フィンランドの自然をカタチにしたアアルトのモダンデザイン

フィンランドを代表する巨匠アルヴァ・アアルトをご存知でしょうか。彼は、伝統的な技術を使い、曲線と多用した建築作品で有名です。
今回はそんなアルヴァ・アアルトの家具をご紹介します。

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伝統的な技術を使った鮮やかな曲線

北欧・フィンランドの20世紀モダンデザインを代表する巨匠といえば、アルヴァ・アアルトの名前をあげなければなりません。アアルトは、フィンランドの伝統的な木材加工技術を使い、曲線を多用した建築作品で知られましたが、こうした特徴は、彼のデザインした家具作品にもよく見られます。機能性が重視され、極限まで無駄を省いた簡素な構造でありながら、使う人の心にぴったり寄り添うやさしいフォルム。そこで、今でも入手可能なアアルトの家具作品をご紹介します。

武骨ながらも優雅なアアルト・ベース

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デザイナーとしてのアルヴァ・アアルトを知る人には、椅子やテーブルなどの家具ではなく、この巨匠の最初の出世作として「アアルト・ベース」とよばれる花瓶を評価する人が少なくありません。これは、1937年のパリ博覧会に出品し、その後ヘルシンキのサヴォイ・レストランで使われたため、サヴォイ・ベースともよばれる花瓶です。その武骨なガラスの使い方と曲線の表情から、当初は「エスキモー女性の革のズボン」などとも揶揄されましたが、フィンランドの豊かな自然を思わせる曲線を絶妙に生かしたモダンデザインは世界的に注目され、今日もなお、アアルトの仕事の原型とみなされています。

超ロングセラーとなったシンプルスツール「60番」

出典:www.artek.fi

アアルトのデザイン家具の代名詞ともなっている作品は、このスツール「60番」です。アアルトの建築作品「ヴィープリ図書館」の椅子として1933年に作られたものでした。フィンランドのバーチ材を用い、また伝統的な技法「挽き曲げ」を発展させた脚部の曲線が特長です。このアアルト独特の美しい挽き曲げによる脚は「アアルト・レッグ」とも呼ばれ、その後たくさんのバリエーションを生みました。この3本脚のバージョンの他にも、4本足のバリエーションもあります。一切の無駄な要素を省いた究極のシンプルなフォルム、そしていつまでも飽きのこない普遍性。今なお世界中で愛され続けている不朽のロングセラーです。

Artek - Products - Chairs - STOOL 60

多様な使い方を提案する名品「ウォールシェルフ 112B」

出典:www.artek.fi

ウォール・シェルフは、吊元の部材に荷重がかかるため、金属が使われることが多いものですが、ここにもアアルトの独特のプライウッドが使われています。いわゆる「アアルト・レッグ」の強度を実証している製品ともいえるでしょう。この三角形の吊元は、ウォールシェルフの部材としてはずいぶん太いという印象を受けるかもしれませんが、このシェルフをタテヨコにいくつも並べると壁にリズムが生まれ、このデザインの本領が発揮されます。またこのシェルフの面白いところは、上下をひっくり返して壁に取り付けると、底板が斜め45度の傾斜をもったブックシェルフに早がわりすることです。

Artek - Products - Other - WALL SHELF 112B

レストラン・サヴォイの雰囲気「ティー・トローリー 901」

出典:www.artek.fi

1936年にレストラン・サヴォイの設計とともにつくられた可愛らしい「ティートロリー」です。アアルトならではの美しいプライウッドによるフォルムがここでも十分に生かされていて、場所を選ばずに使うことができる自由さをもったティーワゴンです。このデザインは、翌1937年のパリ万博でも異なるバリエーションがつくられるなど、その斬新なフォルはその後も長くファンの心を掴んできました。ティーワゴンとして使うだけでなく、ちょっとした小物を置いたり、マガジンラックとして使うのもいいでしょう。お部屋のインテリアとして、お店のディスプレーとしてもインパクトのある家具と言えるでしょう。

Artek - Products - Tables - TEA TROLLEY 901

フィンランドを代表するアアルト

アルヴァ・アアルトは、北欧のデザイナーズ家具というと必ず出てくる名前です。それほど近・現代のデザイン史において重要な仕事をした巨匠で、フィンランドでは国民的な偉人とされています。何よりアアルトが提示したデザインの本質は、自然や伝統的な技術をきちんと受け継ぎ、それを無理なく新しい生活に適応させていくという哲学に他なりません。この哲学に裏付けられたすぐれた家具の数々が、現在でもなお世界中に多くのファンをもって、使われ続けているのです。

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藝術文化系のコラム、論評の執筆を多くこなしてきました。VOKKAではインテリアなど、アートに関わる記事を中心に執筆しています。

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