【どう考えても大人向け】戦うトレンディドラマ「鳥人戦隊ジェットマン」について語らねばなるまい。
今や1シリーズが1年間を通して放映されるTVドラマは、大河ドラマと日曜朝の特撮モノくらいでしょう。約50話をかけてじっくりストーリーを描くスーパー戦隊シリーズの中でも、今回は僕が最もオススメする「鳥人戦隊ジェットマン」について紹介します。
※ジェットマンの放送当時は日曜朝ではなく金曜夕方でした。
(ネタバレ多数)
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アイキャッチ画像出典:plaza.rakuten.co.jp
本作は、大人のためのエンターテインメント作品である
鳥人戦隊ジェットマン(1991.2〜1992.2)は”戦うトレンディドラマ”と評され、「東京ラブストーリー」「あすなろ白書」などと同列に語られるべき作品です。カンチとリカが変身して悪の組織と戦うようなものをイメージしていただければと思います。
詳しくは後述しますが、子ども向けではあり得ないような設定・表現が随所に組み込まれてまいます。
歴代スーパー戦隊シリーズで人気投票を行うと、必ずと言っていいほど上位に挙げられる作品ですので、大人の基礎教養として知っておいて損はないでしょう。
なお、理解しやすいよう初めに主要登場人物10名を簡単に紹介します。
チーム「ジェットマン」
天堂 竜(リュウ)/レッドホーク:
ジェットマンのリーダーであり、レッドらしく性格は熱血漢。過去の恋人であるリエが忘れられない。なお、リエは第1話で悪の組織「バイラム」に拉致・洗脳され、後に敵幹部マリアとして再会するという悲劇的展開が待っています。
作中終盤でのラディゲに対する憎しみは凄まじく、心中も辞さない姿勢で殺しにかかります。
結城 凱(ガイ)/ブラックコンドル:
ジェットマンのサブリーダーを務めるキザな一匹狼のナイスガイ。子ども向けの放送でも構わず女性をナンパしたり酒を飲んだりタバコをガンガン吸ったりします。
後述しますが、彼をめぐる最終話の展開は、視聴者に大きな衝撃を与えました。
大石 雷太(ライタ)/イエローオウル:
黄色=気は優しくて力持ち、というイメージそのままのキャラ。苦手な食べ物はトマトで、作中そこを悪の組織「バイラム」に突かれ、トマト型の怪人が送り込まれたりもしますが、結論、食べて倒します。
鹿鳴館 香(カオリ)/ホワイトスワン:
お金持ちのお嬢様キャラであり、他のメンバーに比べて肉弾戦は若干苦手な印象。当初はおっとりしていましたが、戦いの中で芯の強い女性へと成長していきます。
チーム内の恋愛模様は、彼女を中心に展開していきます。
早坂 アコ(アコ)/ブルースワロー:
メンバー最年少の高校生であり、爽やかなお調子者。運動神経に優れ、身軽な動きで敵を翻弄します。余談ですが、悪の組織「バイラム」壊滅後はアイドルに転身します。
小田切 綾/小田切長官:
ジェットマンの長官。通常、長官ポジションのキャラはヒーロー達の後方支援にあたるのが一般的ですが、小田切長官は単身で空いてるロボットに乗り込み出撃、実際に敵を撃破するなどフロント・ミドル・バックの全領域で活躍します。なお、33歳独身。
悪の組織「次元戦団バイラム」
裏次元伯爵ラディゲ:
バイラム四大幹部のリーダー格であり、本作のラスボス。非常に残忍な性格であり、数ある戦隊モノの敵キャラの中でも筆者が知る限り指おりの外道です。
後述しますが、一度トランザにより組織を追われるものの、持ち前の執念深さで再びトップへ返り咲きます。
トランザ:
バイラム四大幹部の一人。比類なき強さでジェットマンを圧倒し、一度はラディゲをバイラムから追放、栄華を誇りますが…
彼の幹部退場劇は今でもファンの間で語り草となるほど衝撃的なものでした。
藍 リエ(リエ)/バイラム幹部としての名はマリア:
バイラム四大幹部の一人であり、リュウの元恋人が洗脳された姿です。当初洗脳により記憶を失っているものの、作中終盤についに昔の記憶を取り戻し、ラディゲに反旗を翻しますが、悲しいことにその話のタイトルは「マリア…その愛と死」なのでした。
グレイ:
バイラム四大幹部の一人で、感情を持つロボット。卑怯な手を好まず騎士道精神に溢れ、ガイのライバル的存在です。作中終盤のガイとの一騎打ちは必見。なお、ロボットですがタバコを吸います。
愛と憎しみ、生と死、鳥人戦隊ジェットマンのここが凄い
主要登場人物は何となく覚えられたでしょうか?
