2022/12/19

不器用な男、高倉健出演おすすめ映画18選

2014年、惜しまれつつも亡くなった日本を代表する俳優・高倉健。短刀片手に暴れまわり、刑務所帰りのダークヒーローから仕事一筋実直な男を無口に演じ続けました。
出演本数200本を超えるなかから、厳選して18作品をご紹介します。

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アイキャッチ画像出典:realsound.jp

最後の銀幕俳優、日本が誇る大スター

出典:movie.jorudan.co.jp

1931年、福岡県出身。もともと芸能事務所のマネージャーを志望していましたが、面接時にスカウトされ東映ニューフェイス第2期生として東映へ入社します。養成所では落ちこぼれであったと言いますが、第1回日本アカデミー賞をはじめ数々の映画賞を受賞し、1998年に紫綬褒章、2006年に文化功労者、2013年には文化勲章を受章した日本が世界に誇る銀幕スターです。

日本のみならず海外でも人気な俳優・高倉健。180cmの長身に寡黙で男気溢れるキャラクターは多くの人の心を掴み、2000年に発表された「キネマ旬報」の「読者が選んだ20世紀の映画スター」の男優編において三船敏郎に次いで第2位となりました。約60年にもなる役者生涯での出演映画数は200本を超え、そのほとんどで主役を務めたという稀有な存在です。2014年お亡くなりになられたとき、政治家である石原慎太郎も「最後のビッグスターだった。名声が長くもった希有な人だった」と悼みました。劇画「ゴルゴ13」の作者さいとう・たかを曰く、主人公デューク東郷の容姿のモデルは高倉健であるそうです。本人曰く朝が弱く遅刻魔であり、若い頃は毎日20分ほど必ず遅刻していたという意外な一面もあります。
そんな高倉健の主演映画のなかから厳選して、まずは見て欲しい18作品ご紹介します。

1.日本侠客伝(1964年 98分 全11作)

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あらすじ・見どころ

明治、大正期の深川。ここで古くから運送業を営む木場政組は、やくざのような強引な手口を使い新たに台頭してきた沖山運送株式会社からの妨害に一足触発状態。それでも争いを好まない組長の木場政(伊井友三郎)が組を抑え抗争は免れていました、しかし、組長の死によってその均衡は崩れ、いよいよ全面抗争となります。そこに除隊して帰ってきた辰巳の長吉(高倉健)は、組の皆から小頭になりまとめてくれるようお願いされました。心残りのまま亡くなった組長のため、そして不満を溜めたままの若い衆のために長吉は立ち上がります。

高倉健の人気を決定的にしたキャリア初期の人気任侠映画!

日本の映画界を率先する東映が、その後続く任侠映画の長期シリーズとしてはじめて作った任侠映画界の草分け的存在です。1964年から1971年にかけて全11本が製作されました。シリーズとありますが、各作品の設定やストーリーに繋がりはないためどこから観ても楽しめるようになっています。もともとは歌舞伎から現代劇に転向した時の人気俳優・萬屋錦之介を主演に考えられていましたが、萬屋錦之介の降板に伴ない、前年に任侠映画「人生劇場 飛車角」で準主役を演じていた新人である高倉健が主演に抜擢されました。

2.網走番外地(1965年 92分 全18作)

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あらすじ・見どころ

北海道・網走。深々と積もる雪の上に次々と列車から降りてくるのは手に縄をかけられた男達。彼らはそこからトラックへ乗せられ網走刑務所へ護送されます。そのなかには、殺人鬼・鬼寅の義兄弟として顔を聞かせる依田(安部徹)や新入りの権田( 南原宏治)、大槻(田中邦衛)そして橘真一(高倉健)の姿がありました。橘は幼い妹と自分のために、暴力を振るう男と再婚してくれた母の体調が心配でなりません。他の受刑者とは違い、真面目に作業をする橘に、保護司の妻木(丹波哲郎)は仮釈放の手続きをしてくれます。しかし、それをよく思わなかった依田たちからの妨害で橘は刑務所内での争いに巻き込まれていきます。

北の大地で暴れまわるギャングもの!

