BMWのMシリーズを徹底解説【2017年発売中全車種を違いから乗り心地まで完全網羅】
BMWのMシリーズを全車種の違いから乗り心地まで徹底解説します。往年の名車であるM1から現行車種であるM2クーペ、M3セダン、M4クーペ、M5セダン、M6クーペ、M6グランクーペ、M6カブリオレ、さらには仕様のX5M、X6Mまで紹介します。BMWの走りを追求したMシリーズの魅力を是非感じてください。
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BMWの「かくあるべき」それがMシリーズです
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BMWといえば一般的にどのようなイメージを持たれるでしょうか。やはり、あまりにも有名な「駆け抜ける歓び」というキャッチコピーが指し示す通り、上質かつパワフルな走りを追求する、というイメージが強いのではないかと思います。
でも今日この頃は、純粋に走りを追求するということがそうそう許されることでは無くなりつつあります。車に求められる性能が、例えば環境性能(燃費)だったり安全性だったりデザイン性だったり、果てはミニバンに求められるようなファミリー層向けの使い勝手だったり…と多様化しているからです。そのような中で悪戯に排気量を誇っても「だから何?」「何の役に立つの?」と言われてしまう、そんな時代の波に晒されているのはBMW社も同じでしょう。
そのような中、時代に逆行していると言われようとも純粋にゾクゾクするような「走り」を中心軸に置いた商品ラインナップを重ね、コアな自動車ファンから熱い眼差しを注がれ続けているのがMシリーズです。
Mシリーズは、BMWのモータースポーツ関連の研究開発を担当する子会社として1972年に設立されたBMW M社によって開発されています。カーレースの走りに耐えうるスペックのエンジン、そしてそのエンジンを最大限に活かしきるステアリングやシャシーの剛性についても日々研究を続けているM社によって開発されたMシリーズは、まさしくBMWの存在意義そのものと言えます。
量産モデルとの格の違いを魅せつけるMシリーズの世界、ご一緒に旅して参りましょう。
生産台数500台足らず、事故車であっても高値で売れる悲運のスーパーカーBMW M1
BMW M1は失敗作といえば失敗作、なのでしょう。でもBMWの悲願が詰まった記念碑的作品であることには間違いありません。1970年代後半に、当時ポルシェの独壇場になっていたグループ4/5のレースカテゴリーに参戦するための、ホモロゲーションモデルとして製造されました。
FRが主流のBMWにとってミッドシップレイアウトは初めてだったため、ランボルギーニ社と提携して開発しました。しかしながら同社が経営難に陥るなどで提携は解消、加えて生産工程の複雑さからグループ4の参戦規定台数である年400台をクリアすることができず、短命に終わってしまった幻の車です。
にもかかわらず、その後のMシリーズの祖となったこの車は3.5L直列6気筒DOHCエンジンを搭載し、シャシーは鋼管と角形鋼板でできたセミスペースフレーム、外板はFRP製という完全スポーツカー仕様で、当時の価格で2500万以上の高価格が付きました。加えて現在ではホモロゲーションモデルそれ自体が珍しいことから、オークションに出れば事故車であっても、いやそれどころかナンバープレートであっても(!)大変な高値で売れてしまうという、紛れもないスーパーカーです。
待ってました!サラリーマンにも手の届くBMW MシリーズM2クーペ
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BMW Mシリーズといえば、エンジン、ボディ剛性、ブレーキ、タイヤと全てにおいて量産モデルとは別格、全てMシリーズ特別仕様にこだわって作られています。羊の皮を被った狼ならぬセダンの皮をかぶったスポーツカーと言えるMシリーズの価格帯は当然のごとく1000万以上です。サラリーマンにはそう簡単に手は出ません。
でもこの度、すっきりとしたクーペでMシリーズが生まれ変わりました。それがこの、BMW M2クーペです。税込価格で768万となります。
2016-2017年日本カー・オブ・ザ・イヤーでエモーショナル部門賞を受賞したこの車は、走行性能はそのままに、プラスαの機能だけそぎ落とし、純粋に走りを楽しむための車として発売されました。最高出力272kW[370ps]の直列6気筒DOHCを搭載し、最大トルクはなんと500Nm[51.0kgm]を誇ります。M3と比較するとやや劣りますが、ドライビングフィールは「車が走りたがって仕方ない感じ」でも「とにかくソリッド」、だけど「エギゾーストサウンドがたまらん!」とはいえ「トランクション性能は盤石」といった感じです。
荒れ狂うエンジンをボディとシャシーの剛性、そして太いタイヤで適切にコントロールしている、そんな車でしょうか。
BMW M3セダンでやんちゃな吹きあがりとコーナリングを楽しんで
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セダン、でも、カーボンルーフ。軽さにこだわりサーキッド仕様をアピールするMシリーズ魂を感じさせるBMW M3セダンに乗ってみましょう。アイドリングからかなり豪快なエンジン音がすることに驚かされると思います。アクセルを踏むと、さらに一層ゾクゾクする快音を響かせ、ツインターボによる圧倒的な加速で一気に7600rpmの最高許容回転数まで吹け上がります。0-100km/h加速が4.1秒というのは、ポルシェに匹敵する数字です。
