読むとその時代がわかる松本清張ミステリー4選

昭和を代表する作家、松本清張の読めば時代が分かるミステリー4選をご紹介します。

vokkaVOKKA 編集部
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ミステリーの変革者、松本清張

松本清張はミステリーに限らず、古代史や恋愛小説も手掛け、幅広い活動をした昭和を代表する作家です。
清張が登場するまでのミステリーは、猟奇的なものやおどろおどろしい内容で、私立探偵が活躍する江戸川乱歩、横溝正史の「探偵小説」が中心でした。清張は同時期に現れた水上勉らと同様に、刑事が丹念に捜査して事件を解決に導く「社会派ミステリー」と呼ばれる作品を発表し、時代の変革者となります。

そんな松本清張の、読むとその時代も分かるミステリー4選をご紹介します。

『点と線』 ~鉄道ミステリーの元祖~

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福岡県の海岸で男女の死体が発見され、心中事件と判断されます。二人は一週間前に女の同僚たちに東京駅のホーム越しに急行列車に乗るところを目撃されていました。男は汚職が噂される某省の役人でした。
心中に疑問を感じた福岡県警の刑事と、警視庁の刑事が二人で真実に迫ります。

ミステリーをよく読まれる方は、この『点と線』のトリックをすぐに見破れるかもしれません。しかし、この作品が発表されたのは1958(昭和33)年です。鉄道ミステリー、時刻表を使ったミステリーの初出と呼ばれる作品です。
この作品から多くの鉄道ミステリーが誕生することになります。

『ゼロの焦点』 ~新婚の夫の背後に隠された秘密とは?~

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新婚の夫が金沢への出張後に行方不明となり、新妻は金沢で夫を探します。調査の結果、夫は金沢では別の人物として生活していたことがわかりました。
なぜ、夫が別人になる必要があったのか、妻は疑問を持ちます。さらに殺人事件が発生し、夫の隠された秘密に妻は近づいていきます。

二時間ドラマなど映像化されたミステリーでは、犯人の逮捕や独白などのラストシーンが断崖に設定されることがよくあります。これは『ゼロの焦点』のラストシーンが断崖だからだと言われています。

『砂の器』 ~殺人に至る主人公の哀しい過去~

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蒲田駅の操車場で顔を石で潰された絞殺死体が見つかります。懸命の捜査にも関わらず、手がかりさえ得られずに捜査本部は解散します。ただ一人、解決に執念を燃やす刑事が粘り強く捜査を続け、やがて意外な人物が捜査線上に浮かびあがります。

本書は1961(昭和36)年から翌年まで新聞に連載され、刊行されました。現在でさえ大きく取り上げられることの多い問題が、当時どれほどの差別であったのか、その断片を知ることができます。それと同時に、この問題の根深さがわかる作品でもあります。

『渡された場面』 ~名誉を手に入れた男に待っていた究極の選択~

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四国に住む捜査一課長が、趣味で読んでいた文芸誌に、暗礁に乗り上げた殺人事件の住居とそっくりの場面を描写した小説を見つけます。小説を書いた九州の青年を訪ねますが、事件には関係がありません。しかし、その青年と親しかった女性が失踪したことを知り、疑問を持ちます。

週刊誌に連載された小説で、未読の読者のために各章の初めに事件の概要が繰り返し説明されていて、やや読みづらい面がありますが、遠く四国と九州で起きた殺人事件と失踪事件が意外なものを接点として結びつき、双方の事件解決に導かれていくプロセスは、さすがの松本作品です。ちょっとした心の弱さ、いわゆる魔がさした時に起こしてしまった行動が破滅をもたらせるというのも清張ならではの手腕です。

加害者の動機を深く掘り下げる松本清張の作品

現実世界では動機のない殺人や無差別殺人が起き、ミステリーの多くがトリック重視に傾く中、松本清張ミステリーは加害者の動機を深く掘り下げた点に特徴があります。
現在の地位を守るため、家族を守るため、名誉を得るため、動機は様々ですが、そこに人間としての悲しみや業といった、時代を超えて共通するものを感じさせるところが松本作品の持つ強さです。

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