1作目はモノクロ、2作目からカラーとなっています。シリーズとして全18作ありますが、石井輝男監督による全10作と、他の監督による「新網走番外地」があります。これは石井監督がこの作品に飽きてしましましたが、世間からの人気は高く会社が他の監督を手配してシリーズを続けたというものです。また俳優の田中邦衛は今作で、高倉健演じる主人公を慕う舎弟をコミカルに演じ人気に火がつき、日本が誇る名バイブレイヤーとなりました。

3.昭和残侠伝(1965年 90分 全9作)

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あらすじ・見どころ

戦後の浅草、露天商を営む市の人々は新興ヤクザである新誠会による違法的な上納金に困っていました。昔ながらの神津組はどうにか助ける術は悩んでいました。しかし神津組4代目組長源之助(伊井友三郎)が新誠会の手により殺されてしまいます。その直後、戦争から帰ってきた寺島清次(高倉健)は親分の死と、変わってしまった浅草の姿に驚きます。源之助の遺言により神津組5代目を注ぐこととなった清次は組員の五郎(梅宮辰夫)らとともに浅草の立て直しに尽力しますが、新誠会のによって五郎は殺され、新な事業も潰されてしまします。そしてついに清次は担当を握りしめ新誠会に殴り込みに行くのでした。

世間が熱狂した!昭和を代表するヒーロー

「日本侠客伝」「網走番外地」と並んで、高倉健の初期を代表する3大シリーズです。戦後が舞台ですが、その設定やストーリーには「日本侠客伝」と類似点が多く、この時代は他の俳優が演じる任侠映画でも多くの類似作品が派生して任侠映画の最盛期となりました。のちに高倉健の主演作を多く手がけることとなる降旗康男監督が、本作では助監督として携わっています。また、「昭和残侠伝」の見どころは高倉健が劇中で披露する主題歌でもあります。

4.新幹線大爆破(1975年 152分)

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見どころ・あらすじ

ある日、国鉄に「本日東京駅を出発した“ひかり109号”に爆弾を仕掛けた」と男の声で電話がかかってきました。続いて「新幹線が走行速度80km/hを下回ると爆発する」とも説明する犯人の声に国鉄と警察に緊張が走ります。新幹線に乗った多くの乗客を人質に巨額の身代金を要求する犯人たち。犯人たちの目的はなんなのか、緊迫した状況のなか、運転指令室長を務める倉持(宇津井健)とひかり109号を運転する青木(千葉真一)は国民の責任を背負い、電話の向こうの謎の男(高倉健)らと巧みに戦います。

高倉健が徹底した悪役を演じる!当時の日本が精巧に描かれたパニック映画

このままではヤクザの役しかできなくなってしまうと危機感を感じた高倉健が東映を退社し、背水の陣で挑んだ挑戦作です。高倉健、宇津井健、千葉真一、竜雷太ら豪華俳優陣によるパニック映画として、日本国内より海外での人気が高い特殊な映画です。ハリウッドでのパニック映画から触発されて作られていますが、当時の日本の組織の内部事情、乗客たちの葛藤と対応、そして犯人たちの背景にある日本の問題が浮き彫りになり2016年の映画「シン・ゴジラ」のように、ただのパニック映画ではなく日本人の性格や心理状況を感じ取ることのできる映画です。

5.君よ憤怒の河を渉れ(1976年 151分)

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あらすじ・見どころ

1976年10月10日の新宿、検事の杜丘冬人(高倉健)は見知らぬ女から「金品を盗まれ強姦された」と告発され逮捕されてしまいます。人違いですぐに釈放されるだろうと思った杜丘ですが、寺田俊明と名乗る男性から「この男にカメラを盗まれた」と名指しで通報されます。次々と出てくる告発と十分すぎる証拠品の数々。何者かによって罠にかけられたことに気づいた杜丘は警察の目を盗み逃走。最初に告発してきた女の正体を暴こうと彼女の郷里である北海道へ向かいますが、すでに女は殺されていました。一体誰が、そして何のために自分をはめたのか。

