事実を基に作られた洋画おすすめ15選
「事実は小説より奇なり」とはイギリスの詩人バイロンの言葉。
まさにその通りで、この世にはフィクションよりも奇妙なノンフィクションを題材に作られた映画が数多くあります。
今回はその中から厳選して15作の洋画をご紹介します。
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アイキャッチ画像出典:www.tapthepop.net
1.ボヘミアン・ラプソディ(2018年 133分)
あらすじ・見どころ
1970年代はじめのロンドン、ペルシャ系移民のファルーク・バルサラ(ラミ・マレック)は音楽にのめり込みますが厳格な父と上手くいかず自分のルーツを好きになれません。彼は自分のことをフレディと名乗り、ボーカルが抜けたばかりのバンド・スマイルに飛び入りで参加します。スマイルのギタリストであるブライアン・メイ(グウィリアム・リー)とドラマーのロジャー・テイラー(ベン・ハーディ)はフレディの歌声を気に入り、同じく新メンバーとしてベースのジョン・ディーコン(ジョゼフ・マゼロ)を加えて新たにバンド名をクイーンとしスタートさせました。自主制作のアルバムを作っているところへレコード会社EMIのA&Rがスカウトにやってきます。
世界中で大ヒット!伝説的バンドQueenのサクセスストーリー
日本でも大人気の伝説的ロックバンド「Queen」のボーカリストであり、45歳という若さで生涯を閉じたフレディ・マーキュリーを主人公として作られた映画です。アカデミー賞において作品賞を含む5部門にノミネートされ、主演男優賞、編集賞、録音賞、音響編集賞と、その年最多になる4つの最優秀賞に輝きました。世界各地で上映が延長され、イギリス、アメリカ、フランスにおいては再上映も決定するほどの人気っぷりです。普段テレビやCMで耳にする名曲たちの作成秘話が描かれ、伝説となった20世紀最大のチャリティコンサート「ライブ・エイド」のシーンはピアノに置かれたドリンクの位置、歌い始めるまでの呼吸ひとつといった細部まで忠実に描かれています。鑑賞後には壮大な爽快感と達成感から大いなる感動が訪れます。また実際のメンバーであり偉大な音楽家であるブライアン・メイとロジャー・テイラーが、音楽総指揮として制作に携わっているのもポイントです。
2.リリーのすべて(2015年 119分)
あらすじ・見どころ
1926年のデンマーク、風景画家のアイナー・ヴェイナー(エディ・レッドメイン)は、同じく抽象画を得意とする画家の妻ゲルダ(アリシア・ヴィキャンデル)と暮らしていました。ある日、アイナーはゲルダから急なキャンセルで来れなくなった女性モデルの代役を頼まれます。ストッキングを履いて華奢なレースを手につかんだアイナーは、心の中にある感情が浮かび上がります。夫の女装姿を見たゲルダは、冗談でアイナーを女装させリリーと呼んで知人のパーティへ連れて行くことにしました。モデルの時とは違い頭の先からつま先まで女性ものに身を包み、動きや作法も女性を演じることとなったアイナー。はじめは人から勧められてのものでしたが、自身の内からなる女性の存在に気づいたアイナーは、徐々に自ら女性の格好を求めるようになります。
世界で初めて性別適合手術を受けた女性の物語
世界で初めて性別適合手術を受けた人物、リリー・エルベを題材とした、作家デヴィッド・エバーショフによる小説「世界で初めて女性に変身した男と、その妻の愛の物語」を原作に、「英国王のスピーチ」などで知られるトム・フーパー監督が製作しました。自身の内なる女性に気づき苦悩するという難解な役柄を演じたのは「博士と彼女のセオリー」や「ファンタスティック・ビースト」シリーズで主役を務めるエディ・レッドメイン。アカデミー賞には4部門にノミネートされ、男性から女性へと変わりゆく夫を支え良き理解者である妻・ゲルダを演じたアリシア・ヴィキャンデルが助演女優賞に輝きました。原作へ幾つか脚色を加えて製作されていますが、今最もホットな話題であるセクシュアルについての映画は観るべきかと思われます。
