料理が主役!お腹が空きそうなおすすめ映画15選【邦画】

最近の日本映画には、料理を題材に取ったものが多くあります。「深夜食堂」や「孤独のグルメ」などの料理漫画を題材にしたドラマの大ヒット以降、次々と料理に関するドラマや映画が作られているのです。この記事ではそんな料理に関する映画を15種類ご紹介させて頂きます。

natsukoshimono下野奈津子
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日本映画における料理映画というジャンル

映画には、ドラマ、コメディ、アクション、ホラー、サスペンス、ドキュメンタリーというジャンルがあります。しかし、そこにはそもそも料理というジャンルは存在していません。

しかし、昨今のグルメブームによって、海外の映画も日本の映画もこぞって映画の中に料理を登場させています。本当にたくさんの映画があるので、料理映画というジャンルももう出来つつあるように思えます。

グルメブームは1980年代から続いており、現在に至ります。
しかし日本映画の世界において、もっと古くから映画の中で料理に関する愛を表現していた巨匠映画監督もいたのでした。

最近の映画から、そんな過去の巨匠の料理映画まで、ざっと振り返りながらご紹介していきたいと思います。

日本映画の中に出てくる料理って、家庭の味が多いですから、観ている私たちも家族のことを主追い出したり、それぞれの思い出にふけってみたりと、特別感情に訴えてくるものがありますよね。

深夜食堂 【2015】

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あらすじ

繁華街の路地裏にある小さな食堂、「めしや」と書かれた提灯に明かりが灯ると、「深夜食堂」と呼ばれるその店には様々な人生を背負った個性の強い客達が集まってくる。メニューは基本的には酒と豚汁定食だけというシンプルさ。しかし客が頼めば、大抵のものならば作ってくれる店主。店主と客との心の触れ合いと葛藤を描いた人間ドラマ。

ここに注目

監督 松岡錠司
主演 小林薫, 高岡早紀, 柄本時生

小学館のビッグコミックオリジナルの人気連載を原作とした深夜ドラマが元の映画化。ドラマも深夜という放送帯にも関わらず、社旗現象と言えるほどの大ヒットを飛ばした。主演はそのドラマシリーズと同様に小林薫が務める。そして、今回は客に高岡早紀と榎本時生が登場。映画に出てくる美味しそうな食堂メニューももちろんですが、役者達の演技にも注目です。

この映画版「深夜食堂」は三話からなるオムニバス形式となっています。これもドラマファンにはたまらない演出ですね。そのそれぞれのエピソードの中で、ピックアップされている料理は「ナポリタン」「とろろご飯」「カレーライス」の三つです。どれも私たち日本人にとってはとても馴染みの深いメニューばかり。自分が深夜食堂にいったら、どのメニューを頼もうか、ついつい考えてしまいますよね。

かもめ食堂 【2006】

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あらすじ

ヘルシンキの街角に日本人女性サチエ(小林聡美)が小さな食堂をオープンします。メインのメニューはおにぎりだけ。そのシンプルさは、道行く人がふらりと入っては、自由に思い思いの楽しい時間をゆっくりと過ごしていける場所にしたいという彼女の思いが込められていました。しかし、そんな彼女の風変わりなお店には、なかなかお客さんが入ってきません。しかし彼女は毎日ひたむきに食堂をオープンします。

ここに注目

監督 荻上直子
主演 小林聡美, 片桐はいり, もたいまさこ

小林聡美、片桐はいり、もたいまさこの女性三人と言えば、「やっぱり猫が好き」という1988年から1991年までフジテレビ系列で放送され大人気だった三谷幸喜によるTVシリーズを思い起こします。そんな3人を主人公として作品ですから、当時の「猫が好き」ファンにも嬉しい映画です。そして、この映画に登場する心のこもった和食の美味しそうなこと。スロウライフ、スロウフード、そんな良さをも思い出させてくれます。

最初は文字通りおにぎりだけの食堂なのですが、やがて仲間が増えてお客さんも入ってくるとようになると、豚の生姜焼きやとんかつ、唐揚げ、焼き魚などの王道の和食が次々と登場します。お寿司やラーメンではない、日本の家庭料理の味をヘルシンキの人々はどう受け取るのか、とても気になるところですよね。ぜひその辺りにも注目してみてください。

