『攻殻機動隊』の世界観・各シリーズ・順番について一番わかりやすく解説します。

オタクの間でなくとも度々話題になる作品が『攻殻機動隊』シリーズです。ストーリーや各シリーズのつながりが難解で、気を抜いて視聴できないのが攻殻機動隊のいいところであり大変なところでもあります。今回は、この記事を読めば入門レベル以上に到達できるよう、ファン歴10年超の筆者が攻殻機動隊の大枠を解説いたします。

takumiTakumi@アニメ歴20年(更新中)

全シリーズ共通のテーマ:人間としての「魂」の在り処

時は21世紀、第3次核大戦とアジアが勝利した第4次非核大戦を経て、世界は「地球統一ブロック」となり、科学技術が飛躍的に高度化した日本が舞台。その中でマイクロマシン技術(作中ではマイクロマシニングと表記されている)を使用して脳の神経ネットに素子(デバイス)を直接接続する電脳化技術や、義手・義足にロボット技術を付加した発展系であるサイボーグ(義体化)技術が発展、普及した。結果、多くの人間が電脳によってインターネットに直接アクセスできる時代が到来した。生身の人間、電脳化した人間、サイボーグ、アンドロイド、バイオロイドが混在する社会の中で、テロや暗殺、汚職などの犯罪を事前に察知してその被害を最小限に防ぐ内務省直属の攻性公安警察組織「公安9課」(通称「攻殻機動隊」)の活動を描いた物語。

出典:bit.ly

あらすじの時点で難しい用語が数多く登場しますが、インターネットを使った情報戦やサイボーグ同士のアクションなどが繰り広げられるSF作品という理解で問題ないと思っています。

そして、攻殻機動隊シリーズの根底にあるテーマは「パソコンの機能を備えた脳と機械の身体を持つようになった時に、自分を自分たらしめる魂(作中では「ゴースト」と表現)ってどこにあるんだっけ?」という問いです。
作中でも、本来ゴーストを持たないはずのアンドロイドが人を愛したり自己犠牲で他者を助けたりといった描写があるなど、人間と機械の境界はどこなんだろうということを考えさせられる場面が多くあります。

シリーズ間のつながりを整理:異なる2本の世界線

攻殻機動隊シリーズは、2本の異なる世界線上の作品群に分類できます。原作漫画、映画、TVアニメなど様々なメディアに登場しますが、①どちらの世界線上の話か→②時系列はどうなっているのか、を踏まえればスッキリしますのでご確認ください。ファンの中でも意外にここが整理できてない人はいる印象です。
基本的には本作品の主人公である少佐(草薙素子)がどうなっているのかに着目すれば一発でわかります。

こちらが攻殻機動隊シリーズの主人公である少佐(草薙素子)です。
内務省直轄の特命防諜機関である公安9課のリーダーであり、全身を義体化(サイボーグ化)しています。統率力、判断力、推理力、ハッキングスキル、肉弾戦闘力などすべての面で非常に高い実力を持つ人物だと言えます。

世界線(1):少佐(草薙素子)がネットの海と同化した世界

こちらが原作準拠の世界となります。
この世界においては、素子は国際指名手配の凄腕ハッカー”人形遣い”と同化し、ネットの海の一部になってしまいます。そのため、人形遣いとの戦いの後は、彼女はほぼ実体としては登場しません。アンドロイドに自身のデータをダウンロードして操ることで、間接的にストーリーに関わってくるようになります。(それでも重要人物であることに違いはありません)

▼こちらの世界線に乗る作品群を時系列順に並べたものが下記となっています。

【0】原作漫画『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』(1989年)

士郎正宗による原作漫画であり、これを元に後の劇場版などは作られています。
素子と人形遣いとの戦いを描いており、特徴としては、漫画の本文よりもコマの外の注釈が多く正直読みづらい作品となっています。絵柄も古めなので、ここから入る必要はないと個人的には思っています。
他のシリーズで攻殻機動隊に魅力を感じ、より深く理解したいとなった時に手にとってみるとよいでしょう。

この漫画の何がすごいかというと、まだまだインターネットでもダイヤルアップ接続がようやく導入され始めた1989年に、すでに誰もがどこにいても自由にネットにアクセスして情報共有するといった世界のビジョンを提示している先見性です。攻殻機動隊の世界での電脳化にはまだ追いついていませんが、今はスマホで誰しもネットにアクセスする時代になっています。攻殻機動隊の舞台である2028年までまだ10年以上あるため、攻殻機動隊の世界のテクノロジーに追いつける日が本当に来るかもしれません。


