ドイツ映画おすすめ15選

19世紀の終わりの映画の黎明期から始まるドイツ映画の歴史。第二次大戦下のプロパガンダ映画から、ニュージャーマンシネマを経て、最新の現代ドイツまで重要作品をピックアップしました。これを読めば、<ドイツ映画通>と名乗れること間違いなしです。

natsukoshimono下野奈津子
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ドイツ映画とは

映画黎明期~第一次大戦勃発

パリでリュミエール兄弟がシネマトグラフを上映した1895年、ドイツにおいてはスクラダノウスキー兄弟が二人の発明による映写機をベルリンで実演していました。まさに映画の黎明期から、ドイツ映画の歴史はスタートしているのです。

20世紀になり言葉の壁のないサイレント(無声)映画は、庶民の娯楽としてドイツ国内でも人気を集めるようになります。当時は特にイタリア映画やデンマーク映画が人気で、ドイツ本国でも多くの娯楽映画が製作されました。主な監督としてフリッツ・ラングらが有名でした。

しかし、第一次大戦下のドイツでは外国映画のボイコットが始まります。そして多くの映画人たちは政治的理由から外国へと亡命します。そんな中、ドイツに残った映画人たちはドイツ軍のプロパガンダ映画(Vaterland映画、祖国映画)を作りました。

第一次大戦終結~東西ドイツ

第一次大戦は終結し、ドイツの映画産業(ウーファ)の権限はすべて連合軍に没収されることとなります。敗戦した側のドイツは東西に分断されることとなりました。その荒廃した状況の中では、戦時下と比べても映画の観客動員数は減少していきます。

その頃、西ドイツでロベルト・ロッセリーニが「ドイツ零年」を撮ります。戦後のドイツでは、この映画に代表されるようなTrümmerfilm (rubble film)というジャンルの作品が多く作られました。戦後の荒廃したドイツの現状、ナチス時代の出来事、そんな激動のドイツの映像が<映画>として残ることとなったのです。

ニュージャーマンシネマ~現代ドイツ映画

戦後の停滞期を経て、1960年になると若手の映画監督達が結集し、「オーバーハウゼン宣言(Oberhausen Manifesto)」を発表します。「古い映画は死んだ。我々は新しい映画を信じる。」という彼らは、その宣言通り既存の映画を塗り替えるような新しいドイツ映画を作り始めます。

ニュージャーマンシネマの旗手であった映画監督達の中には、ヴェルナー・ヘルツォーク、ヴィム・ヴェンダース、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダーなどがいました。彼らの映画はドイツ国内だけではなく、全世界に影響を与えることとなります。

そして、刺激的で革新的なニュージャーマンシネマは、現代ドイツ映画にも未だに色濃く影響を与えているのです。

僕たちは希望という名の列車に乗った (2018)

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あらすじ

東西に分断されたいた1956年ドイツ。東ドイツの高校に通う少年たちが、ある時西ドイツのラジオを耳にします。そのラジオで彼らが耳にしたのは、ハンガリーで起きた民衆蜂起の悲惨な結果についてのニュースでした。東ドイツと同じく、ソ連の占領下にあったハンガリーにおいての情勢。強くシンパシーを感じた彼らは、高校の教室でハンガリーのために黙祷をしようと提案します。そしてその黙祷は、東ドイツ政府を敵に回しての問題へと発展してしまいます。

ここに注目

出演: レオナルド・シャイヒャー, トム・グラメンツ, レナ・クレンク, ヨナス・ダスラー, イザイア・ミカルスキ
監督: ラース・クラウメ

これまでにも東西ドイツの分断を題材にとった映画は多く撮られていますが、この映画の注目ポイントは<主人公が学生たちである>ということです。
戦時においてのレジスタンスとしての直接的な政治行動ではなく、大人の起こした戦争に巻き込まれた子どもや学生の世代においては、直感や心情に基づいたストレートな感情表現を見いだすことが出来ると言えます。

ハンガリーの情勢を他人事ではないと敏感にも感じ取ったクルトたちのような曇りのないまなざしこそ、どの国もどのような情勢においても、人々を動かすきっかけともなり得るのではないでしょうか。