体脂肪計タニタの社員食堂 【2013】

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あらすじ

誰もが知っている体重計で有名なタニタ。これは健康計測機器メーカーであるタニタという会社を舞台としたコメディードラマ映画です。「体脂肪計を作る会社の社員が太っていてどうするんだ」という社長による一言によって、とあるプロジェクトが開始されます。肥満体型の副社長、体脂肪率40パーセントの社員らは、栄養士である菜々子の指導の下でダイエットにチャレンジします。果たして彼らのダイエットは成功するのか。

ここに注目

監督 李闘士男
主演 優香, 浜野謙太, 宮崎吐夢

大ヒットしたレシピ本まで出版してる「タニタ」の映画ですから、タニタによる健康に良い料理が満載の映画になっています。食事を制限するのではなく、いかにレシピのアイデアを工夫するのか、また、美味しく楽しくダイエットをしていくのか。痩せやすい身体を作るための実践的なアイデアに満ちています。主人公たちのダイエットをぜひ真似してみたくなります。

映画の中には低カロリーのタニタ式メニューが多数登場します。例えば「チキンのゴマサルサ定食」。こんにゃくを使用した白和え、野菜が豊富な和え物やお味噌汁など、メインはお肉の中でも低カロリーだとされている鶏肉を使うことで定食全体でも500キロカロリーを切っています。白ご飯一杯で250カロリーほどある場合を考えると、本当に驚きの低カロリーですね。

天のしずく 辰巳芳子"いのちのスープ" 【2012】

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あらすじ

料理家である辰巳芳子の活動を追ったドキュメンタリー映画です。辰巳芳子が病気の父のために心を込めて作ったスープ。これがやがて人々の間に広まり、「いのちのスープ」として呼ばれるようになりました。丁寧に、素材を生かしながら、素材をいじめないように、素材が喜ぶようにと作り出された彼女のスープ。彼女の物語には、食を見つめる確かな哲学に裏打ちされたものだったのです。

ここに注目

河邑厚徳/監督・脚本
朗読:草笛光子
ナレーション:谷原章介
音楽:吉田 潔

料理家として長年のキャリアを積んできた辰巳芳子。彼女の料理の特徴といえば、丁寧に時間をかけて素材の美味しさを引き出してあげること。そして(彼女の言い方にならえば)素材をいじめずに、愛すること。こんな素材への愛は、やがて生命への深い愛情という哲学に行き着きます。そんな彼女の料理哲学を垣間見ることの出来る映画です。

辰巳芳子さんの料理とは決して台所だけにとどまることなく、庭で収穫した梅の実としそで梅干しを作ること、肉や魚やきのこなどを天日干しにするなどの園芸を含めた人間の生き方に及びます。本当に心を込めて料理を作ることとはどういうことなのか、スピードの速い現代に生きている私たちには考えさせられるばかりです。

南極料理人 【2009】

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あらすじ

過酷な環境の中での任務につく8人の南極観測隊。そこは猛吹雪、氷点下54度という状況の中で「もう耐えられない」と逃げだそうとする隊員までいます。辺りは何もなく雪一面の銀世界。しかし、そんな極限状況にある南極観測隊の隊員たちにも、たったひとつの楽しみがありました。それは食堂での食事でした。料理で繋がる隊員と料理人との心の交流を描いた映画です。

ここに注目

南極というひとつの極限の状況の下にある時、人間はどうなるのか。平常の生活の中でどうにか保ってきた理性も崩れはじめ、精神的なバランスをも欠いていく。この南極観測隊は、食事という「生命」維持する存在のおかげで、人間らしさを取り戻していきます。料理人と隊員との人間模様がユーモラスに描かれています。

原作本にも出てくる「伊勢エビのエピソード」が特にユーモラスで印象的です。
立派な伊勢エビをどう料理しようかという話になり、隊員たちは皆口を揃えて「海老フライがいい」と答えました。故郷の味を思い出させる海老フライ、その気持ちはわかります。ああ、でもなんて料理人の心を知らない発言。伊勢エビを海老フライになんて、もったいなくて信じられません。結局、伊勢エビの海老フライを食べながら、「やっぱり刺身が良かったな」という始末です。

極道めし 【2011】

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あらすじ

グルメ漫画家土山しげるによる人気漫画を原作とした映画。TVシリーズとしても放映され大人気を博しましたが、この映画はそのスピンオフ。大晦日の刑務所を舞台に、おせち料理の争奪戦を始める受刑者達。「自らの美味しい物自慢」のバトルを始めます。「あのオムライスが忘れられない」など思い入れたっぷりに話を始める受刑者たち。生唾をゴクリと飲み込んだものの数で勝敗が決まるというルールなのです。

