ハイドンのおすすめ名曲14選を彼の生涯や逸話とあわせてご紹介。【クラシック音楽】
ハイドンは古典派を代表する有名作曲家です。数多くの曲を作曲し、特に交響曲と弦楽四重奏を多く作ったことから「交響曲の父」「弦楽四重奏の父」と呼ばれています。今回はそんなハイドンについて彼の生涯とその最も有名な14曲についてご紹介していきます。
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アイキャッチ画像出典:tower.jp
フランツ・ヨーゼフ・ハイドン
ハイドンは古典派を代表する有名作曲家です。数多くの曲を作曲し、特に交響曲と弦楽四重奏を多く作ったことから「交響曲の父」「弦楽四重奏の父」と呼ばれています。今回はそんなハイドンについて彼の生涯とその最も有名な14曲についてご紹介していきます。
ハイドンの生涯
ハイドンの幼少時代
出典:i.ytimg.com
ハイドンは1732年に現在のオーストリアで生まれました。6歳の時に音楽学校の校長に才能を見込まれて音楽の勉強を始め、幼少からメキメキとその才能を発揮していきます。1740年、ハイドンは大聖堂の聖歌隊の一員として活動することになります。ここで9年間働き、ハイドンは音楽家としての道を歩むこととなりました。
作曲を始める
変声のために聖歌隊を解雇され、1749年より、ハイドンは作曲を始めるようになります。弦楽四重奏やオペラを作曲し、自らの評判を上げていきました。1761年になると、ハイドンは重要なパトロンを得ることとなります。ハンガリー有数の大貴族エステルハージ家です。ハイドンはこのエステルハージ家に様々な形で創作環境を整えられ、意欲的に創作活動に取り組んで行くこととなります。彼は30年もの間、このエステルハージ家で働くこととなりました。
モーツァルトとの親交が深かったハイドン
1780年ごろになるとハイドンはモーツァルトと親交を深めるようになりました。このことを示す事実として、モーツァルトは6つの弦楽四重奏をハイドンに献呈しています。
1790年になると、エステルハージ家のニコラウス侯爵が死去し、ハイドンはパトロンを失ってしまうこととなります。しかしながら、これはハイドンが自由に音楽を創作する機会を得ることでもありました。ハイドンは、イギリスで交響曲を作る儲け話をヨハン・ザーロモンから持ちかけられ、これを受け入れてイギリスに渡航します。
ハイドンのイギリス時代
ハイドンはこのイギリス時代に後世に大きく影響を残す交響曲や協奏曲を作曲しました。「太鼓連打」「驚愕」「ロンドン」などのロンドン交響曲や弦楽四重奏「騎士」などのハイドンの最も有名な作品の数々です。
1800年になると持病が悪化することで、作曲ができないようになってしまいます。晩年は作曲を全くすることなく、ピアノを少し弾くくらいだったようです。そのような中1809年にハイドンは死を迎えることとなりました。
ハイドンの交響曲
交響曲第44番『悲しみ』
交響曲第44番は、1771年もしくは1772年に作曲された交響曲です。ハイドンはこの曲を自分の葬儀の時に演奏してほしいと言っていたそうで、実際に1809年のハイドンの追悼の行事では演奏されました。『悲しみ』という副題は、そこから来ています。オーボエ・ホルン・弦楽からなる編成で演奏されます。
交響曲第45番『告別』
この交響曲が作曲された1770年代のハイドンの音楽は「シュトゥルム・ウント・ドラング期」と呼ばれています。シュトゥルム・ウント・ドラングとはこの時代に音楽だけでなく文学など芸術全般に起きていた運動のことで、古典主義からロマン主義へと移行する大事な運動でした。「理性に対する感情の優越」を主張した運動です。オーボエ、ファゴット、ホルンと弦楽器からなる編成で演奏されます。
交響曲第94番『驚愕』
交響曲の第二楽章というのは大抵の場合静かで緩やかな曲調で書かれることが多いですよね。そんな中、演奏会中に居眠りしてしまいがちなのも第二楽章中です。しかしながら『驚愕』の第2楽章は、それを許しません。最初の緩やかで静かな演奏の後、突然にトランペットが大音量でその静けさを切り裂き、オーケストラ全体が大音量の和音を演奏するのです。これがこの「驚愕」という副題の由来です。当時としては常識はずれのオーケストラレーションであると言えるでしょう。
交響曲第101番『時計』
交響曲第101番は1793年にロンドンで完成されたロンドン交響曲の一曲です。「ロンドン交響曲」というのは1791年~1795年にかけて作曲した12曲の交響曲の総称です。
また、この『時計』という愛称はハイドンが自身でつけたものではなく、19世紀になってつけられたものです。第二楽章の伴奏のリズムが時計のように規則正しいことからきています。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン、トランペットと弦楽器、ティンパニの比較的大きな編成で演奏されます。
交響曲第103番『太鼓連打』
交響曲第103番もロンドン交響曲の一つです。名称の由来は、第一楽章の冒頭と最後でティンパニの長い連打があることからこのような愛称がつけられています。この交響曲はハイドンの曲の中でも人気のある曲の一つであり、編成も大きな曲になっています。
交響曲第104番『ロンドン』