愛、アムール (2012)

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あらすじ

パリに住む老夫婦が主人公です。ジョルジュ(ジャン=ルイ・トランティニャン)は音楽家、愛する彼の妻アンヌ(エマニュエル・リヴァ)と共に二人で暮らしています。しかし高齢となったアンヌの発病によって二人の世界は<閉じられた空間>となっていきます。次第に心身の不自由をきたし、日常生活もままならないアンヌ。しかしジョルジュは愛の力によって、アンヌを懸命に支えます。外界から遮断された生活の中での、壮絶な介護と愛の思い出に満ちた美しい物語となっています。

ここに注目

監督 ミヒャエル・ハネケ
主演 ジャン=ルイ・トランティニャン, エマニュエル・リヴァ, イザベル・ユペール

ミヒャエル・ハネケ監督は「白いリボン」「ファニー・ゲーム」「ピアニスト」「ハッピーエンド」など多くの話題作を撮り、カンヌ映画祭ではパルムドールも受賞しています。ミヒャエル・ハネケ監督はドイツのミュンヘン出身なのですが、オーストリアのウィーンを国籍を取得しています。映画の舞台も、ドイツ、フランス、オーストリアと世界を股にかけて活躍しており、この「愛・アムール」も舞台こそはフランスのパリではありますが、ドイツ・フランス・オーストリアの合作となっています。

注目は主演の二人の迫真の演技です。ジャン=ルイ・トランティニャンは「男と女」「暗殺の森」などの20世紀の名作の主演を演じてきた役者です。70歳を過ぎた今でも精力的に映画に出演しています。上品な身振りと抑制の効いた表情の中にも凄みのあるトランティニャンの演技は、多くの映画監督を魅了しました。対するエマニュエル・リヴァは「二十四時間の情事」などで多く知られている女優。老齢に達した役者二人の壮絶な演技に注目です。

善き人のためのソナタ (2006)

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あらすじ

1984年の東ベルリンが舞台です。ベルリンの壁は1989年に崩壊していますので、ついその5年前という政治的にも動乱の時期にあたります。国家保安賞の局員であるヴィースラー大尉はある任務を命じられます。その任務とは、反体制の疑いのある劇作家と舞台女優を監視すること。ドライマンのアパートに仕掛け盗聴器を用いて、彼らを監視し始めるヴィースラー大尉。そして、その盗聴器から聞こえてくるドライマンの世界に、次第にヴィースラー大尉の心は共鳴していきます。

ここに注目

出演: ウルリッヒ・ミューエ, セバスチャン・コッホ, マルティナ・ゲデック, ウルリッヒ・トゥクール, トーマス・ティーメ
監督: フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

1984年の東ベルリンが舞台ということで、民衆の中でも東西ドイツ統一を掲げる機運も次第に高まっている時期です。そんな中、体制側に属する大尉が、反体制側にあたる人物に次第に感化されるという物語。現実的にも当時の東ドイツでは起こりえた物語なのでしょう。
注目はドライマンの奏でる美しいピアノソナタのシーン。ドイツの歴史や民衆の願いまでがピアノの旋律に昇華されるような印象を受けます。

最近の<歴史物映画>は、軍人や政治家だけではなく市井の人々の側から描かれている物が多くあります。
身近な物語から導入されることで、観る側としても感情移入しやすく、また同時に、当時の状況下にあるの人々への想像力をより強く掻き立てられるのではないでしょうか。すべての歴史にこうした「人間の物語」があるのです。「善き人のためのソナタ」はそのことを思い出させてくれます。

暗い日曜日 (1999)

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あらすじ

1930年のハンガリー・ブダペスト。レストランのオーナーであるラズロは、店でピアノ演奏をするピアニストを雇いました。ピアニストのアンドラーシュは、レストランオーナーのラズロの恋人であるイロナとの許されない恋に苦悩します。次第に惹かれ合うアンドラーシュとイロナ。アンドラーシュはイロナへの誕生日プレゼントとしてある曲を贈ります。それは「暗い日曜日」という曲でした。その後レコード化されたその曲は、「聞くと自殺する歌」として噂になっていきます。