ここに注目

永岡佑、勝村政信、落合モトキ、ぎたろー、麿赤兒という錚々たる面々がそろっています。刑務所の受刑者という役柄にぴったりのアクの強い役者たち。食べ物を語るというのは、自らの三大欲求を語るということとも言えます。それだけに人間本能むき出しの表現、表情を見せ始めます。彼らの演技対決に注目の作品です。

この映画は、他の料理映画とはひと味違います。それというのも、ひとつの料理が登場するまでのエピソードはそれぞれの受刑者の思い入れたっぷりの回想を含めて展開されること。その料理がその受刑者にとって特別なものになるまでの過程は、決して幸せとは言えない苦しい物でもあったりするのです。しかしそんな特別な過去の経験が、その時味わった料理の味を特別な物にしているのかもしれませんね。

武士の献立 【2013】

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あらすじ

天才的な料理の腕を餅ながらも、その負けん気の強い気質が仇となって、嫁ぎ先から一年で離縁されてしまった春(上戸彩)が主人公です。しかしそんな春の元に加賀藩の料理方である舟木伝内(西田敏行)が訪ねてきます。春の料理の腕を買っている舟木がは「ぜひ息子の嫁に」と言うのです。その息子というのは舟木家は代々加賀藩に仕える包丁侍の家でした。料理の苦手な息子安信(高良健吾)との結婚生活はどうなるのか。

ここに注目

お料理物の時代劇というのはとても珍しいですよね。助演にも、余貴美子、夏川結衣、 成海璃子、 柄本佑、 緒形直人などという錚々たる顔ぶれ。まさに時代劇のキャスティングです。料理をテーマとしていることもあり、普段は時代劇が苦手な若い女性にもとっつきやすい作品だと思います。人と人の間を、男と女の間を取り持つのは今も昔も料理です。江戸時代の料理ってこんなだったのだなと歴史の勉強にもなる映画です。

特に注目なのは、加賀藩の威信をかけて取り組むことになる饗応料理の場面です。全部で七の膳まである豪華な料理の数々。これは室町時代に確立した武家の礼法によるものらしいのです。二汁五菜で七つの膳ということらしいですね。例えてみれば、豪華な懐石料理とでも言えばよいのでしょうか。配膳の方法にも多くの決まり事があり、茶の湯だけでなく、和の文化の奥深さを改めて痛感する場面となっています。

カラアゲ☆USA 【2014】

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あらすじ

大分県宇佐市出身の辛島彩音(高橋愛)は、幼い頃のトラウマで唐揚げが食べられなくなっていました。しかし、彼女の出身の大分は唐揚げの町として知られており、さらに実家は唐揚げ屋さんを営んでいるとういう皮肉な状況です。そんな中、彩音の父親が倒れてしまします。黒人の連れ子・シャーリー(プリンセス・アプラク)と共に、彩音はどうにか実家の店を建て直すべく立ち上がります。

ここに注目

出演: 高橋愛, 海東健, 浅田美代子, 石丸謙二郎, 中村ゆうじ
監督: 瀬木直貴

唐揚げといえば、日本人なら誰でも大好きなソウルフードです。特に大分県は中津市を代表として唐揚げが有名な場所。宇佐市は「USA」と表記出来ることから、「唐揚げ合衆国」を自認しています。B級グルメの大会で賞をとるなど、次第に有名になってきた大分県の唐揚げ。この作品はそんなご当地B級グルメを題材にとった作品なのです。ご当地料理映画ですね。映画制作の切り口としても大変新しい作品です。

この映画に出てくる料理の筆頭は何と言っても唐揚げなのですが、物語の後半に出てくる「意外な人物からの秘伝の唐揚げレシピ」が特に注目です。自宅の唐揚げでも、お店の唐揚げでも、卵の白身を入れてみたり、変わり種のスパイスを配合してみたり、唐揚げには秘伝のレシピが誰にでもありますが、この映画のレシピはかなり本格的。絶対に自宅でも真似してみたくなりますよ。

スープ・オペラ 【2010】

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あらすじ

料理に関するエッセイや小説が多くある阿川佐和子の同名小説の映画化。30代の半ばを過ぎてもまだ独身のルイ(坂井真紀)は、叔母と二人で暮らしていた。しかし、還暦を前にした叔母は突然ルイを残して家を出て行ってします。ひとりぼっちになってしまって戸惑うルイ。そんな彼女の元へ、見知らぬ男が現れて、物語は急速に展開していきます。

