いつものお酒に少し飽きたら!試してみたいにごり酒おすすめ10選
にごり酒というと何をイメージしますか?江戸時代の山奥で猟師が囲炉裏端に座って茶碗酒で飲む「どぶろく」的なあか抜けなさ、でしょうか?しかし、現代のにごり酒は、もっと洗練されて「あえて今日はそれをセレクトして飲む」というくらい価値のあるものも多いのです。ここではそのにごり酒の魅力を堪能できる厳選10品目をご紹介します。
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そもそもにごり酒とはどういうものか?
もろみが一部含まれているものがにごり酒
そもそもにごり酒とはどういうものでしょうか?まさに「白濁しているから」にごり酒なのですが、これはその製法に由来しているのです。日本酒造りの工程の中に「上槽」というものがあります。発酵して半分お酒化しているもろみを、いわゆる酒かすである固形の部分と、生酒あるいは原酒と言われる液体の部分にわける作業です。その方法としては、もろみを酒袋などに入れ、圧力をかけて搾るというのが江戸時代からの方法ですが、現代では機械による圧搾や遠心分離機などで行っている場合もあります。この時に、目の粗い酒袋を使ったり、遠心分離の速度を落としたりすることで、もろみの中の溶けきれていない、「おり」とよばれる米の固形部分が原酒の中に残ります。これが白濁のもとであり、こういう状態で出荷されるお酒をにごり酒、と言います。
これが一般的には別名「どぶろく」とも呼ばれていますが、正確に言うと、もろみを搾らないものを「どぶろく」、多少搾ってもろみを残したものを「にごり酒」と区分し、酒税法上も別物です。しかし、この記事ではそのあたりは特に厳密に区分せずに、「白濁している」お酒としてご紹介していきます。
いわば「素材の風味と味を生かした」日本酒
にごり酒は「おり」が多く含れているので、もろみの中の酒米、米こうじ、酵母などの日本酒の原料のうま味を強く味わえることが最大の特徴です。また、にごり酒の中には、発酵を止め殺菌をするための「火入れ」と呼ばれる加熱処理をしないものも多いので、酵母が生きたまま瓶詰めされ、発泡性を持つ場合もあります。それが、「スパークリング日本酒」などの名称で販売されているものです。
またにごり酒は、要は日本酒なので、同じように辛口と甘口があります。これについては今回ご紹介するものについては触れていきますので、まったり味が好きな方は甘口を、コクときりっとした感じの両方を味わいたい方は辛口を選んでください。また、にごり酒の持つ発酵した、少し酸っぱい味わいが苦手な場合は、おりの量を少なくした「うすにごり」がおすすめです。
おすすめの飲み方
にごり酒の飲み方は、発砲しているものも多いので、基本的には冷やして飲むのがよいでしょう。片口などに入れて、徐々に常温に戻しながら飲むと味の変化も楽しめます。また、最初に上澄みの透明な部分だけを飲み、その次におりを絡めて味飲んで、味わいの変化を楽しむのもいいでしょう。
さらには、純米で火入れをしているにごり酒の場合は、「ぬる燗」でもいけます。この記事で扱っているものはすべて純米ですので、その中で「生」という表記がないものは、ぬる燗も試していただくと、酸味と甘みをさらに楽しむことができます。
以上をベースに、10種類の厳選にごり酒をご紹介していきます。
第1選 みちのく山形の大吟醸どぶろく 山田錦(酒田醗酵)
酒田発酵は全国でも珍しい、どぶろくを専門で醸造している蔵元です。このにごり酒はその中でも、酒米の王様の山田錦を使い、さらにそれを削る歩合である精米歩合を50%にした、にごり酒でなければ「純米大吟醸」としての販売が可能な極上の逸品です。味わいは通常の日本酒よりも甘めです。
第2選 梵 無ろ過生酒 純米大吟醸 うすにごり 淡雪(加藤吉平商店)
