ポーラ美術館 レストランアレイ 企画展限定コースメニュー「シンコペーション」

美術鑑賞と共に、ランチタイムを楽しむ方が増えています。美術館も展覧会に合わせ特別メニューを提供し好評です。初めて現代美術を取りあげるポーラ美術館の「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」に合わせたメニューを、料理長のインタビューを交えて紹介します。またモチーフの作品解説も合わせてお楽しみください。

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■企画展限定コースメニュー「シンコペーション」

ポーラ美術館併設のレストラン「アレイ」で提供される今回の企画展限定コースメニューは「シンコペーション」です。

展覧会の出展作品からインスピレーションを受けたメニュー構成で、意外なコンビネーションが奏でるコンテンポラリーな ハーモニーを楽しめます。

←限定コースメニュー「シンコペーション」(2,980 円 税込)


〇オードブル:海老のフリット アサリのグリーンソース

海老のフリットをサクッと揚げて、彩豊かな野菜を盛り合わせています。アサリを使ったソースでいただきます。

出展作品《クリナメン v.7》をイメージしたオードブルです。

中曽龍彦料理長によると、蓮に見立てた白い陶磁器を球体ととらえ、丸い形のオードブルで構成したそう。水のブルーは色が強いため、ソースはモネの《睡蓮》からイメージしました。

←セレスト・ブルシエ=ムジュノ 《クリナメン v.7》 2019年 ©Céleste Boursier-Mougenot

球形の海老のフリットや、玉葱、丸く繰りぬいたかぼちゃなど、水に浮かぶ睡蓮をイメージしています。

アサリのソースのイメージ、モネの睡蓮。

今回の企画は、現代アートと巨匠のコラボという初の試み。ポーラ美術館の代表作ともいえるモネの睡蓮から、緑色のソースが生まれました。

箱根の自然も表現されているように感じます。

←クロード・モネ 《睡蓮》 1907年 ポーラ美術館蔵

〇メインディッシュ:鴨のロースト オレンジ風味

香辛料の入ったはちみつを使い焼き上げた鴨を、オレンジ風味のソースでいただきます。

野菜は、夏から秋の開催期間に合わせた季節の野菜が添えられています。

メインディッシュは、アブデルカデル・バンシャンマのダイナミックなドローイングをイメージしています。

肉は岩を表しており、ソースは墨のようなかすれも表現しています。

←アブデルカデル・バンシャンマ 《ボディ・オブ・ゴースト》 2019年 ©Abdelkader Benchamma, Courtesy of Galerie Templon, Paris

〇デザートの盛り合わせ

やさしい食感のクレメ・ダンジェに、フランボワーズなどの酸味のある赤い果実を合わせました。

デザートのカラーは、解説パンプレットの文字の色からイメージされたそうです。

また、モネが描いた様々な《睡蓮》のピンクの花からも、イメージしたといいます。

モネの筆触分割がデザートプレートに描かれているようです。

←クロード・モネ《睡蓮の池》部分 1899年

ポーラ美術館 コレクション名作選(展示室4・5)
「Ⅲ.花のシンフォニー」では、様々な花の表現が紹介されています。

ジヴェルニーの自邸の庭に睡蓮の池を造成し、季節や時間によって異なる表情を見せる水面と睡蓮の花を繰り返し描きました。

←クロード・モネ《睡蓮の池》1899年 ポーラ美術館蔵



■メニューのモチーフとなった作品紹介

〇企画展の概要

ポーラ美術館では、初の現代アートの企画展「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」を2019 年 8 月 10 日(土)から 12 月 1 日(日)まで開催しています。

本展覧会は、ポーラ美術館の絵画をはじめとする多岐にわたるコレクションを、現代美術の第一線で活躍する作家たちの作品とともに紹介します。巨匠たちの作品とともに歩んできたポーラ美術館が、同時代の表現者へと展望を拡げ、新な一歩を踏み出す注目の展覧会です。

「シンコペーション」(切分法)とは、音楽において、リズムを意図的にずらし、楽曲に表情や緊張感をあたえる手法。巨匠から現代作家へと引き継がれる表現の中で、奏でられる新しいリズムや音に耳を傾けてみましょう。

巨匠と現代作家の出会いは、レストランメニューにも新しいリズムをもたらしているようです。モチーフとなった作品を、さらに詳しく紹介します。

〇セレスト・ブルシエ=ムジュノ 《クリナメン v.7》×クロード・モネ《睡蓮》

セレスト・ブルシエ=ムジュノの作品《クリナメン V.7》は、箱根の緑を望む展示空間に円形のプールを作り、大小の白いボウルを浮かべ偶然の衝突を誘発します。

←セレスト・ブルシエ=ムジュノ 《クリナメン v.7》 2019年 ©Céleste Boursier-Mougenot Photo: Keizo Kioku 

陶磁器がぶつかることで、奏でられる音とリズムが作るインスタレーションです。

また、絶え間なく変化する様子は、モネが描いた《睡蓮》の水面のようです。

この音を生み出す白いボウルは、どのようなものが使われているのでしょうか?

