【読んでおきたい日本文学】久生十蘭おすすめ3選
直木賞を受賞している文体の魔術師こと久尾十蘭は、精巧な文体、絶妙な語彙や技巧の凝らし方で多くの内容の小説を作りました。
しかし彼が今でも称賛される理由は「登場人物の人柄」だと思います。
今回は文体の魔術師の中でもおすすめしたい短編を3つ集めました。
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久生十蘭とは
久生十蘭(ひさおじゅうらん)はフランスの演劇を学びそこから小説を書き始めているので海外よりな物語が多く存在します。
また、日本探偵小説の全集も出版されていることからミステリー作家として有名ですが、そのほかのジャンルにも長けているために一括りにはできない作家です。
葡萄蔓の束
舞台は実際に存在する、北海道「聖母トラピスト修道院」
ここに客として宿泊することになった主人公は、虹の岬でベルナアルさんに出会います。
感受性豊かなベルナアルさんはおしゃべりが好きで、そのせいで愛する女性と別れたことも。
彼はおしゃべりという呪縛から逃れることができません。
ベルナアルさんは修道士になれずとも神から愛されていると感じています。
今していることが本当に大切なことなのか?
悩んでいる人は一度読むべき一冊です。
黄泉から
主人公の光太郎は、親戚のおけいという女性に慕われています。
しかし光太郎はひとりでパリに旅立ちます。
その後おけいは婦人軍属となりニューギニアで死んでしまいます。
その死の様子を千代という女性から聞く光太郎。
この物語の情景描写や、おけいの人柄に十蘭の技術を見て取れます。
そして幻想的な描写が美しく、想像力をかきたてる一作です。
黒い手帳
賭博の研究者(ルーレットの必勝法)を生活に困窮している夫婦が殺害しようとします。
その殺人に気付いた主人公は一部始終を観察しようと試みますが…
登場人物たちは黒い手帳に翻弄されて行きます。
また、ラスト一文
「この手帳をストーヴの中へ投げ込んで、この出来事にキッパリとした結末をつけるつもりだ。もう二度とこのことは思い出すまい。」
読後に何とも言えない余韻を残すはずです。
語りは常に騙りの中に存在する。
ミステリーを読むにあたって気を付けるべき点ではありますが、それを超えてくる十蘭の技巧に注目してみてください。
とにかく読んでほしい!!
今回十蘭のおすすめをいくつかあげましたが、実際に読んで十蘭の文章を感じてください!
絶対に後悔はしないと思います。
文体の魔術師の虜になること間違いなしです。
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この記事のライター
カープ女子が流行る中、15年間貫いている鷹ガール。(20)好きなお酒はビールと純米酒。好きなものはフリフリとピンクのもの。趣味は野球観戦。学部は文学部。The掴めない系女子。