【夜の切り札】バーで語りたくなる太宰治のおすすめ名作4選

世の中には2種類の人間がいます。本を読む人・本を読まない人です。読書をする理由は様々ですが、ここでは「名作を読んだという知的さをさりげなく醸し出す」ことを目的とした名作・名言をキュレーションしていきます。立ち寄ったバーでお酒を片手に太宰治を語れる人生と語れない人生、格好いいオトナはきっと前者です。

henomochinヨウスケ@外資系経営コンサル
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アイキャッチ画像出典:www.flickr.com

辛い時に読むと「こいつよりはマシだ」と思える作家・太宰治

太宰治と言えば真っ先に思い付くのは『人間失格』ではないでしょうか。
どちらかと言えば悲劇的な匂いのする作家ですが、ユーモラスな作品も意外と多く書いています。
作品を知る前に略歴を追っておきましょう。

太宰 治(だざい おさむ、1909年(明治42年)6月19日 - 1948年(昭和23年)6月13日)は、日本の小説家である。本名、津島 修治(つしま しゅうじ)。1936年(昭和11年)に最初の作品集『晩年』を刊行し、1948年(昭和23年)に山崎富栄と共に玉川上水で入水自殺を完遂させた。主な作品に『走れメロス』『津軽』『お伽草紙』『斜陽』『人間失格』。その作風から坂口安吾、織田作之助、石川淳らとともに新戯作派、無頼派と称された。

出典:ja.wikipedia.org

注目すべきエピソードは複数回の自殺未遂、玉川での愛人との心中でしょう。
20歳、21歳、26歳、28歳...女性関係の悩み、大学卒業が絶望視されたこと、新聞社に落ちたことなど様々な理由で彼は自殺を試みます。
酒浸り、薬物中毒、借金まみれの日々を過ごしていた彼を思えば、辛い時でも「こいつよりはマシだ」と考え直せるのではないでしょうか。

それでは、そんな太宰治をバーで語りたくなる名作を4冊紹介します。

①【人間失格】

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太宰治と言えばやはり押さえておきたいものは「人間失格」でしょう。

「恥の多い生涯を送ってきました」3枚の奇怪な写真と共に渡された睡眠薬中毒者の手記には、その陰惨な半生が克明に描かれていました。無邪気さを装って周囲をあざむいた少年時代。次々と女性に関わり、自殺未遂をくり返しながら薬物におぼれていくその姿。「人間失格」はまさに太宰治の自伝であり遺書であった。作品完成の1か月後、彼は自らの命を断つ。

出典:www.amazon.co.jp

女性との心中に失敗して生き残る、吐血して死の淵に立つ、モルヒネ中毒になり強制入院させられる、といったエピソードは太宰本人の経験と重なる部分が多く、遺書的とも呼ばれています。

【語れるようになりたい名言】
「弱虫は、幸福をさえおそれるものです。綿で怪我をするんです。幸福に傷つけられる事もあるんです。」

②【女生徒】

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太宰の作品の中には女性一人称の小説も多く、女性読者の中には「自分の気持が書かれている」と思う人も多いとか。その中でも有名なのは『女生徒』です。

幸福は一夜おくれて来る。幸福は、―」。女性読者から送られてきた日記をもとに、ある女の子の、多感で透明な心情を綴った表題作。名声を得ることで破局を迎えた画家夫婦の内面を、妻の告白を通して語る「きりぎりす」、情死した夫を引き取りに行く妻を描いた「おさん」など、太宰がもっとも得意とする女性の告白体小説の手法で書かれた秀作計14篇を収録。作家の折々の心情が色濃く投影された、女の物語。

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男がよくここまで、というくらいの観察眼には敬服する限り。モテ続けた色男の面目躍如、というところなのでしょうか。
女性の気持ちが分からない、と嘆く男性は必見です。

【語れるようになりたい名言】
「明日もまた、同じ日が来るのだろう。幸福は一生、来ないのだ。それは、わかっている。けれども、きっと来る、あすは来る、と信じて寝るのがいいのでしょう」

③【斜陽】

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「人間は恋と革命のために生まれてきたのだ」
この一文にグッと来たら読むべきです。「斜陽族」という、時勢の変化に付いて行けなくなった上流階級を指す流行語もこの作品から生まれました。「人間失格」と並ぶ破滅的作品として評されています。

破滅への衝動を持ちながらも“恋と革命のため"生きようとするかず子、麻薬中毒で破滅してゆく直治、最後の貴婦人である母、戦後に生きる己れ自身を戯画化した流行作家上原。没落貴族の家庭を舞台に、真の革命のためにはもっと美しい滅亡が必要なのだという悲壮な心情を、四人四様の滅びの姿のうちに描く。昭和22年に発表され、“斜陽族"という言葉を生んだ太宰文学の代表作。

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暴力的な自己の革命を志しては破れる人々。輝きは弱まってなお、翌日の陽となることを予感させる落日のうに、落ちて行く人の健気さといじらしさを感じます。疲れた時に読みたい一冊です。

【語れるようになりたい名言】
「人間は恋と革命のために生まれて来たのだ」

④【お伽草子】

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悲劇的なものだけでなく、シニカルでユーモラスな作品も多いのが太宰の特徴です。
有名どころ1冊は抑えておきましょう。

困難な戦争期にあって、深く芸術世界に沈潜することで時代への抵抗の姿勢を堅持し、日本文学の伝統を支えぬいた太宰中期の作品から、古典や民話に取材したものを収める。“カチカチ山"など誰もが知っている昔話のユーモラスな口調を生かしながら、人間宿命の深淵をかいま見させた「お伽草紙」、西鶴に題材を借り、現世に生きる人間の裸の姿を鋭くとらえた「新釈諸国噺」ほか3編。

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カチカチ山の狸とウサギの関係を男女の物語として描いたり、浦島太郎は何故竜宮城から帰ったあと年をとったかといった考察をするなど、深く考えなくとも十分に面白い読み物です。

【語れるようになりたい名言】
「あなたに助けられたから好きというわけでも無いし、あなたが風流人だから好きというのでも無い。ただ、ふっと好きなんだ」

太宰治のハードルが高ければ森見登美彦から入るのもアリ

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その他に太宰治は「走れメロス」「ヴィヨンの妻」など名作と評されている物が多数あります。
ただ、上に挙げた4冊でもハードルが高い、という場合には「夜は短し 歩けよ乙女」「四畳半神話体系」などで有名な森見登美彦がオマージュした「新釈 走れメロス」もあります。
こうした読みやすいところから始めてみるのもいいと思います。

さて、次に行くバーで隣に座る人に「太宰治を読んだことがある」オーラを醸し出すことはできそうでしょうか。貴方の夜がオトナ格好いい時間にならんことを。

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ヨウスケ@外資系経営コンサル

慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。

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