次からは、他の戦隊シリーズではあり得ない鳥人戦隊ジェットマンの凄さについて語っていきます。
日曜朝どころか夜22時台のドラマでもここまでじゃないよという展開も多くあります。
ジェットマン青春白書?チーム内のドロドロ恋愛模様
カオリに対して、ガイと雷太が想いを寄せます。
雷太はともかくガイは女性に対して文句なしのオラオラ系であり、第5話のタイトル「俺に惚れろ」は劇中のガイのカオリに対する言葉そのままです。ガイはその後もカオリに対してアプローチを続け、30話以降では付き合います。
しかしカオリの気持ちはリュウに向いており、リュウはバイラムに拉致された元恋人のリエが忘れられません。そして最終話ではリュウとカオリが結婚するという…
はい、もう本作品が子ども向けでないということは伝わったかと思います。”戦うトレンディドラマ”と呼ばれる理由はこのドロドロの恋愛模様に由来しています。
前代未聞、精神病院送りになる敵幹部
鳥人戦隊ジェットマンは、単純な「正義VS悪」を描いた作品ではありません。敵も味方も一枚岩でなく、ヒーロー達の間で恋愛沙汰が起こっている傍ら、バイラムの中では「半沢直樹」も真っ青な権力闘争が行われるのです。
ここではラディゲを追放し、バイラムの帝王として君臨していたトランザの退場劇について紹介します。
第47話前半で圧倒的な強さを見せ、ジェットマンを壊滅の危機に追い込む活躍をしていたトランザが、後半にリュウと(人間に化けて姿を偽っていた)ラディゲの二人掛かりの攻撃によりダメージを受けます。そこでチャンスと見たラディゲが正体を現してからが壮絶でした。
ジェットマンの武器「ファイヤーバズーカ」の直撃を受け、地べたに這いずるトランザの左手を、ラディゲの剣が貫きます。
「馬鹿な……この俺が……帝王トランザが……うぁぁぁぁぁ!!!」
『トランザ、俺の名を言ってみろ』
「んんんぁぁ、ラディゲ……!」
『何?……ラディゲだと!?』
剣に力を込めるラディゲ…
「んうんんぁぁ…ラ、ラディゲ様ァ!!!」
『そうだ!!』
こうして完全にラディゲに屈服させられ、力を奪われたトランザは殺されることもなく人間として追放されるのでした。人間として生きながら、一生ラディゲの名を恐れることに…
皮肉なことにこの話のタイトルは「帝王トランザの栄光」でした。番組前半でジェットマンを蹂躙していたトランザが、その15分後に精神崩壊に追いやられると誰が予想したでしょうか。
ラディゲに精神を破壊された人間としてのトランザは、身元不明の患者として精神病院に収容されます。
虚ろな目でよだれを垂らした様子に絶句した視聴者も多かったことと思います。
最後トランザは車椅子で運ばれながら、ラディゲの幻影に悲鳴をあげ、檻の奥の隔離病棟に消えて行きました…
記憶を取り戻すも殺される元恋人、救いなんて無い
第1話でバイラムに拉致され、以降ずっと同組織の幹部となっていたマリア(人間名:藍 リエ)が、元恋人のリュウの決死の呼びかけにより、第49話でついに記憶を取り戻します。
しかし記憶を取り戻したマリアは、「リュウ、確かに昔私はお前と愛し合った。だが今はバイラムの幹部。これからもずっと!」そう言ってラディゲの元に戻ります。
しかしこれは、ラディゲを油断させるためのマリアの作戦なのでした。
油断したラディゲの隙をつき、背後から剣を突き刺すマリア(リエ)。
「せめて一太刀、お前に浴びせたかった!ラディゲ!!」
このとき彼女は、か弱い人間の姿に戻っていました。
出典:i.ytimg.com
次の瞬間、逆上したラディゲによりリエは斬られます。傷は深く、もう手の施しようはありません。
「もう助からない。最後のお願いよ、竜。忘れて、私のことを。あなたの胸から、私の記憶を拭い去って。」
そう言ってリエは絶命します。
記憶が戻ってから、ほんの1〜2分間の出来事でした。
最終話、リュウとカオリの結婚式。大団円の最中に死んでしまうガイ
バイラムとの戦いを終えて3年が経ち、皆それぞれの人生を歩み始めた時。
リュウとカオリは結婚式を挙げます。ガイはその式に向う途中に女性がひったくりに遭うのを目撃し、犯人を捕らえます。
「たく、こんなめでたい日にケチつけやがって!」
「くだらねえマネするんじゃねぇ! わかったか?!」
そう言って犯人を離したガイですが、逆上した犯人にナイフで刺されてしまうのです。
刺された傷を隠して結婚式場に向かうガイ。リュウと話し、皆が楽しそうに記念撮影をしている姿を見守りながら、手に持っていたタバコを落とし、絶命します。
リュウの「どうした、顔色が悪いぞ?」という言葉に、
「なあに、例によって二日酔いさ。空が目に染みやがる、きれいな空だ...」と応えたガイ。
最期までカッコつけていました。
繰り返す。本作は、大人のためのエンターテインメント作品である
本記事を通して、鳥人戦隊ジェットマンが大人向けである理由がおわかりいただけたでしょうか。
個人的には、いま月9で放送すれば視聴率20%超えは確定するレベルだと思っています。
24年前の放送当時は見逃してしまっていたという方も、観た記憶はあるけどほとんど内容を忘れてしまったという方も、今すぐレンタルビデオ店へどうぞ。
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この記事のライター
慶應→金融→Web89年世代。幼少期からアニメと漫画に触れながら育ち、高校時代は2年半ほどネットゲームを毎日6時間以上という生活を送っていました。読みやすく納得感のあるものを書いていきたいと思っています。