聴けば聴くほどに心揺さぶる音楽!初心者にもオススメのアメリカン・ラップソング10曲
音楽の好みは人それぞれですが、ふと新しい分野の曲を聴きたくなるときも。ラップミュージックは、非常に個性的、独創的ですので、一般受けせずに敷居が高そうに思われがちで、食わず嫌いの人もいるのでは…? ひと口に“ラップ”と言っても、その多様性に驚かされるはず。ここでは、アメリカン・ラップ入門用に最適な10曲プラスαをご紹介!
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その多様性に注目!奥深いアメリカン・ラップの世界
スタイル、テーマ、サウンドはもちろんのこと、何を目指しているかまで、ラップは信じられないほど多様性に富んだ、奥深い音楽分野です。ゆえに、オススメの曲を10曲に絞るのは大変難しく、ご紹介できるのはほんの一部分となってしまうのですが、それでも、今回ピックアップした曲は入門編にぴったりで、興味が湧いた方は、ここからどんどんラップミュージックの世界の深みにはまっていってもらえればと思います。
アメリカの“ラップ”を語る際、イーストコースト(東海岸)、ウェストコースト(西海岸)、ダーティ・サザン(南部)、ミッドウエスト(中西部)と、地域別に考えるのが一般的ですが、地理的な分類以外に、オールドスクール時代、90年代、ニュースクール時代など、時間枠で捉えられることもあります。しかしながら、こういった主だったジャンル以外にも、非常に多くのサブジャンルが存在し、ラップは単純にカテゴリー別に話せるものではありません。パーティシーンに最適なノリノリのクラブミュージックに特化したラッパーやグループもあれば、政治的、社会的なメッセージを発信し続けている歌い手もいます。ジャズ・ラップ、ナードコア・ラップ(テクノロジー、ゲームファン向け)、リリジャス(宗教的)・ラップ、ギャングスター・ラップといった、よりコアなリスナーを意識したラップも存在しています。
ヒップホップ・カルチャーのひとつとして始まったラップ音楽
ラップは、ヒップホップ文化(MCまたはラップ、DJあるいはスクラッチ、グラフィティ・アート、ブレイクダンスが4大要素)の一部として、1970年代のニューヨークのブロンクス地区で始まったとされています。MCはDJと組むことが基本で、MCが言葉を操り、歌詞を紡ぎ出すのに対し、DJはサウンド担当。複数の再生機を利用して違った曲をミックスさせます。40年以上の昔からずっと、ラップはストーリーテリングの役割を果たし、発信者の“声”を人々に届ける手段のひとつでした。ときには社会や経済への不満を吐露し、またときには純粋に内なる想いをぶちまけたり、人生や良き時代を讃えたりしながら、多くのアーティストたちは、ラップで感情や意見を表現してきたのです。そして、リスナーにとっても、ラップは常に身近な存在であり、辛い時期を乗り越えるための助けであり、希望の光でもありました。
今回は、そんな様々なスタイルを持つラップミュージックから10曲を厳選。ラップ初心者の方にも、ぜひその魅力に触れていただきたいと思います。
シュガーヒル・ギャング『ラッパーズ・ディライト』(1979)
Rapper's Delight, by Sugar Hill Gang
これ以前にリリースされた有名なラップソングは存在しますが、15分もの長さの『ラッパーズ・ディライト』は、ラップ音楽史上、商業的に成功した最初の曲と言えるでしょう。この歌が当たったことにより、ラップやヒップホップは世の中に浸透し、メインストリームの音楽ジャンルとして意識されるようになりました。40年近く前にリリースされた『ラッパーズ・ディライト』は、現在耳にするラップとはサウンドもリズムスタイルも大きく異なっています。曲調はずっとスローで、リズムも複雑ではありませんが、オールドスクール・ラップの影響力が今も決して薄れていないことがわかります。現在でも、数多くのアーティストやファンが尊敬の念を抱き、語り継いでいる歴史に残るラップソングなのです。
当時のポップソングのヒットチャートで36位まで上昇し、世間にヒップホップ音楽の存在を知らしめた名曲
Rapper's Delight Lyrics: I said a hip hop the hippie the hippie / To the hip hip hop and you don't stop / The rock it to the bang bang boogie / Say up jump the boogie to the rhythm of the boogie, the beat