3.ウルフ・オブ・ウォールストリート(2013年 179分)
あらすじ・見どころ
コネも学歴も何もない新卒社員のジョーダン・ベルフォート(レオナルド・ディカプリオ)には人の心を動かす才能がありました。巧みな話術と誰も思いつかない斬新な発想で、入社した会社で業績を伸ばしついには26歳で会社を設立します。法律スレスレ、時には犯罪のような手を使って年収4,900万ドルを稼ぎ、ウォール街でウルフと呼ばれるようになりました。富を築き、名声を手に入れた男の波乱万能な人生と哀れな末路が描かれています。
実在した男の伝記的映画!少し羨ましいような破天荒な人生
アメリカの元株式ブローカー、ジョーダン・ベルフォート自らが描いた回顧録が原作となっています。「タクシードライバー」や今作といった、ニューヨークを中心に映画を撮り続けるマーティン・スコセッシ監督は、今作でついに大物俳優レオナルド・ディカプリオとタッグを組みました。「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズの音楽を担当した音楽家ハワード・ショアによる音楽も映画をより高めてくれます。社会でのし上がる姿を描き、ビジネスマンとして参考になるシーンもありますので、是非観てください。
4.大統領の執事の涙(2013年 132分)
あらすじ・見どころ
奴隷の子供として農園で育ったセシル(フォレスト・ウィテカー)は、目の前で白人である主人に父親を殺されてしまいます。このままでは人生が終わってしまうと考えたセシルは農園を抜け出します。行く当てのないセシルは目に付いた食料を求め盗みに入りますが、盗みに入った店で働く黒人に助けられて働かせてもらうようになりました。彼が教えてくれたのは「客の目を見て望みを察しろ」「相手の心を読め」「ボスが思わず微笑むように」「白人用の顔と自分の顔を持て」というもの。みるみるうちに仕事を覚え自分のものにしたセシルは、出世して高級ホテルで働くようになり、たまたまそのホテルへ訪れていたホワイトホテルの執事長に声をかけられ、ついにはホワイトハウスにて大統領に執事として仕えることとなりました。
アメリカの歴史をいちばん間近で見てきた男の生涯
「サイレンサー」「プレシャス」で知られるリー・ダニエルズ監督が、実際にホワイトハウスにて7人の大統領に仕えた黒人執事の生涯を描いた作品です。俳優だけでなく監督や脚本など多彩な才能を発揮するフォレスト・ウィテカーが主演を務めます。
今でこそ黒人大統領が誕生し人種の垣根が消えつつありますが、まだ人種差別が色濃く残る時代を、歴代の政権と共に当時の映像を織り交ぜながら生々しく表現されています。日本人にとってどうしてもどこか他人事のように感じてしまう人種問題、この作品は史実に基づいて丁寧に描いていますので、是非観て欲しく思います。
5.ウォルト・ディズニーの約束(2013年 123分)
あらすじ・見どころ
1961年ロンドン、パメラ・L・トラヴァース(エマ・トンプソン)は、ウォルト・ディズニー(トム・ハンクス)からの自身の小説「メアリー・ポピンズ」をディズニーで映画化する長年のオファーに辟易していました。しかし、スランプに陥り新作が書けず、金銭的に苦しくなったトラヴァースは、契約とまではいきませんが、この話を検討すべくアメリカへ飛び立ちます。気難しい性格のトラヴァースは大切な自身の作品が、ただ明るく元気なだけのアニメやミュージカルとなることが耐えられず、「アニメはご法度。ミュージカルもダメ。脚本は原作者の承認を得ること」という条件を提示します。アニメやミュージカルを得意とするディズニーにとって異例ともいえる条件でしたが「必ずメアリーポピンズを映画化する」という娘との約束を果たしたいウォルトはこの難解な条件を承諾します。
人気ディズニー作品「メリー・ポピンズ」誕生秘話!
