「風の通り道」を改善するプチ・リフォーム
エアコンに頼らない生活を心がけても家の中に涼しい風を通すのはなかなか難しいものです。しかし、昔ながらの日本の家屋には、暑い夏を賢く乗り切る知恵がたくさん取り入れられており、家の中を効率よく風が通り抜けるようにうまく設計されていました。暑い夏が来る前に、一度自分のお部屋を点検してみてはいかがでしょうか。
- 7,252views
- B!
効率よく涼しくするために
木造の昔ならがの家屋では、エアコンがない生活が普通でしたから、家の中を効率よく風が通り抜けるようにうまく設計されていました。しかしエアコンの使用を想定した現代の住宅は気密性が高くなっていて、冬は暖かいものの、夏はエアコンなしでは熱がこもってしまうことが多々あります。そこで、今の住まいを見直して、エアコンに頼らなくても涼しくなるような改善を検討してみましょう。それには、家の中を風が効率よく通り抜けるように道筋を確保してあるげることです。
夏季の「風の入り口」を見極める
家の周囲を吹く風の向きは一定ではありませんが、夏季に限定すると、ある程度の傾向は見えてくるはずです。夏場におもにどちらから風が吹いてくるのかを見極めて、その風をもっともダイレクトに受ける家の窓を探し当てましょう。そして、その窓からスタートして、風が家の中の部屋から部屋へ、滞らず通り抜けるように工夫していくことになります。もしも風の入り口側に窓がまったくない場合は、窓を増設するか、あるいは横位置の窓を「縦すべり出し窓」に改造して横風を捕まえるのも一案です。「縦すべり出し窓」を設置する際に、外に開いた戸が風下側に来るようにすると、横を通る風を家の中に取り込むことができるのです。
「開き戸」の通風と虫除けを両立させる
夏場に窓から風を取り込む場合、厄介なのは虫も一緒に入りこんでしまうこと。そこで虫除け対策も同時に考える必要があります。しかし現代の洋風家屋では「開き戸」が一般的になっているため、一般的な「引き戸」式の網戸を取り付けられません。いわゆるアコーデオン式やロール式の網戸もありますが、長期間にわたる開閉にも耐えるには、なるべくシンプルな構造にするのが無難です。そこでおすすめしたいのは、開き戸には開き戸、引き戸には引き戸の網戸にすること。通常はシーズンが終っても基本的には取り外しできませんが、構造が単純なため、網が傷んでも張替えやメンテナンスが簡単というメリットがあります。
風が部屋を出入りできるように
風の入り口をつくっても、その風が家全体をまわって再び外に出る道筋ができていないと、いくら窓が開いていても風は入ってきません。そこで、部屋と部屋、部屋と廊下の間を風がスムーズに流れるように道をつくってあげることが大切です。もっとも、部屋の入り口ドアを開放しておけば風は通りますが、そこから入った風が次の部屋へ、あるいは外へ出る場所も用意しなければなりません。通常は窓を開けて外に出せばよいでしょうが、窓を開放したくない場合や、そもそも窓がない袋小路の空間もあります。その場合は外に面した壁に通気口や換気扇を設置すると効果的です。冬場は逆に通気口にフタをして気密性を高めることを忘れないようにしましょう。
サーキュレーターを使って空気を循環させる
自分の住居であれば、お部屋の通気性をよくするためにちょっとした改造をすることもできますが、アパートや賃貸マンションの場合はそうもいきません。そこで建物に変更を加えることなく手軽に風の通り道をつくるには、サーキュレーターを活用しましょう。サーキュレーターは扇風機とよく似た機能のアイテムですが、扇風機の風が拡散性であるのに対して、サーキュレーターの風は直進性である点が最大の違いです。直接あたる使い方をするには扇風機の風が一番ですが、窓から取り込んだ空気を隣の部屋の入り口に狙い定めて送り出してやるにはサーキュレーターが理想的です。またエアコンと併用して冷えた空気を循環させるのにも効果的です。
暑い夏が来る前に
なるべくエアコンに頼らない生活を心がけても、気密性の高い現代の家屋では、家の中に涼しい風を通すのはなかなか難しいものです。いっぽう、昔ながらの日本の家屋には、冬場の断熱性に弱点はあるものの、暑い夏を賢く乗り切る知恵がたくさん取り入れられているのです。和室の上部にある欄間(らんま)や、通気性がよく取り外しも楽な障子戸、ひんやりした畳など、現代の日本人が忘れかけたものがまだまだたくさんあります。暑い夏が来る前に、一度自分のお部屋を点検してみてはいかがでしょうか。
この記事のキーワード
この記事のライター
藝術文化系のコラム、論評の執筆を多くこなしてきました。VOKKAではインテリアなど、アートに関わる記事を中心に執筆しています。