中国で大ヒット!理不尽にも立ち向かう孤高の検事

原作は1974年に発行された西村寿行の同名小説であり、2017年中国で福山雅治とチャン・ハンユーのW主演でジョン・ウー監督によって映画「マンハント」というタイトルでリメイクされました。中国において、文化革命後初めて公開された外国映画であり、無実の罪を着せられその理不尽にも果敢に戦っていく主人公・杜丘の姿は当時の中国人にとってまさにヒーローであり、中国人の半分は見たとも言われるほどの人気作となりました。

6.幸福の黄色いハンカチ(1977年 108分)

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あらすじ・見どころ

恋人に振られてヤケになった鉄也(武田鉄矢)は真っ赤なファミリアを買ってひとり傷心旅行で北海道にやってきました。道中でナンパした朱美(桃井かおり)と2人で旅をしていると、網走刑務所から出所したばかりの男・勇作(高倉健)と出会います。偶然出会った奇妙な3人は一緒に旅をすることとなり、じょじょに勇作は過去の話をするようになります。それは服役前に妻がいたこと、そして「自分を待っていてくれるなら、家の前に黄色いハンカチを掲げておいてくれ」と妻に手紙を記したことでした。

第1回日本アカデミー賞受賞作!日本一不器用な男

日本映画界の第一人者である山田洋次が監督を務め、第1回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ監督賞、主演男優賞など6部門を受賞した高倉健の代表作です。高倉健にとって初の松竹映画の出演であり、冒頭の出所後初めての食事でビールを注文してラーメンとカツ丼を食べるシーン、出所者が久々の贅沢を味わうというものですが、高倉健はこのシーンのために2日間何も食べずに挑み、無事1テイクでOKが出たという逸話が残っています。今作が初の本格的な演技となった武田鉄矢、当時から独自の個性が滲み出る桃井かおり。そして夫の帰りを待つ妻役に倍賞千恵子らがキャスティングされ、豪華俳優たちの演技も見逃せません。

7.八甲田山(1977年 169分)

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あらすじ・見どころ

1901年(明治34年)10月、日露戦争を目前にした日本帝国は来る戦いに向けて雪中行軍演習を考えていました。雪が吹雪く八甲田の山で寒地装備と寒地訓練を行うというもの。弘前第八師団の友田少将(島田正吾)は青森歩兵第五連隊神田大尉(北大路欣也)と弘前歩兵第三十一連隊徳島大尉(高倉健)にこの演習を提案します。お上の提案はすなわち命令でありすぐさま準備を始める2人。青森と弘前からそれぞれ八甲田を目指し、山頂ですれ違おうと軽く口約束をしましたが、想像を絶する過酷な環境が待っていました。

「天は我々を見放した」過酷な環境における人間性を描いた大作映画

210名中199名が死亡したという、1902年に実際に起きた、近代において世界最大の山岳遭難事故である八甲田雪中行軍遭難事件を題材に、組織と人間のあり方を描いた社会派映画です。実際の撮影現場も日本映画史上類を見ない過酷なロケであり実際に出演者が逃げ出したり、高倉健自身も軽度の凍傷になってしまったといわれています。当たり前ですがCGは一切なく、劇中で俳優の肌が紫に変色しているのもメイクではなく本当に凍傷になりかけたからという逸話も残っています。北大路欣也の台詞「天は我々を見放した」は当時流行語となり、主演の2人に加え丹波哲郎、緒形拳、大滝秀治、加山雄三、三國連太郎ら大物俳優陣に、まだ新人であった下條アトム、大竹まことといった俳優も出ています。

8.冬の華(1978年 121分)