50年以上の月日が流れて続編「メリー・ポピンズ リターンズ」が作られた、1964年製作のディズニーの人気作「メリー・ポピンズ」。その原作者であるパメラ・L・トラバースを主人公に、ウォルト・ディズニーとの間で何度も話し合いが繰り返され映画が完成していく様子が描かれています。
監督は「幸せの隠れ場所」などで知られるジョン・リー・ハンコック、イギリスを代表する女優エマ・トンプソンが意見の違いに葛藤し自身のトラウマと向き合う主人公を演じます。ディズニーの生みの親であるウォルト・ディズニーを演じるのは、数多くの代表作を持つ実力派俳優のトム・ハンクス。メリー・ポピンズを観る前にこちらの作品を観ておくとまた違った捉え方が出てきますよ。エンドロールでは実際のディズニースタッフとトラヴァースたちの肉声が流れます。
6.英国王のスピーチ(2010年 118分)
あらすじ・見どころ
1925年のイギリス、大英帝国博覧会閉会式において父・ジョージ5世(マイケル・ガンボン)の代理として演説を行ったアルバート王子(コリン・ファース)。しかし、アルバートは幼い頃からの吃音症のため演説は上手くいかずに終わります。妻のエリザベス妃(ヘレナ・ボナム=カーター)はアルバートの吃音を治すべく、オーストラリア出身である言語療法士のライオネル・ローグ(ジェフリー・ラッシュ)のもとへ連れて行きます。ローグは治療の一環として王室への礼儀作法を一切無視して、アルバートを愛称のバーティと呼び、自身のことを先生ではなくライオネルと呼ぶように伝えます。しかし、ローグの態度に呆れたアルバートは妻の言葉も聞かずに、治療の途中で帰ってしまいます。その後、ジョージ5世が崩御、アルバートの兄・デイヴィッド王太子が即位しますが1年も満たないうちに退位。そしてアルバートがジョージ6世として即位することとなりました。
アカデミー賞受賞作!イギリス王室を描いたヒューマンドラマ
トロント国際映画祭で最高賞を受賞したのをはじめ、アカデミー賞において12部門にノミネート。そのうち作品賞、主演男優賞など主要4部門を受賞しました。現イギリス女王であるエリザベス2世の父親・ジョージ6世が吃音を克服し、国民に愛される国王になるまでを描いた感動作です。監督は上でご紹介した「リリーのすべて」の監督でもあるトム・フーパー、主人公アルバートを演じたのは「ブリジット・ジョーンズの日記」や「キングスマン」など渋みと重厚な雰囲気で日本でも人気のイギリス人俳優コリン・ファース。感動的なストーリーと理解しやすい構成から本国イギリスと日本で舞台化もされました。
7.インビクタス/負けざる者たち(2009年 132分)
あらすじ・見どころ
1994年南アフリカ共和国、ネルソン・マンデラ(モーガン・フリーマン)は反体制活動家として27年もの間投獄されていましたが、1990年に釈放されついに南アフリカ共和国初の黒人大統領となりました。その頃、アパルトヘイトの象徴ともいえるラグビーは国民の大幅を占める黒人にとって不人気なスポーツであり、ラグビー代表チームであるスプリングボクスは人気が低迷し黒人選手も1人しかいませんでした。マンデラはスプリングボクスを変えることが白人と黒人の和解と団結へ繋がると考え、アパルトヘイトによる人種差別や経済格差の残る国をまとめるため、ラグビーチーム・スプリングボクスの再建を図ります。そのことを伝えるべくマンデラはチームのキャプテンであるフランソワ・ピナール(マット・デイモン)を茶会に招待します。
ラグビーによってひとつとなった南アフリカ共和国の感動ストーリー
2019年は日本で開かれるラグビーワールドカップ。本作では1995年ラグビーワールドカップ南アフリカ大会までの短期間で変化していく様子を濃密に描きます。実話を基にした映画を得意とするハリウッドの巨匠クリント・イーストウッドが監督をつとめ、モーガン・フリーマンとマット・デイモンを主演に製作しました。インビクタスとはラテン語で「征服されない」という意味を持ち、そこには何者にも征服されず自分たちの手で新たな国を作っていく姿があります。最初は弱小であったチームですが、やがて世界最強と謳われるニュージーランド代表オールブラックスに手が届く様子は思わず胸が熱くなります。
9月から始まる日本開催のラグビーワールドカップに向けて今のうちに観ておきたいですね。
8.HACHI 約束の犬(2009年 93分)
あらすじ・見どころ
アメリカ東海岸の郊外にあるベッドリッジ駅。寒い冬の夜に、迷い犬になっていた秋田犬の子犬を保護したパーカー・ウィルソン教授(リチャード・ギア)は、以前に飼っていた犬を亡くした悲しみが癒えない妻、ケイト(ジョーン・アレン)の反対を押し切って子犬を飼うことにしました。首輪のタグに刻まれていた漢字の八から子犬にハチと名づけます。パーカーの愛情を受けてすくすくと育ったハチは、毎朝彼を駅まで見送り、夕方になるとまた駅まで迎えに行くことが習慣となりました。近所の人々も暖かく見守りますが、大学教授であるパーカーは大学での講義中に倒れそのまま帰らぬ人となってしまいます。
原作は日本人にとって馴染み深いあの忠犬です!