『ラッパーズ・ディライト』の歌詞を解説(英語)
ビースティ・ボーイズ『ノー・スリープ・ティル・ブルックリン』(1986)
No Sleep Til Brooklyn, by Beastie Boys
1970年代後半、パンクロックバンドとして音楽活動を開始したビースティ・ボーイズ。80年代初めにバンドメンバーの入れ替えを経て、ラップミュージシャンへと完全なる方向転換を果たしました。1986年11月、Mike D(マイクD)、MCA(エムシーエー)、King Ad-Rock(キング・アドロック)の3人は、1986年にファーストアルバム『ライセンス・トゥ・イル(Licensed to Ill)』をリリース。このアルバムは、1980年代のラップアルバムで最も売り上げた作品となり、音楽チャート〈ビルボード200〉でラップ系として初のナンバー1に輝いています。ビースティ・ボーイズは、結成当初、ノリノリのパーティ・ラップ・グループとして活動を開始しましたが、31年のキャリアの中で、メンバー自身も彼らの音楽スタイルも成熟していきました。3人の、韻を踏んだ素晴らしい歌詞を作り出し、ブレンドする優れた能力と、快活で未来的でキャッチーなビートを生む才能は見事に開花し、数々のプラチナアルバムをリリース。グラミー賞に3度輝くなど、多くの音楽賞も受賞しています。
パンクやハードロックの印象が濃厚なこの曲は、ヒップホップ音楽として初めてビルボード1位を獲得
No Sleep Til Brooklyn Lyrics: No sleep til / Brooklyn / Foot on the pedal - never ever false metal / Engine running hotter than a boiling kettle / My job's ain't a job - it's a damn good time / City to city - I
『ノー・スリープ・ティル・ブルックリン』の歌詞(英語)
スリック・リック『チルドレンズ・ストーリー』(1988)
Children's Story, by Slick Rick
ラップソングにおいて、ストーリーテリングは非常に重要な要素ですが、ラップバトルで最も優れたストーリーテラーとされているのは、アメリカに移住したイギリス人、スリック・リックでしょう。この『チルドレンズ・ソング』で彼は、武装して強盗を働き始める2人の若者の物語を巧妙に歌い上げていきます。スリック・リックが言葉を繰って歌を彩る様は、まるで画家が巧みに絵筆を使って肖像画を描いていくのと似ています。彼の滑らかな語り口のスタイルとウィットは、かすかな英国英語訛りと相まり、80〜90年代の他のラッパーと一線を画していました。ヒップホップ文化の中で賞賛を受け続け、長年の影響力を誇るこの歌は、これまで何度もカバーされ、繰り返し話題に上がっているのです。
ストーリーテリング・ラップの先駆者と言われるスリック・リック
Children's Story Lyrics: Uncle Ricky, could you read us a bedtime story? / Please, huh, please? / Alright, you kids get to bed, I'll get the storybook / Y'all tucked in? / Here we go / Once upon a time not
『チルドレンズ・ソング』の歌詞の解説(英語)
関連ソング:ブラック・スター『チルドレンズ・ストーリー』(Children's Story, by Black Star)
スリック・リックの『チルドレンズ・ソング』がリリースされてから約10年後、ラップのスーパーグループ、ブラック・スターがカバーした1曲もご紹介しておきましょう。