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あらすじ・見どころ

暴力団・東竜会幹部の加納秀次(高倉健)は、兄弟分の松岡幸太郎(池部良)を殺さなければなりませんでした。加納は一人残された松岡の娘・洋子(池上季実子)を気にかけ、ブラジルにいる伯父と名乗り刑務所から手紙を送ります。15年の刑期を終え出所した加納は堅気になることを決意します。服役中に洋子を近くで守り、身の回りの用意をしてくれる舎弟の南幸吉(田中邦衛)のおかげであたかかく出迎えられますが、親分の坂田良吉(藤田進)をはじめ、生きる死ぬかの瀬戸際であった組の者たちは、外車に乗り豪遊するようになっていました。変わってしまった彼らに加納は戸惑い、人生を考えます。

兄弟分の忘れ形見を想う、堅気になりきれない寡黙なヤクザ

もともと山下耕作が監督を務める予定でしたが意見の相違により降板、監督・降旗康男と主演・高倉健というゴールデンコンビが誕生しました。北大路欣也、田中邦衛、夏八木勲、小林亜星、小林稔侍といった東映ヤクザ映画に欠かせない顔ぶれですがクラシック音楽やシャガールの絵画がストーリーのアクセントとなるなど従来とは違った芸術的魅力を感じる作風となっています。ヒロイン洋子役ははじめ当時の大スター山口百恵を予定されていましたが諸事情により断られ、ブレイク前の池上季実子がヒロインを務めることとなりました。

9.動乱(1980年 150分)

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あらすじ・見どころ

初年兵たちの指導官である宮城啓介(高倉健)は、ある夜兵士の溝口が脱走したとの知らせを耳にします。溝口は仲の良い姉・薫(吉永小百合)が借金のため売られようことを聞き、売られる前に一目会いたく故郷へと向かっていたのでした。しかし連れ戻しに来た上司を誤って殺害してしまった溝口は処刑されてしまします。それから数年、東京で五・一五事件が発生し、部下から脱走兵を出した宮城は罰として朝鮮の前線に送らることとなりました。現地にで開かれた宴で芸者となった薫と再会した宮城。その夜、薫は自ら命を絶とうとしますが死に切れず、雇い主から罰せられてしまします。東京への配属のため移動となった宮城は薫を連れて日本へ帰るのでした。

動乱の日本を描く。時代の波に翻弄される無口な青年将校

高倉健と吉永小百合の初共演作として、激動であった昭和を生きた青年将校とひとりの女性を描きます。製作の岡田裕介が二・二六事件を題材に描きたいと企画したものの、実際の事件関係者・親族が存命であり肖像権やプライバシーを危惧したこと、そして「八甲田山」の撮影を終えたばかりの高倉健が「こういう悲劇的な作品に続けて出るのは気が進まない。死ぬのはつらい」と話が進まず、撮影までに数年がかかりようやく実現した作品です。当時すでに30歳を過ぎていてもなお、透明感に溢れ可憐な吉永小百合には脱帽ものです。

10.駅 STATION(1981年 132分)

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あらすじ・見どころ

警官でありオリンピックの射撃選手の代表に選ばれた英次(高倉健)は雪が降る銭函駅のホームで妻の直子(いしだあゆみ)と4歳になる息子に別れを告げます。傷心のなか、英次の上司である相馬(大滝秀治)が英次の目の前で連続警察官射殺犯として指名手配中の森岡茂(室田日出男)に射殺されてしまいました。犯人の追跡を希望する英次とは裏腹にオリンピックを控えている英次は捜査から外されてしまいます。そしてちょうどテレビでは逃去オリンピックのマラソンで3位に輝いた円谷幸吉が周囲の期待に押しつぶされて自殺をしたと報じました。

北海道を舞台に男の人生を描いた人間ドラマ

監督・降旗康男と主演・高倉健コンビで日本アカデミー賞において最優秀作品賞を含む5部門を受賞しました。劇中では八代亜紀の代表曲「舟唄」が印象的に使われ、北海道三大秘岬のうちのひとつ雄冬岬、増毛町を舞台に複雑に入り組む人間関係を描きます。本作でキーパーソンとなる飲み屋の女主人・桐子を柔らかい色気と強い魅力たっぷりに倍賞千恵子が演じます。また「幸福の黄色いハンカチ」以来、高倉健と交友関係が続いた武田鉄矢が1シーンのみ登場しますのでお見逃しなく。

