【建築探訪 最新版 】安藤忠雄の代表建築21選(大阪府編)

新国立劇場の審査員も務めた日本を代表する建築家・安藤忠雄。住吉の長屋やベネッセハウス、光の教会など、数多くある建築作品の中から厳選して、出身地である大阪府の作品をご案内します。安藤建築案内の完全版、これを観ずして建築好きとは言えません。

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建築家・安藤忠雄

安藤忠雄(あんどう ただお)
大阪府大阪市港区生まれ、一級建築士。東京大学名誉教授。21世紀臨調特別顧問、東日本大震災復興構想会議議長代理、大阪府・大阪市特別顧問。

世界各国を旅した後、独学で建築を学び、1969年に安藤忠雄建築研究所を設立。環境との関わりの中で新しい建築のあり方を提案し続けています。

1979年に「住吉の長屋」で日本建築学会賞、95年 プリツカー賞、12年 リチャード・ノイトラ賞など数々の栄誉に輝いてきました。そんな日本を代表する建築家となった安藤は、ユニークな経歴の持ち主なのをご存知でしょうか。彼は大学での専門的な建築教育は受けておらず、建築設計事務所でのアルバイト経験と独学で建築士の試験に合格しました。さらには、プロボクサーでもあったというから驚きです。今も74歳という年齢からは考えられないほど、精力的な活動を行っていけるのには、ボクサーの頃に培った身体が源にあるのかもしれません。

幾何学とコンクリートやガラスなど近代の素材を駆使した建築

安藤忠雄の建築の特徴は、「自然と共生」というテーマのもと、設計計画に幾何学形を取り入れ、素材には現代のコンクリートやガラスなどによって生み出された空間にあります。

代表作には「光の教会」「大阪府立近つ飛鳥博物館」「淡路夢舞台」「フォートワース現代美術館」「東急東横線渋谷駅」「プンタ・デラ・ドガーナ」など関西地方を中心として、世界各地で見ることができます。

1. 住吉の長屋 東邸(大阪府大阪市住吉区)

安藤建築と言えばコンクリート打放しのミニマルな表現ですが、中でも実質的なデビュー作であり、初期の代表作が「住吉の長屋」です。この作品で1979年に日本建築学会最高の栄誉である日本建築学会賞を受賞しました。

大阪市住吉区の一角、狭い路地に面した三軒長屋の真ん中部分に間口2間・奥行き8間を切り取りコンクリート住宅に建て替えた作品です。外観は正面に出入り口の開口部のみで、内部に入ると箱を3等分し、真ん中に中庭を配置するつくりになっています。2階寝室からトイレに行くためには、手摺の無い階段を雨の日には傘をさして下りなければいけないなど、住み手にも条件が課せられた挑戦的な建物です。

現代の長屋

住吉の長屋の広さは、間口3.45m、奥行き14.25mのわずか20坪。安藤氏も幼少期から長らく下町の三軒長屋中宮町の住宅に住んでいた経験から、限られた敷地と予算のなかで建蔽率などの諸条件をクリアした豊かな空間をつくり上げています。

2. 小篠邸 KHギャラリー芦屋(兵庫県芦屋市)

小篠邸は1976年にファッションデザイナー・ヒロココシノ氏の邸宅として建てられました。現在では、「KHギャラリー芦屋」として予約制の一般公開を始め、小篠弘子のアート作品をじっくりと鑑賞できる美術館のようなギャラリーとなっています。

この建築は、2棟に分かれたコンクリート打ち放しの住宅となっています。南棟には6帖ほどの小部屋が8室並び、北棟の1階はリビング・ダイニング、2階にベッドルームが2室配置しています。斜面に建っているため、2階に玄関があり階段で1階のリビングへ下りるつくりになっています。

一般公開された貴重な住宅作品

2013年からは「KHギャラリー芦屋」として予約制の一般公開を始めました。小篠弘子氏の作品を観ながら、安藤忠雄の住宅作品を見学できる貴重な建築です。

小篠邸 KHギャラリー芦屋
〒659-0003 兵庫県芦屋市奥池町 17-5

■開館時間
11:00~17:00 ※最終日は16:00まで
入場無料 予約不要 金・土・日のみ開館

■アクセス
JR芦屋駅6番、または南口のりば、阪急芦屋川駅6番のりば、阪神電鉄芦屋駅4番のりばより、
阪急バス80系統または81系統にて「奥池」バス停下車(所要時間20〜25分)。
バス停脇の階段を上がった先の右側の建物です(徒歩2分)。

3. 光の教会 茨木春日丘教会(大阪府茨木市)

