戦火をくぐり抜けたクロアチア・ボスニアヘルツェゴビナ・セルビアの現在はどうなっている?歩き方とおすすめ観光スポット10選

様々な国、民族、宗教、言語などで多様性を有していた旧ユーゴスラヴィア連邦は、1980年のチトー大統領没後、バランスを崩し抑えていた民族問題や独立問題が甚大な被害を産む紛争へと繋がりました。まだ記憶に新しいこの紛争・戦火をくぐりぬけた旧ユーゴの現在の姿をご紹介します。

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悲劇の紛争の舞台となった3国

旧ユーゴ時代、個人の民族の壁の意識は低く、異なる民族でも愛し合い、共に生活を送ったそれらの国々はチトー大統領没後に酷い争いを生みました。20万を超える死者が出、激しい怒涛の時代をくぐりぬけたその地の人々の心の傷は癒えることなく現在まで続いているのではないでしょうか。ここでは特に、現在観光産業が最も成功していると見られるクロアチア、かつて愛し合った人々の大虐殺の地となったボスニア・ヘルツェゴヴィナ、旧ユーゴ連邦軍として力をふるったセルビアについて記載します。

クロアチア

1・ドブロヴニク旧市街

「アドリア海の真珠」と呼ばれる美しい街・ドブロヴニク。現在、バルカン半島の中で最も観光産業が成功した国・そして街であると言えるでしょう。1991年に、民族問題が未解決のまま独立に踏み切ったこの国には、セルビア人が多くおり、セルビア人(旧ユーゴスラヴィア連邦軍)対クロアチア人の紛争へと発展しました。ドブロヴニク旧市街もかなりの被害を受け、1979年に世界遺産登録されたにも関わらず紛争により、「危機にさらされている世界遺産リスト」に名が載りましたが、終戦後1994年に、再び世界遺産登録されました。
現在この街はその様な戦火に見舞われたと思えないほど美しく、リゾートを求めてやってくるあらゆる国の人々を魅了しています。

2・プリトヴィツェ湖群国立公園

首都ザグレブから南へ110キロに位置するこの国立公園は、ドブロヴニク旧市街と同じく1979年に世界遺産登録されました。しかし、こちらも1991年からの紛争により、一時セルビアの管理下におかれ、1995年に再びクロアチアに戻りました。戦争の甚大な被害の為、こちらも「危機にさらされている世界遺産リスト」に登録され、緊急保護が必要な事態となりましたが、現在ではすっかり美しい湖群の姿を取り戻し、その美しさで訪れる人々を魅了してやみません。

ボスニア・ヘルツェゴビナ

3・サラエヴォ旧市街

ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエヴォは多様な民族・宗教・文化を有する街です。1984年冬季オリンピックが開催されたこの街も、1991年からの独立戦争の為砲火を浴び、多大な被害を受けました。クロアチアの観光都市に比べるとまだ傷跡は見受けられ、遠い過去ではない事を感じます。
このボスニア・ヘルツェゴビナももちろんヨーロッパの一国ですが、なんとも入り混じった文化の、オリエンタルで素朴な魅力を持っています。旧市街中心のバシチャルシア(職人街)は中東の様な雰囲気でお土産物もカラフルでトルコっぽいものが多くあります。また、第一次世界大戦のきっかけとなったオーストリア・ハンガリー帝国の皇太子夫妻暗殺の舞台であるラテン橋は、ミリャツカ川にかかる美しい橋です。

4・オリンピック会場の墓地とスナイパー通り

大統領府や政府庁舎の集まる官庁街からコシェヴォ通りを北に15分ほど行った場所にある、サラエヴォ冬季オリンピックの施設は、戦争の犠牲者埋葬の地となりました。墓地まで運べず、この広いグラウンドに運び、砲撃を避けながらの埋葬でした。グラウンド一面に並ぶ墓標には、92年-95年の文字が刻まれ、痛々しい傷を思い起こさせます。2002年に日本のNGO団体が桜の苗木600本を植え、春になると一面ピンクに咲き乱れます。

東はホリデイ・インから西へと続くトラムの通る大通りは、戦争中、セルビア人狙撃兵が動くもの全てを標的とした通称「スナイパー通り」です。子供や老人、女性も狙い撃ちされ、甚大な被害が生まれました。ホリデイ・インは当時その様な状態でも営業を続け、砲撃の中ジャーナリストがここに集まり、戦時状況を世界へと伝えました。

