ベン・ホロウィッツ著「HARD THINGS」に学ぶ会社の乗り換え時

2016年ビジネス書大賞とベスト経営書第1位の二冠を達成した「HARD THINGS」。ITバブル崩壊、最大顧客の倒産、3度の解雇といった幾多の困難を乗り越えた伝説のCEOからの、ビジネス界を生き抜くための渾身のメッセージをご紹介します。

motoiiwaki岩城基
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そこは本当に貴方が望むキャリアにふさわしい場所ですか?

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きっとこれを読んでいる貴方は真面目で優秀で周囲からの信頼も厚く、日々着実にキャリアを積み重ねているビジネスパーソンであることでしょう。転職なんて考えたこともないかも知れません。

でも近年、大企業でも倒産したり買収されたり、労働環境の悪さが明らかになったりと、盤石といえる場所がなくなったのも事実です。幾ら貴方が優秀なビジネスパーソンであっても、ぬるま湯組織やガバナンス不全に陥った組織の中に居続けては望むようなキャリアは追求できないどころか、他では一切通用しない人材になってしまうことも…!

一流のビジネスパーソンになるのなら、常に成長できる環境に自分を置きたいですよね。そこで、生き馬の目を抜くシリコンバレーで、次々と襲い掛かる逆境に打ち克ち、最終的には1700億円超で会社を売却するという大成功を収めたベン・ホロウィッツの著作、「HARD THINGS」を紐解いてみましょう。自分を成長させる会社とはどのようなものか、きっとヒントが見つかるはずです。

 そこで貴方が果たすべきミッションは明らかですか?

出典:pixabay.com

今は投資家として活躍しているベン・ホロウィッツの著作であれば、半分以上がマーケティングとファイナンスの話で占められているのでは?と思うかもしれません。ところが、HARD THINGSではかなりのパーツを社員とのコミュニケーションに割いています。

HARD THINGSでは、順調なままの会社というのはあり得ず、ホロウィッツ本人の言葉を借りれば「物事は必ずおかしくなる」と述べられています。そのような金銭的なバックが望めない時期に社員を引き留めるキーになるのは「仕事が好きだ」というその一点だと書かれています。そのためには、会社の将来に夢を持てること、そして、会社の将来像と自分自身の今現在のミッションとのつながりを理解できていることが必要です。

ホロウィッツはCEOの大切な資質として、ビジョンをいきいきと描写する力を第一に挙げています。スティーブ・ジョブスが倒産目前の状態でもビジョナリー・リーダーとして夢を語り、社員をつなぎとめたことを「途方もなく難しいこと」として高く評価しています。

自身のスキルが会社から信頼され、会社のビジョンに沿った形で成果を挙げることができれば、会社に貢献すると同時に自分が有能であることが実証され、キャリアアップにつながるでしょう。

そこで貴方が扱っているのはお客様に買ってもらえる商材ですか?

出典:pixabay.com

ホロウィッツは投資家ですが、本当に数字の優先順位は意外と低いのです。社員のモチベーションの次に必要なのは製品だと述べられています。厳しい経営環境であればあるほど、シビアに売上や利益を見られるはずなのですが…。

ホロウィッツはHPの例を挙げ、同社が業績の悪化に伴い研究開発費を削減し、ひたすら売上と利益率を追求した愚について語っています。平凡な製品ラインナップしかなかったにも関わらず、です。自社の製品が競争力を持っているかどうかは確かに売上を見れば分かります。ただ、売上の数字だけを見ても、なぜ顧客に支持されているのか、顧客に支持されるためには何を作ればよいかまでは分かりません。

ひたすら数字のみを追求するというのは、日本企業でもよくあることです。貴方は最早魅力を感じない商品を上司に怒鳴られながら無理に売っていたり、代わり映えのしない商材を、大したロングセラーでもないのに漫然と作っていたりしませんか?もしそうなら、自分自身のためにも、会社が傾く前に次のキャリアを考えても良いのかもしれません。

そもそも的に貴方がそこでやっているのは仕事といえますか?

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ホロウィッツがHARD THINGSの中で何度も非難しているものがあります。それは「社内政治」です。ホロウィッツは社内政治を「自分の能力による会社への貢献以外の要素で、地位向上を得ようとするすべての行動」と定義づけています。

社内政治がはびこる原因の一つとして、ホロウィッツは「悪い野心」を挙げています。「正しい野心」が、時には自分を犠牲にしてもビジネスの成功を目指そうとする姿勢なら、「悪い野心」はその逆、時にはビジネスの成功を犠牲にしても自分個人の成功を目指そうとする姿勢です。あともう一つの原因は、単純に業績評価や昇給、昇進のプロセスが曖昧なために恣意的な運用が可能になってしまうためと述べています。

特に日本では、上に可愛がられることや、人間関係の巧拙がそのまま出世につながることが多いようです。もちろん、そのこと自体を「悪い野心」呼ばわりする必要はありません。実力者とのコネや人脈の多さは、影響力を持つという意味では大切です。でも、地位を得るためにこうした行動が自己目的化されたら、会社の成長も貴方の成長もそこで止まるでしょう。

本当の仕事の面白さを探してみよう

出典:pixabay.com

いかがでしたか?HARD THINGS自体は苦労人が書いた本らしく、厳しい言葉で埋め尽くされています。でも、よくよく読むと、ビジネスに真正面から向き合うことの面白さが純粋に語られているようにも見えます。自分は仕事が好きだ、昇給や昇進をしても、実力が伴わなければつまらない…そう思う方は、ぜひお求めください。

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この記事のライター

岩城基

リライトとか編集とか、その辺の仕事を10年位手掛けています。得意分野はビジネス全般、政治経済、車、アート、文学。ちなみに、宣伝会議の編集ライター養成講座卒業しました。卒制は優秀賞でした。

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東京出身。興味があるのは建築&インテリア。

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