美術館で、教師向けに行われているプログラムってどんな講座?
美術館は展覧会を開催し、来館者に向けて、講演会やセミナーを開催していることは、ご存知の方もいらっしゃると思います。その他に、学校の教師に向けたプログラムも開催していることはご存知でしょうか?先生向けのセミナーとは、いかなるものなのでしょう。サントリー美術館で行われているティーチャーズ・デーに参加させていただきました。
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アイキャッチ画像出典:www.photo-ac.com
1. サントリー美術館の教育普及活動とは?
日本美術はあまりなじみがなく難しいと思われがちです。そこで気軽に楽しんでいただきたいとの思いで、様々なエデュケーション・プログラムを充実させています。具体的には講演会や講座のほか、ツールを制作したり、学校や地域との連携という形でも力を入れています。
2. プログラムの内容
プログラムの内容はバラエティーに富み、開催される場所も、美術館だけではありません。学校まで出張して行うもの、あるいは、学校に教材を貸して利用してもらうものもあります。プログラムには「スライドレクチャー」「体験プログラム」「制作を伴うワークショップ」などがあり、これらは、目的にあわせて組み合わせて利用することもできます。そしてもう一つのプログラムが今回、取材させていただいた「学校の先生を対象にしたプログラム」です。
3. ティーチャーズ・デー
学校の先生を対象に不定期に開催されています。こども向けのプログラムの一部を先生にも体験していただくことを目的に、展覧会の予定を紹介したり、美術館の活用法を考えたり、先生方と美術館の交流の場となっています。図工・美術の担当でなくても参加することができます。取材した日も、美術担当ではない先生が参加されていました。
4. レクチャー内容
ティーチャーズ・デー当日の進行は、サントリー美術館や、教育普及活動の紹介のあと、実際にプログラムの一部を体験をしました。
【1】展覧会の見どころを紹介する「フレンドリートーク」の体験
【2】展覧会会場に移動し、「わくわくわーくシート」の課題を実践
【3】戻ってそれぞれシートを披露しながら、グループで話し合い代表者が発表
以上のような流れで行われました。
5. ツールの紹介 わくわくわーくシートについて
プログラムのツールの一つで、大変好評を得ているのがこども向け鑑賞支援ツール「わくわくわーくシート」です。このシートには4つのポイントがあります。
【1】展示室で使えるような、厚い紙を使用し、直接記入やスケッチすることができます。
【2】企画展示ごとに、4種類制作され、好きなシートを選ぶことができます。
【3】めくって使う構造になっており、より作品に深くアプローチができるしくみ。
【4】封筒型シートもあり、シートをコレクションする感覚で集めることができます。
シートは、作品を「よく見る」ということを主軸に、ミッションが与えられます。今回は開催されている「河鍋暁斎 その手に描けぬものなし」の展示の中に描かれたカエルを探し、好きなカエルをスケッチするという課題に取り組みました。課題を通していろいろな気づきを得ながら鑑賞を深めていきます。
こちらのシートは、常時、展覧会会場にも設置されているので、来館した小中学生は利用ができます。
6. 振り返り
最後に行われた「振り返り」では、実際のプログラムを利用するにあたって、現場の問題点なども話し合われました。解決策など相互協力が構築できないかといった話題ものぼっていました。「作品をよく見る」ということから、「みつける」「くらべる」「考える」「描く」ということに広げていく教育プログラム。
サントリー美術館の教育普及活動は、2007年から本格的に取り組んでおり、10年以上の実績を持ちます。敷居が高いと思われがちな美術館ですが、小中学校の多感な時代に、美術作品に触れあう機会を持てることは、貴重な体験になると思われます。次世代の日本美術ファン育成という目的の裏には、我が国の文化を知るという大きなミッションも含まれていると思われました。
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この記事のライター
ライター 著書は10冊以上。VOKKAでは専門を離れ、趣味の美術鑑賞から得られた学びや発見、生きるためのヒントを掘り起こしていきたいと思います。美術鑑賞から得られることで注目しているのが、いかに違う視点に触れるか、自分でも加えることができるか。そこから得られる想像力や発想力が、様々な場面で生きると感じています。元医療従事者だった経験を通して、ちょっと違うモノの見方を提示しながら、様々な人たちのモノの見方を紹介していきたいと思います。美術鑑賞から得られることは、多様性を認め合うことだと考えています。