ヴェルナー・パントンのトータル・デザインで設計された家具
生活空間をより魅力的にみせるためにも空間を照らし出す照明にもこだわり持ちたいものです。今回は空間全体を総合的な作品としてとらえ斬新な照明をデザインしたヴェルナー・パントンの作品についてご紹介します。
- 6,325views
- B!
空間を総合的に捉えた斬新な作品
デンマークに生まれ、アルネ・ヤコブセンの事務所で働いたのちにスイスに移住して活躍した前衛デザイナー、ヴェルナー・パントン。彼の作品では、特にプラスチック一体成型でつくられた流線型のポップなチェアが世界中で知られています。しかしデザイナーとしてのパントンの真骨頂は、椅子などの家具単体のデザインではなく、空間全体を総合的な作品としてとらえるダイナミックな創造であって、その象徴として「照明器具」の独創性には眼を見張るものがあります。現在でも入手できる彼の斬新な作品をご紹介します。
一度見たら忘れられない『パントンチェア』
ヴェルナー・パントンの代名詞ともなっている作品といえば、このパントンチェアです。パントンチェアは、世界ではじめてプラスチック一体成形という技法で商品化された独特のフォルムをしたチェアで、1960年代の世界のデザイン史の象徴的なアイテムとなりました。もともと曲木による『S-チェア』が1956年につくられ、それを発展させてできたデザインでした。友人であるポール・ケアホルムの試作品「モックアップモデル」の影響を受けたともいわれていますが、そのエロチックな流れるフォルムとポップなイメージは時代の気分にぴったり合い、世界中の若い世代に指示されることとなったのです。
ヴェルナー・パントンの代表作パントンチェア。独特のフォルムでスタッキング可能。/ジェネリック製品・デザイナーズ家具のE-comfort
パントンチェアと相性抜群の『フラワーポット・ランプ』
パントンチェアのフォルムは強烈な個性を放つ独特な作品だけあって、これを配置するインテリアは調和が難しいものです。しかし空間全体の総合的なインテリアを指向しただけあって、パントンの照明デザイン作品は、どれもパントンチェアと一緒にそろえることができそうです。この『フラワーポット・ランプ』は、2つの半球体を組み合わせたシンプルなペンダントランプで、パントンチェアのポップな雰囲気にぴったりです。「フラワー」とは、「武器ではなく花を」というスローガンを掲げた60年代アメリカのヒッピー用語に由来していて、当時の時代の雰囲気をしのばせてくれます。
ヴェルナー・パントンのフラワーポット ランプ。/ジェネリック製品・デザイナーズ家具のE-comfort
光と影のドラマを演出する『ファンシェル・ランプ』
パントンがデザインした照明の中で代表的な作品が、『ファンシェル・ランプ』です。一見すると、一般的なシャンデリアのようにも見えますが、これは真珠貝の殻をひとつひとつ手作業で磨き上げてつくられたサスペンションランプです。複雑に重なりあった貝殻のシェルから不規則に放散される光が木漏れ陽のような自然なあたたかみを演出するのです。シャンデリアの照明として考えると、一般的には広い空間のホールなどに設置しがちですが、この光と影の繊細な演出効果を十分に楽しむには、一般的な家屋の天井のように低い位置から使いたいもの。リビングやダイニングにも面白いでしょう。
ヴェルナー・パントンのファン シェル サスペンションランプ。/ジェネリック製品・デザイナーズ家具のE-comfort
幻想的な演出が創造力を刺激する『ムーン・ランプ』
1960年にパントンがデザインしたペンダントライトですが、これも『ファンシェル・ランプ』のように、光と影の演出を楽しむことができる動的な照明です。中央にある支柱のまわりを、直径のことなるリング状のシェードが取り囲んでいるため、光が見えたり隠れたりする複雑な効果があらわれるのです。ちょうど月の満ち欠けを思い起こさせるような幻想的な『ムーン・ランプ』。スチール製シェードがみせるその近未来的な存在感は、パントン・チェアとの親和性も抜群です。リビングやダイニングはもちろん、頭脳労働の場であるオフィスや書斎で使うのも面白いでしょう。
Verpan ペンダントライト Moon-L インテリア照明の専門店のライティングファクトリーでは間接照明や天井照明など、かっこいい照明や海外のおしゃれ照明器具を販売しています。1万円以上のお買い物で送料無料です。楽天決済にも対応
家具から1960年代を楽しむ
『パントンチェア』は世界的にもよく知られており、その個性の強さが現代の多様なライフスタイルに歓迎される時代になりました。しかし、トータルな空間デザインをめざしたパントンのデザインの思想を存分に味わうためには、チェアとともに、ぜひ彼の照明作品も一緒に空間に設置してみたいものです。1960年代当時のポップな雰囲気がよみがえるだけでなく、家具がインテリア空間の中で存在感をもち、使う人の生活や思想によりそって刺激を与えてくれることを実感できるでしょう。
この記事のキーワード
この記事のライター
藝術文化系のコラム、論評の執筆を多くこなしてきました。VOKKAではインテリアなど、アートに関わる記事を中心に執筆しています。