茨木春日丘教会は、プロテスタント系の日本基督教団に所属する教会として1972年に大阪府茨木市北春日丘で設立されました。安藤建築の中でも最高傑作と呼び声高いこの作品は、1989年に礼拝堂を設計し、国際教会建築賞を受賞したころから別名「光の教会」と呼ばれるようになり、広く知られるようになりました。建設当初は資金の問題により、屋根を後から作る青空教会の案もありましたが、関係者や施工会社の寄付により屋根が取り付けられることになったそうです。

建物は打放しコンクリートを用い、礼拝堂内部には祭壇後部の壁面一杯に十字架状のスリット窓が設置されているのが最大の特徴です。内部にはこの「光の十字架」以外には十字架はなく、信者が聖書の世界をイメージする手助けとして聖母子像・天使像などの装飾を多用するカトリック教会と異なり、それらが偶像崇拝に誤用される危険があり、像や絵画を教会に置かないとする立場のプロテスタントの教会堂建築の簡素な堂内になっています。六甲の風の教会、北海道の水の教会と合わせて、安藤忠雄建築の「教会三部作」のひとつに数えられています。

現代美術家・杉本博司の写真

「海景」シリーズなどの写真やコンセプチュアルアートで世界的に活躍する現代美術家・杉本博司。彼の作品の対象として建築を取り上げたものがあり、その中に光の教会を撮影したものがあります。モノクロの非常に美しい作品で、なんとプリントであれば実際に購入することも可能です。

光の教会 茨木春日丘教会
大阪府茨木市北春日丘4丁目3-50

■アクセス
近鉄バス 春日丘公園行き(循環)に乗車、春日丘公園(10分程度)で下車。

■見学
不定期で教会が指定した見学日のみ、見学可能。
見学日以外の見学は不可。見学には、公式ホームページ上での「予約」が必要です。

4. 大阪府立 近つ飛鳥博物館(大阪府河内郡河南町)

近つ飛鳥(ちかつあすか)と名付けられた大阪府南部のこの地域は、国内有数の古墳群が存在し、日本の歴史の発生期における中心的な場所として位置付けられています。そのような南河内地域の歴史・文化活動の、拠点として設計された作品が「大阪府立近つ飛鳥博物館」です。

建物は窪地に位置しているため、周囲を一望できるように段状に隆起させ、「黄泉の塔」と呼ばれるシンボリックな塔が大階段にそびえるように建っています。丘陵に埋め込まれた階段状の屋上広場をのぼると、周囲に広がる豊かな自然が一望でき、建物周辺には「風土記の丘」がひろがっています。

歴史と豊かな自然を感じることができる場所

この施設の周辺には梅林や水をたたえた池があり、風土記の丘の散策路で巡ることができます。初春のころには梅林が美しく花を咲かせ、初夏には新緑が、秋には紅葉がこの地域を彩ります。周辺の文化遺産や自然と調和した建物は野外活動の拠点としても活用されています。

大阪府立 近つ飛鳥博物館
〒585-0001 大阪府南河内郡河南町大字東山299番地

■開館時間
09:45~17:00(展示室への入館受付は10:00~16:30まで)

■休館日
毎週月曜日(月曜日が祝日の場合は火曜日が休館)、年末年始

■アクセス
近鉄長野線「喜志」駅下車、金剛バス阪南線にご乗車「阪南ネオポリスバス」停下車

5. 大阪文化館 天保山・旧サントリーミュージアム(大阪府大阪市港区)

「大阪文化館・天保山」は、1994年にサントリー創業90周年事業によって開設された「サントリーミュージアム天保山」が2010年に休館したことに伴い、大阪市へ建物を無償譲渡されたのち、2013年より再びオリックス不動産の運営によって再開した建物です。

サントリーミュージアムでは東京都内にあったのサントリー美術館が日本古来の美術・工芸品を収集しているのに対して、モネやボナール、ロートレック、ミュシャ、カッサンドル、ホックニーの作品や世界各国の秀作ポスターなど、近現代美術の収集・展示を行っていました。

建設当初サントリーの会長であった佐治敬三氏が大阪に芸術や文化と親しめる空間と「きれいな夕日」を眺められる美術館の設計を安藤氏に依頼したことから設計が始まりました。この建物は、直方体の美術館と逆円錐形に入るIMAXシアターやショップなどから構成される複合施設で、大きなガラス面が大阪湾に向かって開かれたダイナミックな空間になっています。

美しい夕日を眺めることができる建物

佐治氏の要望にあったように、この施設では大阪湾に沈む美しい夕景を眺めることができるのも魅力です。空の青や海の濃紺を取り込み、時間帯によって様々な表情を見せてくれるこの施設は、デートなどにもうってつけの場所ではないでしょうか。

大阪文化館 天保山・旧サントリーミュージアム
〒552-0022 大阪府大阪市港区海岸通1-5-10

■アクセス
地下鉄中央線 大阪港駅下車 1番・2番出口より徒歩約5分
市バス 天保山下車 徒歩約3分[大阪駅88系統・難波駅60系統]

