アウディRSシリーズの魅力を車種別に徹底紹介
アウディRSシリーズの魅力や歴史を徹底紹介します。RSシリーズはベンツAMGやBMW Mシリーズと並ぶ最高峰のシリーズです。RS3スポーツパック、RS4アバント、RS5、RS5カブリオレ、RS6アバントパフォーマンス、RS7スポーツバッグパフォーマンス、RSQ3パフォーマンスなどすべての車種を徹底解説します。
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「レースは技術の実験室」カーレースで培われた技術の粋を集めたRSシリーズ
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この言葉はアウディの創始者の一人、アウグスト・ホルヒのものです。根っからの技術屋であったホルヒは、車を売るにはカーレースで勝てる車を開発するに限ると、採算度外視で過剰品質のスーパーカーの開発に突き進みました。結果、売れ筋路線で堅い収益を得ようとする他の経営陣と対立し(当然ですね)、自ら創設し自らの名前を冠したホルヒ社を追われるという憂き目に合います。
その後、ホルヒは再度自らの会社を立ち上げます。新会社の社名にも同じく自分の名前を入れた所、ホルヒ社から名前が酷似していると訴えられたため、「ホルヒ(聴く、という意味)」をラテン語訳にして「アウディ」・オートモビールヴェルケ有限会社としています。ちっぽけな町工場の域を出ない小さな会社であったにもかかわらず、彼の車の技術に対する情熱に心を打たれた優秀な社員がホルヒ社から数多く移籍してきました。
その後、アウディの車はオーストリア・アルペン・トライアルで二年連続入賞を果たし、「アルプスの覇者」という異名を取りました。そしてその後も1914年までの間に34連勝という金字塔的な成績を収め、アウディの車は市場で名声を得ることとなります。技術屋ホルヒの理想が遂に実現したというわけです。
現在でもアウディの車はFIA世界耐久選手権(WEC)をはじめとするカーレースで好成績を収め続けています。RSシリーズは、そこで培われた技術を惜しみなくつぎ込んだスポーツモデルとして高い評価を得ており、近年では日本国内でもベンツやBMWを上回る人気です。
RS3スポーツパックで伝統の直列5気筒エンジンを堪能しよう
アウディRSシリーズの一番弟分であるRS3スポーツバックは、ホットハッチの位置付けであるA3スポーツバックのスポーツモデルとして登場しました。ホットハッチとはいえ大きさも排気量も国産車で言えば大体マークX相当になりますが、アウディ伝統の直列5気筒ターボエンジンを搭載しており、最高出力270 (367) / 5,500 - 6,800 kW(PS) / rpm、最大トルク465 (47.4) / 1,625 - 5,550 Nm(kgm) / rpmとV6エンジンを積んだマークXを倍近く上回る素晴らしいスペックを誇ります。
この直列5気筒エンジンは、1976年に初めてAudi 100に搭載されて以来、数多くのカーレースでタイトルを獲得し、経済性と信頼性を両立させたエンジンとしてアウディの顔というべき存在になりました。その後、新たに開発されたV6エンジンにとって代わられますが、2009年ターボチャージャーとガソリン直噴技術と共に復活を果たします。そして、7年連続で「エンジンオブザイヤー」に選ばれ、高い評価を得続けています。
そのドライブフィールはまさしく羊の皮を被った狼と言えます。アクセルを踏むと元気の良いエギゾーストサウンドが響き、低速域から最高出力を示す幅広いトルク域により一気に加速がなされていきます。自慢のクワトロ(フルタイム四輪駆動)と19インチの太いタイヤと共にしっかりと路面を捉えつつ、スポーティかつエキサイティングな走りが楽しめます。
豪快な自然吸気エンジンを使いこなす盤石の技術力-RS4アバント-
5人乗りのスポーツワゴンタイプのRS4アバントの特徴を挙げるとすれば、まずは今やこの手のハイパフォーマンスカーとしては珍しい程贅沢なNAのV8エンジンでしょうか。最高8,500rpmという超高回転に加えて最大トルクは430(43.8) / 4,000-6,000 Nm(kgm) / rpm、3,000~8,000rpmの回転域でパワーの約90%を発揮しますので、かなり分厚いトルクと言えましょう。
5人乗りとはいえ1,860㎏と結構な車両重量ですが、0-100km/h加速4.7 秒と、M3やAMGC63と肩を並べる軽やかなパフォーマンスです。このV8エンジン、次期モデルではやはり環境に配慮した過給機付きV6エンジンになるとのことですので、この贅沢さを楽しめるのもあとわずかと言えるかも知れません。
とはいえ、RS4アバントの素晴らしい所は、この猛烈過ぎるエンジンを確実に制御しスムーズな走りにつなげる技術力と言えます。例えば悪路のコーナリングでも、路面の状況を読んでトルク配分をきめ細やかに変えます。強引にアンダーステアに持っていかれるということも無く、ドライバーに違和感を全く与えません。また、サスペンションはダンパーをX字にクロスさせて車体を安定させるダイナミックライドコントロールでサポートされています。全体的な剛性感の高さについてはお墨付きでしょう。
至れり尽くせりのRS5とRS5カブリオレは果たしてM3より上を行くのか!?