史実を基にといっても一風変わった、史実を基にハリウッドでリメイクした作品です。「くるみ割り人形と秘密の王国」の監督であるラッセ・ハルストレムが、1987年に公開された日本映画「ハチ公物語」をリメイクしました。主演を務めたリチャード・ギアは大の愛犬家であり台本を読んだ際に涙が止まらなくなったと言います。映画の評価も高く、平昌オリンピックにてフィギュアスケート金メダリストとなったロシア代表のアリーナ・ザギトワ選手もオリンピック終了後に、秋田犬マサルを飼い始めるなど、欧米からも秋田犬が注目されています。
原作もおすすめですがリメイク版もいかがでしょうか。
9.パブリック・エネミーズ(2009年 143分)
あらすじ・見どころ
1933年大恐慌時代のアメリカ。銀行強盗のジョン・デリンジャー(ジョニー・デップ)は大胆な手口と弱者を襲わない紳士的な態度から、犯罪者でありながらも聴衆からスターのように扱われていました。司法省捜査局長官のJ・エドガー・フーヴァー(ビリー・クラダップ)は州を越えて犯罪を繰り返すデリンジャーを「公共の敵筆頭(Public EnemyNo.1)」として指名手配します。しかもそれだけでなくシカゴ支局へメルヴィン・パーヴィス(クリスチャン・ヴェール)を赴任させます。ある日、デリンジャーはクラブのクローク係として働く美しいビリー(マリオン・コティヤール)に目を奪われます。惹かれあった2人は捜査の目をかいくぐり密会を重ねるようになりました。
ジョニー・デップが鮮やかに演じるのは実在した犯罪者ジョン・デリンジャー
「インサイダー」「ハンコック」で知られるマイケル・マン監督が、義賊としてボニーとクライドと同時期に世間を騒がせた伝説の犯罪者ジョン・デリンジャーの姿をラブストーリーと絡めながら重厚に描きました。ジョン・デリンジャーを題材にした映画は他にもありますが、犯罪者としての彼だけでなく人を愛する姿も描かれた本作にて、3枚目や派手な化粧で奇妙な役柄の多いジョニー・デップが、笑顔ひとつ見せないアウトローをクールに演じています。その姿は男でも惚れてしまうほどの佇まいで、謎の美女ビリー役にはオスカー女優のマリオン・コティヤールがキャスティングされました。史実に基づいて角度や人の動きなどの細部にまでこだわって作られたラストシーンは必見です。
10.キャデラック・レコード 音楽でアメリカを変えた人々の物語(2008年 108分)
あらすじ・見どころ
ポーランド系移民のレナード・チェス(エイドリアン・ブロディ)は、野心的な青年でした。貧しい暮らしをしていたチェスは恋人と結婚するためにシカゴへ移住し、黒人街でナイトクラブの経営をはじめます。その頃シカゴで音楽活動をしていた黒人ギタリストのマディ・ウォーターズ(ジェフリー・ライト)と黒人ハーモニカ奏者のリトル・ウォルター(コロンバス・ショート)の2人はチェスと出会います。ある日ナイトクラブが放火されたことをきっかけに、チェスはレコード会社を立ち上げようと言います。マディとウォルターの音楽性に先見の明を見出したチェスは、黒人音楽専門のレコード会社「チェス・レコード」を創業します。予想通り彼らの音楽は世間に受け入れられレーベルは絶好調。チェスは感謝の意を込めて彼らに高級車であるキャデラックを送りました。
レコードを通じてひとつになっていく男たちの物語
1950年代のシカゴを中心にその後の音楽界に大きな影響を与えたと言われる伝説的なレコード・レーベル、チェス・レコードを題材にレーベルの立ち上げ人、そして所属アーティストたちの成功と苦悩を描きました。監督は「彼らの目は神を見ていた」のダーネル・マーティンであり、「戦場のピアニスト」でアカデミー主演男優賞最年少記録を持つエイドリアン・プロディが主演を務めます。作中では多くの楽曲が披露され第66回ゴールデングローブ賞歌曲賞にノミネートされました。また、後半には製作総指揮も務めたビヨンセが登場し、その美声をソウルフルに披露します。
11.幸せのちから(2006年 117分)