ここに注目

出演: エリカ・マロジャーン, ステファノ・ディオジニ, ヨアヒム・クロール, ベン・ベッカー
監督: ロルフ・シューベル

ヨーロッパにおける都市伝説として有名な「暗い日曜日」という楽曲についてのニック・バルコウによる小説(1988年)の映画化です。楽曲「暗い日曜日」はその陰鬱な雰囲気と暗い歌詞が多く知られています。亡くなった恋人を思い続けて嘆く悲しい歌です。

これを聞いた数百人の人々が自殺をしたという伝説が残っていますが、ナチスによる軍事侵攻下にあった動乱のハンガリーにおいては自殺者の数もそれだけ多く、実際には「暗い日曜日」との関連については疑問の声もあります。

ダミアンを含めて多くの歌手たちによってカバーされている名曲である「暗い日曜日」。映画版の「暗い日曜日」は、この曲を知っている人も、知らない人でも楽しめる悲しい恋愛映画となっています。

ラン・ローラ・ラン (1998)

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あらすじ

比較的低予算で製作されたにも関わらず、社会現象と呼べるほどブームを巻き起こしたアクション映画「ラン・ローラ・ラン」。ベルリンに住むローラに一本の電話がかかります。それは裏金の運び屋をしている恋人マニからの電話でした。「ローラ、助けてくれ。ボスの10万マルクをなくしてしまった。12時までに金を作らないと殺されてしまう。」残された時間はたったの20分です。ローラは、恋人の命を救うために街へと走り出します。

ここに注目

監督 トム・ティクヴァ
主演 フランカ・ポテンテ, モーリッツ・ブライブトロイ, ハイノ・フェルヒ

1998年のサンダンス映画祭でワールドシネマ観客賞を受賞した映画です。日本でも大ブームとなりました。主人公ローラの赤い髪はこの映画のトレードマークで、当時は真似をする人達までいた程です。さらにテクノポップ音楽を使用したサウンドトラックも話題になり、「Running One」という楽曲は今でもTV番組番組で耳にすることも少なくありません。

また、ローラが任務を完了するまで3パターンのストーリーをリフレインするというゲームのような映画の構成も話題になりました。

主人公ローラを演じたフランカ・ポテンテはこの映画で一挙に世界的に注目を集め。その後も「ブロウ」「ボーン・アイデンティティ」など多くの話題作にも出演しています。

モモ (1988)

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あらすじ

ドイツを代表する作家ミヒャエル・エンデによる著名な原作本を映画化した作品。ミヒャエル・エンデの作品は「モモ」に先駆けて「ネバーエンディング・ストーリー」も映画化されていました。「ネバーエンディング・ストーリー」のほうは、日本を含めて世界でも大ヒットを記録しました。しかし作者であるミヒャエル・エンデはその出来映えに不満であったそうで、この「モモ」が製作されました。突然街に現れた不思議な少女モモ。しかし、時間どろぼうが現れて、街から時間がなくなってしまいます。モモは時間を取り戻すために奮闘します。街には時間は戻ってくるのでしょうか。

ここに注目

出演: ラドスト・ボーケル, ジョン・ヒューストン, ブルーノ・ストリ, レオポルド・トリエステ, ヨハネス・シャーフ

この映画の注目ポイントしたいポイントは、原作者ミヒャエル・エンデが<ミヒャエル・エンデ本人役>として映画本編に登場していることです。
また、マイスター・ホラ役で出演しているのは、かのジョン・ヒューストン。アメリカ映画界の重鎮的な映画監督です。

このように脇役陣も豪華な映画「モモ」。ファンタジー文学として今でも不動の人気を誇るミヒャエル・エンデの作品のファンなら要チェックの映画です。

まだCGなどのテクノロジーも過渡期であった80年代。エンデのファンタジー世界を再現すべく奮闘する映画人の姿がそこにあります。

バグダッド・カフェ (1987)