スポーツクーペタイプのこの車には、RS4アバントとほぼ同じエンジンが搭載されており、かつ、車重等もRS4アバントと殆ど変わりません。そのため、RS4アバント同様のパワフルかつ十分に制御されたドライブフィールを楽しむことができます。
この車は、BMWのM3のライバルと目されることが多いようです。クーペ、あるいはカブリオレと言えばワゴンと異なり純粋に走りを楽しみたいユーザーが多いと思います。走りを楽しむという視点で見れば、M3とRS5どちらが上か、というと…これも好みによりけり、あるいはどちらにも長短があるといったところで勝敗がつけづらい所です。
例えば、エギゾーストサウンド。M3のほうが豪快で挑発的な音で興奮できる!という方もいる一方、RS5のバリトンサウンドもじわじわ来るという声もあります。加速については、200㎏程重いRS5の方が不利かと思いきや、やはり4WDであることやトルクの幅が厚いことからRS5の方がむしろ優れているようです。ただ、スポーツカーらしさという意味ではトップエンドの伸びが良いM3の方が乗っていて楽しい、という方もいます。ステアリングについては、RS5はトルクベクタリングシステムにより十分にコントロールされています。ただ、それが如何にも「車に走らされている」と思ってしまう向きもいる一方、M3は路面の状況が良く伝わり、またハンドルと車体の一体感という意味では圧倒的に優れていると感じる方もいるようです。
結局のところ、比較をしてもそれはそれぞれの車の設計思想の違い、という所に落ちてしまうようで…。
RS6アバントパフォーマンスはデキるビジネスマンの皮を被った狼です
出典:autoc-one.jp
RS6アバントパフォーマンスはステーションワゴンタイプ、と言っても総重量2,080㎏、国産車で言えばアルファードやエルグランドに匹敵してしまう位の大きさです。この大きさでは単純に走りだけを楽しむ車、とはならないでしょう。アウディの公式サイトにも「これ見よがしな高性能のアピールを控えた」「フォーマルな席に乗りつけても、上品なステーションワゴンとして周囲に溶け込みます」と記載されており、座席には最上級のバルコナレザーが使われており、シートの座り心地の良さにも定評があることから、いわゆるビジネスマンズ・エクスプレスというカテゴリーに属する車であることが伺えます。
では、純粋に走りを楽しめるRSシリーズのエッセンスは…勿論、十分にあります。「ビジネスマンズ」といえども「エクスプレス」ですから。V型8気筒DOHCインタークーラー付ターボチャージャーを搭載し、700 / 1,750-6,000 Nm(kgm) / rpmという大きさという意味でも回転域の幅広さという意味でも驚嘆すべきトルクを誇ります。車重を全く感じさせない爽快な走りと豪快な加速を味わうことができる一方、ハンドリングもブレーキもドライバーの思うままです。とはいえ、走行モードをコンフォートにすればアイドリングストップ機能もあることから、意外な燃費の良さと快適な乗り心地を楽しめ、乗り心地の硬さもありません。大きな商談を成功裏に決めた後、一人ガッツポーズを決めて高速道路を思い切り飛ばす、そんなビジネスシーンを思い描いてしまいますね。
もっと、さらに、どこまでも!走るために生まれた車、RS7スポーツバックパフォーマンス
出典:openers.jp
RS7スポーツバックパフォーマンスは4ドアタイプのクーペになります。大きさも走行性能も先ほどのRS6アバントパフォーマンスと概ね同じですが、違いは見た目だけかというとそうでもありません。クーペらしく、より走りに徹した仕様になっています。それはどこでしょうか。
RS7スポーツバックパフォーマンス にはV型8気筒DOHC インタークーラー付バイターボが搭載されています。「バイターボ」とはいわゆるツインターボのことで、小さいターボを2つ搭載し低い回転域でも効率よく過給を行うことによって、滑らかな加速が実現されます。また、ターボラグも少なくなります。RS6アバントパフォーマンスとほぼ同じ走行性能ですが、こちらの方がよりスポーティな走りを楽しむことが出来るでしょう(勿論、どっかんターボの方が「らしくて」好き、という向きもいますが…)。
