【 建築探訪 最新版 】安藤忠雄の代表建築10選(東京都編)
新国立劇場の審査員も務めた日本を代表する建築家・安藤忠雄。住吉の長屋やベネッセハウス、光の教会など、数多い建築作品の中から、2016年までに東京で建設された作品をご紹介します。これを観ずして建築好きとは言えません。
- 72,935views
- B!
建築家・安藤忠雄
安藤忠雄(あんどう ただお)
大阪府大阪市港区生まれ、一級建築士。東京大学名誉教授。21世紀臨調特別顧問、東日本大震災復興構想会議議長代理、大阪府・大阪市特別顧問。
世界各国を旅した後、独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。環境との関わりの中で新しい建築のあり方を提案し続けています。
1979年に「住吉の長屋」で日本建築学会賞、93年 日本芸術院賞、95年 プリツカー賞、 03年 文化功労者、05年 国際建築家連合(UIA) ゴールドメダル、10年 ジョン・F・ケネディーセンター芸術金賞、後藤新平賞、文化勲章、12年 リチャード・ノイトラ賞など、日本を代表する建築家です。
幾何学と現代の素材、コンクリートやガラスなどを駆使した建築
安藤忠雄の建築の特徴は、「自然と共生」というテーマのもと、設計計画に幾何学形を取り入れ、素材には現代のコンクリートやガラスなどによって生み出された空間にあります。
代表作には「光の教会」「大阪府立近つ飛鳥博物館」「淡路夢舞台」「FABRICA(ベネトンアートスクール)」「フォートワース現代美術館」「東急東横線渋谷駅」「プンタ・デラ・ドガーナ」など関西地方を中心として、日本、世界各地で見ることができます。
1. 国際子ども図書館(東京都台東区上野公園)
国際子ども図書館は、国内外の児童書とその関連資料に関する図書館サービスを行う、国立の児童書専門図書館です。建物は、通称「上野図書館」として多くの人々に親しまれてきた国立国会図書館支部上野図書館の建物を再生・利用し、安藤忠雄建築研究所と日建設計の共同設計され、2002年に完成しました。
改修において、歴史的建造物の保存と再生、現代施設としての活用がテーマに掲げられ、外装と内装は旧態を残すよう極力保全するとともに、徹底的に補修、復元を施しています。その保全の徹底ぶりは、室内の床を本来の床板より数十cm上にパネルを用いて底上げし、パネルと本来の床の間の空間に空調ダクトや照明ケーブルなどを通しているほどです。
歴史との共存を実現する「アーチ棟」
美しい大階段や漆喰装飾、100年前のシャンデリアなどみどころがたくさんある建物ですが、歴史的な建物としてだけではなく、平成27年6月には新館が竣工し、ますます魅力的な建物になっています。
こども図書館というだけあって、1階の「子どものへや」では、約1万冊の子どもの本をそろえ、休日には子どものためのおはなし会などのイベントも開催しているので、お子さんと出かけてみるのもオススメです。
国際子ども図書館
〒110-0007 東京都台東区上野公園12-49
TEL:03-3827-2053(代表)
■アクセス
JR上野駅公園口より徒歩10分
東京メトロ 日比谷線・銀座線 上野駅より徒歩15分
平成12年(2000年)に国立国会図書館の支部図書館として設立された、わが国初の国立の児童書専門図書館です。
2. 東京アートミュージアム(東京都調布市仙川町)
出典:artyours.jp
東京アートミュージアムは調布市の仙川駅からほど近い通り沿いにつくられた美術館です。非常に小さな美術館で、三層吹き抜けの大空間中央に階段が設けられ、壁に展示された作品を階段を上ることによって違う視点から眺めることができます。
壁面にはトップライトやスリット状の開口部が程よく設けられ、外部の光を採り入れたり、外部空間を感じながらアートを鑑賞する美術館です。長大なガラスの壁面の両側にコンクリートの固まりを置き、モニュメントとする安藤忠雄建築の特徴が表れています。
仙川の安藤ストリート
