エールビールでマリアージュ?夏本番!の前に知っておかねばならないエールビールの魅力
蒸し暑い季節、日本人はアサヒスーパードライなど苦みと爽快感のあるラガービールを良く飲みます。一方で、最近ではよなよなエールに代表されるあっさりして飲みやすいビールも台頭してきています。両者の違いを知っておけば訪れるレストランや頼むものも人に合わせて変えることが可能に。エールビールの楽しみ方をおさらいしましょう。
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アイキャッチ画像出典:fujimaki-select.com
ビールの成り立ちから知ると楽しみ方も変わる
言うまでもありませんが、葡萄から醸造するお酒がワインであるように、麦芽から醸造するお酒がビールです。ビールはホップに由来する苦味と香り成分、炭酸ガスによる泡立ちが特徴。
基本となる原料は麦芽・ホップ・酵母・水の4つ。大麦を発芽させた種子である麦芽を粉末状態にし、水に溶かして加熱した液体を麦汁と呼びます。麦汁にホップを加え、ビール酵母により発酵させた醸造させると出来上がるわけです。
発酵の方法から違うからこそ、味わい方や合わせる料理も異なる
ビールは酵母の違いにより「エール」「ラガー」の2種類に大別されます。ラガー酵母から造られるビールがラガービール、エール酵母から造られるのがエールビールというわけです。
こうしたビールの発酵の方法は2種類に分かれます。
上面発酵→エールビール
上面発酵は常温(20℃前後)で比較的短い時間で発酵します。
発酵が進むにつれて炭酸ガスを放出し、最終的に浮かび上がった酵母がタンクの上面で層を作る為に上面発酵と呼ばれています。こうした上面発酵で出来たビールが『エールビール』と呼ばれます。ビール酵母は高温で活動するほど果実のような香り成分であるエステルを生成するため、上面発酵製法で造ったエールビールは「フルーティーな香りに満ちたビール」になります。
こうしたエールビールは香りの個性が強いため、ワインのように魚料理にはこのビール、肉料理にはこのビール、デザートにはこのビールとそれぞれの料理によってマリアージュが生まれます。
下面発酵→ラガービール
下面発酵は低温(10℃以下)で熟成させ、比較的長い時間で発酵します。酵母が最終的にタンクの下層に沈み込む為、下面発酵と呼ばれています。こうした下面発酵で出来たビールが日本でよく飲まれるラガービールです。下面発酵製法で造られたラガービールは「すっきりとシンプルな味わいのビール」になります。シンプルなので、料理の味を邪魔することが無く、肉・魚・野菜まで1種類のビールで楽しむことができるわけです。
ラガーとエールではエールの方が歴史が古くなります。
エールはもともとホップなしで飲まれていたもの。そもそもエールは「ホップを入れない醸造酒」のことで、お茶代わりに飲まれていたようです。エールの本場であるイングランドにホップが伝わったのは15世紀のこと。ホップは苦味をプラスするだけではなく保存料の役割もあるので、ホップ伝来とともに苦味のあるエールも人気となっていったようです。
エールの特徴は、麦芽からくる甘味と香ばしさ。また泡が少ない、ものによっては無いものもあるため、のど越しや爽快さではなく、旨みをじっくり味わいながら飲むのが醍醐味と言えるでしょう。
一方でラガービールは、昔は冬の間に氷を入れた洞窟で貯蔵しながらゆっくり醸造していったと言われています。もともと「貯蔵する」という意味のラガーという名前はここに由来するようです。19世紀になると冷蔵庫が発明され大量生産も可能になり、ここからラガーは一気に近代ビールとして世界に広まりました。
こうしたラガーの特徴は、爽快なのど越し、すきっとした口あたり、心地いい苦味と麦芽の深みの絶妙なバランスにあります。
両者では歴史的経緯も醸造の方法も異なるので、楽しみ方も変える必要があると認識する必要があるようです。
エールも種類は豊富。まずはペールエールから楽しみたい。
エールも種類は豊富で、それぞれ特徴的な味わいがあります。
代表格は、イギリスの「ペール・エール」でしょう。淡い麦わら色で、麦芽の甘味とホップの苦味がバランスよく滑らかで深い味わい。また、ぐっと苦味の利いた「インディア・ペール・エール」(IPA)や「ダブル・インディア・ペール・エール」も。そのほか、色が濃く香ばしい風味の「ブラウン・エール」、スタウトやポーターとも呼ばれる「ダーク・エール」。度数の高いイギリスの「オールド・エール」。まるでウイスキーのようなスコットランドの「スコッチ・エール」。また、小麦麦芽を原料にした白ビールであるドイツ、バイエルン地方の「ヴァイツェン」、ベルギーの「ビエールブランシュ」も有名です。
マリアージュが楽しみの1つであるエールビール。ポイントを順にご紹介します。
料理の原産国のビールと合わせる
一番簡単なのは、原産国の料理と合わせることです。 例えば、フライドポテトはベルギー発祥なので、基本的にベルギービールとの相性が良いです。 同様に、イギリス料理としてお馴染みのフィッシュアンドチップスは、ペールエールのお供に。そしてドイツのビールだったらソーセージがベストでしょう。
日本のビールであれば天ぷらや焼き鳥、お好み焼きなどの粉ものも相性が良いです。
色の濃さを合わせる
もう一つのポイントは、色の濃さを合わせることです。
色の淡い食べ物には金色〜明るい茶色のビール、色の濃い食べ物には濃い茶色~黒いビールが基本的に合います。これは食べ物の場合、味の濃さと見た目の色がほぼ一致するからです。ビールの場合も、色によって口当たりの重さにある程度は目星をつけることが可能です。
そして味の濃い食べ物は重厚感ある味わいのが多いので、バランスが取れるわけです。
例えば「チキングリル+ペールエール」、「黒ビール+ビーフシチュー」というような感じだと体感的に理解しやすいでしょう。
自分の好みを見つけて楽しもう
ワインと比べてビールと料理のマリアージュはまだまだ歴史が浅いようです。一方で、エールビールは市販品も買いやすくなってきたため、自分でもいろいろとマリアージュを試すことができるようになっています。原産国・色で合わせるという原則を外さなければそうそう失敗することはありません。
自宅でのパーティーや仲間内の飲み会でビールを振る舞う際、エールビールでのマリアージュがあると一段と盛り上がることでしょう。自分の好みの組み合わせを見つけていきましょう。
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この記事のライター
慶應大学卒業→大手証券会社→外資系コンサルティングファーム。表参道に在住し「日常をドラマに」することに腐心し人生の上質化を目指す日々。酒を飲むこと、酒を飲むように本を読むことが好き。目を離せばすぐに眠りこもうとする遊び心をジャズとビールで蹴飛ばしながら、今日も都心で生きてます。