ここに注目

出演: 坂井真紀, 西島隆弘(AAA), 加賀まりこ, 藤 竜也

阿川佐和子さんのファンならば、彼女の小説やエッセイには多くの料理の描写が登場することをご存じかと思います。「残るは食欲」「アンソロジーおやつ」「ああ言えばこう食う」「魔女のスープ」「ぷくぷくお肉」「ひんやりと甘味」など数えれば切りがありません。軽妙でいながらも時には明るく笑顔で確信をつくような彼女の表現は、同世代の女性を中心に共感を集めています。

映画の題名にあるように「スープ」がこの映画の主役です。突然一つ屋根の下で暮らすことになった男性下宿人にスープを出します。このスープで表された主人公の女性らしさ、優しさに打たれるシーンです。「スープオペラ」は「ソープオペラ」をもじったものです。ソープオペラとはロマンスや家族のごたごた、それらに携わる問題や悲劇を中心に展開してゆくドラマを言います。この映画の良さとは、そんな昼メロ的な恋愛コメディ要素でもあるのです。

しあわせのかおり 【2008】

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あらすじ

金沢の港町にある小さな町中華、中国料理店が舞台の映画です。老齢の中国出身の料理人、彼が丹精込めて作る料理はお客さんのハートをつかみ、食べたら幸せな気分になると大人気でした。しかし、そんなある日、突然彼は病に倒れてしまいます。店の存続はどうなるのか。そんな時に、店主を助けようと名乗り出たのは若い女性でした。彼女は店主の味を再現し、お客さんを納得させることが出来るのか。中華の名人と若いで弟子にはどのような絆が生まれうるのか。

ここに注目

監督 三原光尋
主演 中谷美紀, 藤竜也, 八千草薫

日本映画を代表する名優である藤竜也が、中華料理店の料理人を演じます。昔なら考えられなかった配役です。それだけ、世間の人の注目が、料理人、シェフに向けられているということでしょう。そんな藤竜也がテキパキと熟れた様子で料理する中華料理。競演の中谷美紀といい、なんと料理姿が様になることでしょう。料理だけでなく、料理人の姿にもうっとりとしてしまいます。

高級な中華料理ではなく、昔から日本の町々に点在する「中華屋」=町中華のファンには嬉しい映画です。登場する料理は、トマト卵炒め、カニシュウマイ、魚の唐揚げ、野菜甘酢あんかけ、酸辣湯などの馴染みのある一品ばかり。序盤から美味しそうな中華料理がどんどん出てきて、最初から最後まで、お腹がすいてしまうこと請け合いです。後半には、伊勢エビや丸鶏などの本場の中華料理も登場します。映画を見終わったら、中華料理店へダッシュしたくなってしまいます。

eatrip 【2009】

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あらすじ

フードディレクターとしてTV番組、ラジオ、雑誌などのメディアで幅広く活躍している気鋭の料理家である野村友里が初監督を務めた映画です。彼女が主宰するフードクリエイティブ・チーム「eatrip」の活動を通して表現しているのは、「人」と「食」の関係をその本来の温かい繋がりと交流をシンプルな形で表現すること。食にまつわる様々な登場人物へのインタビューを通して、今の時代を生きるということと食との繋がりについての問いを提示しています。

ここに注目

出演: 浅野忠信, 高橋皖司, 秋山鐘一郎, 森岡尚子, UA
監督: 野村友里

監督である野村友里のアーティスティックな感性に溢れた映画作品になっています。「eatrip」の活動自体が、料理という枠に囚われずに、多ジャンルのアーティストとコラボレーションをすることでも知られています。その活動のそばにはいつもアートがあります。浅野忠信、UAやの語る「食」とは。現代を生きる上で、私たちにとっての重要な課題である「食」について、一層考えを深めさせてくれる映画になっています。

この映画にも野村友里によるいくつもの料理が登場します。食の安全、自給率、食育など、多くの知見に溢れた彼女による料理。これを観ていると、料理というものがただ単に作っては食べるというようなものではないのだということがわかります。料理は人と人をつなげ、また、人をその人の住む環境へとつなげていく重要なファクターなのです。「食育」「食環境」「食糧自給率」などというキーワードにピンときたならば、ぜひ観て頂きたいと思います。