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あらすじ

ドイツのミュンヘン郊外ローゼンハイムに住んでいるヤスミンは、夫とアメリカ旅行中。しかしヤスミンは車内で夫と喧嘩をしてしまい、車を飛び出します。彼女はトランクひとつ手に持って、モハーヴェ砂漠を歩いて行きます。そこで目にしたのは<バグダット・カフェ>です。そこは不機嫌な女主人ブレンダが切り盛りしていました。ヤスミンの登場で、バグダット・カフェの人々の心は少しずつ癒やされていきます。

ここに注目

監督 パーシー・アドロン
主演 マリアンネ・ゼーゲブレヒト, CCH・パウンダー, ジャック・パランス

東西に分断されていた1989年。西ドイツとアメリカの合作映画です。同時代の東ドイツを舞台とした映画と比べると、この西ドイツ映画との違いは歴然としています。東ドイツ映画で多く描かれている庶民の貧しさとは対照的に、西ドイツ側ミュンヘン郊外ローゼンハイムに住んでいた主人公は、夫婦でアメリカ旅行をするほど裕福なのです。

主演のマリアンネ・ゼーゲブレヒトはこの映画で人気を集めました。
ふくよかな体躯にキリッとあがった眉に鋭い眼光など、彼女の風貌は私たちのドイツ人女性のイメージそのままでした。
「ローズ家の戦争」「ロザリー・ゴーズ・ショッピング」、最近では「バチカンで逢いましょう」などにも出演しています。

パリ、テキサス (1984)

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あらすじ

4年前に妻子を捨て突然失踪したトラヴィス(ハリー・ディーン・スタントン)。砂漠をさまようトラヴィスは、カリフォルニア州ロサンゼルスへと戻ってきます。彼の息子ハンターは、弟の家で過ごしていました。そして妻であるジェーン(ナスターシャ・キンスキー)は、ハンター宛てに定期的に密かに送金をしていることを知りました。その送金元を辿ってジェーンの様子を見に行くトラヴィス。二人は再会し、お互いの隠された真実を語り始めます。

ここに注目

監督 ヴィム・ヴェンダース
主演 ハリー・ディーン・スタントン, ナスターシャ・キンスキー, ハンター・カーソン

ニュージャーマンシネマの代表的旗手の一人であるヴィム・ヴェンダース監督による西ドイツ時代の作品です。今でも色褪せることなく、多くのファンを魅了し続けています。
この作品は西ドイツとフランスとの合作映画でした。
原作は俳優としても有名なサム・シェパード。彼のエッセイ「モーテル・クロニクルズ」を元にサム・シェパード自身が脚本を担当しました。音楽を担当したライ・クーダーのスライド・ギターの音色も映画の魅力を大いに引き立てています。

ブリキの太鼓 (1979)

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あらすじ

ポーランドの港町が舞台。3歳の誕生日を迎えたオスカル。彼は母親からブリキの太鼓をプレゼントされます。しかしそんな母アグネスは、ドイツ人の父アルフレートと結婚している身でいながら、従兄弟のポーランド人ヤンとの不倫関係にありました。少年オスカルは、大人達の醜悪な世界に嫌悪感を抱き、階段を落ちることで自らの成長を止めてしまいます。そして<太鼓を叩きながら奇声をあげる>ことでガラスを砕くという超能力を得ることになります。

ここに注目

監督 フォルカー・シュレンドルフ
主演 デヴィッド・ベネント, マリオ・アドルフ, アンゲラ・ヴィンクラー

フォルカー・シュレンドルフもニュージャーマンシネマの映画監督の一人です。ジャン=ピエール・メルヴィルやルイ・マルの元で助監督を務めたあと、ギュンター・グラスの「ブリキの太鼓」を映画化します。この作品はカンヌ映画祭ではパルムドールを、アカデミー賞では外国語映画賞を獲得しました。映画としてはその性描写によって巻き起こした様々な論争が話題になることが多いのですが、第二次大戦後のドイツ文学における最も重要な作品の一つとされている「ブリキの太鼓」の映画化作品として注目されるべき映画です。

シュトロツェクの不思議な旅 (1977)

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あらすじ

ベルリンの刑務所を出所したばかりのシュトロツェク(ブルーノ・S)は元やくざの娼婦と老人という不思議な三人で一緒に暮らし始めます。しかし、やくざから脅迫されたシュトロツェクらはベルリンを出て、異郷の地アメリカを目指して出発します。辿り着いたのはウィスコンシン州の片田舎。夢見たアメリカの地においても彼らの行く手には苦難が待ち受けていました。3人の人生は次第に狂い始めて行きます。

