事実を基に作られた邦画おすすめ15選
「事実は小説より奇なり」とはイギリスの詩人バイロンの言葉。
まさにその通りで、この世にはフィクションよりも奇妙なノンフィクションを題材に作られた映画が数多くあります。
今回はその中から厳選して15作の邦画をご紹介します。
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アイキャッチ画像出典:blog.livedoor.jp
1.葛城事件(2016年 120分)
あらすじ・見どころ
大きな一軒家にひとりで住む葛城清(三浦友和)。そこはかつて美しい妻の伸子(南果歩)とふたりの息子、保(新井浩文)と稔(若葉竜也)の 4人で暮らしていた家でした。父から受け継いだ小さな金物屋で懸命に働き、手に入れた幸せな家庭とマイホーム。理想的な人生を歩んでいたと思った清でしたが、次男の稔が無差別殺人事件を起こして死刑囚となってしまいます。妻は精神を病み、長男の保は自ら命を絶ってしまいます。一体どこで間違ったのか。そんな折、稔と獄中結婚したという星野(田中麗奈)という女性が家にやってきました。
ネグレクトの巣窟。この家族、どこかおかしい
主演の三浦友和は今作でヨコハマ映画祭、報知映画賞、東京スポーツ映画祭などで数多くの主演男優賞を受賞しました。そんな三浦が演じたのは葛城家の家長として威厳を保ち高圧的な態度で振舞う中年男性。観ていてハラスメントが酷く、ストレスを感じました。でもこういう人っているんですよね。「俺が一体、何をした」というキャッチコピーに主人公・清のすべてが映し出されています。誰かがではなく誰もが加害者であり被害者。実在に起きた凶悪事件をもとに製作されていますが、こういった後味の悪い映画を観ていて思うのですが、この世には圧倒的な悪も善も存在しないんですね。
2.ビリギャル(2015年 117分)
あらすじ・見どころ
名古屋の中高一貫女子校に通う工藤さやか(有村架純)は、中学受験を最後に一切勉強せず、放課後は毎日友人たちと遊んでいました。しかし、このままでは大学への内部進学さえできないとなり、母親のあーちゃん(吉田羊)はさやかに塾へ行かないかと誘います。金髪パーマにヘソ出しとミニスカートを履いて、つけまつげバサバサのさやかは塾の面接で浮きまくり。それでもそんなさやかに優しい言葉をかける教師の坪田義孝先生(伊藤淳史)。先生との出会いによってさやかは変わり始めます。学校や他の塾が見捨てるような落ちこぼれの生徒たちを決して見放すことなく、熱心に取り組む坪田先生に出会い、変わり始めたさやかは、難関私立校である慶應大学の受験を試みます。
学年ビリのギャルが目指すは慶応大学現役合格!
「いま、会いにゆきます」や「ハナミズキ」などで知られる土井裕泰監督が、名古屋で個別指導塾を経営する坪田信貴によるノンフィクション書籍「学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話」を原作に製作した話題作です。それまで清純な役柄の多かった有村架純が、金髪のド派手ギャルを元気に演じ日本アカデミー賞新人賞を受賞しました。どれだけ人に馬鹿にされようと、自分を信じて努力を怠らないさやかの姿にはついつい夢中になり、サンボマスターによる主題歌にも勇気をもらえます。果たして、さやかは慶應大学に現役合格なるのか、注目です。
3.凶悪(2013年 128分)
あらすじ・見どころ
雑誌記者である藤井(山田孝之)は上司に言われてある男に会いに行きます。ある男とは須藤純次死刑囚(ピエール瀧)。殺人の罪で収容されている須藤はまだ公になっていない殺人事件をまだ起こしているというのです。編集部の上司は記事にならないと、藤井に撤退を命じますが、藤井は単独で取材を続けある男に行き着きます。それは須藤が先生と慕っていた人物(リリー・フランキー)。首謀者である先生が捕まっていないと告発する須藤。彼は自分の罪が重くなることを承知で凶悪事件を暴きたいと言います。
凶悪犯罪を基に作られた社会派サスペンス
アカデミー賞にて優秀作品賞を受賞、ヨコハマ映画祭や毎日映画コンクールでも高く評価されました。ノンフィクション小説「凶悪 -ある死刑囚の告発-」を原作とし、実際に起きた凶悪殺人事件「上申書殺人事件」を基に描かれています。冷酷な殺人犯役のリリー・フランキーは同年「そして父になる」にて人情味溢れる父親役を演じており、その演技幅の広さに驚かされました。凶悪犯罪者たちの何が恐いって平気で人殺しの話をした後に家族に対して優しい顔を向けているところ。生きている人間って、恐ろしいなと感じました。正義とは一体何なのか、深く考えさせられます。
4.のぼうの城(2012年 145分)
あらすじ・見どころ
戦国の世、周囲を湖に囲まれ、別名・浮城の名を持つ忍城と呼ばれる城がありました。その城の城主・成田長親(野村萬斎)は剣の腕はからきし、やることやること失敗ばかりの木偶の坊でしたが、優しい性根から「のぼう様」と呼ばれて領民たちから慕われていました。そんなのぼう様の領土に興味を示したのは、天下統一の目前まできた豊臣秀吉(市村正親)。秀吉は戦わずして降伏するよう命じますが、つい勢いで戦をかってしまった長親。長親の行動に家臣たちも驚きますが、みな長親のために戦うことを決意します。こうして2万の兵を誇る豊臣軍に対し、長親らは百姓ら合わせてその40分の1ほどの勢力で迎え撃つこととなりました。
2万の豊臣に立ち向かうのは、500の兵を率いる頼りない城主!
