【ジャズ初心者にオススメ】音楽の趣味を広げる新世代ジャズ10人20曲
「ジャズっておしゃれなのはわかるんだけど、正直どこがいいのかわからない…」と思ったこと、ありませんか?Hip HopやR&B、クラブミュージックとも共振する、ドライブにもおすすめのアーバンでクールな最先端のジャズをご紹介します。
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これが本当にジャズ?
ジャズは1950年代までにチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーらの活躍によって「ビバップ」というスタイルを確立して以来、ロックなどの他のジャンルと混ざり合ったり、ときに根本的な方法論からひっくり返してしまうなど様々なやり方で進化を続けてきました。そして、比較的新しい音楽であるHip hopやクラブミュージックが次なる進化の布石となって登場したのが今のジャズなのです。
肩肘張らず楽しめて、BGMにもピッタリな新しいジャズを、その周辺シーンも含めて2010年以降の作品から選びました。
Robert Glasper Experiment
新世代ジャズといえばまず名前が挙がるであろう最注目ピアニスト/キーボーディスト、ロバート・グラスパーによるプロジェクト。あらゆるブラックミュージックを一気に一つにしてしまったようなサウンドが魅力で、R&Bシンガーのエリカ・バドゥやレイラ・ハサウェイ、ラッパーのコモンやスヌープドッグなど共演相手も多岐に渡ります。
いきなりジャズのイメージとは随分かけ離れたもののように感じるかもしれませんが、従来のジャズだけでなくこういったディスコ風なR&BもやればHip hopまでやってしまうというのがロバート・グラスパー・エクスペリメントの面白いところです。
帝王マイルス・デイヴィスの音源を、冒頭のボイスサンプルも含め素材として散りばめ、ヴォーカルにはR&Bシンガー、ビラルを起用。まさにやりたい放題の一曲。
BIGYUKI
本記事唯一の日本人アーティストBIGYUKI。ロバート・グラスパーや、A Tribe Called QuestのQティップとの共演経験もあり、実力も折り紙つき。クラシックからオルタナティブ・ロック、ジェイムズ・ブレイクなどポップス最前線まで幅広い影響を受けた、個性的なセンスが特徴です。
再びビラルが登場。彼もジャンルを問わず活動しているアーティストの1人です。Radioheadにも似たメランコリックさ、静けさと激しさの対比が強烈な曲です。
クラシカルで流麗なピアノのフレーズが美しい曲…と思いきや、突然アグレッシブなリズムが加わりダンスミュージックのような雰囲気に。シンセサイザーのソロもインパクトがありますが、こうした振れ幅の大きさも彼の演奏の魅力の一つです。
BADBADNOTGOOD
2011年結成の超新星、ちょっと冴えないルックスながらブーツィー・コリンズからフランク・オーシャンまで幅広い世代のミュージシャンから好評のグループ、BADBADNOTGOOD。若いながらも音楽性が豊かで、一曲ごとに違った表情を見せてくれます。
ずっしり太いベースラインとシンプルなシンセサイザーのメロディが中心のクラブミュージック的アプローチ、フューチャリングのKAYTRANADAの存在感も光ります。
一方こちらはメロウかつさわやかなヴォーカル曲。共演相手や曲によってカメレオンのように姿を変えてしまうのが彼らの凄いところですね。
Donny McCaslin
昨年亡くなったデヴィッド・ボウイの遺作"★"にも参加したサキソフォニスト、ダニー・マッキャスリン。マーク・ジュリアナ、ジェイソン・リンドナー、ティム・ルフェーブルとのグループで繰り広げる、息の合ったパフォーマンスが見所で、シンセサイザーの音の海を駆け巡るエモーショナルなサックスがクールです。
彼のプレイの魅力をとことん味わえるのがこの曲。バックのメンバーの演奏もそれぞれ鬼気迫るもので、聴いているうちにどんどん引き込まれてしまう迫力があります。
故デヴィッド・ボウイのカバーです。それほど有名な曲ではありませんが、原曲の持つ音の厚みと緊迫感を彼らなりのやり方でうまく表現しています。