【1】劇場版アニメーション『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)

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出典:gqjapan.jp

先ほどの士郎正宗原作に基づいて作られたアニメーション映画で、監督は押井守。
「原作漫画は士郎正宗、映画は押井守、TVアニメは神山健治(後述)」と覚えましょう。

原作漫画の中の、人形遣いとの戦い〜素子がネットの海と同化するまでのストーリーを描いています。「さて、どこへ行こうかしら。ネットは広大だわ」というセリフと共に素子はネットの海へ消えていきますが、後の『INNOCENCE』では陰ながらバトー(公安9課の仲間)を助けます。

日本国内よりもアメリカで高く評価された作品であり、ビルボード誌のビデオ週間売上第1位になったとのことです。なお、全世界でのビデオ・DVDの販売数は130万枚となっており、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序・破・Q』をすべて足し合わせた200万枚には及ばないものの、エヴァほど大規模なメディア広告を打っていないことやネット自体が未普及で情報拡散が困難だった時代背景を考慮すると、その凄さがわかります。


【2】劇場版アニメーション『INNOCENCE』(2004年)

こちらも押井守監督作品となります。
当時のCMなどを改めてみると、攻殻機動隊とは別物のような形でプロモーションされています。攻殻機動隊自体が間口の広い作品ではない上にそのような手法を用いたこともあり、ヒット作とは言えないものと思います。
しかしながら、高いレベルの映像技術や演出により、攻殻ファンからするとスルメのような滋味のある作品だと感じます。

全体的に暗い画面構成であり、ストーリー展開も暗めです。スルメですので派手さはありません。少女型の人形(アンドロイド)が所有者を惨殺する事件を追うというストーリーであり、素子は人形の中の1体に自身のデータを入れ込んでバトーをサポートします。
「バトー、忘れないで。貴方がネットにアクセスするとき、私は必ず貴方の傍にいる」という劇中最後の素子のセリフは今思い出しても感動します。

世界線(2):少佐(草薙素子)がネットの海と同化していない世界

こちらは原作と外れた「if」の世界の話となります。素子が人形遣いと出会わず、ネットの海と同化しなかった場合の世界の中でのストーリーを描いています。
個人的には、ifストーリーであることを踏まえていればこちらの作品群(特に後述のTVアニメ版SACシリーズ)から入ることをオススメします。作画・演出ともに現代風であり、アクションシーンもカッコよく、とにかく良いです。
別に初心者向けといったことではなく、「ゴーストの在り処は」といった攻殻機動隊シリーズを通しての問題提起もしっかりなされています。

▼こちらの世界線に乗る作品群を時系列順に並べたものが下記となっています。
※なお、こちらは公開順と作中の時系列が異なるので注意してください。


【1】劇場版アニメーション『攻殻機動隊ARISE』(2013年〜2014年)

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出典:i.gzn.jp

①Ghost Pain
②Ghost Whispers
③Ghost Tears
④Ghost Stands Alone
という上記4部作の構成となっています。
どれも上映時間が60分以内であり、「短いよ!」とちょっと思いましたがストーリーの切れ目の関係で仕方ないのでしょう。

公安9課創立の前日譚という位置の作品となっており、舞台は2027年〜2028年であります。
監督は黄瀬和哉(押井守でも神山健治でもないということです)であり、また、脚本には冲方丁と藤咲淳一を据えています。キャラクターデザインや一部声優の刷新などあり、後述する「SAC」とはまた異なるシリーズという見方もありますが、本記事ではわかりやすさを重視して草薙素子がネットの海と同化している/いないで世界線を分けているので同一の世界として見ています。

黄瀬和哉は攻殻機動隊シリーズを制作しているProduction I.Gによる名作アニメ『御伽草子』に携わっていたし、冲方丁は個人的に好きなのと、藤咲淳一は小説版の攻殻機動隊を執筆するなどしていたため馴染みがあるといえばある起用だと感じました。


【2】劇場版アニメーション『攻殻機動隊 新劇場版』(2015年)

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出典:i.ytimg.com

監督や脚本、その他キャストは『ARISE』と同様となっており、やはり後述の「SAC」とは別物という見方があります。

こちらは2015年6月20日から公開がスタートしました。結構情報量の多い映画で、簡単に言うと「素子が過去の因縁を清算して、義体を今後使う大人仕様に換装し、公安9課が設立される話」です。舞台は2029年であり、『ARISE』からそのまま続いています。
正直、『ARISE』は鑑賞に我慢のいる作品だと感じましたが、この新劇場版を観ることでその苦労が報われるといった印象です。一発目からこの映画を観に行くと「全然意味がわからないけどアクションかっこいい!」といった感じになると思われますので、『ARISE』は事前視聴必須です。そんなわけで視聴のハードルが高いため興行収入がちょっと心配であります。