日本政府が海外からの賓客をもてなす晩さん会で饗するのが「梵」という日本酒です。その最高峰の純米大吟醸をあえて「うすにごり」でも作った、というマニア垂涎の希少にごりさけです。基本は純米大吟醸ですので、酸味はありますが味わいは辛口で、飲んだらにごり酒のイメージが180度変わるでしょう。
第3選 純米吟醸 鉄人うすにごり 五百万石 (鯉川酒造)
鯉川酒造という蔵元は、数年の間蔵で熟成させる熟成酒が美味しいところですが、そこから珍しく「新酒」である「うすにごり」が出ています。ただし火入れがしてあるので、冷やでも常温でも熱燗でも美味しく飲むことができます。味わいはにごり酒特有のフレッシュさと、吟醸酒の持つ辛口の両方が感じられます。
第4選 三笑楽 蔵出にごり酒 生(三笑楽酒造)
これも山田錦を原料にしたにごり酒です。精米歩合は70%で、かつ発酵に使う酵母を添加するのではなく、蔵に棲み着いている菌の働きを活用するという「山廃仕込み」で醸していますので、かなりしっかりと米のうま味を感じられるにごり酒です。
第5選 竹鶴 純米にごり酒(竹鶴酒造)
これは純米による「清酒」を作ったうえで、そこにもろみを砕いて入れたという製法のにごり酒です。それもあってか、にごり酒としてはかなりの辛口なので、醤油をベースにした焼肉、焼き鳥、ウナギなど合わせにくそうな料理ともぴったりです。食中酒として十分に使えるにごり酒です。
第6選 渓流 どむろく(遠藤酒造場)
これは火入れをしていない発泡系のにごり酒です。製法は、江戸時代の資料のままを踏襲し、布ではなく、目の粗い「網」で漉した生酒を全くそのまま瓶詰しています。酵母、酒米、米こうじの味わいが非常にしっかり感じられる、にごり酒好きならたまらない仕上がりです。
第7選 八海山 発泡にごり酒(八海醸造)
今回ご紹介するにごり酒の中で、ある意味1番洗練されているかもしれません。さわやかな酸味とふわっとした香り、すっきりとした後味、そこに加わる炭酸の泡、まるでシャンパンのようなにごり酒です。キールなどの代わりに食前酒としてもおすすめですが、濃厚な味やスパイシーな味の料理にも抜群のマリアージュです。女性にもぜひ飲んでいただきたいにごり酒です。
第8選 五郎八 にごり酒 (菊水酒造)
このにごり酒は個性的なフルーティーさが特徴です。口にした瞬間、おりの粒々感と、濃厚でコクのある味わいが、押し寄せます。それでいて、にごり酒としてはやや辛口の部類なので、口の中が甘ったるくはなりません。食中酒としても十分に使えるにごり酒です。
第9選 篠峯 純米吟醸生原酒 汲み出しにごり酒もろみ(千代酒造)
奈良県の年間450石しか醸造しない小ささですが、千代酒造はすぐれた日本酒をどんどん上市するので注目を集めている蔵元です。そのメインラインの篠峯から、北海道の酒造好適米「北雫」を50%も磨いて醸したのがこのにごり酒です。にごらさなければ、十分に「純米大吟醸酒」として通用するものです。味わいは、うま味の濃さがありながら、しっかり辛口ですので、これも食中酒としては最高でしょう。
第10選 扶桑鶴 28BY純米にごり酒 (桑原酒場)
これは70%精米の純米酒をベースにしていますので、米のうま味がかなり感じられるにごり酒です。味わいはやや辛口ですが、後口はすっきり、潔く切れていくので飲み飽きしないおいしさです。燗酒でも美味しいにごり酒です。
ぜひにごり酒を、晩酌のローテーションに
いかがですか。
にごり酒に対して持っていたイメージがかなり変わったのではないでしょうか。ここで挙げたにごり酒は、できるだけ、濃さや辛さ、飲み方についてはバリエーションを持たせましたが、クオリティ自体はどれも非常に高いと言えます。ほとんどのものは食中酒として使えますので、ぜひ今晩から、晩酌のローテーションの中ににごり酒を入れてみたらいかがでしょうか。