貿易で栄えた港町 ヴェネツィア・ルネサンスの魅力
イタリア観光地の中でもトップ人気のヴェネツィア。カーニバルの街としても知られるヴェネツィアでは15〜16世紀にかけてルネサンスが大きく花開きました。展覧会を楽しむための情報をお届けします。
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ヴェネツィア・ルネサンスの宝庫 アカデミア美術館の所蔵作品
中世から貿易で栄えたヴェネツィア。現在ではイタリアでも人気の観光地として知られる街ですが、ルネサンス期に美術が栄えた街としても知られています。ベッリーニやティッツィアーノ、ティントレットといった巨匠たちがこの街で生まれ活躍しました。その伝統は今でもアカデミア美術館に展示されています。ヴェネツィアの芸術の歴史と今を見ていきましょう。
『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』の公式サイトです。国立新美術館で2016年7月13日より開催。作品紹介、チケット情報はこちらから!
海に浮かぶ干潟の街 ヴェネツィア
出典:pixabay.com
ヴェネツィアといえばイタリアでもローマ、フィレンツェに並ぶ人気の観光地です。街全体が干潟に位置するので、橋とゴンドラがこの街の交通手段。タクシーは船、そして街の中には車はおろか自転車すらありません。文化遺産として守られているこの街はまるでおとぎ話の国に来たような気分になります。海を渡れば東ヨーロッパやアフリカにアクセスができる土地柄、11世紀頃から十字軍の遠征と貿易で栄えました。
豊かになった街では文化が発達。現在でもよく知られているカーニバルの華やかさもその例です。経済的豊かさと貿易でもたらされた異文化が重なってヴェネツィアのルネサンスが花開きます。
ヴェネツィア絵画の魅力って?ラファエロにも影響を与えたヴェネツィア派
そんな華やかな文化的背景があるヴェネツィア。15世紀の後半に他のイタリアの都市に続きルネサンスが訪れます。ヴェネツィアのルネサンス美術の特徴は色彩です。15世紀に活躍したベッリーニはやさしい色調と陰影の使い方で後に続く画家のお手本となりました。干潟に発達したヴェネツィアは湿気が多く、同じ頃に発達したフィレンツェと異なりフレスコ画の制作ができませんでした。そこで油絵の技術をイタリアでいち早く習得したのです。この技術はやがてラファエロを始めとする後期ルネサンスの画家に継承されます。
ティツィアーノ作 圧巻の「受胎告知」
16世紀のヴェネツィアを代表する画家がティツィアーノです。前述のベッリーニ工房で修行し、ヴェネツィアの天才と言われたジョルジョーネにも絵画を学んだティツィアーノは、官能的でドラマチックな作品を次々と生み出します。彼の晩年の作品「受胎告知」。サン・サルヴァドール教会の祭壇を飾るこの絵は縦4m、横2mの大作です。大きさだけでなく、天使の突然の訪問に驚くマリア、マリアに照らされる光、取り巻く天使たちの軽やかさ、とティツィアーノの魅力を存分に味わうことができます。
21世紀の現代にも引き継がれる芸術の街 ヴェネツィア・ビエンナーレ
芸術が発達したヴェネツィアですが、その精神は現代21世紀にまで続いています。2年に1度開催されるヴェネツィア・ビエンナーレでは現代アーティストが勢ぞろい。干潟の街の至る所で芸術の展示が行われます。日本からもたくさんの現代アーティストたちが参加し、高い評価を得ています。展示内容も絵画や彫刻といった伝統的な形態だけでなく、インスタレーションや建築といった幅広いものが対象です。2017年はビエンナーレ開催の年。観光にもぴったりです。
絵画鑑賞の後は美味しいイタリアンを楽しもう
出典:pixabay.com
イタリア絵画を堪能した後はイタリア料理を楽しみましょう。イタリアンレストランでは、本場ヴェネツィアにちなんだメニューが用意されています。肥後橋にあるイル・ベッカフィーコではヴェネツィア名物のイカスミを使ったリゾットを味わえます。和のスパイスであるミョウガとミツバを散らしているところがここのメニューの特徴。そしてリーガロイヤルホテルでは、ヴェネツィア派巨匠の名前から名付けられたヴェネツィア発祥のカクテル、ベリーニを味わうことができます。
展覧会に行ってぜひ本物の美術を味わって
インターネットで全てを検索できる時代、絵画もコンピュータで高画像のものを見ることができます。しかし、展覧会で実物を見るとその力強さに圧倒されます。特にティツィアーノの「受胎告知」はその大きさだけでも体感する価値があります。実際に巨匠たちが立ったその場所にあなたも立って絵画を鑑賞してみてください。
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この記事のライター
イタリア政府公認観光ガイド。本場イタリアからグルメ、ワイン、そしてイタリア男のカッコイイ生き様をお届けします。大手外資系企業で勤務中のある日「トスカーナの風に吹かれたい!」と思いつき、キャリアを捨ててイタリアに移住。フィレンツェ公認観光ガイドとして、大好きなルネサンス発祥の地フィレンツェで、現代にも通じる芸術、歴史、ライフスタイルを紹介しています。Twitterでほぼ毎日イタリアの「生」の情報を提供中。