5・モスタルのスターリ・モストと旧市街

サラエヴォから南に3時間、クロアチアのスプリットやドブロヴニクからバスで4時間程の距離に位置するモスタル。街の中心を流れるネレトヴァ川にかかる橋がスターリ・モスト。豊かな山間の自然に抱かれ、川のせせらぎが聞こえるこの美しい街に、酷い戦火が及んだとは思えない様な静かな雰囲気です。スターリ・モストから度胸試しに飛び込む人々の姿もこの街の名物となっています。
スターリ・モストの両岸に広がる旧市街は、お土産物屋、レストランやチャイが飲めるお茶屋など楽しめ、夕方にはイスラムのモスクからアラーの祈りが聞こえ、川沿いに光が灯り始めます。
現在でも川の流れ東側にモスクやムスリム人、西側にクロアチア人と住み分けされ、住人の往来は殆どなく、銃弾の跡も多く残り、戦争の爪痕は感じますが、そのなんとも言えない美しさは訪れる人々を魅了してやみません。

セルビア・ベオグラード

6・クネズ・ミロシュ通り(空爆通り)とNATOによる空爆跡

諸外国との戦争はデイトン条約によって収まっていましたが、明確にされていなかったコソヴォ自治州との紛争は収まりませんでした。独立を希望するコソヴォ自治州(アルバニア人)にアメリカが手を貸す形となり、1999年3月より78日間に渡ってアメリカによる空爆攻撃をされました。
写真の建物はクネズ・ミロシュ通りの有名なNATO空爆跡のもの。現在街はほぼ復興していますが、ベオグラード散策中突然見られるこの風景は、やはり戦争の爪痕を感じさせます。

街を走る黄色のバス。これは戦災にまみれたこの地へ、日本からの寄付で与えられました。日本とセルビアの国旗が描かれ、他のバスよりも綺麗に、大事に乗られています。

7・カレメグダン公園

ドナウ合流

サヴァ川とドナウ川の合流する丘の上にあるカレメグダン公園は、時計塔、要塞、ローマ井戸や動物園、教会などを有しています。現在の姿は18世紀以降のものですが、この場所には紀元前4世紀から要塞が作られていました。ベオグラードのオアシススポットで、多くの観光客やローカル達が城壁や丘の頭頂部であるゴルニー・グラードからの眺めを楽しんでいます。

8・聖サヴァ教会

東方正教会としては世界最大の規模を誇る聖サヴァ教会。この大きな教会の前はちょっとした公園の様になっており、定時刻に鳴らされる鐘の立派な音を聴きながら多くの人々が佇んでいます。聖サヴァは、セルビア正教会の創立者で、中世セルビア王国創始者ステファン・ネマニャの息子。彼の遺体は、オスマン朝の支配時代にベオグラードへ運ばれ、この教会の建つ地で焼かれました。

9・スカルダリヤ

ベオグラード中心地であるテラジエの北に位置する共和国広場、そこからさらに北東へ進んだ一角が「ベオグラードのモンパルナス」と呼ばれる地区、「スカルダリヤ」。セルビアの伝統料理が食べられるレストランやなんとなくレトロな映画に出てきそうな可愛らしいカフェ、ナイトパブ、一帯に描かれる壁画などおしゃれにまとめられた地区です。なんとなくちょっとディープさを感じるベオグラードの夜、ここを歩くのは少し古い映画の中にいる様な気持ちになります。

コソヴォ自治区

10・コソヴォの街

セルビア国内に位置しながら、セルビア人と敵対するアルバニア人が多く住むコソヴォ。紛争の経過としてこの地にはアルバニア人が多く住む事になりました。「コソヴォはセルビアに付随する・独立は認めない」という主張を持つセルビア人と、国連加盟国60カ国より独立を認められたコソヴォの人々(アルバニア人)は未だ仲良くありません。セルビアで売られている地図と、諸外国で売られているそれのコソヴォの境界線は記載が異なります。また、セルビアから隣国へ出国する際、コソヴォのスタンプがあるとすんなりとは通過できません。

セルビアがアメリカと敵対の位置を取らざるを得なかったのとは逆に、コソヴォは自分達の独立に大いに力を貸してくれたアメリカを英雄の様に慕い、その街には多くのアメリカ国旗や大統領像など祀られています。

未来へ続く復興と平和を

現地を訪れると、ヨーロッパの地に位置しながらも西側とは異なる雰囲気や文化を持つそれぞれの国。あまりにも残酷な運命に悲嘆の想いは拭えませんが、それと同時にそれぞれが持つ独特で美しい魅力に心惹かれずにはいられません。日本ではそれほどポピュラーではない中欧・バルカンですがこれまであまり知られていない魅力は、一度訪れるとその国のバックグラウンドと共に印象が深く残ります。このような美しい場所で生まれた紛争の傷跡、そして人々の心の傷が少しでも癒えるようにと願うばかりです。

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