ブラック・スター版は、オリジナルの韻の踏み具合やテーマの大部分を踏襲しているものの、そこで語られるのは、音楽業界で他人の曲をサンプリングする音楽プロデューサーの話となっています。この歌が誕生した当時、ヒップホップの世界では、古いラップソングのビートを借り、より耳障りとノリのいい曲に仕上げるラッパーがトレンドでした。純粋なラップ音楽ファンの中には、ウケの良さを狙って、ヒットさせるやり方は必ずしも曲本来の質を高めるわけではないとし、こういった“ポップ・ラップ”の潮流はヒップホップをダメにすると批判的な考えを持つ人もいたのは事実です。それでもブラック・スターは、ユーモラスかつ明快な方法でこのような状況に注目を集めるべく、『チルドレンズ・ソング』を使ったのです。
ブラック・スターは、NY出身のモフ・デフとタリブ・クウェリのラップ・デュオ。彼らの『チルドレンズ・ソング』をオリジナルのスリック・リック版と聴き比べると面白い
Children's Story Lyrics: ...and then Jackie Chan just started kickin em / Like POW! POW! POW! / Whaaaaa??! / Alright y'all, alright y'all enough of that / It's time to go to bed y'all / Time to go to bed
ブラック・スター版『チルドレンズ・ソング』の歌詞の解説(英語)
N.W.A.『ギャングスタ・ギャングスタ』(1988)
Gyangsta, Gyangsta, by N.W.A.
1980年代後半、N.W.A.は彗星のごとく出現し、ブレイクを果たしました。サウスセントラル(現在はサウスLAと呼ばれる)やコンプトンといった危険地域での暴力を創造性の糧にし、彼らは自分たちの近隣で何が起きているかを赤裸々に語るラップソングを生み出します。彼らの存在が、ラップの1ジャンルであるギャングスタ・ラップを盛り上げるきっかけとなりました。ギャングスタ・ラップは、生まれ育った地域にはびこる麻薬や暴力の問題をテーマにした歌で、一人称で語られるストーリーテリング形式のものです。自らの歌でギャングの暴力をあぶり出すだけでなく、N.W.A.は彼らが日々経験、遭遇した人種問題や警察による蛮行にも焦点を当てました。
このグループはわずか数年で解散という結果を迎えるのですが、彼らがヒップホップ界に与えた影響は大きく、その功績は今のラップの礎になっています。解散後のメンバーは音楽プロデューサー、俳優、映画監督などとして活躍していますが、特にドクター・ドレーは最も成功したラッパー、プロデューサーとして有名で、多くの若い才能を発掘しています。さらに、2008年に立ち上げたオーディオ機器のブランド〈ビーツ・エレクトロニクス〉を、2014年、アップルに3000億円で売却して大きな話題を呼びました。また、アイス・キューブもソロのラッパーとして成功した後、現在では俳優業に力を入れ、『スリー・キングス』『トリプルX』シリーズなど数々の映画に出演しています。
N.W.A.のラップソングは過激で暴力的な歌詞で物議を醸し、社会問題にまで発展したことも
Gangsta Gangsta Lyrics: *Sirens* / Ah shit. Man, them pinche black gangstas are at it again / I wonder who they fucked up today? / *Screeching Tires* / You motherfucker! / *Machine Gun Fire* / (Got him
『ギャングスタ・ギャングスタ』の歌詞を解説(英語)
ナズ『N.Y. ステイト・オブ・マインド』(1994)
N.Y. State of Mind, by Nas
ナズのアルバム『イルマティック』は、時代を超えたラップ音楽の名作として高い評価を得ています。当時は、銃、暴力、ドラッグ、女性を得意気に語るギャングスタ・ラップが何年にもわたって注目され続けていたこともあり、西海岸ラップの存在感はかなり大きいものでした。その一方で、ラップミュージックがメインストリームとして認められ、様々な人気アーティストが、自分たちがいかにして成功や名声を手に入れたかを誇示する楽観主義的なテーマのラップも多く聞かれるようにもなりました。