このように書くと、この車の真骨頂は直線走行のように思えます。でも一番楽しいのはコーナリング!というのが衆目の一致するところのようです。全幅1875㎜、35%扁平の19インチタイヤを履いたワイドトレッドでとにかく踏ん張りがききます。加えてフロントエンジンとは思えない切れ味の鋭いステアリング、車体がピタッとついてくるトランクションコントロールの良さ、横滑り防止装置のおかげで、大胆でゾクゾクするコーナリングが楽しめます。
もしも許されることなら、今走っている、いや停まっている大渋滞の首都高速を一日貸切ることはできないものだろうか…そんな危険な妄想が頭をよぎってしまう車です。
BMW M4クーペはジェントルな走りと危険な変わり身の早さが魅力
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BMW M4クーペは、前述のBMW M3セダンのクーペバージョンをM4に格上げした車種になります。エンジンなどの基本的なスペックはM3セダンと大体同じです。とはいえ乗り味はM3セダンと比べると大分紳士的というのが大勢の見方で、エギゾーストサウンドなども比較的静かなようです。勢い余ってホイールスピンしてしまうこともあるのはM3 セダンと同じようですが…。
とはいえ、インテリアはブラックレザー仕様であること、AピラーがM3セダンよりやや急であることから、実質同じ車種とはいえ、スポーツカーとしての見た目テイストはこちらのほうが上かも知れません。また、その形状から当然M3よりは重心が低いため、走りやすさという点でもややプラスでしょう。加えて、M3同様走行モードをコンフォート・スポーツ・スポーツプラスの3つから選ぶことができますが、日頃よりジェントルなイメージのM4のほうが、違いがより楽しめるようです。標準だと高級セダンの乗り心地、スポーツプラスだとM3セダンに負けないアクセルに対するレスポンスと勢いある排気音が戻ってきます。TPOに合わせて変わり身を楽しみたい方には、こちらがお勧めです。
BMW M5セダンは化け物でも猛獣でもありません!BMWが誇るプレミアムサルーンなんです!
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この車については、まずは主要諸元から行きましょうか…。搭載エンジンはV8・DOHC ツインスクロールターボ(前のモデルはV10でしたが、環境性能を考慮しダウンサイズされました)、総排気量は4,394cc、最高出力は560PS/6,000rpm、トルクは680Nm〔69.3kgm〕/1,500~5,750rpm、加速は0-100km/hで4.3秒…いやもう、凄まじいとしか言いようがありません。一体、この車に誰が乗るというのか、この車でどこをどう走れというのか、そもそもBMW社はこの車で何をやりたいというのか、皆目見当がつきません。
この車に誰が乗るのか、どこを走るのか、という問いに対しては、「誰でも乗れるしどこでも走れる」とお答えしましょう。排気量もトルクも殆ど規格外と言って良いほどですが、きちんとアイドリングストップ機能も付いていますし、7速 M DCT Drivelogicにより、スムーズなシフトチェンジが可能です。また左右両輪のトルク差もアクティブMディファレンシャルが自在にコントロールするので、高級セダンらしい安定した走行が楽しめます。
この車が本領を発揮するのは、走行モードをスポーツプラス、トランスミッションをマニュアルにして一気に加速したときです。試乗レポートで何故「化け物」「猛獣」「凶暴」と言われ続けているのか、身をもって体感することができるでしょう。
この車で何がやりたいのか、という問いについては、かのM1同様F1がらみの騒動があったようです。2000年にF1復帰を決め、当時の規定通りV10エンジンの超高級スポーツセダンを意気揚々と開発するも、その後F1でのエンジンはV8までとルールが変更されてしまいました。せっかく大金を積んで開発したのに全てが台無しになってしまったBMW社が腹立ち紛れに(?)V8で臨みうる限りの最高スペックを叩き出したのがこの車、というわけです。
BMW M6シリーズのラグジュアリーかつ静かな車内空間で異次元へと駆け抜けよう
こちらも言わずと知れたスーパースポーツサルーンですので、まずは主要諸元から行きましょう、と言いたい所なのですが、排気量やトルク、加速などはM5セダンと同じです。エンジンも同じV8・DOHCを搭載しています。要はもう凄く走る奴なのですが、M5セダンのようにその走りぶりのみが強調されることは少ないようです。
その理由として挙げられるのは、とにかく車内が静かであるという点です。振動やエンジン音が例えばBMW M3セダンのようにダイレクトに伝わってくることはありません。そして日常使いにも十分耐えうる操作性と高級感のあるインテリアから、高級セダンで優雅なドライビングを楽しんでいるかのような錯覚にとらわれます。ただ、窓の外の景色だけが異次元レベルの速さで飛んでいくのです。
