画、書籍、カルチャー全般などについて情報発信をしています。