Jason Lindner
ダニー・マッキャスリンのグループでも活躍するジェイソン・リンドナーはピアニストとしてアビシャイ・コーエンと共演し、チック・コリアからも評価された以外に、シンセサイザー奏者としても個性を発揮しています。音色を操作しながら演奏するというシンセサイザーならではの方法を大胆に取り入れたパフォーマンスを彼自身のバンドNow vs Nowで聴くことができます。
テクニックもさることながら、楽器の性能を最大限に引き出して演奏する彼の実力が垣間見える曲です。予想もつかない音が飛び出てくるのがシンセサイザーの面白いところですね。
ザラついた攻撃的な音から透き通った美しい音まで、それを同時に操るような演奏。楽器を知り尽くしたジェイソン・リンドナーだからこそできる技です。
Yussef Kamaal
クラブジャズのような質感でありながら、どこかスピリチュアルな深さも感じられるイギリスのユニット、Yussef Kamaal。リラックスタイムに聴けば、その世界にどっぷりと入り込んでしまうことでしょう。
揺らめくシンセサイザーとスピード感満点のリズムの間に浮かび上がるようなトランペットがおしゃれです。
ギターのカッティングが気持ち良い曲。シームレスに変化するドラムのリズムも聴きどころです。<br />
Kamasi Washington
ここまでで紹介してきたものと比べると、かなり従来のジャズらしい雰囲気を残しているサックスプレイヤー、カマシ・ワシントン。特徴的なのは、巨大なスクリーンで映画を観ているかのような圧倒的スケール感と、それを綺麗にまとめあげてしまう彼のミュージシャンとしての手腕です。
壮大さとキレのあるスピード感を兼ね備えた一曲。ジョン・コルトレーンにも通じるサックスソロも圧巻です。
スムースなヴォーカルが入ったロマンチックな曲です。後半に入って徐々に楽器が加わってゆき、さらに重厚さを増していく様は感涙もの。
Thundercat
先ほどご紹介したカマシ・ワシントンの作品の他にもケンドリック・ラマーやフライングロータスとの共演などジャンルを越えて幅広く活動しているベーシストのThundercat。ソロ作品ではよりポップなセンスが強調されています。
Thundercat自身によるソウルフルな歌声にギターとベースが絡む、思わず体が動いてしまいそうなファンキーな曲です。
シンセサイザーがキャッチーで、メロディも甘くポップなモータウンをも思わせるレトロな一曲。
Christian Scott aTunde Adjuah
フュージョン界の大御所マーカス・ミラーや、昨年の訃報が大きく話題となったプリンス、レディオヘッドのトム・ヨークとの共演歴があるトランペッター、クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー。先端が上を向いたトランペットがディジー・ガレスピーを彷彿とさせます。コテコテにジャジーな音色とモダンなアレンジのマッチングがクセになります。
奇妙な音のピアノと手数の多いモダンなドラム、クールなホーンのハーモニーが絶妙に噛み合い、独特の雰囲気を醸し出しています。
ディジー・ガレスピーといえば、ラテンの名曲"A Night in Tunisia"。クリスチャン・スコットがラテンをやるとこうなりました。分厚いパーカッションとトランペットのハイトーンが熱いです。
誰でも楽しめるジャズの世界へ
いかがだったでしょうか。ここでご紹介したのは現代ジャズシーンのほんの一部ですが、正統派から変わり種まで多くのバリエーションがあることをお分かり頂けると思います。初心者でも聴きやすいポップな曲やかっこいい曲もどんどん増えているので、ジャズを聴き始めるならまさに今がチャンスです。
また、今回取り上げたミュージシャンはみなここ数年のうちに来日を果たしています。ジャズクラブに出かけて、お酒と料理とともに最新鋭の音楽を楽しむ、というのも素敵ですね。
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この記事のライター
都内で文学を学ぶ大学生です。アート、映画、音楽も含めた4本柱でものごとについて考えています。