調布市の仙川駅からほど近い通り沿いだけで、安藤建築が6棟並んでおり、通称「安藤ストリート」と呼ばれています。シティハウス仙川、東京アートミュージアム、せんがわ劇場・ふれあいの家・仙川保育園、仙川デルタスタジオ、シティハウス仙川ステーションコートが並び、日本でも安藤建築を一挙に見ることのできる数少ない場所です。
東京アートミュージアム
〒182-0002 東京都調布市仙川町1-25-1
■開館時間
木・金・土・日曜日11:00-18:00(入館は18:00まで)
■休館日
月・火・水曜日(夏期休館日 8月14日/15日/16日)
■入館料
一般500円 大学生400円 高校生400円 小中学生300円
■アクセス
京王線仙川駅より徒歩3分
東京調布市に2004年10月にオープンした東京アートミュージアム。国内外のアーティストの作品を随時展示していきます。安藤忠雄氏が設計した建築空間の中で作品鑑賞を存分にお楽しみください。20061229更新
3. 表参道ヒルズ(東京都渋谷区神宮前)
東京で見られる安藤建築で最も有名な建物といっても過言ではない表参道ヒルズ。
この地には関東大震災後、復興計画の一環として建設された近代日本で最初期の鉄筋コンクリート造集合住宅である「旧同潤会青山アパート」がありました。
そのため建設当初より、この風景をどのような形で残していくのかが、建替え計画の主題のひとつとなってていました。この主題に対しての安藤忠雄の解答が、地下空間を最大限にいかし建物ヴォリュームの過半を埋設して、建物の高さをケヤキの並木と同限度に低く抑え、表参道の穏やかな坂道をそのまま建物内のパブリックスペースとして取り入れるというものです。建物は表参道の道なりに、約250メートルの連続したファサードをつくりだし、各フロアは穏やかな勾配の表参道から連続するスロープで構成される都市空間への新しい公的空間を寄与しています。
敷地面積の30%が緑化
「目指すのは、表参道の同潤会アパートの、次の時代への『再生』である。」と語っているように、表参道ヒルズの住宅は、立体フレームによるリズミカルな構成で、両面いっぱいに開けられた開口部からは表参道のケヤキ並木の借景が楽しめます。屋上には、ちょうど道なりのケヤキ並木とつながるようなかたちで屋上植栽が植えられており、敷地のうち30%もの面積が緑化されているというから驚きです。 接地性はなくとも、常に街との一体感を感じることができ、この場所でしかできない、緑に包まれた空間を楽しむことができます。
表参道ヒルズ
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前四丁目12番10号
■アクセス
東京メトロ銀座線、千代田線、半蔵門線「表参道駅」A2出口より徒歩2分
東京メトロ千代田線、副都心線「明治神宮前〈原宿〉駅」5出口より徒歩3分
「表参道ヒルズ」は、歴史ある街の記憶を継承し、新たな時代のランドマークへと成長していきます。
4. 21_21 DESIGN SIGHT(東京都港区赤坂)
東京ミッドタウンの敷地内にある21_21 DESIGN SIGHTは、地上1階地下1階のデザインを専門とした美術館です。施設のディレクターにはデザイナーの三宅一生などが顔を揃え、デザインという視点から日常的な出来事や物事に目を向け、企画展を通して様々な発見や提案を行っています。
折り曲げられた巨大な鉄板の屋根が地面に向かって傾斜する独創的な造形の建物は、三宅一生が取り組んできたテーマ「一枚の布」に対応するという意味が込められており、ほとんどのボリュームが地下に埋まっていながらも、地上階にエントランスと受付、地下階に2つのギャラリーと三角形のサンクンコートを擁した、外からは想像できないほど大きな空間が広がっています。
著名デザイナーとの協働
前述にもあったように、安藤忠雄はこの建物を設計するにあたり、三宅一生の服づくりのコンセプトである「一枚の布」に着目し、一枚の鉄板を折り曲げたような屋根を考えました。この屋根のほか、日本最長の複層ガラスなど、建物の外観からは想像できないほどに世界でも屈指の建築技術が結集されています。