0-100km/h加速タイム3.6秒と圧倒的です。走行モードを「ダイナミック」にすると、高速道路でもホイールスピンしながら「もっと!」とおねだりをするパワフルな加速を誇る車でありながら、ブレーキの効きはしっかりしており、リミッターを外せば305km/h(!)まで安心して駆け抜けることが出来ます。さらに、単に早いだけでなく、気筒休止システムを採用しており、街中走行ではエコな4気筒エンジン走行に入ります。RS6アバントパフォーマンス同様2tを超える巨体ですが、燃費は10.3 km/ℓと比較的良好です。
究極のSUVで街中とアウトバーンともに制覇しよう!RS Q3パフォーマンス
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RS Q3パフォーマンスは人気者かつ、価格も818万とこのシリーズの中では手の出しやすいコンパクトSUVになります。乗りやすいSUVとして定評のあるQ3のハイスペックバージョンとして発売され、このセグメントにかけるアウディの情熱を彷彿とさせます。
さて、肝心の走りですが、ここで再びアウディ伝統の直列5気筒ターボエンジンが登場します。ベースモデルのQ3と比較すると、0-100km/h加速タイムは4.8秒から4.4秒に短縮され、最高速度はリミッターを外せば270km/hとなります。また、オプションでアダプティブ・ダンパーを選ぶことにより、スポーツカーらしい味付けを楽しむことも可能です。さらに、走行モードをダイナミックにした際には、シフトチェンジごとにいわゆるダブルクラッチに相当する操作が行われることにより、変速ショックを和らげ、スムーズなシフトチェンジが行われています。
また、着座姿勢は高めに取っており、かつ比較的小回りも効くため街中でも乗りやすく、かつ、大人5人が楽に乗れて荷物も十分詰めるなど、SUVらしい居住性の高さも自慢です。また、フロントブレーキには赤く塗られたキャリパーをのぞかせるなど、エクステリアからスポーツカーらしさを楽しむこともできます。
「技術による先進」ホルヒの時代から引き継がれるアウディのスピリット
如何でしたか?ラグジュアリーに徹するベンツ、駆け抜ける歓びに徹するBMWと比べると、アウディはまさしくその有名すぎるスローガンに代表されるように「技術による先進」にこそ注力しているといえるでしょう。どんなにトップスピードで走っても事故を起こさないバランスの良い安定走行を心がけることでそのブランドイメージを確立してきました。BMWなどと比べると「車に走らされている」「安定志向過ぎる」ように感じる方もいるようですが、カーレースでの素晴らしい実績を見ると、車を走らせるための盤石な技術力があるというのはやはり強い、と実感します。
さて、最後に。アウディがル・マン24時間レースを含めたFIA WECへの参戦を終了し、電気自動車によるFIA フォーミュラEレーシング シリーズに本格参戦するというモータースポーツ戦略を打ち出したことをご存知でしょうか。今まで常勝と言ってもよかったWECを卒業し、敢えて電気自動車のという未知の分野へ打って出るというわけです。また、アウディは今後自動運転の技術開発にも力を入れると表明しています。過去の栄光を敢えてさらりと脱ぎ去り、将来を見据えて電気自動車の世界へ殴り込むとは…!「技術による先進」をまさしく地で行きますね。この言葉はアウディにとって単なるスローガンではなく、スピリットそのものなのでしょう。
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この記事のライター
リライトとか編集とか、その辺の仕事を10年位手掛けています。得意分野はビジネス全般、政治経済、車、アート、文学。ちなみに、宣伝会議の編集ライター養成講座卒業しました。卒制は優秀賞でした。