「ジョゼと虎と魚たち」や「ゼロの焦点」で知られる犬童一心監督と、「日本沈没」や「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」で知られる樋口真嗣監督が共同監督をおこない、TBS開局60周年を記念して製作されました。日本アカデミー賞において10部門で優秀賞を受賞し、野村萬斎演じる長親は馬鹿に見えてどこか天才的な鋭さを併せ持ち彼の魅力が存分に活かされています。また、長親を支える屈強な家臣たちを佐藤浩市、成宮寛貴、山口智充が演じ、山田孝之、上地雄輔が豊臣側としてヒール役を熱演、榮倉奈々がヒロイン・甲斐姫役を演じる豪華キャストとなっています。
5.僕たちは世界を変えることができない。(2011年 126分)
あらすじ・見どころ
田中甲太(向井理)は浪人の末、無事志望校の医学部へ合格しました。2年生になった甲太は同じく医学部の友人である芝山匤史(柄本佑)、矢野雅之(窪田正孝)とともにコンパやサークルのイベントに顔を出して日々を過ごしていました。あるとき、郵便局にあるボランティア募金のパンフレットを見て150万円あればカンボジアに学校を建てることができることを知ります。それまでの退屈な日常に違和感を感じていた甲太は強い衝動を感じます。ボランティアに参加しようと友人に声をかけていると以前知り合った他の大学の経済学部生である本田充(松坂桃李)が興味を示してきました。
ドキュメントタッチで描いた学生たちの奮闘記
医者の葉田甲太によるノンフィクション書籍を原作に、名監督・深作 欣二を父に持つ映画監督・深作健太がメガホンを取りました。向井理、松坂桃李、柄本佑、窪田正孝ら人気若手俳優らが、まるでドキュメンタリーかのような演技に挑戦し、撮影現場では状況に応じて台詞の変更をおこなったり即興芝居もしています。なのでカンボジアを訪れるシーンは彼らの素のリアクションにことの重大性を実感します。よく駅や施設でボランティアのポスターを見かけますが、ついつい素通りしてしまう人が多いなか実際にそのボランティアに参加したらどうなるのか、実話だからこその感動があります。
6.武士の家計簿(2010年 129分)
あらすじ・見どころ
加賀藩の藩士・猪山直之(堺雅人)は藩の会計にあたる御算用者として先祖代々仕えていました。江戸時代も後期に入り、賀川百万石と謳われた藩も財政状況は厳しく、身分が高い武家ほど出費を抑えることのできない問題を抱えていました。武士としての威厳を保ちつつ倹約するにはどうしたら良いか。贅沢好きの父・与三八(西村雅彦)と母・常(松坂慶子)を余所目に、妻の駒(仲間由紀恵)とともにお家存続のための倹約生活が始まります。
お家建て直しをする武士の特技は剣でも勉学でもなくそろばん!