また、施設のロゴデザインでは、「明治おいしい牛乳(明治乳業)」「キシリトールガム(ロッテ)」などのパッケージデザインで有名なデザイナーの佐藤卓が担当しています。
施設では年に3回から4回の企画展を開催し、展示期間中にも様々なプログラムをおこなっており、建築だけでなくアートやデザインに興味のある方は必見です。
21_21 DESIGN SIGHT
東京都港区赤坂9-7-6 東京ミッドタウン・ガーデン内
■開館時間
10:00 - 19:00(入館時間は18:30まで)
■休館日
火曜日、年末年始、展示替え期間
■入場料
一般1,100円 大学生800円 高校生500円 中学生以下無料
(15名以上は各料金から200円割引、いずれも消費税込)
■アクセス
都営大江戸線・東京メトロ日比谷線「六本木」駅、
千代田線「乃木坂」駅より徒歩5分
5. LA COLLEZIONE(東京都港区南青山)
出典:arc-no.com
コレッツィオーネは1989年に竣工した建物で、表参道ヒルズが建つ以前は青山の安藤建築を代表する作品でした。鉄骨鉄筋コンクリート造、地下3階・地上4階建て、延べ床面積約5700㎡の規模の複合商業施設で、6.15mでグリットに分割された3つの直方体と21mの円筒の組合せを基本とし、敷地に合わせた角度で微妙な隙間から創り出された空間を回廊、螺旋階段、階段状の広場が迷路のように繋いでいます。
建築の構成は円筒と直方体の組合せで創り出される空間にたいして、吹抜けを通して光を取り込む計画です。高さを抑えることで周辺の街並みに呼応し、都市環境の変化に対応するという安藤建築の根底に流れるテーマを早くから体現している作品です。
通路や吹き抜けが複雑に入り組んだ迷宮
建築ボリュームの半分近くが地下に埋まっており、地表から15m下のサンクンコートや20m下のプールまで自然光が入り込んでいます。
複雑な建物の構成のため、迷宮のように入り組んでおりテナントが入りにくいということもあるそうです。
南青山COLLEZIONE
〒107-0062 東京都港区南青山6-1-3 南青山コレッツィオーネ
■アクセス
東京メトロ銀座線・千代田線・半蔵門線「表参道駅」より徒歩4分
表参道駅徒歩4分。青山のイベントホール[展示会場/セミナー会場/貸切パーティー会場(結婚式2次会)]の紹介ホームページ。
6. BANK GALLERY(東京都渋谷区神宮前)
表参道ヒルズからあるいて5分、キャットウォークストリート沿いにも安藤建築があります。竣工当初は「hhstyle.com/casa」というARMANI CASAとBoffiの商品を扱うインテリアショップでしたが、現在はBANK GALLERYというイベントスペースとして、様々なイベントが開催されています。
この敷地には利用期限があり、建物は半仮設的なものとしてデザインする必要があったために、内部はスキップフロアによる地上2階地下1階の空間となっており、外形がそのまま内部に表れる比較的簡素な仕上げになっています。一枚の鉄板を自由に折り曲げたような黒いスチールプレートを外装に使い、厳しい敷地条件から、ピース毎に一度分けた鉄板を現場で溶接し張り合わせ組立てられています。
21_21 DESIGN SIGHTへと続く鉄板溶接の建築技術
鉄板を仕上材として見せる安藤建築は、更に高い精度を求められた2年後の「21_21 DESIGN SIGHT」へと引き継がれていきます。一見威圧的な建築ですが、積極的に原宿の街との親和性を意識してデザインされた建物は必見です。イベントスペースとして催しなども行っているため、見学も可能な建物です。
BANK GALLERY
〒150-0001 東京都渋谷区神宮前6丁目14−5
■アクセス
JR山手線『原宿』駅(表参道口)徒歩8分
BANK GALLERY | 住所:東京都渋谷区神宮前6-14-5 / 面積:B1F〜3F計142.10坪(約470㎡)/ 設計:安藤忠雄建築研究所 / en one tokyo inc.