交響曲第104番もロンドン交響曲の一つです。『ロンドン』という愛称に特に意味はなく、単にロンドン交響曲の最後の一曲であるためにそのような愛称がついています。また、この交響曲第104番がハイドンが作曲したうち最後の交響曲であり、彼が63歳の時に作曲した曲です。この作品は、ハイドンの集大成と言えるでしょう。ハイドンとは関係なく、この時期の交響曲は、すでに弦楽の編成(第一・第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス)は確定していましたが、管楽器については雑多に扱われていました。しかしながら、ハイドンはこの交響曲で、管楽器に関しても慎重にバランスを考慮し、その後に確定されることとなる絃楽器のバランスの基礎を作っていきました。このようなことから彼は「交響曲の父」と呼ばれています。
ハイドンの協奏曲
トランペット協奏曲
ハイドン作曲のトランペット協奏曲はハイドンが最後に書いた協奏曲であり、現在トランペット奏者にとって重要なレパートリーの一つになっている協奏曲です。トランペットの響きが快活に伝わる名曲と言えるでしょう。しかしながら1800年に行われたこの協奏曲の初演は失敗に終わり、1929年まで130年もの間、演奏されることはありませんでした。
チェロ協奏曲
ハイドンのチェロ協奏曲第一番は、1767年に作曲されました。この曲は第一番ですが、ハイドンはチェロ協奏曲をもう一曲(第二番を)作曲しています。第一番・第二番ともにヨーゼフ・フランツ・ヴァイグルのために作曲されました。バロックと古典派の融合が見られる曲になっています。独奏チェロとオーボエ、ホルン、絃楽器の編成になっています。ハイドン自身のカデンツァが残っていることでも知られています。
ハイドンの室内楽
弦楽四重奏第67番『ひばり』
弦楽四重奏第67番は『ひばり』という愛称がついていますが、これはハイドン自身がつけたものではありません。第一楽章において冒頭で演奏されるフレーズがひばりがさえずっているように聞こえることから、このように名付けられました。1790年に宮廷楽団のヴァイオリニストであるヨハン・トストからの依頼によって作曲されました。4楽章構成になっています。
弦楽四重奏第77番『皇帝』
弦楽四重奏第77番は『皇帝』という愛称で呼ばれています。これは、この曲の第二楽章が『オーストリア皇帝讃歌』の変奏曲であることからきています。この『オーストリア皇帝讃歌』は神聖ローマ帝国そしてオーストリア帝国の国歌でした。1797年に作曲され、演奏時間は25分ほどです。4楽章構成になっています。
オラトリオ『四季』
バロック時代には『オラトリオ』と呼ばれる音楽が盛んに作曲されていました。オラトリオを簡単に言ってしまえば「宗教性があり、演技のない『オペラ』」ということになるでしょうか。演技はないのですが、声楽(歌ですね)とオーケストラによって演奏されます。また、その歌詞に物語性があります。
そんなオラトリオにおいて最も有名と言えるのがこのハイドン作曲の『四季』です。ヴィヴァルディの「四季」とはまだ別の音楽なのでご注意を。「春」、「夏」、「秋」、「冬」の四部構成になっていて、全39曲からなっています。
オラトリオ『天地創造』
『天地創造』もハイドンが作曲したオラトリオであり、ハイドンが作曲したオラトリオの中で、最も有名な曲の一つです。
オラトリオは、宗教性が強いという説明をしましたが、そもそも、このバロック時代以前の音楽は密接に宗教と絡みついていました。民衆のための音楽ではなく宗教のための音楽だったのですね。この時期になると、クラシック音楽から、そのような宗教的な意味合いはだんだんと薄れていくのですが、このオラトリオという種類の音楽にはまだまだ宗教的な意味合いが多分に残されています。
三部構成になっていて第1部が「天地創造の第1日目から第4日目」第2部が「天地創造の第5日目と第6日目」第3部が第2部で創造された人間の男女である「アダムとエヴァ」の姿が語られます。
ピアノソナタ第34番
このピアノソナタは、ハイドンのピアノソナタには珍しく、短調で書かれています。短調のピアノソナタはこの曲の他にもう一曲しかありません。ハイドンのピアノソナタというと明るく溌剌としたものが多いですね。3楽章構成で書かれています。第一楽章は短調の速いテンポの曲。第一主題が左右の手で繰り返されます。第二楽章は長調のゆったりとした曲。第3楽章はロンド形式で第一楽章と同じく短調で演奏されます。
ピアノソナタ第35番
ピアノソナタ第35番は、ハイドンのピアノソナタの中でも、最も演奏機会の多い曲でしょう。ピアノの初心者でも演奏可能な難易度であるので、多くの方が演奏したことがあるのではないでしょうか。この曲は第34番とは異なり、ハイドンらしい、明るく溌剌とした曲となっています。3楽章構成です。
ハイドンという偉大作曲家
いかがでしたでしょうか。今回はハイドンの作曲した名曲と彼の生涯についてご紹介いたしました。ぜひ、お気に入りの曲を見つけてくださいね。
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この記事のライター
クラシック音楽と文学と少々のお酒をこよなく愛する20代。現在は筋トレにハマりはじめている。慶應義塾大学在学中。