11.南極物語(1983年 145分)

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あらすじ・見どころ

1956年、文部省の南極地域観測隊第1次越冬隊は南極観測船・宗谷に乗り南極へ赴きました。隊員の潮田暁(高倉健)と越智健二郎(渡瀬恒彦)は犬係となり、ソリを引っ張ってくれる15匹の樺太犬の世話をします。1958年2月になり、第2次越冬隊に引き継ぎをするため道具や犬を置いたまま南極大陸を後にしますが、その後長期にわたる悪天候のため第2次越冬隊の上陸は中止となります。潮田と越智の要請も虚しく極寒の地に置き去りにされた樺太犬、そして自責の念が募る2人は1年後に再開された第3次南極地域観測隊に再び志願します。

当時歴代興行収入記録を樹立した、樺太犬タロとジロの感動作

南極大陸に取り残されたタロとジロの物語を原作に、撮影に3年をかけて描いた大作です。当初は派手な演出もなく犬が中心のストーリーに難色を示しましたが、封切りすれば、動員数は1,200万人を突破、61億円の配給収入となりました。当時日本映画の歴代興行収入1位を樹立し、1997年のジブリ映画「もののけ姫」、実写では2003年の「踊る大捜査線2」まで破られませんでした。人が立ち去った南極で15匹の犬がそれぞれどのように過ごしたか、丁寧に様子を描いている部分は犬たちが愛らしく無念な気持ちになりとても苦しい気持ちになります。

12.夜叉(1985年 128分)

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あらすじ・見どころ

大阪ミナミで夜叉の異名を持った伝説のヤクザ北原修治(高倉健)は愛する妻・冬子(いしだあゆみ)と一緒になるためにヤクザから足を洗い若狭湾に面した港町で漁師をしていました。ある冬、ミナミから蛍子(田中裕子)という女がやってきて小料理屋を開きます。元ホステスの蛍子目当てに町の男たちは毎晩店に通いますが、蛍子のヒモでシャブ中のヤクザ・矢島(ビートたけし)が現れます。厄介者の矢島は漁師たちにも覚醒剤を捌くようになり、静かに暮らしていた修治にも危険が及びます。 

背中に夜叉を持つ伝説のヤクザ

監督・降旗康男と主演・高倉健コンビが送るヤクザの男を描いた人情モノです。妻・冬子役のいしだあゆみが美しく、しかしそれに引けを取らないほど妖艶な魅力で男を惑わす蛍子役・田中裕子の演技も素晴らしい。どちらも現代に比べて一昔前の、男と女の役割が明確に分けられた、言わばステレオタイプに当たる女性像なのですが、そこに対して嫌悪的ではなく新鮮で魅力的に映る不思議な映画です。夜叉とは主人公・修治の背中に彫られている刺青を意味しますが、ラストシーンで鏡ごしに映る蛍子の表情はまさに夜叉そのものです。この映画をきっかけにビートたけしと高倉健は健さん、たけちゃんと呼び合う仲になったそうです。

13.あ・うん(1989年 114分)

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あらすじ・見どころ

昭和12年、中小企業の社長・門倉修造(高倉健)は旧友である水田仙吉(板東英二)一家が転勤から3年半ぶりに東京に帰ってくるということで、迎える準備をしていました。20年以上にわたり水田一家と交流を深める門倉は家族の一員のようなモノで、水田の娘・さと子は門倉のおじさまと慕い、妻のたみもまた好意をもって接しています。門倉は水田の妻に淡い愛情を持っていましたが、仙吉はそれに気付きつつもなお門倉と仲良く接する不思議な関係を続けていました。

