押さえておきたい司馬遼太郎の戦国時代小説5選
昭和を代表する歴史小説家・司馬遼太郎。その独特の視点で語られる歴史観は「司馬史観」と呼ばれます。人物の掘り下げ方や筋立てのうまさによって、現代におけるリーダー論、組織論の題材としてビジネスマンにもよく読まれています。司馬遼太郎は幅広い時代を扱っていますが、今回は戦国時代を扱った5作品をご紹介します。
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アイキャッチ画像出典:ogasawara-mulberry.net
『国盗り物語』(全四巻)
斎藤道三・織田信長 義父子二代の天下盗りの夢
前編二巻は油商人から身を起こし美濃国主となる斎藤道三の半生を、後編二巻は織田信長の天下統一への生涯を描いた作品です。明智光秀についても多くのページを割いています。信長は本能寺の変で生涯を終えます。なぜ光秀は本能寺の変を起こしたのか、怨恨説、野望説、黒幕説と様々な説が展開されていますが、本作の司馬氏の考えに賛意を示す歴史小説家が多くいることは大変興味深いことです。
『関ヶ原』(全三巻)
豊臣政権簒奪を狙う徳川家康に挑む石田三成の秘策
日本史上最大の合戦となった関ヶ原の戦いを、徳川家康・石田三成双方の視点から描いた小説です。家康の側近・本多正信と、三成の家臣・島左近の参謀二人の知恵比べでもあります。開戦までの三成の人物像が丹念に綴られています。それはあたかも、軍勢の規模、陣形において有利と思われた西軍が敗れ去っていく伏線のようです。三成が何を間違えたのかを知ることは、現代の我々にも重要な課題です。第三局として黒田如水が描かれていますが、関ヶ原が一日で決着せず、数カ月に及んだ場合にどうなったか、という歴史の「if」を楽しませてくれる作品でもあります。
『城塞』(全三巻)
落城は必然だった総大将不在の大坂城
豊臣家滅亡のため、徳川家康は様々な策を弄した後に、難癖をつけ大坂城を取り囲みます。関ヶ原で行政を担う大名を失い、続いて加藤清正ら子飼いの大名を失った豊臣家には頼る大名もなく、大坂城に集まったのは元大名や牢人に過ぎません。総大将も指揮官もいない大坂方は、淀君が実質上の城主でした。真田幸村らの奮戦空しく、家康の和睦の誘いにのり、すべての堀を埋められた大坂城は、再度の挑発でわすか3日の戦いで落城します。リーダー不在の組織がいかに脆弱なものかがわかる好例でもあります。
『夏草の賦』(全二巻)
本能寺の変の首謀者は長宗我部元親? 四国の覇者の生涯
情熱というものを描いてみたかった、とあとがきにあるように、土佐の一豪族から四国の覇者となる長宗我部元親の生涯をダイナミックに描いた小説です。その情熱は、羽柴秀吉の四国攻めと、愛息・信親の戦死、愛妻の病死という立て続けに起きた不幸によって一気に失われます。2014年7月に明智光秀の家臣・斎藤利三に宛てた元親の書状が公開され、本能寺の変の黒幕を元親とする四国説がメディアでも話題になりました。本作を読むと、書状の背景が詳細にわかると同時に、元親の卓越した先見性を知ることができます。
『播磨灘物語』(全四巻)
黒田官兵衛の生涯を描く大河小説
信長・秀吉・家康に匹敵する、あるいはそれ以上の人物ではないかと言われている黒田如水の生涯を綴った長編小説です。本能寺の変を知り泣き叫ぶ秀吉に告げた一言が、後の天下の趨勢を決めると同時に、自らの運命までも決定します。秀吉に危険視され、九州に置かれるものの、秀吉死後の混乱に乗じて天下取りを夢見ますが、関ヶ原の戦いが一日で決着したため断念。息子・長政への言葉が如水のスケールの壮大さを示しています。
大きな夢や向上心を持つ読者の共感を誘う司馬作品
司馬遼太郎作品は『夏草の賦』『播磨灘物語』をはじめとして、主人公の晩年は詳述せずにさらっと終わらせる作品が多く見られます。一方、青年時代から人生のクライマックスと思われるところまでを丹念に書き綴っています。それが大きな夢や向上心を持つ読者の共感を誘い、勇気づけます。『竜馬がゆく』の執筆開始が1963(昭和38)年、最後の長編小説『韃靼疾風録』が1987(同62)年。執筆時期が戦後日本の成長・安定期と重なるのは深い意味があります。
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この記事のライター
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