歴史学者である磯田道史のベストセラー「武士の家計簿『加賀藩御算用者』の幕末維新」を原作に、「家族ゲーム」「失楽園」で知られる森田芳光監督が映画化した作品です。もともと原作は、ドキュメンタリータッチで描かれた教養書のようなものでしたが、映画ではそろばんに全てをかけた直之の一生が描かれています。カナダで開催されるモントリオール映画祭においても上映され、舞台となった石川県を中心にヒットしました。江戸後期から明治にかけての動乱の時期に、自身の長所を活かして家族を守り抜いた男の物語は、先行き不透明な現代を生きる私たちにとって生きるヒントが描かれています。
7.剣岳 点の記(2009年 139分)
あらすじ・見どころ
1906年(明治39年)、参謀本部陸地測量部の測量官・柴崎芳太郎(浅野忠信)に未踏峰とされてきた立山連峰の剱岳へ登頂と測量の命令が下されました。日本地図最後の空白となった剱岳は登頂不可能とされ、地元民からは信仰の対象となっている山であり、その登頂と測量は容易ではありません。それでも政府が遊びで山を登っている日本山岳会の小島烏水(仲村トオル)らに先を越されるわけには行かず、測夫の生田信(松田龍平)、山の案内人として地元の宇治長次郎(香川照之)ら7名で編成されたの測量隊は前人未到の剱岳へ挑みます。
CGなし!「撮影ではなく『行』である」自然の荘厳さを描いた力作
監督を務める木村大作は東宝撮影部にカメラ助手として入社し黒澤明監督の組に配属され多くの映画を撮影してきた映画人です。本作ではじめてメガホンを取り、日本アカデミー賞において最優秀監督賞、最優秀助演男優賞、最優秀音楽賞、最優秀撮影賞、最優秀照明賞、最優秀録音賞を受賞しました。浅野忠信を主演に山の案内人役の香川照之らは、非常に厳しい雪山でのロケを経験し、最初は色白だった松田龍平もすっかり雪焼けして、いかに撮影が大変だったかが伝わってきます。かつての日本人に通ずる精神が描かれ、本物の大自然を撮影することにこだわり、危険を冒しながら撮影された圧巻の雪山シーンは見事な壮大さです。
8.おっぱいバレー(2009年 102分)
あらすじ・見どころ
新任教師の寺嶋美香子(綾瀬はるか)は、臨時教師として三ヶ崎中学校に赴任することになりました。赴任早々、廃部寸前の弱小男子バレーボール部の顧問を担当することとなった美香子は生徒たちの意識の低さに衝撃を受けます。どうにか部員たちのやる気を出させようと、彼女は「あなた達が頑張ってくれるなら先生なんでもする」と豪語してしまいます。それを聞いた生徒たちは試合に勝ったら先生のおっぱいを見せて欲しいと言い出しました。そんな約束出来るわけないと断るものの、翌日から人が変わったように練習へ取り組む生徒たち。美香子は試合に勝って生徒たちに勝つ喜びを知って欲しい気持ちとおっぱいを見せたくない気持ちの間で葛藤し揺れ動きます。
昭和の中学を舞台に実際にあったコメディドラマ
放送作家や脚本家として活躍する水野宗徳による実話を基にした同名小説を原作に、「海猿」シリーズの羽住英一郎監督が映画化しました。1979年を舞台に、福岡県北九州市や直方市でロケが行われ、ピンクレディーや荒井由実など当時ヒットした曲が随所に盛り込まれるなど、昔懐かしいムードが漂っています。今作でブルーリボン賞を受賞した主演の綾瀬はるかをはじめ、青木崇高、仲村トオルなどがキャスティングされ、バレーボール監修には元全日本代表の大林素子が参加しています。エッチなことに貪欲な思春期男子たちの夢は叶うのか、見るのに躊躇してしまうタイトルですが、老若男女楽しめるコメディドラマになっています。
9.南極料理人(2009年 125分)
あらすじ・見どころ
海上保安庁の所属隊員である西村(堺雅人)は怪我を負った同僚の代わりに南極観測隊員のメンバーとして、昭和基地からさらに遠く離れた南極ドームふじ基地に派遣されます。日本へ電話するのも1分740円かかる僻地であるふじ基地、妻(西田尚美)と幼い娘と息子を残しての単身赴任先は標高3810メートル、ペンギンやアザラシといった動物はおろか、ウイルスさえもいない氷点下54℃以下の壮絶な環境でした。料理人として派遣されている西村は限りある食料と調理場で、気象学者(きたろう)や雪氷学者(生瀬勝久)ら8人の男たちのために毎日美味しく楽しめる料理作りに奮闘します。
海上保安官出身の作家・西村淳による人気エッセイを映画化!