ここに注目

出演: ブルーノ・S, エヴァ・マッテス, クレメンス・シャイツ
監督: ヴェルナー・ヘルツォーク

ニュージャーマンシネマの代表的映画監督の一人、ヴェルナー・ヘルツォークによる作品。ヘルツォークは「アギーレ・神の怒り」「フィツカラルド」「カスパー」など、芸術的にも高い評価を得る作品を作りました。この「シュトロツェクの不思議な旅」では、「カスパー」でも主演したブルーノ・Sとのコンビ作。ジョイ・ディヴィジョンのボーカルであるイアン・カーティスが影響を受けたとされる作品でもあります。

ブルーノ・S(ブルーノ・シュラインシュタイン)は主にヘルツォーク作品で国際的に知られた俳優です。後年音楽家としてアルバムもリリースしています。ヴェルナー・ヘルツォーク監督はブルーノ・Sの死後、「私のすべての映画で、一緒に働いたすべての偉大な俳優と同じく、彼は最高でした。彼のような人は他にいません。」と述べています。
本作はそんなブルーノ・Sの演技を充分に堪能できる作品となっています。

アギーレ 神の怒り (1972)

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あらすじ

1560年スペインの大航海時代が舞台です。スペインからやってきた分遣隊はキトからアンデス山脈へと分け入って行きます。黄金郷と呼ばれる伝説の都市エル・ドラドを目指して、分遣隊は行軍します。分遣隊副官アギーレは、次第に狂気に駆られて行きます。実在の人物ドン・ロペ・デ・アギーレをクラウス・キンスキーが熱演をしたヘルツォークの代表的映画です。

ここに注目

出演: クラウス・キンスキー, ヘレナ・ロホ, ルイ・ゲッラ
監督: ヴェルナー・ヘルツォーク

鬼才ヴェルナー・ヘルツォークと俳優クラウス・キンスキーによるコンビで撮られた「アギーレ・神の怒り」。後の「フィツカラルド」にもクラウス・キンスキーは主演していますが、彼もまたヘルツォーク作品に欠かせない代表的な俳優です。

後にヘルツォークは「キンスキー、我が最愛の敵」というキンスキーを回想する作品も撮りました。それほどヘルツォークとキンスキーには常人には想像を絶するような密度の濃い関係があったのでしょう。常軌を逸した天才と天才によるぶつかり合いによる結晶のひとつが「アギーレ・神の怒り」なのです。

ドイツ零年 (1948)

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あらすじ

第二次大戦後、爆撃と市街戦の残骸とで廃墟となったベルリン。敗戦国となったドイツでは市民は困窮にあえぐ苦しい生活を強いられています。エドムント少年の父親は病気で働くことすら出来ず、姉は夜の街でお金を稼いでは家計を支えています。エドムントは闇商売に手を染めて、生活を立て直そうと必死にもがきますが、思うようには行かず、とうとう病気の父親に手をかけることを決意します。

ここに注目

出演: エドムント・メシュケ, エルンスト・ピットシャウ, インゲトラウト・ヒンツェ, フランツ・クリューガー
監督: ロベルト・ロッセリーニ

ロベルト・ロッセリーニ自身はイタリア人の映画監督です。しかし、この「ドイツ零年」はドイツ映画史においては決して見逃すことの出来ない金字塔のような作品です。ネオ・リアリスモという当時イタリア映画界を牽引したリアリズム運動の代表的映画監督であるロッセリーニが撮った大戦後のベルリンの描写は、世界に衝撃を与えました。

意志の勝利 (1935)

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あらすじ

1934年9月4日から一週間に渡って開催された「意志の勝利」と題されたナチス・ドイツの大規模な党大会を撮影したドキュメンタリー映画です。ドイツ・バイエルンの都市ニュルンベルグでのこの党大会は、前年に政権を奪取したアドルフ・ヒトラーによるナチス・ドイツによる党大会として、国威発揚を促すために大々的に行われました。

