村上春樹小説の主人公に学ぶ、頼れる男になる方法5選
アンチも多い村上春樹作品ですが、その本質を見極めて間違った使い方をしなければ「オーラ」をまとった最高級の男に近づける可能性大。「優しく、強く、けど母性をくすぐる独特のオーラに包まれている」魅力的な主人公たちから、その感性を学んでおくのは悪くないと思います。
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ノルウェイの森
「孤独が好きな人間なんていないさ。無理に友達を作らないだけだよ。そんなことしたってがっかりするだけだから」
「俺とワタナベの似ているところはね、自分のことを他人に理解してほしいと思っていないところなんだ。そこが他の連中と違っているところなんだ。他の奴らはみんな自分のことをまわりの人間にわかってほしいとおもってあくせくしてる。でも俺はそうじゃないし、ワタナベもそうじゃない。理解してもらわなくったってかまわないと思っているのさ。自分は自分で、他人は他人だって」
「個」の時代を快適に生きるのに、不可欠と思われる考え方をしています。現在の日本社会はホリエモンも「今の日本社会は前に習えの教育のせいで、みな周りの目を気にしてしまう人が多い社会になってしまった」と言っているように、周りの目を気にする、人にどう見られるかが行動基準の一つになっている人が多い社会です。その中で、自分の軸をしっかり持った、人の意見に流されない考え方がリーダーシップを持った魅力的な人間を作るのは間違いありません。
それでも、人の気持ちがまったく考えないかというと、決してそうではなく、人の痛みの分かる人間です。
風の歌を聴け
「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね」
本文の冒頭で出てくるセリフです。主人公が大学生のころ偶然に知り合った作家が言った言葉。この言葉の意味を理解しているといないとで、人間的魅力に大きな違いが出てくると思います。どんな聖人君子でも完璧な人間など存在しない。そして、だからこそ人はみな人間関係に悩みを持つことになる。という事実を受け入れるだけ。それだけで、”永遠”は存在しないという真実を知り、「今」を大切にすることができます。
「復讐したい?」 「まさか」と僕は言った。 「なぜ?私があなただったら、そのオマワリをみつけだして金槌ではを何本か叩き折ってやるわ」 「僕は僕だし、それにもうみんな終わったことさ。だいいち機動隊員なんてみんな同じような顔をしてるからみつけだせやしないよ」 「じゃあ、意味なんてないじゃない?」 「意味?」 「歯までおられた意味よ」 「ないさ」と僕は言った。
「僕たちは彼女のプレイヤーでレコードを聴きながらゆっくりと食事をした。その間、彼女は主に僕の大学と東京での生活について質問した。たいして面白い話ではない。猫を使った実験の話やデモやストライキの話だ。そして僕は機動隊に叩き折られた前歯の後を見せた」
の後に続く会話のシーンです。
この会話からも、完璧な人間など存在しない。人と人は違って当たり前。と達観している主人公の度量の大きさが現れています。コミュニケーションは「人と人が違うこと」を前提に始めることで、相手の価値観と対した時に”評価”してしまうようなことが少なくなると思います。評価することは、自分と相手を比べているということ。自分が上になっている傲慢な態度です。
1Q84
「希望があるところには必ず試練がある」 「ただし希望は数が少なく、おおかた抽象的だが、試練は嫌というほどあっておおかた具象的だ」
主人公の青豆が天吾に会う決心をした時に、タマルから言われるセリフ。
人は希望に向かって、それぞれ少しずつでも進んでいくものです。そして途中には、たくさんの壁が立ちはだかって行く手を阻むもの。でも、きっとその試練自体が、それを乗り越えることで、人としてのレベルを上げてくれてくれる。その真実に気づかせてくれます。
つまりそれを知っているだけで、試練を乗り越えることを楽しんでいける。そうなったらもう、どんなトラブルが起きても動じない、「タフな心」を持つことができますよね。タフな人間は頼り甲斐があります。そして魅力的です。
海辺のカフカ
「世の中のほとんどの人は自由なんて求めてはいないんだ。求めていると思いこんでいるだけだ。すべては幻想だ。もしほんとうに自由を与えられたりしたら、たいていの人間は困り果ててしまうよ。覚えておくといい。人々はじっさいには不自由が好きなんだ。」
家出をした主人公の田村カフカ少年が、寝泊りすることになる図書館の司書である大島が、主人公に説くセリフ。
スケジュールに追われて「忙しい、忙しい。はあ、自由になりたーい」とばかり思っている人は多いと思います。でも、いざ予定が全く入っていなければ、それは自分が何をしようが自由ですが「何をすればいいのか?」「何をしたいのか」考えなければいけません。そして、その答えを見つけるのはとても難しいことです。だからこそ、ほとんどの人はそんな難しいことを考えることは逆に大変なことを無意識のうちに分かっているため、実際には不自由な状況から抜け出そうとはしない。
その真実をズバリと15歳の少年に教えてくれています。
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年
「たとえ君が空っぽの容器だったとしても、それでいいじゃない」 「もしそうだとしても、君はとても素敵な、心を惹かれる容器だよ。自分自身が何であるかなんて、そんなこと本当には誰にもわかりはしない。そう思わない?それなら君は、どこまでも美しいかたちの入れ物になればいいんだ。誰かが思わず中に何かを入れたくなるような、しっかり好感の持てる容器に」
「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」は、村上春樹氏自身も「リアリズム小説」というように他の作品とは一味違ったものになっています。作品の内容は推理小説とも言えるかもしれません。
その中で、この物語の主人公『多崎つくる』も他の作品の主人公と同じように女性にモテる点は変わりませんが、何か頼りない部分を感じる人物になっています。不甲斐ない自分と向き合うことから逃げるような性格です。無意識に争いを避けるような、非常に鈍感な自分を演じているように感じます。
そんな自分に自信を持てない『つくる』に、ヒロイン沙羅がいうセリフがこちら。
自分の中身がどんなものあるかは、本当の意味でわかる人などいない。それなら誰かが中身をつくりたくなるような魅力を持った人間になればいいという考え方。
人の中身は人によって捉え方が違う。でもどのように見られるかは誠実に好感を持たれるように作っていくことができるのだから、磨いていけばいいだけなのではないでしょうか?
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この記事のライター
ドラッグストア店長から畑違いの制作業界へ、転職をしたばかりだったのに強引にその制作会社を辞めてフリーに。なんだかんだ言ったって「どーせ人生はギャンブルだ」と思うようにしました。スポーツも音楽もプレイすることが好きなアウトドア派。”あたかも”ではなく、一次情報を発信していきたい。