海上保安官として実際に南極地域観測隊に参加し越冬を経験した西村淳原作のエッセイ「面白南極料理人」を原作に、「クライマーズ・ハイ」や「ゴールデンスランバー」など社会派からコメディなど様々な役に変化し続ける俳優・堺雅人を主演に映画化されました。基地内で共同生活を送る8人の男性たちがそれぞれの仕事に取り組みつつもときに喧嘩をして一緒に酒を飲み、だんだんと家族のように食事を囲んでいきます。寒いなか懸命に働いたあとの豚汁とおにぎりは格別なのですかね、食欲のそそる作品です。
10.それでもボクはやってない(2007年 143分)
あらすじ・見どころ
フリーターの金子徹平(加瀬亮)は就活の面接へ向かうため満員電車に乗っていると、どこからか「やめてください」というか細い声が聞こえてきました。その後電車を降りると、女子中学生に袖を掴まれ「痴漢したでしょ」と言われます。訳のわからないまま駅員に連れて行かれ、警察に連行されてしまった金子。無実の訴えを何度繰り返しても受け入れてもらえず留置所での生活を余儀なくされました。無実を証明するのはほぼ不可能と言われる痴漢冤罪において、金子の長くて過酷な戦いが始まります。現代日本の闇を描いた作品です。
他人事とは思えない、日常における恐怖
日本アカデミー賞にて優秀作品賞、監督賞、主演男優賞ら数多くの賞を受賞しました。特別変わった体験をするでもなく、特殊な生い立ちがあるわけでもなく、日常と隣り合わせになっているという点で、いつ自分が同じ状況になるか分からない、他の映画にはない不快感があります。自分の住んでいる国のことなのに、裁判所がどういう様子なのか、警察と司法など国家権力の関係性、弁護士がとういった姿勢で仕事をしているのか、何も知らなかったことを痛感しました。もしも自分に何かあった時の参考になるかもしれないとつい見入ってしまいます。もう10年も前の映画ですし実際は違うと信じたいですが、警察の高圧的な態度、弁護士や友人たちのどこか他人事といった接し方に違和感を感じます。
11. フラガール(2006年 120分)
あらすじ・見どころ
昭和40年、福島県いわき市の炭鉱町では、山を閉鎖して巨額の金を投じて大型複合施設の常磐ハワイアンセンターを建設するプロジェクトが持ち上がりました。しかもその目玉として炭鉱町の娘たちでフラダンサーを結成することになり、紀美子(蒼井優)は幼馴染の早苗(徳永えり)に誘われて参加します。東京からプロのダンサー、平山まどか(松雪泰子)を呼んでいざ練習と思ったのですが、盆踊りしか踊ったことのない少女たちは、全く踊れません。露出の多い衣装に戸惑ったり、へらへら笑ってダンスなんてただの遊びだと大人たちから反感を買いますが、それでも彼女たちは大好きな町を救うために頑張ります。果たして、無事オープンの日に間に合うのか。
ひなびた炭鉱町を立て直すのはうら若き乙女たち!
2006年日本アカデミー賞にて最優秀作品賞をはじめ5冠受賞の大ヒット作であり、蒼井優はこの映画で日本アカデミー賞最優秀助演女優賞、ブルーリボン賞や毎日映画コンクール、報知映画賞など数々の賞を総なめしました。主演松雪泰子や南海キャンディーズのしずちゃん、紀美子の兄役・豊川悦司も素晴らしい演技で複数受賞しています。福島の訛りが強すぎてところどころ言っていることが分かりませんが、それでも彼女たちの熱意は伝わります。ラストの蒼井優が実際にダンスを披露するシーンは必見です。
12.誰も知らない(2004年 141分)
あらすじ・見どころ
とある2LDKのアパートに越してきた母親(YOU)と12歳の息子・明(柳楽優弥)。夫は海外赴任中とのことでしたが実は、明の下にそれぞれ違う父親を持つ京子(北浦愛)、ゆき(清水萌々子)、茂(木村飛影)のいる5人家族でした。仕事に忙しい母親に代わって長男の明は妹たちの世話をして、仲良く暮らしていました。しかしある日、母親がわずかな現金とメモを残して帰らなくなります。その日から、学校にも通わない、大家にも存在を知られていない妹たちとの子どもたちだけでの生活が始まります。
子どもたちの素に近い演技に心抉られる
「万引き家族」でカンヌ国際映画祭の最高賞であるパルム・ドール賞を受賞した是枝監督が、実際にあった巣鴨子ども置き去り事件にインスパイアされ取り組んだ作品です。主演の柳楽優弥は史上最年少、しかも日本人初の最優秀男優賞を受賞し国内外で大きく注目されました。ドキュメンタリー出身の是枝監督はリアルな演出が上手く、この映画の大半は小学生以下の子どもたちのシーンで作られていますが、あまりにも自然体な演技に本当の世界を見ていると錯覚するほど引き込まれます。気持ちが沈むものがありますので、落ち着いて心身ともに健康な状態へ整えて鑑賞しましょう。