一見両極端な2つのスタイルが流行する中、ナシアー・ジョーンズ(リリース当時20歳だったナズの本名)の自伝をビートに乗せて歌った『イルマティック』が誕生。多くのラッパーがギャング団や成功者の仲間入りをした自慢話を歌っていた時代に、純粋に個人的でリアリスティックな歌を集めたアルバムとなりました。ナズ自身、ドラッグの売人からのし上がった人間ゆえ、同じような要素が歌詞に込められている部分はあるものの、これは、よりひとりの少年の成長譚として完成しています。なので、暴力は、自分の生い立ちを語る上での一要素として用いられているだけで、ギャングスタ・ラップのような過激さとは異なり、暴力や貧困を称えてもけなしてもいません。ティーンエイジャーだった彼が感じた不安、怒り、前向きな思いを表現しているのです。このアルバムのストーリーテリングとリリシズム(叙情主義)の融合は、その後のラップソングに変化をもたらし、東海岸ラップの勢いを取り戻すことになりました。この『N.Y.ステイト・オブ・マインド』は、『イルマティック』の中でも、力強くクールな歌詞で非常に定評がある1曲です。
西海岸ラッパーの方が人気があった当時、東海岸ラッパーの実力を見せつけたナズ
N.Y. State of Mind Lyrics: Yeah, yeah / Ayo, Black, it's time, word (Word, it's time, man) / It's time, man (Aight, man, begin) / Straight out the fuckin' dungeons of rap / Where fake niggas don't make it
『N.Y.ステイト・オブ・マインド』の歌詞を解説(英語)
関連ソング:J・コール『レット・ナズ・ダウン』(Let Nas Down, by J.Cole)
ドイツ生まれで、生後8ヶ月でアメリカに移住したJ・コールは、14歳でラップ活動を開始。デビューアルバムをリリースする前から、輝かしいキャリアを築き、いずれは業界を完全に変えてしまうことだろうと期待されていました。そんな彼の長年のアイドルは、ずばりナズ。将来を有望視される新星と認められ始めたJ・コールは、ナズと直接会うことができただけでなく、己の良き指導者になってもらえるまでになり、世間では「ナズはJ・コールにバトンを渡そうとしている」とまで言われるようになったのです。憧れの人と実際につながることができ、本人から一目置かれている事実は、J・コールにとって非常に誇らしいことでした。ところが、J・コールが初のシングルをリリースした後、ナズがその出来に失望していると伝えられ、彼は大きなショックを受けます。そんなJ・コールが子供時代から尊敬していたアイドルを失望させ、どれだけ自分が落ち込んだかを歌で表現したのが、この『レット・ナズ・ダウン』。そのタイトルの意味は、ずばり「ナズを失望させてしまった」です。
憧れのラッパー、ナズから『Work Out』をけなされたJ・コールが、その経緯と受けたショックを歌にしたのが『レット・ナズ・ダウン』
Let Nas Down Lyrics: Freedom or jail, clips inserted, a baby's bein' born / Same time my man is murdered; the beginning and end / As far as rap go, it's only natural, I explain / My plateau, and also
『レット・ナズ・ダウン』の歌詞を解説(英語)
ブラック・スター『シーヴス・イン・ザ・ナイト』(1998)
Thieves in the Night, by Black Star
『チルドレンズ・ソング』の項目でも紹介したブラック・スターは、同じニューヨーク大学卒業のモス・デフとタリブ・クウェリで1990年代の後半に結成されたラップデュオで、アンダーグランドなラップソングの歌い手として人気を博しました。ブラック・スターはたった1枚のアルバムしかリリースしていないゆえ、その成功は限定的なものだったと言えるかもしれません。それでも、彼らのアルバムは、その歌詞とサウンドの素晴らしさで高い評価を受けました。ラップミュージックが人気を得て、ラジオでどんどんかけられるようになった時代、ブラック・スターは、単に商業的にウケがいいトピックスには手をつけず、当時の社会問題に光を当て、ときには哲学的にすら思える内容を選んでいます。彼らの曲は、「前向きになれ」とリスナーの背中を押し、「黒人の歴史や文化をもっと学べ」と訴えました。歌の中で、他のヒップホップ要素であるグラフィティやブレイクダンスにも深く言及していることから、彼らのアルバムは、ヒップホップ文化そのものを十分に体現した、時代を超えて愛される作品となっています。ここでピックアップしたのは、そのアルバム『モス・デフ・アンド・タリブ・クウェリ・アー・ブラック・スター(Mos Def & Talib Kweli Are Balck Star)』からの1曲です。2人の驚異的な滑舌具合、流麗な歌い方、絶妙なコラボレーションなどに注目してみてください。
