うさぎと廃墟が共存する「地図から消された島」
近頃女性を中心に観光客が急増している「うさぎの島」こと大久野島ですが、かつて地図上から存在を消された島でもありました。カップルやファミリー、年配の方まで様々な方にオススメしたいこの島は、負の歴史と平和な今が交錯する不思議な魅力につつまれています。
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うさぎの楽園
出典:uta-jima.com
瀬戸内海の広島県竹原沖、沖合い3kmに浮かぶ「大久野島」をご存知でしょうか。JR呉線「忠海駅」からフェリーに乗って15分でアクセスできるこの周囲4.3kmの小さな島です。最近ではうさぎの楽園としてテレビでもとりあげられ、観光客が急増しています。
うさぎまみれになれる島
うさぎ目的に訪れる若い女性やカップルも多いこの島。実に700羽もの野生うさぎが生息しているといわれています。1971年に忠海町の小学校で飼育していた8匹のうさぎを放したところ野生化し、ここまで増えたとの説が有力のようです。ここまで数が多いともはやうさぎを探す必要などありません。フェリーを降りてすぐ、そこかしこにうさぎが跳び回っています。最もうさぎが多いのは宿泊施設である休暇村前の広場です。約200〜300羽のうさぎがここに集まっています。フェリー前から無料の送迎バスがでているのでアクセスも簡単です。なお、この広場のうさぎは餌に恵まれているためか大柄でのんびりした子が多めです。休暇村から離れたところにいるうさぎの方が、小ぶりで餌に敏感でよく集まります。
餌と思いやりを持っていきましょう
まず餌を用意していくことが大切です。人を見ればすぐさま集まってくるうさぎ達ですが、餌がないとわかった途端そっぽを向かれてしまいます。島内では餌は販売していないのでフェリーに乗る前に調達しましょう。ペットフードやニンジン、キャベツ、リンゴなどがおすすめです。夢中になるとあっという間に配り終えてしまうので、少し多いくらいが丁度いいです。餌さえ持っていればうさぎに埋もれることも可能です。また、骨折やストレスが溜まる原因にもなるので抱っこは厳禁です。うさぎと触れ合うのも道路脇や建物前は避け、安全なところであることを必ず確認しましょう。
戦争と毒ガス
いまでこそ平和そのものですが、大久野島には陰の側面があります。もともと大久野島には砲台が設置され、明治時代以降軍事的な要地として利用された島です。化学兵器施設を建てるにあたり、労働力や資材の供給がしやすく、万一の時も被害が少なくすみ、かつ存在を隠せる場所として大久野島が選ばれました。そして1929年に陸軍の毒ガス工場が建設され、第二次世界大戦末期まで16年間、秘密裏に毒ガスが製造されていました。国際的に禁止された毒ガス兵器をつくっていたため、この島は地図から消されることになります。現在でも毒ガス工場の廃墟や、砲台跡をみることができます。凄惨な過去を持つ戦争遺跡に蔦が絡まり、緑に囲まれ、その周辺をうさぎが跳ね回る…なんともいえない不思議な空間です。
夏場はキャンプや海水浴も
うさぎと毒ガスに埋もれがちですが、実は島内にはキャンプ場やテニス場、さらにバーベキュー場があり夏場はファミリー客も多いのだとか。海水浴や釣りも楽しめるので、自然とうさぎを存分に満喫したうえ、ちょっぴり歴史に触れることのできます。小さい島でありながらやることはたくさんあるので、日帰りだけでなく1泊してじっくり遊ぶのもおすすめです。
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この記事のライター
20代後半、会社員をしております。社会人になってから、不思議と旅行欲がむくむくわいてきました。旅に出たいと思いつつも、結局は仕事の疲れに負け、パンフレットを眺めて終わる…そんな日々です。行き場をなくした旅行知識をこつこつ書き綴っていく予定です。