高倉健と板東英二があ・うんのコンビを演じた人情映画

向田邦子がテレビドラマとして描いた脚本を降旗康男監督が映画化、水田仙吉を演じた元プロ野球選手の板東英二はこの作品でアカデミー賞最優秀助演男優賞をはじめ数々の映画賞を受賞しました。昭和初期、戦争前の不穏な空気が目前に迫る、明るく優美な東京・山の手を舞台に描き、17年ぶりの映画復帰となった富司純子をはじめ、宮本信子、富田靖子、真木蔵人らが脇を固めます。撮影中の1987年、高倉健は母親を亡くしますが、スタッフのすすめを断り、葬儀に参加することなく映画撮影に挑みました。

14.ブラック・レイン(1989年 125分)

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あらすじ・見どころ

ニューヨーク市警察本部捜査課の刑事ニック・コンクリン(マイケル・ダグラス)と同僚のチャーリー・ビンセント(アンディ・ガルシア)は偶然レストランで日本のヤクザが殺人を起こす場面に出くわします。追跡の末に逮捕した犯人の佐藤(松田優作)は日本国内で指名手配されており、2人は日本まで護送することと成ります。しかし空港で手違いをおこし佐藤を逃してしまい、異国の地で警察としての権限もないまま大阪府警の松本(高倉健)の監視下での生活となります。納得のいかないニックとチャーリーは松本と衝突しながらも佐藤を捕まえるため危険を犯します。

松田優作と共演した貴重なハリウッド出演作!

「ブレードランナー」「グラディエーター」で知られるリドリー・スコット監督が日本の人気俳優である高倉健、松田優作をキャスティングして製作した貴重な作品です。松田優作にとって本作が劇場映画作として遺作になりました。日本を舞台にしたアメリカ映画というと、不自然な日本が出てくることも少なくありませんが、スタッフ・キャスト共に大勢の日本人が参加していたためそういった映像はほとんどありません。主演のマイケル・ダグラスは大阪京橋でのロケで日本人ファンに尊敬される高倉健を見て「アメリカではブルース・スプリングスティーンの時だけだよ。あんなに尊敬される姿を見られるのは!」と驚いていたそうです。

15.四十七人の刺客(1994年 129分)

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あらすじ・見どころ

1701年(元禄14年)の春、江戸城で赤穂藩主・浅野内匠頭(橋爪淳)が吉良上野介(西村晃)に斬りかかったとして刃傷の罪で切腹、赤穂藩は取り潰しとなりました。浅野の家臣であり赤穂藩家老の大石内蔵助(高倉健)は藩主の仇を討つべく、気づかれないように表面化で準備を進め、吉良の悪い噂を江戸に流します。しかし、大石の陰謀に気づいた米沢藩家老の色部又四郎(中井貴一)は阻止すべく情報を集めます。

生涯最後の時代劇!名作「忠臣蔵」の大石内蔵助を熱演

池宮彰一郎の同名小説を原作に「日本映画誕生100周年記念作品」として作られた東映の力作です。日本アカデミー賞において4部門で受賞し、高倉健にとって生涯最後の時代劇となっています。戦前戦後を通して何度も映像化され、大石内蔵助を演じることが俳優にとって一種のステータスともなっている題材「赤穂事件」。今作で高倉健は主役の大石内蔵助を演じ、情報収集や暗殺といった事件から討ち入りに至るまでを中心に描いた作品となっています。

16.鉄道員ぽっぽや (1999年 112分)

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あらすじ・見どころ

北海道のローカル線・幌舞線の終着駅である幌舞の駅長・佐藤乙松(高倉健)は仕事一筋に生きてきました。間もなく定年を迎える彼と同時に幌舞線も廃止を迎えることとなります。人生の大きな節目を前に、彼は仕事に真面目なばかりに看取ることもできず生後2ヶ月で死んてしまった娘や、病で先立った妻のことを思い出します。正月の日、彼の元に真っ赤なランドセルを背負った少女が現れます。それから彼の周りに不思議な体験がいくつも起こるのでした。