タンポポ 【1985】

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あらすじ

客の少ない寂れた小さなラーメン屋を営むのは美しい未亡人(宮本信子)でした。そんな彼女に惹かれた男たちは店に集まり、彼女のラーメン屋をどうにか繁盛させるために、ああでもないこうでもないと奮闘します。社会派映画監督で知られる伊丹十三の監督2作目。大ヒットを記録した、コメディ映画です。山崎努や役所広司、渡辺謙らの豪華キャストも魅力のひとつとなっています。

ここに注目

出演: 山崎努, 宮本信子, 役所広司, 大滝秀治
監督: 伊丹十三

今でも根強いファンの多いこの作品。海外の伊丹十三ファンからも愛される「タンポポ」です。主人公の宮本信子の朗らかな笑顔も印象的ですが、脇を固める役者陣も強者揃い。山崎努や大滝秀治など、多くお伊丹映画で活躍した俳優陣が登場します。町の小さなラーメン屋という庶民的な空間だからこそ、にじみ出てくる義理人情、心の機微という何にも代えがたい出汁が、ラーメンのスープにもしっかりと表現されています。

監督の伊丹十三は大の食通でも知られています。「ポテト・ブック」という古今東西のじゃがいもに関する文章を伊丹十三自身が訳した書籍なども出版されています。「女たちよ!」というエッセイ本の中にも、伊丹十三の食へのこだわりが垣間見れます。そんな伊丹監督だからこそ、映画「タンポポ」も、彼の「食べること」への愛情がしっかりと表現された作品となっているのです。

秋刀魚の味 【1962】

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あらすじ

主人公の平山(笠智衆)は、妻に先立たれてから再婚はしておらず、家事などの一切は一人娘である路子(岩下志麻)に任せっきりとなっていました。しかし、お酒の席の後で平山は恩師を家まで送り届けた際に、婚期を逃してしまった恩師の娘に遭遇します。その際に、平山の中に「自分の娘への思い」が変化を見せます。老いて孤独になっていく自分、しかし、結婚をして幸せになってほしい娘への思い。小津映画の真骨頂でもある、家族の間に揺れる情感に溢れた名作のひとつです。

ここに注目

監督 小津安二郎
主演 岩下志麻, 笠智衆, 佐田啓二

映画のタイトルでもある「秋刀魚の味」。なんとセンスの良い映画であろうかと思います。料理というのは家族の形を表すものです。小津監督はタイトルの「秋刀魚の味」という言葉で、食べ慣れた馴染みのある味わいながら、いつ食べても安心できる、そしてちょっと苦みもある、そんな家族像を表現したかったのではないかと思います。いつ観ても、普遍的とも言えるまでに、人の心に感動を生む、小津作品自体も秋刀魚の味がするのではないでしょうか。

料理映画も古今東西さまざまなものがありますが、日本の巨匠と言われる小津安二郎にも「秋刀魚の味」というタイトルの映画がありました。この作品に秋刀魚自体は出ては来ないのですが、家庭を守る=食卓を守る昭和の時代の直向きな女性たちの姿が描かれています。戦後の日本の食卓とは、家族とはどうだったのか。今一度、再見しててみるというのはいかがでしょうか。

お茶漬けの味 【1952】

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あらすじ

倦怠期を迎えた中年夫婦。妻の妙子は根っからのお嬢様育ちで派手な生活を好んでいました。しかし、夫である茂吉は質素な生活を好むタイプ。地道に働いてきたおかげで、今では多少の贅沢も許せるほどの身分にはなってはきたのですが、それでも生まれ持っての価値観というものをどうしても現状に合わせることが出来ないでいるのでした。お互いに全く正反対の二人ですが、どうにかわかり合えないかと試行錯誤する毎日。そんな時に二人の共通項として現れたのは、お茶漬けの味でした。

ここに注目

監督 小津安二郎
主演 佐分利信, 木暮実千代, 鶴田浩二

これも「秋刀魚の味」と同様に日本が誇る巨匠映画監督小津安二郎の作品です。彼の作品には再び食べ物が登場します。今度は「お茶漬けの味」です。「~の味」というネーミングのニュアンスも同じなので、是非ここは両作品を同時に観比べてほしいと思います。「秋刀魚」では父と娘の関係でしたが、「お茶漬け」では、倦怠期の夫婦の関係を描いています。秋刀魚にしても、お茶漬けにしても、小津作品に出てくる食べ物自体も普遍的に愛される物ばかりです。