知的なコンシャス・ラップのイコンとなっているブラック・スター。現在はそれぞれがソロで活動。ブラック・スターとしのてシングルリリースは、2011年が最後。新作アルバムの噂はあったものの実現していない<br />
Thieves in the Night Lyrics: Yo D, what? Come on (Yeah) / What? What? Come on (Yeah) / "Give me the fortune, keep the fame," said my man Louis / I agreed, know what he mean because we live the truest lie / I
『シーヴス・イン・ザ・ナイト』の歌詞の解説(英語)
関連ソング:モス・デフ『マテマティクス』(Mathematics, by Mos Def)/タリブ・クウェリ『ゲット・バイ』(Get By, by Talib Kweli)
ブラック・スターは、モス・デフ、タリブ・クウェリの2人にとって、ラッパーとしての始まりでも終わりでもなく、純粋なる通過点でした。彼らは今日まで、ラップミュージシャンとしてのキャリアを持続し、政治的、社会的な活動家であり続けています(2011年にヤシーン・ベイと改名したモス・デフは、2016年12月に引退を表明していますが)。この2つの歌は、彼らそれぞれの特徴が出ており、評判も上々でした。コンシャス・ラップというジャンルができて以来、この2曲は今も大勢のトップラッパーに愛され、インスピレーションを与えています。
2016年末に引退宣言をしたモス・デフ
Mathematics Lyrics: Bucka-bucka-bucka-bucka-bucka-bucka, haha! / You know the deal: it's just me, yo / Beats by Su-Primo for all of my people, Negroes and Latinos / And even the gringos / Yo, check it
『マティマテックス』の歌詞の解説(英語)
タリブ・クウェリは学者の両親を持ち、自身もニューヨーク大学を卒業した知性派
Get By Lyrics: We sell crack to our own out the back of our homes / We smell the musk of the dusk in the crack of the dawn / We go through episodes too, like Attack of the Clones / Work 'til we
『ゲット・バイ』の歌詞の解説(英語)
アウトキャスト『B.O.B.』(2000)
B.O.B., by OutKast
ファンク、テクノ、ロックといった様々な要素をブレンドさせた独創的な音楽スタイルで知られるアウトキャストは、アンドレ・3000とビッグ・ボーイの2人がジョージア州アトランタの高校時代に結成したラップデュオです。デビューアルバムが批評家たちから絶賛され、ダーティ・サウスの人気を高めるのに大きく貢献しています。アウトキャストが創り出す音楽と言えば、明らかにサザン・ラップの影響を受けた力強いビートと早口でまくしたてる歌詞、ゆったりとした滑らかでリラックスできる曲から成るパーティ讃歌にエレクトロニカをミックスさせたもの。彼らは政治的、社会的メッセージを歌い上げるラッパーたちとは一線を画していましたが、南部の女性の立場や、ヒップホップ界の一部にはびこる女嫌いの傾向といった難しい問題を取り上げることもありました。サザンの特色に、派手で未来的なスタイルを融合させたラップをお望みならば、アウトキャストがツボにハマること間違いなしです。
カラフル&ノリノリで元気が出るアウトキャストのミュージックビデオ