【3】TVアニメ版『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(2002年〜2003年)

これから紹介するTVアニメ版シリーズの監督・脚本は神山健治です。「電脳化・義体化による人間のゴーストの在り処」というテーマは残しつつ、社会問題にフィーチャーしたストーリー構成となっています。

通称「SAC(エスエーシー)」と呼ばれるシリーズの一発目であり、僕はこれをきっかけに攻殻機動隊ファンになりました。
舞台は2030年(『ARISE』は〜2028年、『新劇場版』は2029年)となっており、内務省直属の独立防諜部隊である公安9課の活躍を描くシリーズです。
本作では「薬害」をテーマに据え、新薬の認可に伴い従来の治療方法が否定されては困る者の暗躍などを描いています。
▼こちらは名言
「世の中に不満があるなら自分を変えろ!それが嫌なら、耳と目を閉じ、口をつぐんで孤独に暮らせ!」

また、SACシリーズのマスコットである”思考戦車タチコマ”も原作者である士郎正宗によるデザインを引っさげ満を持して登場します。

TVシリーズを語る上で絶対に外せないキャラクターであるタチコマがこちら。強くて頼れる公安9課の一員です。しかし可愛いですね。
DVD版では毎話最後におまけアニメの「タチコマな日々」が収録されているので必見です。



【4】TVアニメ版『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』(2004年〜2005年)

DVD版のオープニング「Rise」は非常にカッコいい出来であり、アニメーションをおかずに飯が食えます。

本作は前作『STAND ALONE COMPLEX(SAC)』から2年後の西暦2032年が舞台となっています。
作品テーマは「難民問題」であり、内閣の情報操作や工作活動によって国民の難民受入に対する反発が発生、結果として招慰難民の武装蜂起につながります。素子同様に全身義体であるカリスマを持つ若者”クゼ”による革命の模様を描いています。

DVD最終巻ジャケットの桜と共に描かれた素子が素敵だとか、タチコマが自己犠牲により核攻撃を防ぐシーンとか、最終話でタチコマの代わりにでてきたウチコマとか、語ることは非常に多いのですが我慢するとして、これだけは言わせてください。本作の真の敵はクゼではなく38歳童貞の男性ですのでご確認願います。

▼38歳童貞の男性を始末する際の名言がこちら
「あら、そう?なら、死になさい!」



【5】TVアニメ版『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』(2006年)

2011年には3D映画化もされました。当然観に行きました。

前作『S.A.C. 2nd GIG』から2年後の西暦2034年が舞台となっています。前作の後に素子が失踪してから2年後の公安9課の姿を描きます。素子に代わりトグサ(優秀だけど生身だから弱い人)が公安9課を率い、超ウィザード級ハッカー”傀儡廻(くぐつまわし)”を追うというのがストーリーの軸となります。
なお、本作のテーマは「高齢者問題」であり、作中でも現実と同様に少子高齢化が進行しています。

結局、どの順番で観ればいいのか?

ここまで2本の世界線に基づいて色々紹介してきましたが、どれから観ればいいのか個人的なオススメ順番をお伝えします。

1.『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(TVアニメ)
2.『攻殻機動隊 S.A.C. 2nd GIG』(TVアニメ)
3.『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society』(TVアニメ)

上記順番までが鉄板で、あとは自由!というのが持論です。

TVアニメ版を観れば攻殻機動隊の世界観を十分理解できますし、その頃には勝手に他の作品を物色しだすものと思っています。あとは監督や脚本つながりで押井守作品や神山健治作品、冲方丁作品などに手を出せばこれでオタクの完成です、おめでとうございます。
また、個人的には「SAC」の設定はそのままに完全オリジナルストーリーとなっているPS2版ゲームもかなり楽しいので是非遊んでみて欲しいと思います。

ストーリーの深さやアニメーションの出来の良さ、音楽の素晴らしさなど話題の尽きない攻殻機動隊ですが、本記事をきっかけにファンが増えれば幸いです。

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Takumi@アニメ歴20年(更新中)

takumi

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慶應→金融→Web89年世代。幼少期からアニメと漫画に触れながら育ち、高校時代は2年半ほどネットゲームを毎日6時間以上という生活を送っていました。読みやすく納得感のあるものを書いていきたいと思っています。

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