あらすじ・見どころ
1981年のサンフランシスコ、妻のリンダ(タンディ・ニュートン)と息子のクリストファー(ジェイデン・スミス)と暮らすクリス・ガードナー(ウィル・スミス)は骨密度を測る新型医療機器のセールスマンをしていました。売れると信じて入手した新型機械でしたが思うように売れず税金も払えない苦しい生活を強いられます。ある日、偶然目にした真っ赤なフェラーリが気になり、持ち主に声を掛けると株の仲介人をしていると言われます。そこでクリスは証券会社の正社員を目指して養成コースを受講することにします。無事合格して研修生となったクリスでしたが、これからはじまる研修期間中は無給とのことで、すでに借金に追われ妻も出て行ってしまった彼は、息子とふたりでこれからを生き延びることとなりました。
ウィル・スミスが実の息子と共演した父と子の感動作
ホームレスから億万長者という、アメリカンドリームを実現させた実業家のクリス・ガードナーの半生を基に製作されました。真面目なセールスマンが事業に失敗し、失意のどん底から息子と2人で再スタートを切る姿には感動させられます。「メン・イン・ブラック」などで知られるウィル・スミスが実の息子であるジェイデン・スミスと共演し、アカデミー主演男優賞にノミネートされました。苦しい生活の中、息子がぐっすり眠れるように耳を塞いであげるシーンは思わず涙が出てしまいました。作中のワンシーンに、クリス・ガードナー本人が出演していますのでお見逃しなく。
12.レッスン!(2006年 117分)
あらすじ・見どころ
ある日のニューヨーク、路地裏で車を破壊する少年ロック(ロブ・ブラウン)を見かけた社交ダンサーのピエール・デュレイン(アントニオ・バンデラス)は、破壊された車が少年の通う高校の校長のものであると知ります。翌日、スラム街の高校に出向き、校長のジェームズ(アルフレ・ウッダード)に何か生徒たちの助けになることはないかと持ちかけます。いきなりやってきたピエールに対し半信半疑なジェームズ校長は、それならと学校の問題児たちを集めて放課後に社交ダンスを教えるグループを開くことを許可します。そして集められたのはロックをはじめ家庭に様々な問題を抱え、ヒップホップで育ち社交ダンスなど踊ったことのないティーンエイジャーばかりでした。
落ちこぼれたちを社交ダンスで更生させた伝説的教師
社交ダンス世界チャンピオンのピエール・デュレインが、ダンスを通して不良生徒たちを更生させた実話を基に製作されました。プロデューサーのダイアン・ナバトフがデュレイン本人のドキュメンタリー番組をみて感銘を受けて映画化を思いついたらしく、劇中では高校を舞台としていますが実際は小学校で指導しており、現在も毎年およそ7,500名の生徒に社交ダンスを教えているそうです。生徒ひとりひとりに焦点を当てて描かれており、最初は人を傷つけることしかできない彼らでしたが、ダンスを通してお互いを尊重し合う姿にぐっときます。青春ドラマの王道として、随所に盛り込まれる社交ダンスが見応えたっぷりで気付けばあっという間に見終わってしまいます。
13.モーターサイクル・ダイアリーズ(2004年 127分)
あらすじ・見どころ
1952年1月4日、アルゼンチンのブエノスアイレスに住む医大生のエルネスト(ガエル・ガルシア・ベルナル)は喘息持ちにもかかわらず、化学者で友人のアルベルト(ロドリコ・デ・ラ・セルナ)と1台のバイクにまたがり南米大陸縦断旅行に出ます。離れ離れになっていた恋人に会いに行ったり、はじめて会った人とパーティで踊ったり有意義な旅を楽しみます。しかし、その傍ら過酷な環境で働く労働者やギリギリの生活を営む先住民ら、南米に広がる世界の実状を目にします。
「同じ大志と夢を持った2つの人生が しばし併走した物語」