7. 東急電鉄 東急東横線 新渋谷駅 (東京都渋谷区渋谷)
出典:arc-no.com
東京メトロ副都心線の開業にあたり、設計されたのが「東急東横線・東京メトロ副都心線渋谷駅」で、「地宙船」をテーマにしたそのユニークなデザインは開業前から大きな話題を集めていました。
デザインの特徴は「地下深くに浮遊する宇宙船」として、3層を貫くようにイメージされた卵形のシェルです。「卵の殻」が構内のところどころに現れ、新駅のシンボルになっています。また、改札のある地下2階のコンコースから地下5階のホームまでを貫く楕円形の吹抜けは空間のダイナミズムを生みだし、電車の排熱などによって暖められた空気を、上方に逃がす役割を担っているという建築は世界にも例がありません。
地宙船というタマゴ
安藤氏曰く、『何で「たまご」かというと、前からたまごをつくりたいなと思っていたんですけれど、ここから何かが生まれてくる「たまご」。「地宙船」の中に入ると心がワクワクするとか、電車に乗る以上のことを考えられる駅にしたいと思ったんですね。」という想いで設計されたそうです。安藤デザインのタマゴを見に渋谷駅を利用してみましょう。
東急電鉄のに関するページです。
8. 東京大学情報学環・福武ホール(東京都文京区本郷)
東京大学創立130周年を記念して独立大学院・東京大学大学院情報学環の校舎として計画された、200人収容のホールを含む校舎施設です。「社会との対話の拠点」を目指して開館され、その建物の大きな特徴は「考える壁」と呼ばれる自立する36cmの壁と95.4mの深く延びる屋根庇です。
地下2階には180人収容の大講義室「福武ラーニングシアター」やスタジオ・会議室・ワークショップ等、学生が新しい研究にとりくみ機能が備わっています。
現代の三十三間堂
楠の緑の景観を遮らない高さまでに抑えた結果生まれた地上部分のファサードは長い間口を持つ京都の三十三間堂を参照し、全体のプロポーションを決定しています。
「考える壁」の向こうで、学生たちの活発な知的活動が展開する風景を期待して計画に臨んだという、この建築は日本最高峰の頭脳が引き締めく空間になっています。
東京大学情報学環・福武ホール
〒113-0033 東京都文京区本郷7丁目3−1
■開館時間
月曜〜金曜 午前8時〜午後9時(行事が開催される場合、土日、祝日も開館します)
■アクセス
都営大江戸線 本郷三丁目駅 徒歩7分
東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅 徒歩8分
東京大学 情報学環・福武ホールのオフィシャルウェブサイトです。情報学環・福武ホールは、福武總一郎氏による寄附に基づき、安藤忠雄氏の設計によって建築され、2008年3月26日に竣工しました。
9. 東急大井町線 上野毛駅(東京都世田谷区)
出典:arc-no.com
2011年3月に竣工した東急大井町線上野毛駅新駅舎は東京都世田谷区の環状8号線と上野毛通りが交差する場所に建っています。道路に分断された、ふたつの改札を屋根が繋ぎ、幅20mの上野毛通りの上に架かっています。
この特徴的な屋根はガルバリウム鋼板製で、上野毛通りを覆い東西の駅舎を繋ぐ役割としてだけでなく、バス停の屋根も兼ねており、採光のために8m径の円形の穴が穿かれています。
新渋谷駅に続く東急電鉄の駅舎
出典:arc-no.com
全長120メートルの駅舎側面はガラスで構成され、駅全体にも光が差し込む造りになっています。渋谷駅の設計に続き、上野毛駅でも安藤忠雄の空間を体感することができます。
東急電鉄の上野毛駅に関するページです。
10. TOTOギャラリー・間(東京都港区)
人間・時間・空間それぞれの間合いという、日本特有の概念を表象する「間」の一字を名称とした「TOTOギャラリー・間(ま)」は、トイレ・住宅設備機器を製造するメーカーTOTOが運営する、建築とデザインの専門ギャラリーです。
ギャラリー・間では、国内外の建築家やデザイナーの個展を続け、示空間そのものが「作品」となるユニークな展示方法をとっています。第1会場から外部の中庭を抜けて第2会場に至るという、建築の構成も独特です。展覧会の企画は、TOTOギャラリー・間 運営委員会が行い、発足時のメンバーとして安藤忠雄、川上元美、黒川雅之、杉本貴志、田中一光(故人)の5氏が発起人となったことから、建築を安藤氏が担当しました。
建築やインテリアデザインの展覧会・講演会が無料で公開
展覧会はそれぞれの作家の思想・哲学が表現された展示空間が企画され、講演会では、幅広い見地から国内のみならず、国際的に活躍している建築家をも招き情報を提供しています。また、その活動主旨に基づき展覧会と連動した「ギャラリー・間 叢書」、「建築MAP東京」などの出版活動も行っているので、建築やアートに関心がある方は必見です。
TOTOギャラリー・間(ま)は、TOTOが運営する、建築とデザインの専門ギャラリーです。建築家・デザイナー「個人」がもつ思想や価値観を表現する場として、出展者一人ひとりのメッセージを発信しています。
この記事のキーワード
この記事のライター
九州からはるばる東京にでてきた、典型的な田舎者。未だに人ごみにも慣れず、家から外にでることをためらうことも多々。地元に想いを馳せながら書いています。