IRフェアでなぜか行列ができる、噂のブースに行ってみた
日経IRフェアで毎年行列ができるブースがあるという噂を耳にしました。投資家向けの説明会の場であるIRのフェアの企業ブースになぜ行列ができるのか。何がそこまで聴衆の足を止めさせるのか。気になるその現場に足を運んでみたところ、目立っているのはブースだけではありませんでした。取材した内容をリポートいたします。
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初日動員数9,107名、投資家向けのコミュニケーションの場
日経IR・投資フェアは8月31日、9月1日の2日間東京ビッグサイトで行われる投資家向けの説明会です。企業のトップ層が経営計画や成長戦略をプレゼンテーションし、個人投資家とコミュニケーションを取ることができる場となっています。初日の動員数は9,107名(日経新聞による)だったとのことです。
行けばひと目でわかる一風変わったブース。業界ダントツのトップシェア企業
会場の奥へ進んでみると、一際目立つ和風のブースを発見しました。他社のブースと比べても異色で非常に目立つため、確かにひと目でわかります。このブースを出展するのは、建設機械(以下、建機)の油圧フィルタのメーカーであるヤマシンフィルタ株式会社(証券コード6240)です。
お話を伺ってみると、目立っているのはブースだけではありませんでした。実はヤマシンフィルタは、建機の油圧フィルタの業界でダントツ70%のシェアを誇る、業界のトップ企業とのことです。ニッチな業界とはいえ、このシェア率は驚きです。
建機とは、パワーショベル・クレーン・ブルドーザーなどの建設現場で使われる重機のことを指します。これらの建機は油圧の力で動いているのですが、土やホコリが舞う過酷な環境で稼働しているため、オイルが汚れてしまいます。この汚れた油が建機の内部を蝕み、故障に繋がってしまうそうです。
「屋根を直すのは晴れの日に限る」業界トップ企業の戦略とは
ヤマシンフィルタの売上が安定している秘訣は、新車に供給する「ライン」45%、既存の建機のフィルタを交換する「補給」55%という売上構成にあります。新車の販売台数に左右されず、定期的に実施する必要があるフィルタの交換時に提供をする、ストック型の収益モデルを構築できている点が財務上の強みとなっています。
また、「屋根を直すのは晴れの日に限る」をモットーに、事業が好調な時ほど事業を改善する社風も今の業績に直結をしています。ヤマシンフィルタは創業期には布のフィルタから始まり、紙で濾過するろ紙、ガラス繊維を用いた素材など、現状維持をせずに素材革命を起こしてきました。
そして今回、素材革命を起こし続けてきた同社が新たに開発した素材が紹介されました。この新素材とはどのようなものなのでしょうか。
「音も取る、熱も取る」注目の新素材。ガラス繊維からnanoサイズへ
建機用の油圧フィルタの業界で着実に実績を積み上げてきた同社が、2017年に新たに開発したのがこのわたあめのような素材「YAMASHIN Nano Filter」です。この素材の開発により、衣服、農業、車、住宅、医療、社会インフラ、情報通信の分野に拡大をすることができると言います。
例えば、農業ではビニールハウスの断熱材として活用することができるそうです。この素材は熱を取り除く効果があるため、内部の温度を一定に保つことができ、農家の方々は電気代を節約することができます。
実際に触ってみると、指紋の間に繊維が入り込むように手にべったりと付くため、繊維の細かさを実感することができます。これはあくまで筆者の個人的な感想ですが、今後この素材がインナーシャツに使われることがあれば非常に便利だなあ…と思います。
行列のワケ。一風変わったブースの理由とは
落語家の師匠が出す3つの課題に対して学生が挑みます。あの有名ななぞかけにもチャレンジしています。その中からいくつかピックアップしてご紹介させていただきます。
■ヤマシンフィルタとかけまして、●●と解く。その心は?
「ヤマシンフィルタとかけまして、ダイヤモンドと解く。その心は?どちらもすごい功績(鉱石)です。」
「ヤマシンフィルタとかけまして、介護と解く。その心は?どちらもオイル(老いる)がテーマです。」
学生の皆さんがヤマシンフィルタを研究した上で挑戦しているのがわかります。
しかし、うまくいかないとせっかく獲得したレイを取り上げられてしまいます。その学生の心の嘆きが表れたコメントも飛び出しました。
■新素材の「n」「a」「no」という言葉であいうえお作文
「なんと、あたしの会社は、No残業」
「なんでかな、あかるく答えたのに、Noレイ」
師匠も、嘆く学生にレイをプレゼント。ヤマシンフィルタのブースは、終始非常に和やかな笑いに包まれるブースでした。この大喜利が行列に繋がっていたのですね。
実は、このヤマシン大喜利を実施しているのには理由があります。油圧フィルタはニッチな業界のため、どうしても学生の新卒採用で埋もれてしまい、採用に課題意識を持っています。その中で、学生により親しみを持ってもらいながら、業界やヤマシンフィルタのことを知って欲しい。そうして大喜利の取り組みを始めたと言います。
本事業でも素材革命を起こしてきたヤマシンフィルタが、新卒採用でもユニークな取り組みを実施しています。会場では非常にわかりやすく事業の説明を聞くことができました。新素材に関してはもちろん、今後の採用活動にも期待大ですね。