カンヌ国際映画祭コンペ部門正式出品され最優秀賞にあたるパルムドールにノミネートされた本作は、実話をもとに制作されたロードムービーです。金も知識も人脈もないけれど若さだけではじめる旅は、正直とても憧れます。異国情緒溢れる音楽も素晴らしくアカデミー賞歌曲賞を受賞しました。友人アルベルト役を演じたロドリゴ・デ・ラ・セルナは主人公エルネストの実のはとこにあたり、この映画は世界的に有名な「とある人物」の回顧録となっています。ラストシーンに80歳を過ぎた友人のアルベルト本人が少しだけ登場すると歴史の重みを感じます。
14.陽のあたる教室(1995年 143分)
あらすじ・見どころ
1965年のアメリカ。元バンドマンのグレン・ホランド(リチャード・ドレイファス)は作曲家になる夢が諦められず、作曲する時間を得るために高校の音楽教師となります。音楽家よりも暇な職業だろうと馬鹿にしていたグレンでしたが、ヘレン・ジェイコブズ校長(オリンピア・デュカキス)に甘いものではないと叱責されます。校長の言葉通り、人に教えることの難しさに直面した彼は、やる気のない生徒たちに音楽の素晴らしさを伝えようと決心します。教師の仕事にやりがいを見い出し、子宝にも恵まれ幸せの絶頂となったグレンでしたが、生まれてきた息子・コールは先天性の聴覚障害を患い、全く音の聞こえない世界を生きていました。
教師という父として生きる喜びを描いた感動作!
ひとりの男の30年にも渡る教師生活を演じたリチャード・ドレイファスは、本作でアカデミー主演男優賞にノミネートされました。私は学生時代に教員免許取得のための授業で初めてこちらの作品を鑑賞しました。それまで教師になりたいとあまり思いませんでしたが、この作品のおかげで教職の授業や実習へ取り組むことが楽しくなりましたね。教師として働くことの生きがい、息子との葛藤を描いた感動作であり、教師でなくても今の仕事や現状に満足いかない方にとって、幸せの見つけ方や生き方のヒントが隠されています。心に響く作品ですので、ぜひご鑑賞ください。
15.エド・ウッド(1994年 127分)
あらすじ・見どころ
1950年代のハリウッドにて、映画監督として成功することを夢見ている青年エド・ウッド(ジョニー・デップ)。彼は恋人の女優ドロレス・フラー(サラ・ジェシカ・パーカー)やバーニー(ビル・マーレイ)、俳優仲間らと舞台を上演しますがなかなか芽が出ません。エドはある日偶然、ドラキュラ俳優として一斉を風靡した銀幕スターのベラ・ルゴシ(マーティン・ランドー)と出会い感激します。そしてどうにか彼と一緒に仕事ができないかと声をかけて誘います。その頃、ハリウッドでは性転換した男性の話が映画化されると知り、彼はその監督に立候補します。そして、ベラ・ルゴシの出演を条件になんとか資金を得ました。こうしてエドは監督・脚本・製作・主演も担った力作「グレンとグレンダ」にてデビューを果たします。
「史上最低の映画監督」を描いた伝記映画
実在した映画監督でありティム・バートンをはじめデヴィッド・リンチら業界内に多くのファンを持つエドワード・D・ウッド・ジュニア、通称エド・ウッドの伝記映画です。戦前の映画界で活躍しドラキュラ俳優として今なお語り継がれる銀幕スターのベラ・ルゴシをマーティン・ランドーが演じ、アカデミー助演男優賞をはじめ多くの賞を受賞しました。史上最低の映画監督と言われてはいますが、確かに商業的には成功しなかったものの映画に対する情熱、飽くなき探究心など再評価の声も上がっています。
ちなみにお笑いグループのプラン9は彼の代表作であり史上最低の映画とも言われている「プラン9・フロム・アウタースペース」から名付けたそうです。
最後に
どれも脚色こそあるものの実際にあった物語です。ご紹介したハリウッドの巨匠であるクリント・イーストウッドは、「チェンジリング」や「ハドソン川の奇跡」「ジャージー・ボーイズ」など実在の出来事を題材に多くの作品を製作しています。また、彼は「硫黄島からの手紙」と「父親たちの星条旗」の2作品によって大平洋戦争を日米両視点から描いています。
ノンフィクションだから伝わるもの、そして映画だからこそ感じるものがあります。
是非、鑑賞してみて下さい。