B.O.B Lyrics: One, two... one, two, three / Yeah! / Inslumnational, underground / Thunder pounds when I stomp the ground / Like a million elephants and silverback orangutans / You can't stop a
『B.O.B.』の歌詞の解説(英語)
ジェイ・Z『ロック・ボーイズ』(2007)
Roc Boys, by Jay-Z
ジェイ・Zの人生は、まさにアメリカンドリームそのもの! ニューヨークのブルックリンで生まれ育った彼は、10代の頃、クラック(高純度のコカインで麻薬の一種)を売って生計を立てながら、ラップの技術をマスターしていきました。大手レーベルと手を組んで曲を売り出すことができなかったものの、紆余曲折の末に、念願の自主レーベルを立ち上げてデビューアルバムをリリース、ついにラッパーとして出発します。苦労を重ねたジェイ・Zは、生きていくための抜け目なさと商才を持ち合わせており、それが現在の成功に大きく役立ちました。自主レーベル〈ロッカフェラ・レコード〉の共同設立者だけでなく、〈デフ・ジャム・レコード〉のCEO(こちらは2008年に退任)、高級ナイトバー(40/40クラブ〉のオーナー、全米プロバスケットボートチーム〈ブルックリン・ネッツ〉のオーナー、ベンチャー起業の創設者など、数々の肩書きを持つ実業家としても手広く活躍。さらには、あの歌姫ビヨンセと結婚し、その輝かしい経歴に箔をつけました。
ジェイ・Zの滑らかで粋なラップスタイルは、音楽評論家やヒップホップ界で高く評価されており、最も偉大なラッパーとして確固たる地位を築いています。
ビヨンセ、カニエ・ウェストもボーカルに参加した『ロック・ボーイズ』は、ジェイ・Z自身の生い立ちが反映された1曲
Roc Boys (And The Winner Is)... Lyrics: 88, a great year for hip hop, but an even better year for the neighborhood hustler, and we wanted in. We went from being friends to forming a crew. we called ourselves the roc boys
『ロック・ボーイズ』の歌詞の解説(英語)
カニエ・ウェスト『オール・フォールズ・ダウン』(2004)
All Falls Down, by Kanye West
2004年になってようやくファーストアルバムをリリースしたにもかかわらず、それ以前から、カニエ・ウェストはヒップホップの世界では知られた存在でした。彼は1990年半に音楽プロデューサーとしてキャリアをスタートさせ、ジェイ・Zに才能を見出されて〈ロッカフェラ・レコード〉と契約、数多くのアーティストに曲を提供してきました。2004年、プロデューサーからラッパーに転身した彼は、ファーストアルバム『ザ・カレッジ・ドロップアウト(The College Dropout)』を発売、全米2位の売上を記録して大成功を収めます。この成功の理由のひとつは、カニエ・ウェストの音楽への情熱と全てを歌に注ぎ込む姿勢にあったと言え、彼がラップにできないことは何もないと思えるほどです。
ラップといえば反骨精神やタフさの象徴だと捉えられていたため、軟弱に見えるからと他のラッパーが避けてきたトピックスをカニエは取り上げ、己のハートや魂のままに歌詞を織り上げていきました。神について歌ったもの、母への深い愛情を綴ったもの、ジェイ・Zとの友情がいかに大切かを本人に伝えるものといった、それまでのヒップホップにはなかった心の奥底からの思いをラップに託したのです。
とはいえ、カニエのテイストが万人に受け入れられたわけではなく、彼のラップソングについては賛否両論、いろいろな意見が飛び交っています。ですが、カニエの歌の好き嫌いは別として、彼のラッパーとしての才能や偉大なアルバムを作り出した功績を否定することは誰にもできません。
カニエの目線で撮影され、興味深い展開となる『オール・フォールズ・ダウン』のMV
All Falls Down Lyrics: Oh, when it all, it all falls down / Yeah, this the real one, baby / I'm tellin' you all, it all falls down / Uh, Chi-Town, stand up! / Oh, when it all, it all falls down