13.南極物語(1983年 145分)
あらすじ・見どころ
1956年、文部省の南極地域観測隊第1次越冬隊は南極観測船・宗谷に乗り南極へ赴きました。隊員の潮田暁(高倉健)と越智健二郎(渡瀬恒彦)は犬係となり、ソリを引っ張ってくれる15匹の樺太犬の世話をします。1958年2月になり、第2次越冬隊に引き継ぎをするため道具や犬を置いたまま南極大陸を後にしますが、その後長期にわたる悪天候のため第2次越冬隊の上陸は中止となります。潮田と越智の要請も虚しく極寒の地に置き去りにされた樺太犬、そして自責の念が募る2人は1年後に再開された第3次南極地域観測隊に再び志願します。
当時歴代興行収入記録を樹立した、樺太犬タロとジロの感動作
南極大陸に取り残されたタロとジロの物語を原作に、撮影に3年をかけて描いた大作です。当初は派手な演出もなく犬が中心のストーリーに難色を示しましたが、封切りすれば、動員数は1,200万人を突破、61億円の配給収入となりました。当時日本映画の歴代興行収入1位を樹立し、1997年のジブリ映画「もののけ姫」、実写では2003年の「踊る大捜査線2」まで破られませんでした。人が立ち去った南極で15匹の犬がそれぞれどのように過ごしたか丁寧に様子を描いている部分は、犬たちが愛らしく無念な気持ちになりとても心苦しくなります。
14.八甲田山(1977年 169分)
あらすじ・見どころ
1901年(明治34年)10月、日露戦争を目前にした日本帝国は来る戦いに向けて雪中行軍演習を考えていました。雪が吹雪く八甲田の山で寒地装備と寒地訓練を行うというもの。弘前第八師団の友田少将(島田正吾)は青森歩兵第五連隊神田大尉(北大路欣也)と弘前歩兵第三十一連隊徳島大尉(高倉健)にこの演習を提案します。お上の提案はすなわち命令でありすぐさま準備を始める2人。青森と弘前からそれぞれ八甲田を目指し、山頂ですれ違おうと軽く口約束をしましたが、想像を絶する過酷な環境が待っていました。
「天は我々を見放した」過酷な環境における人間性を描いた大作映画
210名中199名が死亡したという、1902年に実際に起きた、近代において世界最大の山岳遭難事故である八甲田雪中行軍遭難事件を題材に、組織と人間のあり方を描いた社会派映画です。実際の撮影現場も日本映画史上類を見ない過酷なロケであり実際に出演者が逃げ出したり、高倉健自身も軽度の凍傷になってしまったといわれています。当たり前ですがCGは一切なく、劇中で俳優の肌が紫に変色しているのもメイクではなく本当に凍傷になりかけたからという逸話も残っています。北大路欣也の台詞「天は我々を見放した」は当時流行語となり、主演の2人に加え丹波哲郎、緒形拳、大滝秀治、加山雄三、三國連太郎ら大物俳優陣に、まだ新人であった下條アトム、大竹まことといった俳優も出ています。
15.日本のいちばん長い日(1967年 157分)
あらすじ・見どころ
広島と長崎への原爆投下やソ連の参戦など、日本の敗戦が決定的となった昭和20年8月、幾度となく開かれた特別御前会議によってポツダム宣言の受諾が正式に決定されました。時の総理大臣・鈴木貫太郎(笠智衆)のもと、終戦を迎えるべく天皇陛下による玉音放送の準備に取り掛かる政府と放送局ですが、終戦を受け入れられない陸軍将校たちがクーデターを計画します。各々のが考えが交差する緊迫した24時間を濃密に描いた衝撃作です。
1945年8月15日までの24時間を描いた衝撃作
日本の映画史において、欠かすことのできない名監督・岡本喜八が、豪華俳優陣とともに戦後20年を経て描いた衝撃作です。昭和天皇がご存命のなか、天皇を描くという禁忌にも近いシーンを取り扱った作品でもあり、天皇の姿は後姿や声のみで表現され、昭和天皇を演じた8代目松本幸四郎の名はテロップにもパンフレットにも表示されない配慮がなされました。公開当時から賛否のあった作品ですが、結果的に多くの人が鑑賞し、昭和天皇は公開年の12月29日に家族とともに鑑賞したとのことです。
2015年には役所広司を主演に、原田眞人監督によってリメイクされました。時代によって描かれ方が変化していますのでそちらも併せて観たいですね。
最後に
いかがでしたか。コメディからサイコホラーまで、日本にはこれだけ数多くの事実に基づいて作られた作品があります。歴史的事実を題材に描いた作品は勉強にもなりますね。今回はご紹介しませんでしたが、軍人・山本五十六を描いた「聯合艦隊司令長官 山本五十六」や、画家の藤田嗣治を描いた「FOUJITA」など個人に焦点を当てて描かれた映画などもありますので、そちらもおすすめです。
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