リーダーに求められる素質とは?マッキャヴェッリの「君主論」を解説

新人の立場から卒業して中堅になると問われるのがリーダーシップ力です。人をまとめていくのは大変なこと。そんな時に参考になるのがリーダーシップについての本。16世紀に書かれた「君主論」を通してリーダーシップ力を学びましょう。

mariko77kato政府公認フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子
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「君主論」って?500年前に書かれたリーダー論

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「君主論」というタイトルを聞いたことがあるでしょうか?リーダーシップを語る古典の中の中で最もよく知られている本です。この本が書かれたのは16世紀のイタリア。首相の秘書官として働いていたマッキャヴェッリが自分の経験に基づいて君主とはどうあるべきかについて語ります。自分が見聞きしたことに基づいて描かれているので、理想論ではなくリアルなリーダーが描かれているのが特徴です。500年前に書かれたとは言え、現代でも通じるところがたくさんあります。経営者の多くも読んでいるこの本を少しのぞいてみましょう。

「君主論」が書かれた歴史的背景

出典:pixabay.com

この本が書かれた16世紀、ヨーロッパはちょうど独立小国家の集まりから絶対君主制に以降しつつある時代です。フランスやスペインが大国として台頭。1492年にコロンブスが発見した新大陸へとヨーロッパは拡大路線に向かっていました。そんな中でイタリアは未だ独立小国家が林立し、大国の侵略に怯えていました。著者であるマッキャヴェッリはフィレンツェ政府の秘書官でした。共和制を取っていたフィレンツェは北からフランスの侵略、南からはローマ教皇軍の侵略にさらされていました。それらの大国の力をうまく外交でかわしたのがマッキャヴェッリです。

目標を持つことの重要さ チェーザレ・ボルジアとの出会い

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外交に当たる中で彼は運命的な出会いを果たします。チェーザレ・ボルジア、ローマ教皇の息子で強行軍を率いるリーダーでした。敵とは言え、チェーザレの時には冷酷とも言える戦略で勝利を重ねていく姿に、自国フィレンツェに必要なリーダーシップのあり方に気がつきます。チェーザレが目指したのはバラバラになっているイタリアの統一。その目標のためには時にはクールな判断が必要であることをマッキャヴェッリは見抜いたのです。

中立は崩壊を招く 上司ソデリーニの失敗

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それに対し、フィレンツェの当時の首相ソデリーニは日和見的な性格でした。秘書官であるマッキャヴェッリにも「中立の立場をとり時間稼ぎをするように」と命じます。優秀なマッキャヴェッリは北のフランスに対しても南のローマ教皇軍に対しても、命じられた通り中立の立場をとり時間稼ぎをすることに成功します。しかし、マッキャヴェッリは心の中では中立の立場をとると見方を失ってしまうことに気づいていました。そして彼の心配した通り、日和見を続けたフィレンツェ共和国は教皇軍の前に倒れてしまいます。

時には嫌われる勇気も必要

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「君主論」の中で一番よく知られているものとして「リーダーは恐れられる存在であれ」というものがあります。一見冷徹にも見えるこの思想ですが、マッキャヴェッリは中立の立場によって崩壊してしまった自身の上司ソデリーニと敵のチェーザレを見ていたのです。ソデリーニは嫌われたくないと中立の立場をとることにより自身だけでなくフィレンツェの街を占領される結果になりました。反対にチェーザレは反乱を阻止するために反乱分子を処刑しますが、結果当時イタリアに欠けていた秩序をもたらすことができたのです。

人の意見を採用して物事を決断するのが優秀なリーダー

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でも実際に恐れられる存在になるのは難しいもの。マッキャヴェッリはそんな悩みに答えてくれています。自分で考え決断するのが難しい場合は、人の考えを採用し決断すればいいというのが彼の考えです。リーダーに大事なのは良い意見を選び決断する力。そして良い意見をだしてくれた部下に正しい評価を与え、また良い意見を出せる環境を整えていくのが重要だと書いています。

現代にも生きる「君主論」

さて駆け足で「君主論」を見てみましたが、現代のリーダーに通じるところがたくさんあります。そして何よりマッキャヴェッリの見聞きしてきた生の経験に基づいて書かれているため、現実に応用していくことができます。プロジェクトやチームを任されたら読んでみたい一冊です。

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この記事のライター

政府公認フィレンツェ観光ガイド 加藤まり子

イタリア政府公認観光ガイド。本場イタリアからグルメ、ワイン、そしてイタリア男のカッコイイ生き様をお届けします。大手外資系企業で勤務中のある日「トスカーナの風に吹かれたい!」と思いつき、キャリアを捨ててイタリアに移住。フィレンツェ公認観光ガイドとして、大好きなルネサンス発祥の地フィレンツェで、現代にも通じる芸術、歴史、ライフスタイルを紹介しています。Twitterでほぼ毎日イタリアの「生」の情報を提供中。

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