6. 紀陽銀行 堺支店・紀陽堺ビル(大阪府堺市堺区)

和歌山県に本店を置く紀陽銀行の大阪の拠点として堺市に建てられました。バブル経済末期の1991年はじめに計画が持ち上がり、同時期には、前述のサントリーミュージアムや近つ飛鳥博物館など、大規模な安藤建築が誕生しており、紀陽堺ビルも同様に景気の良さを感じさせる大胆なデザインになっています。

建物の大部分はコンクリート打ち放しで構成され、主な開口部はガラス張りの円筒部分と、その上部に挿入され、大きく開いたヴォイド空間のみとなっています。周辺には大きな建物がほとんど無いため、この建築はコンクリートの壁のように目を引きます。

経済の隆盛を感じるデザイン

ビルとしての機能性だけでなく、設計当初の経済を反映するような建物になっています。建物上層部のコンクリート壁は厚みを抑えたプロポーションになっているため、威圧感は比較的感じないデザインになっています。

7. 大阪国際フェリーターミナル(大阪府大阪市住之江区)

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出典:pds.exblog.jp

大阪港の南港にある大阪国際フェリーターミナルは、埋め立てにより造成され弁天埠頭に代わる施設として1996年に設けられました。ターミナルでは、韓国・釜山や中国・上海の間を結ぶフェリーが発着しています。

建物は海側に270度に開かれた逆円錐形のガラスドームを、コンクリート打ち放しの円筒型の階段とエレベーター室が支えるデザインになっています。

海に開かれた建物

施設のガラスドームからは、港に停泊するフェリーを見ることができます。施設の開館時間はフェリーが運航している期間のみになっているので、見学の際には日時を確認する必要があります。

大阪国際フェリーターミナル
〒559-0034 大阪府大阪市住之江区南港北1-20-52

■アクセス
地下鉄中央線・南港ポートタウン線「コスモスクエア駅」下車徒歩約15分。

8. 司馬遼太郎記念館(大阪府東大阪市)

歴史文学の大家である司馬遼太郎氏が亡くなられた後の2001年に、司馬氏の自宅と隣接地に建つコンクリート打ちっ放しの建物で構成され、地下1階、地上2階、ゆるやかな曲線を描くシンプルな構造で、雑木林風の庭の小径から窓越しに、書斎を間近に見ることができます。

設計において「蔵書で囲われて、闇に包み込まれたような、かすかな光の空間のイメージ」(記念館図録より)をテーマに、コンクリートの空閑内部とエントランスへ誘うガラスの回廊など住宅街の周辺環境にも調和するデザインです。2002年の第22回 大阪まちなみ賞・大阪府知事賞、2003年に第44回 建築業協会(BCS)賞を受賞しているこの建物は、周辺環境や街並みに配慮した作品として、安藤建築の中でも非常にすぐれた作品となっています。

2万冊を超える蔵書に囲まれた圧巻の大書架

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出典:inoues.net

司馬遼太郎氏の残した6万冊に及ぶ蔵書のうち約2万冊と多数の自著が高さ11mの大書架に納められています。直筆原稿などの貴重な資料が展示されているこの施設では、安藤建築だけでなく司馬氏の愛読者も楽しめる場所になっています。

司馬遼太郎記念館
〒577-0803 大阪府東大阪市下小阪3丁目11番18号

■開館時間
10:00 ~ 17:00(入館受付は16:30まで)

■休館日
月曜日(祝日、振替休日の場合はその翌日)、年末年始(12/28 ~ 1/4)、特別資料整理期間(9/1 ~ 9/10)

■入館料
入館料 大人・大学生 500円、高・中学生 300円、小学生 200円
20名以上の団体は、入館料が2割引です。

■アクセス
近鉄奈良線 「八戸ノ里(やえのさと)駅」下車 徒歩約8分

9. 大阪府立 狭山池博物館(大阪府大阪狭山市)

日本最古のダム式ため池である狭山池の大改修に伴い、発掘された土木遺産などを展示する博物館として建設されました。1400年の歴史を刻む狭山池と一体化するように親水空間が計画されています。

この建物は、水盤から水が流れ落ちている水庭と、スロープのある円形のコートによってエントランスが形成され、内部に入ると出土した土木遺産にあわせ構成され、吹き抜けが配置されています。土木遺産の保存と公開を目的として2001年に開館しているため、時代順に7つのゾーンに分け、水と大地との関係性を狭山池と出土文化財を中心にわかりやすく常設展示しています。

千本の桜が咲き誇る名所

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九州からはるばる東京にでてきた、典型的な田舎者。未だに人ごみにも慣れず、家から外にでることをためらうことも多々。地元に想いを馳せながら書いています。

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