ブラームス自身の録音?作曲家の極限まで古い演奏録音の存在
1800年代生まれの作曲家でも演奏録音が存在するものがあります。驚きの録音は、なんとブラームスのものが最古です。合計5人の録音をご紹介します。
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昔の録音とは
出典:pixabay.com
近年では、世界最古の録音は1860年のもので、フランスの古い童謡「月の光に」を女性が歌っているものです。フォノトグラフというもので、エジソンの発明ではありません。再生ができないという欠点があり、商品化はされませんでしたが、現代の技術で再現できたということです。音質はともかく、150年前の人の声を聞くことができることは驚くべきことといえます。
次に1877年にエジソンがシリンダー(円筒式)の録音機を発明し、著名なピアニストで作曲家のハンス・フォン・ビューローやヨーゼフ・ホフマンが演奏録音したと伝えられます。しかし、現在は残っていないのは残念な限りです。1900年代に入ると比較的にたくさんの録音が残されていますが、1800年代に亡くなった作曲家はそれには間に合いませんでした。
ギリギリ録音ができた人では、ブラームスが最古の作曲家ということになります。しかし、あまり録音状態は良いとはいえません。エジソンの発明より少し後の1887年に、エミール・ベルリナーという人が円盤式(アナログのレコード)を発明し一大センセーションとなりました。1900年代では、まだ健在で活躍した作曲家のものが比較的多く録音が残されています。
演奏してはいませんが、驚くべきことにチャイコフスキーの録音が残されています。また、周囲の雑音などがなく比較的に音質が良い録音はほとんど「ピアノロール」によるものです。ピアノロールは1904年から始まり、「Welte-Mignon」「Duo-Ar」「Ampico」 の三つが質の良さなどで有名になりました。ピアノロールの音が出るしくみは、紙に穴をあけ空気の圧力で鍵盤を動かすというものです。
すぐに人気が出て、多くのピアニストや作曲家が録音しています。また、1924年からは電気録音も開始され、徐々にピアノロール録音はなくなっていきました。
ヨハネス・ブラームス 1833年~1897年
ブラームスが1889年にエジソンのシリンダー録音で残したものです。曲は二曲あり、「ハンガリー狂詩曲第一番」「ヨーゼフ・シュトラウス作曲の ポルカマズルカ・とんぼ」です。雑音がかなり多く、原曲を聞き分けるのは困難ですが確かに当時の音を感じ取ることができます。ブラームスがその後に録音を再開しなかったのは、再生時の状態に満足しなかったのではないかと推測します。しかし、本人の演奏を聞くことができるのは感動的です。
クロード・ドビュッシー 1862年~1918年
1913年にピアノロール、Welte-Mignon製のもので録音したものです。曲は「グラナダの夕べ」で、ピアノの音の強弱もしっかりとしています。ドビュッシー自身の筆跡で1913年11月1日に録音についてはっきりと残していることも素晴しい遺産といえるでしょう。亡くなる5年前ということになりますが、ドビュッシーは他にも数曲の録音を残しています。ペダリングや細かい音の長さやタッチ、息使いまでが聞こえてきそうな名録音です。
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サン・サーンス 1835年~1921年
映像は、サイレントでフランスの映画監督サシャ・ギトリにより、サン・サーンスが指揮をする様子が撮られています。演奏録音は1904年のもので、彼のピアノ協奏曲第二番とアフリカ幻想曲です。雑音がほとんどないことから、ピアノロールによる録音と見られます。サン・サーンス自身もピアノの名手であり、ピアノ曲は少ないですが難曲で知られています。本人の演奏を聴くことができるのは、ピアニストにとっては感涙ものといえます。
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ガブリエル・フォーレ 1845年~1924年
1913年にピアノ・ロール、Welte-Mignon製で録音されたもので、曲はパヴァーヌです。状態は非常によく、音の歯切れやレガート、強弱、音の一つ一つが浮き上がり、まるで昨日の録音のような新鮮さです。フォーレが意外に速い速度でこの曲を演奏していたことがわかります。古きよき時代の音楽は、もう少しゆっくり目で演奏されると想像していた人にはちょっとした驚きかもしれません。
ピョートル・チャイコフスキー 1840年~1893年
ジュリアス・ブロックという人による録音で、19世紀末から20世紀初頭にかけてシリンダー録音機で録っています。彼は他にも膨大な数の録音をしており、近年その全集がCD化されました。この録音では、他にアントン・ルビンシュタイン(ロシアのピアノ教育の最高峰モスクワ音楽院の創始者)やサフォーノフ教授、ピアニスト、歌手などの会話が入っています。
チャイコフスキーは、演奏は残念ながら入っていませんが、会話はしっかりと聞き取ることができます。興味深いのは、名教師のサフォーノフは歌は意外に音程がずれていること、チャイコフスキーは見た目と違い声のキーが高いことです。5人はこの新しい録音を楽しんでいるように聞こえます。音楽についての録音ではありませんが、貴重なものです。
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作曲家の演奏録音は宝
いかがでしたでしょうか。作曲家の肖像を見ているだけでは、生きた年代がはっきりとわからず、「まさか、演奏や声を聴くことができる」などと誰が思いつくでしょうか。エジソンは録音機も発明していますが、もう少し早ければ更に古い時代のショパンなどの演奏も聴くことができたかもしれません。
しかし、作曲家の演奏を直接聞くことができるというのは本当に幸運なことです。音楽家を勉強する人だけでなく、愛好家の宝といえます。ぜひ後世までできる限り残してほしいものです。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。