「教員のための博物館の日2019」5っのプログラム
夏休み、先生は何をしているのだろう。子どもの頃の疑問でした。国立科学博物館で「教員のための博物館の日2019」と題した先生のための特別企画が開催されました。博物館には、豊富な学習資源が一杯あります。先生も子どもたちに役立つ授業のヒントを探っています。先生と子どもたちが博物館とつながるための取り組みを取材してきました。
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■教員のための博物館の日とは?
学校の先生に「博物館に親しみを持ってもらうこと」「博物館の学習資源を知ってもらうこと」を目的としたイベントが2019年7月26日、国立科学博物館で行われました。(プレ実施期間 7月23日~25日)授業に役立つプログラムを盛り込んだ先生のための特別企画です。
イベントの内容は、特別展「恐竜博2019」の教員に向けたミニ講演会(申込が必要)と、自由参加できる4つのプログラムは一般の方も参加が可能なものもありました。
子どもたちに科学の不思議さや楽しさ、そして学ぶ喜びを感じてもらうためには、まず、教育を担う先生方に博物館を楽しんでもらう。そんな思いで、平成20年度(2008)から開催し、今年で12回目となります。
それぞれのプログラムをご紹介します。
■特別展「恐竜博2019」教員向け ミニ講演会
現在、開催されている「恐竜博2019」について、国立科学博物館 標本資料センターコレクションディレクター 真鍋 真氏より解説が行われました。特別展監修研究者による講演会です。
真鍋氏の一押ポイント
1969年にデイノニクスが命名された年を恐竜の新しいイメージが生まれた「恐竜ルネサンス」と位置づけています。それから50年、恐竜に対する捉え方の変化を振り返る展示を開催するにあたり、アメリカの博物館にある、デイノニクスのホロタイプ標本の展示を実現しました。専門家しか見ることができない標本は門外不出。このあと2度と来ることはないかもしれないので、ぜひこの機会をお見逃しなく!
■授業に役立つプログラム -授業に役立つ3Dモデル・3Dプリンター活用法 入門講座-
3Dプリンターを授業で活用して生かすための入門講座を学校の先生向けに行われました。講師は、国立科学博物館 科学系博物館イノベーションセンター 森 健人氏。3Dプリンターを使ったレプリカ作成なども行われています。
講座の内容は、3Dプリンターについての解説、データの入手や作成、行程について紹介。そのあとワークショップが行われました。プリントしたもののバリとりや、失敗箇所の修正方法を実践しました。
また情報交換の場としてSlackが紹介され、今後、3Dプリンターが授業に生かされていくことに期待が高まります。
授業への活用法としては、標本のレプリカ作成が挙げられます。本物だと破損の危険があり触ることができませんが、3D標本なら心配がありません。
その他の利用法としては、地元の地形を3Dプリンターで作成し、高低差の把握や、防災に役立てた事例を紹介。森氏からは、作りたいものを子供たちに任せてみては?と提案されました。
←3Dプリンターで作成された標本のレプリカ
■かはくスクールプログラム「骨ほねウォッチング」実演
学校団体向けに行っているスクールプログラム「骨ほねウォッチング」の体験です。かはくボランティアによるプログラムで、一般の参加もできました。いつもは主に、小学生向けに行うスクールプログラムですが、今日は、大人に向けて開催。小学生になった気分で受講して下さいとのご挨拶からスタート。
自分の骨を見たりさわったり、全身骨格の模型を見たりしながら、骨格の模型を仕上げていきます。
自分の体のつくりに目を向け、関節や体の動きとの関連をイメージできるようにするのが狙い。
さらに他の動物の骨格と比較して共通点や相違点に気づくことができるようになります。
■先生のための学校利用おすすめ紹介
「教員のための博物館の日2019」は全国各地で行われています。近隣の博物館や美術館の無料見学も行われていました。日本館B1階 多目的室では、近隣博物館、美術館の出張ブースが設けられ、校外学習等での活用方法が紹介されました。
出展団体は下記のとおりです。
東京国立博物館、国立西洋美術館、東京都美術館、恩賜上野動物園、国立国会図書館国際子ども図書館、上野の森美術館、下町風俗資料館、東京藝術大学大学美術館、東洋文庫ミュージアム、江戸東京博物館、日本菌学会、国立科学博物館
■先生のための国立科学博物館活用ガイダンス
学校団体で国立科学博物館を利用する場合の活用法の提案が、学習課 学習支援・学校連携担当職員よりご紹介されました。
新しい学習指導要領に地域の博物館等の施設の活用を積極的に図り、資料を活用した情報の収集や鑑賞の学習活動を充実することということが盛り込まれ、学校と博物館の連携がますます重要になってきます。
国立科学博物館のシンボルマークのキャッチコピーは「想像力の入口」です。人々の想像力を刺激し、好奇心をかきたてる場でありたいという思いが込められています。
このマーク、何に見えますか?恐竜やサメの歯、あるいは門、花びらや炎の揺らめきにも見えます。科博を散策して想像を膨らませてみて下さい。
■取材を終えて
夏休み、館内は親子連れでいっぱいでした。元来、子どもが持っている好奇心の受け皿として、博物館という存在を「知っているか」「いないか」は、その後の知的好奇心の広がりに大きな違いをもたらすはずです。
学校の授業の一貫で、博物館にでかけ、それがきっかけで、家族でも訪れる習慣ができたら素敵だと思います。子どもにとって、最初は強制かもしれませんが、この場所で出会う驚きや楽しさ、そして自分で答えを導き出していく力は、一生の宝になります。国立科学博物館を始め各施設が持っている、学習資源を、教師の力で生徒に手渡しすることは重要なミッションだと感じられました。
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この記事のライター
ライター 著書は10冊以上。VOKKAでは専門を離れ、趣味の美術鑑賞から得られた学びや発見、生きるためのヒントを掘り起こしていきたいと思います。美術鑑賞から得られることで注目しているのが、いかに違う視点に触れるか、自分でも加えることができるか。そこから得られる想像力や発想力が、様々な場面で生きると感じています。元医療従事者だった経験を通して、ちょっと違うモノの見方を提示しながら、様々な人たちのモノの見方を紹介していきたいと思います。美術鑑賞から得られることは、多様性を認め合うことだと考えています。