『オール・フォールズ・ダウン』の歌詞の解説(英語)
ケンドリック・ラマー『ジ・アート・オブ・ピア・プレッシャー』(2012)
The Art of Peer Pressure, by Kendrick Lamar
ケンドリック・ラマーは、2011年にインディーズデビューを果たしたラップ界のニューカマーですが、大手レーベルと契約してメジャーデビューをする前から、すでにインターネットでは多くのファンに支持されていた逸材です。2012年末にリリースされたセカンドアルバム『グッド・キッド M.A.A.D.シティ(Good Kid M.A.A.D. City)』は全米ビルボード第2位に輝き、プラチナアルバムとなりました。このアルバムは、収録曲それぞれが独立しているのではなく、1曲ごとに次のステージへと進んでいき、アルバム全体でひとつの壮大なストーリーとなるコンセプト・アルバム。ケンドリックが愛を見つけ、仲間と過ごし、判断を誤り(下記の歌がそれを描写しています)、そして正しい判断を下す様子が描かれていきます。我々リスナーは、ケンドリック人生劇場の最前列に座り、彼の視点でその人生を見ているような気分になるのです。7度のグラミー賞に輝くなど、数多くのアワードを手にしてきたケンドリックは、2016年には、タイム誌の「最も影響力がある人物100人」にも選出されました。2017年4月にリリースされた最新アルバム『ダム(Damn)』は、全米だけで177万枚以上を売り上げており、ヒップホップ界のトップランナーとして圧倒的な人気を誇っています。
非常に高い評価を得ているケンドリックのセカンドアルバムの1曲『ジ・アート・オブ・ピア・プレッシャー』。彼の多彩なラップスタイルは、多くの人々に支持されている<br />
The Art of Peer Pressure Lyrics: Part I / Everybody, everybody, everybody / Everybody sit yo' bitch-ass down / And listen to this true mothafuckin' story / Told by Kendrick Lamar on Rosecrans, ya bish / Smokin' on
『ジ・アート・オブ・ピア・プレッシャー』の歌詞の解説(英語)
世界で定着したヒップホップ音楽は進化し続ける
ヒップホップ文化の発祥の地アメリカでのラップミュージックの歴史を簡潔に紐解きながら、その魅力が凝縮された曲を紹介してみましたが、ラップといっても、様々なスタイルやジャンルがあることがわかっていただけたでしょうか。
ラップでは歌詞が重要とはいえ、サウンドやリズムだけをとってもクールな曲は山ほどあります。英語が聞き取れなくても、何を言っているのか理解できなくても、そのフロウ(歌い方)、ライム(韻をふむこと)、フック(歌詞のサビの部分)が耳に心地よく、ハートに迫る歌は必ず見つかるはずです。曲が好きになれば、歌詞サイトや翻訳サイトを駆使し、彼らが何を語っているのかをどんどん掘り下げていってください。ラップの歌詞は、ときに大変奥深く、胸にズシンと響き、あなたの視野を広げてくれるかもしれません。
ラップが誕生して40年以上が経過し、音楽は進化をし続けている一方で、人々はクラシックなものをずっと愛しており、根幹にあるソウルフルな部分は昔から変わっていないとも言えます。これからのラップミュージックがどこへ向かっていくのか、ぜひその目撃者のひとりとなってください。
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この記事のライター
数々のミステリー、アクション小説、伝記本、映画雑誌のインタビュー記事、人気ゲーム関連の邦訳を手がけるキャリア20年の翻訳家。小学2年で読書の悦びに目覚めた本の虫で、読書と翻訳作業で培った知識は、映画、海外ドラマのショウビズ関係はもとより、生物学、医学から欧米の文化、政治、歴史、犯罪、銃器、ミリタリーなど広範囲に及ぶ。日々の生活で「一日一善、一日一爆笑、一日一感動」を心がけ、読者を笑顔にし、読み手の胸に染み入る文章を目指す。米国フロリダ州オーランド在住で、映画、海外ドラマ、アメリカンカルチャーなどの旬な情報も随時発信。