この静かな走りを実現しているのは、BMWの技術の粋を集めたシャシーです。軽量・高剛性のアルミニウム合金を使うだけでなく、ジオメトリーも念入りに調整されています。加えてリーンフォースプレートによりさらなる剛性強化を図っています。
BMW M6シリーズは「クーペ」「グランクーペ」「カブリオレ」の3種類があります。搭載エンジンなどは皆同じですが、エクステリアなどの違いを以下にご紹介します。
BMW M6クーペ
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この車が一番美しいのは、サイドビューでしょうか。2ドアクーペらしく車高が少し抑えられた全長4905mmのロングノーズ、ショートデッキの伸びやかな車体が、優雅な中にもスポーツサルーンらしい切れ味を感じさせます。シンプルで無駄がそぎ落とされたラインから最も美しいクーペとも呼ばれています。こちらももちろんカーボンルーフが採用されており、軽量化と低重心化に貢献しています。
BMW M6グランクーペ
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こちらは今注目の4ドアタイプのクーペになります。2ドアクーペに比べてホイールベースが115mm拡大されており、リアシートがより広く、快適に座れるよう設計されています。クーペ特有の美しいラインはそのままですが、全幅が広いこと、目立つクローム仕上げのキドニーグリルと大きなエアインテークにより踏ん張り感が強調されています。
また、特筆すべきはやはりタイヤでしょうか。BMW M6グランクーペ専用で用意された20インチの極幅広タイヤは、非日常的なスピードで駆け抜ける車体を確かにサポートし、独自の安定感を生み出しています。
BMW M6カブリオレ
ラグジュアリーな4人乗りのオープンモデルになります。基本的な仕様はクーペと同じです。
なおソフトトップはフルオートマチックになっています。遮音性と断熱性に優れ、40㎞以下なら走行中も開閉することができます。また、ソフトトップを閉じたままウィンドウを下げることができるので、直射日光を避けた状態で風を目一杯感じながら駆け抜けることも可能です。
忘れまじM1魂!?BMW X5M/BMW X6Mで打倒ポルシェ再び
「何がやりたいの?」この車が発売された際、コアなBMWファンは頭をひねったといいます。純粋に走りに特化したスポーツカー仕様のMシリーズで、ファミリー向け、あるいはアウトドア向け、基本的には遊び心満載で時には軟派ですらあるSUVカテゴリーに進出するとは…。Mシリーズは伝説のホモロゲーションモデル、M1の硬派な後継であるべきでしょう、と。
もちろん、BMWのMシリーズのプライドにかけて、いい加減な車を出す、ということはありえません。BMW X5M/BMW X6MはサイズがX6Mのほうがやや大きいという以外、概ね同じ車です。ともにエンジンはV型8気筒DOHCを搭載し、総排気量は4,394cc、最高出力は575PS/6,000rpm、トルクは750Nm〔76.5kgm〕/ 2,200-5,000 rpm、加速は0-100km/hで4.2秒となっており、M5、M6の上を行く仕様になっています。これは勿論2.4tという大型車であることを考慮してのパワーアップと思われますが、にも関わらず加速がM5、M6の上を行く数字になっているのは只事ではありません。
試乗者の感想を見ても、勇ましいエンジン音を楽しんだ後は、パワフルな走りは勿論のこと、シャシーの性能の高さによるボディーロールの少なさ、20インチの極太タイヤが生み出すグリップ力、適切なトルク配分による快適なステアリングなどが評価されています。つまりは、Mシリーズらしい走りとSUVに必要な走破性を兼ね備えているということでしょう。
でも、何故BMWはこのような化け物じみたハイスペックSUVを開発しようと思い立ったのでしょう。そもそも、どれだけの需要があるのか、と。ここでBMW Mシリーズファンの中でまことしやかに囁かれているのが、おそらく、ベースモデルのBMW X5がポルシェカイエンと常に比較され、しかもやや水を開けられつつあるが故ではないか、ということです。
思い出してください。BMW M1が開発されたきっかけは、ポルシェの独壇場になっていたレースカテゴリーに参戦するためでした。40年の時を経て、また因縁のBMW対ポルシェの戦いが再現されているとは言えないでしょうか。そう考えると、このBMW X5M/X6MはSUVといえども実にMシリーズらしい車と言えそうです。
Mシリーズで最上級の走りを体感してください
如何でしたか。BMW Mシリーズの走りに対するこだわり、そして何より車に対する愛情と思い入れをお伝えできていれば嬉しい限りです。まずは、どれだけ早く走れるかという点にひたすら集中して車を開発すると同時に、その暴力的なまでの走りを如何に快適かつ安全なものにしていくかについて技術の粋を凝らす、ひたむきなBMW魂!素晴らしいですね。
残念ながら簡単に手が出る価格帯ではないのですが、いつかは走りも超一流のものを手にしたいものですね。
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この記事のライター
リライトとか編集とか、その辺の仕事を10年位手掛けています。得意分野はビジネス全般、政治経済、車、アート、文学。ちなみに、宣伝会議の編集ライター養成講座卒業しました。卒制は優秀賞でした。