司馬遼太郎の遺訓を受け継いだとされる歴史小説の大家、宮城谷昌光
宮城谷昌光の作品はどこか解説的で説法的な雰囲気を漂わせている点が特徴で、物語を読むというよりも、歴史書を読む感覚に近い、新鮮な感動を味わうことができます。知的で自然に頭に入り込む文章構成の巧みさは物語を細部に渡って理解させます。
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静かに、冷静に物語を描く小説ならではの魅力
宮城谷昌光は自身も歴史小説の大家として有名ですが、司馬遼太郎の遺訓を受け継いだという点でも有名です。彼の弟子というわけではありませんが、著者の作品の中には、時代を冷静に描く小説ならではの魅力が光っています。
三国志時代を他の小説と違う視点で読む 『三国志』
三国志は多くの著者が執筆している作品ですが、宮城谷昌光の作品は劉備登場以前の、後漢が腐敗した時代から記述されています。普段意識しない武将や文官たちのエピソードには独自の解釈や推量が記述されており、ファンならずとも必見の作品です。
男の友情を描いた伝説のエピソードを克明に記述 『管仲』
現代でも比喩表現や結婚式のスピーチなどで使われる、管鮑の交わりで有名な、管仲と鮑叔を見事に執筆した作品です。地位や利権を超えた本物の友情を当時の中国の雰囲気と共に肌で感じることができる名作です。
楚の項羽と漢の劉邦両者を支えた名臣たちのエピソード 『楚漢名臣列伝』
秦の始皇帝の時代から、秦の暴政に立ち上がった歴史上初の農民反乱である陳勝・呉広の乱を経て楚の項羽と漢の劉邦の戦いまでの名臣たちを描いた作品です。臣下を通して、著名な英雄たちの姿を紀伝体形式で描写した新鮮さは、これまでの作品にない魅力を与えてくれます。
諸葛亮孔明が尊敬したと言われる名称楽毅の生き様を表現した作品 『楽毅』
食客や公使が中華全土に広まっていた春秋戦国時代に光の如く登場した名称楽毅を宮城谷昌光ならではの筆遣いで綴られた本作は、二つの国から最高の待遇を受け続けた楽毅の英邁さを余すところ無く表現しています。
紀伝体の歴史書を読むかのような知の喜び
宮城谷昌光の作品はいずれにおいても、知性を隠しても隠し切れない輝きに満ちています。推量にはその推察の理由が添えられており、根拠の無い表現を廃しながらも、物語の面白さを損なわない点は、著者にしかない魅力だと言えます。
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