注目なのは、それまではお互いにギクシャクしたり、つんけんしたりしていた夫婦が、共に協力し合いながらお茶漬けを準備するシーンです。二人にはこういう時間が足りなかったのですね。一緒にささやかな共同作業をすること。ただ普通に、美味しい物を「美味しいね」と言い合える時間。そんな時間を共有することで、お互いへの愛情表現が豊になっていくのです。現代の夫婦関係にも言えることだと思います。是非、夫婦喧嘩の後には、一緒にお茶漬けの時間を作ってみてはいかがでしょうか。

カレーライスを一から作る 【2016】

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あらすじ

武蔵野美術大学の関野ゼミが途方もない課外ゼミを始めました。それは「カレーライスを一から作る」というもの。一からというのは、なんと種まきからという徹底ぶりです。カレーの調理時間はなんと9ヶ月というのです。学生たちは、米作りのために苗を植えたり、収穫をしたりする経験を通して、「食を通して命を引き継いでいくということ」を学びます。農林水産省の協力も得ての一大プロジェクトを収めたドキュメンタリー映画です。

ここに注目

監督:前田亜紀 プロデューサー:大島 新

探検家である関野吉晴による武蔵野美術大学での課外ゼミ。アマゾンやアフリカなど大陸を渡り歩いてきた関野は、探検家でもあり、医師でもあり、文化人類学の教授でもあるのです。「カレーライスを一から作る」では、野菜や肉、スパイスなどの原料をすべて一から育てるという徹底した試みです。「モノの原点がどうなっているのかを探索すると社会が見えてくる。カレー作りを通して色々なことに気づいてほしい」という思いを語っています。

食べ物の安全性を問うたり、大企業による大量生産の是非を問うたりする、食べ物がテーマの映画はたくさん作られています。しかし、この関野ゼミの取り組みは、「これが悪い」「こうあるべき」と一方的に言うのではなくて、ゼミの学生たちに自ら食にまつわる社会の仕組みに気づいてほしいという、違ったアプローチを試みています。スーパーの肉や魚しか知らないという現代っ子も多い中、アマゾンやアフリカを探検して様々な物事を見てきた関野の想いは伝わるのでしょうか。

二郎は鮨の夢を見る 【2013】

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あらすじ

銀座にある有名店「すきやばし次郎」の店主である小野次郎。あのミシュランガイドでも三つ星を獲得していることでも知られている寿司店です。銀座の地下にある10席ほどのその店には、食通たちが通っており、その仕事ぶりはまさにマエストロの技。すきやばし次郎の評判は、海外の食通にも多く知れ渡っており、この映画はそんな海外にいる「寿司通」に向けた構成になっています。もちろん日本の食通にも楽しめる内容です。

ここに注目

監督 デヴィッド・ゲルブ
主演 小野二郎, 小野禎一, 小野隆士

注目してほしいのは、やはり三つ星料理人である小野次郎氏の手さばきです。寿司といういわば「和食」の神髄を極め尽くした技の妙技。こうして職人の技をドキュメンタリー映画として映像に残すことが出来るようになった時代は本当にありがたいものです。いまや文化遺産ともなった「和食」の文化を、後生にも大切に保存していくためにも、これからも多くの人に観られることになる映画になると思います。

小野次郎による寿司の仕事は「20カンのドラマ」とも呼ばれます。それはこの店でのメニューは「おまかせ」というコースになっており、20貫で完結するように次郎によって入念に考え尽くされているからです。半世紀以上、寿司を握ってきた小野次郎。彼が到達した究極の寿司のドラマを味わうために、今日も店には世界中から人が集まってくるのです。

まとめ

日本で作られた<料理>が主役のオススメ映画を15本、ご紹介してきました。
あなたにもピンと来た作品はあったでしょうか?
昨今の空前のグルメブームのずっと以前から、日本映画には「食」が主役の作品がいくつもあったのですね。食というものは、人間の文化の大切な要素です。食を表現することは、文化を表現すること。
これからも様々な「料理映画」が作られていくでしょう。

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この記事のライター

下野奈津子

【家庭料理研究家】ワイン輸入会社での経験を経て、食育メニュープランナー、ヘルシービューティーフードアドバイザーの資格を取得。時短なのにちょっと特別感のある食卓がテーマです。【映画】映画通、NY市立大学ブルックリン校で映画制作を学ぶ。【本】古書マニア、オンライン古書店、double plus goodを経営。

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イラストも文章も手掛けるフリーのイラストレーター。

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