ここに注目

監督:レニ・リーフェンシュタール「民族の祭典」「美の祭典」「ワンダー・アンダー・ウォーター 原色の海」
製作:レニ・リーフェンシュタール、アドルフ・ヒトラー

<芸術か、プロパガンダか>。今でもレニ・リーフェンシュタールによる「意志の勝利」は映画人だけでなく、多くの人々の間に物議を醸しています。元女優であったリーフェンシュタール監督があまりにもアドルフ・ヒトラーに近い存在であったこと、当時の人々にあまりに大きな影響を与えたことなどから、その芸術性の高さにも関わらず、禁断の映画、問題の映画と言われています。
ヒトラーのカリスマ性を高める党大会の派手な演出や、リーフェンシュタールによるカメラアングルの妙など、後生に多くの影響を残しました。

メトロポリス (1927)

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あらすじ

1927年のドイツにおいて製作された伝説のSF映画です。近未来、高層ビルが建ち並ぶ都市メトロポリス。裕福な支配者の下、労働者階級は苦しい労働条件で酷使されていました。ある時、支配者の息子であるフレーダーは労働者の娘であるマリアに恋をします。二人は労働者の間にストライキを起こそうと奔走します。「すべてのSF映画の原点」と称される名作です。

ここに注目

出演: アルフレート・アーベル, ブリギッテ・ヘルム, グスタフ・フレーリッヒ, フリッツ・ラスプ, ルドルフ・クライン=ロッゲ
監督: フリッツ・ラング

モノクロ・サイレント映画の時代に撮影された伝説のSF映画です。ドイツではヴァイマル共和国の時代。その時代において、SF映画の要素をすべて散りばめた作品となっており、SF編集者のフォレスト・J・アッカーマンは「SF映画の原点にして頂点」と評しています。以降のSF映画にも観られる資本主義と社会主義の対立という図式においても「メトロポリス」は先駆けとも言えます。

嘆きの天使 (1930)

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あらすじ

中年の真面目なイマヌエル・ラート教授は、キャバレーのダンサーであるローラに恋に落ちます。盲目的にローラを愛した彼は、全てを捨ててドサ回りの役者となります。かつて自分が教えていた高校のある街でのドサ回り公演では、彼は超満員の観衆にコケにされ、おまけにダンサーからも古雑巾のようにこっぴどく捨てられてしまいます。百万ドルの脚線美と言われたマレーネ・ディートリッヒが主演した伝説の名作。

ここに注目

出演: マレーネ・ディートリッヒ, エミール・ヤニングス, ローザ・ヴァレッティ, ハンス・アルバース
監督: ジョゼフ・フォン・スタンバーグ

伝説の女優マレーネ・ディートリッヒの出世作。この映画での妖艶な演技と歌声によって、彼女はハリウッドに招かれてアメリカに渡ることになります。彼女の亡命後、ドイツではナチスが台頭します。ドイツに残った映画人たちからは「裏切り者」と呼ばれながらも、最後までドイツ人としてのアイデンティティを失わなかったディートリッヒ。今観ても決して色褪せることのない彼女の魅力に溢れた作品となっています。

まとめ

現代のドイツ映画においても、やはりドイツの辿ってきた歴史的背景というものは見過ごすことの出来ないものと言えます。
ハリウッド映画のように真の意味での<娯楽映画>というものはかなり少ないのではないでしょうか。それは激動の時代を経てきた国だけに、様々な物語の裏にはどうしても政治が介入してきているということによるのではないかと思います。
しかし、これだけの映画的天才を生み出してきた源泉は、その激動の歴史にあることもひとつの真実です。ドイツの歴史を念頭に置きながらドイツ映画を紐解くと、さらに物語の深い意味が響いてくるのではないでしょうか。

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下野奈津子

【家庭料理研究家】ワイン輸入会社での経験を経て、食育メニュープランナー、ヘルシービューティーフードアドバイザーの資格を取得。時短なのにちょっと特別感のある食卓がテーマです。【映画】映画通、NY市立大学ブルックリン校で映画制作を学ぶ。【本】古書マニア、オンライン古書店、double plus goodを経営。

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