来る日も来る日も駅に立ち続けた男の物語

監督・降旗康男と主演・高倉健コンビによる、そして高倉健にとって19年ぶりとなる古巣・東映での出演映画です。小説家・浅田次郎の直木賞受賞作を原作に大竹しのぶ、小林稔侍、田中裕子、広末涼子、吉岡秀隆ら演技派俳優らが脇を固めます。主題歌は坂本龍一が作曲、奥田民生が作詞を担当して話題になりました。日本アカデミー賞で8部門を受賞した本作は、無口で仕事一筋、不器用だけれど優しい主人公はまさに高倉健の代表作とも言えます。

17.単騎、千里を走る。(2005年 108分)

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あらすじ・見どころ

長年疎遠だった息子・健一(中井貴一)が病に倒れたことを知らされる父親の高田剛一(高倉健)。余命わずかだと知った剛一は、民俗学者である息子がやり残した仕事をするために、誰に頼まれるでもなく中国へと渡します。以前、息子の健一には、山奥の集落で中国の伝統である仮面劇を取材した折に次来た時に撮らせてもらうと約束した歌がありました。中国に着き、約束を交わした役者を探していると彼は今、刑務所の中で服役中だということが分かりました。

父と息子のつながりを描いた日中合作映画

中国編では中国を代表する映画監督チャン・イーモウが、日本編では高倉健と馴染み深い降旗康男が監督を務めました。題名は三国志に出てくる故事「六将を斬りて五関を過ぐ」を独立させた小説「千里走単騎」から取られています。雄大な風景と音楽が素晴らしく、日本映画ではないロケーションに無骨な高倉健がより一層映えて写ります。チャン・イーモウ監督は撮影の際、休憩であっても他のスタッフに遠慮して椅子に座らず立ち続けたり、エキストラたちにまで丁寧に挨拶をする高倉を見て「こんな素晴らしい俳優は中国にはいない」と語ったそうです。70歳を過ぎても主演が舞い込む俳優なんてもう日本にはいないではと感じ、改めて高倉健の偉大さを実感しました。

18.あなたへ(2012年 111分)

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あらすじ・見どころ

富山の刑務所で指導教官を務める倉島英二(高倉健)のもとに、亡くなった妻の洋子(田中裕子)から手紙が届きました。そこには故郷の海に散骨して欲しいと書かれ、そしてもう一通、故郷である長崎県平戸にある郵便局で局留郵便として送られるとのことでした。なせそのようなことをしたのか分かりませんでしたが、妻からの最後の手紙を受け取るべく、倉島は仕事を辞めワンボックスカーで長崎までひとり旅に出ます。道中では同じくひとりで旅を続ける元国語教員(ビートたけし)、仕事で全国を回る田宮(草なぎ剛)と南原(佐藤浩市)ら様々な人と出会います。

ゆかりある豪華俳優陣との共演を果たした最後の主演作

20作目となる監督・降旗康男と主演・高倉健コンビの作品は高倉健にとって205本目の出演映画であり、高倉にとっても、また2012年に亡くなられた大滝秀治にとっても遺作となりました。「あ・うん」のプロデューサー市古聖智が遺した原案を元に製作され、キャストにはビートたけし、田中裕子、佐藤浩市、余貴美子、草なぎ剛ら、高倉健とゆかりのある豪華メンバーが集結しました。また長年、高倉のファンである芸人の岡村隆史は以前アカデミー賞授賞式で「将来は高倉健さんのような俳優になりたい」とスピーチを行い会場から笑いが起こるなか、高倉は独りにこやかに立ち上がって拍手を送りました。その後10年以上の時を経て今作で無事共演を果たしました。

最後に

生涯83年のうち俳優人生59年、出演数200作を超え、そのうちのほとんどが主演という大俳優ですから、今回おすすめしたのは本当にごく一部です。もっと高倉健を見たい人は、三國連太郎主演作の「飢餓海峡」、日本版ゴッドファーザーである「山口組三代目」、アメリカ映画の「ザ・ヤクザ」、生き残った特攻隊の葛藤を描いた「ホタル」などもいかがでしょう。

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