素材はボーンチャイナ。意外にも身近に手に入る食器だそうですが、選ぶ時は、大きさや形によって異なる響きの中からイメージにあう音を吟味して選んでいるとのこと。

←©Céleste Boursier-Mougenot Photo: Keizo Kioku

印象派のクロード・モネは、画家を志したころから水に注目し、後半生には自宅に睡蓮の浮かぶ池を造成して水面を繰り返し描きました。

←クロード・モネ 《睡蓮》 1907年 ポーラ美術館蔵

水の流れや動きには、古今東西を問わず、思想、文学や美術において「時のうつろい」の感覚が託されてきました。ここでは、二人の作家がそれぞれの時代に造りあげた環境の中で、久しくとどまることのない水面のうつろいが捉えられています。

【作家プロフィール】
音楽家として活動を始め、演劇の舞台で日常的なノイズを取り入れた音楽を制作。作家活動の初期から一貫して偶発性や複雑性に関心を寄せ、楽器や身近なオブジェ、機械、鳥や蜂といった生物を用いたインスタレーションにより、音と視覚の共鳴に関する表現を展開しています。

〇アブデルカデル・バンシャンマ × ギュスターヴ・クールベ

アブデルカデル・バンシャンマは、ダイナミックな大地のヴィジョンをモノクロームのドローイングで表現しています。


←アブデルカデル・バンシャンマ 《ボディ・オブ・ゴースト》 2019年 ©Abdelkader Benchamma, Courtesy of Galerie Templon, Paris

文学や哲学、土着信仰など多様な分野を参照しつつも即興的な身振りで、変化に富む光と影の襞を縦横無尽に描き出し、太古の遠い記憶を回顧します。

一方、バンシャンマが敬愛するクールベは、地殻変動の跡があらわな岩山や、起伏のある土地を画題に求めて森を探索しました。



←ギュスターヴ・クールベ 《岩のある風景》 ポーラ美術館蔵

【プロフィール】
1975年フランス、マザメ生まれ。繊細かつダイナミックなドローイングで、崩壊と生成の絶えざる運動を描き出す。

文学や秘教、哲学、天体物理学、神経生理学など、多様な分野を参照しながら即興的な身振りで生み出される、混沌としたモノクロの世界は圧巻。2018〜19年、ヴィラ・メディチ(ローマ)のレジデンス・プログラム参加。

■展覧会概要

・会 期:8/10(土)~12/1(日) *会期中無休
・開館時間:9:00~17:00(最終入館は 16:30)
・所 在 地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山 1285
・T E L:0460-84-2111

■レストラン「アレイ」概要

窓の外に広がる眺望は小塚山。大きな窓から注ぐ光や緑がゆったりとした気分にさせてくれます。

白で統一されたインテリアが印象的なレストラン「アレイ」。

テラス席も人気です。気候の良い時には、戸外も気持ちがよさそう。

旬の食材を使った欧風料理から和食まで、幅広いメニューがそろっています。
ゆったりとした空間で季節感あふれるランチやティータイムを楽しめます。

営業時間:11 時~16 時(L.O.) 120 席

■料理長インタビュー

ポーラ美術館レストラン・カフェの中曽龍彦料理長に、企画展メニューについてお話を伺いました。

--------たくさんある作品の中から、メニューはどのように決めるのでしょうか?
いくつか候補の作品が上がってくるので、その中から選んでいます。展示の余韻とつながるように、様々なものを参考にしながら工夫をこらしています。

パンフレットなどもカラーイメージとして参考にされていると伺い、いろいろなものがインスピレーションの元になるのだと思いました。

--------企画展メニューは、食べてから見る? 見てから食べる?
おそらく、展覧会を見ないで召し上がっても、よくわからないと思います。展覧会を見てからがおすすめです。ランチタイムは混雑するので、できれば時間をずらした方が、おちついてお食事ができると思います。召し上がったあとにまたご覧いただくと、作品の理解も深まるのではないでしょうか?


ポーラ美術館の巨匠たちに現代作家が加わり、新たな歴史を紡ぐ展覧会。さらに料理人も新しいアートの世界を、プレートの中で描いています。ソースに込められた作品のエッセンスを、目と舌で味わったあと、再度、作品を味わうと、最初は気付かなかった隠し味が発見できるかもしれません。

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ライター 著書は10冊以上。VOKKAでは専門を離れ、趣味の美術鑑賞から得られた学びや発見、生きるためのヒントを掘り起こしていきたいと思います。美術鑑賞から得られることで注目しているのが、いかに違う視点に触れるか、自分でも加えることができるか。そこから得られる想像力や発想力が、様々な場面で生きると感じています。元医療従事者だった経験を通して、ちょっと違うモノの見方を提示しながら、様々な人たちのモノの見方を紹介していきたいと思います。美術鑑賞から得られることは、多様性を認め合うことだと考えています。

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斉藤情報事務

信州の曲者が集まるCLUB Autistaに所属する道楽者。車と酒と湯を愛し、ひと時を執筆に捧げる。

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