ケトルベルフローのやり方|連続動作で短時間トレーニングを実現
二つのケトルベルトレーニングの動作をつなげるように実施する「ケトルベルフロー」は短時間で集中的に全身の筋肉に負荷をかけることが可能です。その具体的なやり方とトレーニング目的別に適切な負荷回数設定について解説します。
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アイキャッチ画像出典:www.runnersworld.com
ケトルベルフローが効果のある筋肉部位
ケトルベルフローではさまざまな種目を組み合わせますので、基本的には全身的な効果がありますが、なかでも次のような筋肉に効果的です。
三角筋
ケトルベルを肩よりも高い位置に押し上げる動作で三角筋に効果があります。
三角筋は前部・側部・後部の三部位に分けられますが、それぞれの作用と共働筋は以下の通りです。
○三角筋前部
腕を前に上げる作用があり、この動作では僧帽筋と共働します。
○三角筋側部
腕を横に上げる作用があり、この動作では僧帽筋と共働します。
○三角筋後部
腕を後ろに上げる作用があり、この動作では広背筋と共働します。
上腕三頭筋
ケトルベルを肩よりも高い位置にさし上げる動作のなかで、上腕三頭筋に効果があります。
上腕三頭筋は上腕の後面に位置する筋肉で上腕筋群のなかで最大の筋肉です。長頭と短頭(内側頭・外側頭)に部位わけされ、その作用と共働筋は以下の通りです。
○上腕三頭筋長頭
肘関節を伸展させる作用と上腕を回外させる作用があり、回旋動作では回旋腱筋版と共働します。
○上腕三頭筋外側頭
肘関節を伸展させる作用があり、この動作では上腕三頭筋内側頭と共働します。
○上腕三頭筋内側頭
肘関節を伸展させる作用があり、この動作では上腕三頭筋外側頭の補助として共働します。
背筋群(広背筋・僧坊筋・脊柱起立筋)
床からケトルベルを引き上げる動作のなかで、背中の筋肉である広背筋・僧坊筋・長背筋群に高い効果があります。
広背筋は体幹背面を覆うように位置する上半身最大の筋肉で、前方や上方から腕を引く作用があります。また、それぞれの部位と動作および共働筋は以下の通りです。
○広背筋側部
腕を上方から引く作用があり、三角筋後部と共働します。
○広背筋中央部
腕を前方から引く作用があり、僧帽筋と共働します。
僧帽筋は首の後ろに位置する筋肉で、下から腕を引く作用があります。また、前方や上方から腕を引く動作でも広背筋が最大収縮した後に、肩甲骨を寄せてさらに引きこむ作用もあります。
長背筋群は脊柱沿いに位置するインナーマッスルで体幹の伸展と姿勢の維持をする作用があります。
下半身の筋肉(大腿四頭筋・ハムストリングス)
ケトルベルを床から引き上げる動作のなかでは太もも後ろ側のハムストリングスに、また、ケトルベルを保持して足しあがる動作のなかで太もも前側の大腿四頭筋に効果があります。
ケトルベルフローのやり方
①ジャーク
ケトルベルフローのなかでも、基本的で初心者むきなのが「ジャーク」です。
ジャークの前半部分は、床から肩までケトルベルを持ち上げる「クリーン」、ジャークの後半部分は肩から頭上までケトルベルをさし上げる「ショルダープレス」と2種類のトレーニングが組み合わされています。
■ケトルベルジャークのやり方
1.胸を張り、背中を丸めないように気をつけて床のケトルベルをグリップする
2.下半身の力と背中の力を同時に使い、一気に肩までケトルベルを持ち上げる
3.膝の屈伸も使い、一気に頭上までケトルベルをさし上げる
4.肩までケトルベルを下ろし、体勢を整えてから床にケトルベルを下ろす
②クリーンスクワットプレス
いくつかあるケトルベルフローのなかでも最強クラスの強度がある種目が、クリーンスクワットプレスです。
先にご紹介したジャークにスクワット動作が加わり、ほぼ全身全ての筋肉が動員されるハードな種目と言えるでしょう。
■クリーンスクワットプレスのやり方
1.胸を張り、背中を丸めないように気をつけて床のケトルベルをグリップする
2.下半身の力と背中の力を同時に使い、一気にケトルベルを肩まで持ち上げる
3.ケトルベルを肩位置で保持したままスクワットを行う
4.スクワットの終盤で立ち上がる勢いも使ってケトルベルを一気に頭上までさし上げる
5.肩までケトルベルを下ろし、体勢を整えてから床にケトルベルを下ろす
ケトルベルトレーニングの特徴とメリット
ケトルベルトレーニングの最大の特徴は、同様に片手で扱うダンベルとは違い、ウエイトの重心とグリップ位置が異なることです。これにより、ケトルベルの保持にはバランシング能力が要求され、また、バランスをとりながら動作を行うことで体幹インナーマッスルに効果があります。
筆者のジムにおいても、スポーツ競技により有効な実践的な筋肉を鍛えたい格闘技系の選手はケトルベルトレーニングを行っています。
なお、筆者の運営するジムで主に行っているケトルベルトレーニングの種目は下記の記事内で紹介しているような種目です。
▼実際に行っているケトルベルトレーニング
安全のためにエイトストラップを
ケトルベルトレーニングでもっとも気をつけたいのが、手からケトルベルが離れてしまう「グリップアウト」です。グリップアウトを起こすと、ケトルベルが落下または前方・後方に飛んでしまい非常に危険です。
グリップアウトを起こしてもケトルベルが落下することがないよう、エイトストラップの使用を強く推奨します。
ケトルベルトレーニングの負荷回数設定
筋トレで鍛える筋肉=骨格筋には三種類の筋繊維があり、それは、以下のようになります。
○遅筋(持久筋・SO筋・赤筋)
持久的な運動および筋収縮の主体となる筋繊維の種類が遅筋です。収縮する速度が遅く(Slow)、酸素(Oxygen)をエネルギーにして収縮することからSO筋と呼ばれています。筋トレにおいては、20回以上の反復回数で限界がくるような低負荷・高回数でトレーニングします。
○速筋(短瞬発筋・FG筋・白筋)
10秒以内の瞬発的・爆発的な筋収縮の主体となるのが、速筋のなかでも短瞬発筋と呼称される筋繊維です。この筋繊維は、収縮速度が非常に速く(Fast)、筋細胞内のグリコーゲン(Glycogen)をエネルギー源として収縮するのでFG筋とも呼ばれます。筋トレにおいては、10回以下の反復回数で限界がくるような高負荷・低回数でトレーニングします。
○速筋(長瞬発筋・FO筋・ピンク筋)
やや持久的な1分ほどの筋収縮の主体となるのが、もう一つの速筋である長瞬発筋と呼ばれる筋繊維です。収縮速度が比較的速く(Fast)、呼吸による酸素(Oxygen)をエネルギー源とするためFO筋とも呼ばれています。筋トレにおいては12~15回の反復回数で限界がくるような中負荷・中回数でトレーニングします。
ケトルベルトレーニングにおすすめのグッズ
出典:glfit.net
ケトルベルトレーニングで装着したいのが、腰椎を保護するとともに腹圧を高めて瞬発力パフォーマンスを向上させるトレーニングベルトです。なかでも、写真のようなナイロン製ベルトは激しいケトルベルトレーニングの動作のなかでも身体にフィットしますので、革製のトレーニングベルトよりもおすすめです。
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この記事のライター
アームレスリング元日本代表/ジムトレーナー/生物学博物館学芸員/一般社団法人JAWA日本アームレスリング連盟常任理事