古き良きアメリカの音、チェット・アトキンス

ビートルズのジョージ・ハリスンも大ファンだったというギタリスト、チェット・アトキンス。カントリーを中心にジャズやポップスを取り込み洗練された演奏は時に軽快、時にロマンチックです。レトロでおしゃれなBGMとして取り入れてみるのはいかがでしょうか?

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チェット・アトキンスとは?

 1924年テネシー生まれ、ミスター・ギターとも称される(主に)カントリーギタリスト。カントリー・ミュージック・アソシエーションの賞や、グラミー賞も過去に何度も受賞しています。指を巧みに使ってメロディと伴奏を同時にこなすスタイルが持ち味で、さらに独自の発想を取り入れたものは彼の名を冠してチェット・アトキンス奏法と呼ばれています。

 ビートルズのジョージ・ハリスンに影響を与えたことも有名であり、"All My Loving"のソロなどにそれを聴くことができます。

All My Loving/The Beatles

伝説の始まり、Mr.Sandman

 まさにギター界のレジェンド、チェット・アトキンスが名を馳せたきっかけになったのはこの曲でした。

Mr. Sandman/Chet Atkins

軽快なラグタイム風のリズムに乗ってメロディが紡ぎ出されていきますが、絶妙な音の揺れがどこか郷愁を誘います。

さらにカントリーに近い演奏をひとつ。

Black Mountain Rag/Chet Atkins

テンポの速い曲でも余裕の弾きっぷり。時々飛び出すテクニカルなフレーズに驚かされます。

彼の有名なエピソードのひとつが、あるライブで観客にリクエストを募ったところ独立戦争時代の愛唱歌”Yankee Doodle”と南北戦争時代の南軍の歌”Dixie”で意見が割れてしまったため、2曲を混ぜて演奏してしまった、というもの。通称”Yankee Doodle Dixie”です。

Yankee Doodle Dixie/Chet Atkins

こちらはバックバンドにコーラス付きの、豪華な編成での演奏。

Foggy Mountain Breakdown~Alabama Jubilee/Chet Atkins

”Foggy Mountain Breakdown”と”Alabama Jubilee”のメドレーです。自分も一緒に歌ってしまうお茶目なところも。

Snowbird/Chet Atkins

珍しくエコーを使う演奏。シンプルな味付けですが、彼の得意とするアルペジオフレーズがより重層的に、美しく聞こえます。

カントリーにとどまらない様々な顔

 チェット・アトキンスは基本的にはカントリー畑出身のギタリストですが、カントリー以外のレパートリーも数多く演奏しています。

The Entertainer/Chet Atkins

スコット・ジョップリン作曲のラグタイム。先ほどまでの曲とは違ってアルペジオを多用せず、ソロ・ギターの技術を発揮しています。

Autumn Leaves/Chet Atkins

有名なジャズ・スタンダード、通称『枯葉』。スタンダードというだけあって数多くのミュージシャンがそれぞれのやり方で演奏しています。彼がこの曲を弾くと、テンポを揺らしながら弾く流麗なイントロと一人で演奏しているのを忘れそうなメロ部分の対比が見事です。

Don't Think Twice It's Alright/Chet Atkins&Terry McMillan

こちらはボブ・ディランのカバーをハーモニカのテリー・マクミランを迎えて。明るいメロディの中に哀愁を漂わせる、とてもアメリカらしい演奏です。

Stars And Stripes Forever/Chet Atkins

アメリカの曲といえばこれ、という方も多いかもしれませんね。『星条旗よ永遠なれ』の邦題で知られるマーチです。原曲の和音を忠実に弾いているのはもちろんのこと、中盤では”Yankee Doodle Dixie”で見せたテクニックを再び披露しています。

中にはこんなものも。クラシックまで弾きこなしてしまいます。

華々しき共演歴

 2001年に亡くなるまで、非常に長い活動期間を持つ彼は有名なミュージシャンとのコラボレーションも多く行っています。

ダイアー・ストレイツでの活動で一躍有名となったマーク・ノップラーとの共演。アコースティックギターをそれぞれ弾き、後半にはジョン・レノンの名曲”Imagine”。

Mystery Train/Chet Atkins&Stanley Jordan

両手で指板を叩いて演奏する異色のギタリスト、スタンリー・ジョーダンとエルヴィス・プレスリーの曲を演奏。そんな相手でも自分のペースは乱しません。少しだけ歌も披露。

Help Me Make It Through The Night/Chet Atkins&George Benson

そしてこちらはジャズ/フュージョンギタリスト、ジョージ・ベンソンと。カントリー調の演奏をするアトキンスとブルース調の演奏をするベンソンと対比がなされ、その後のユニゾンがとてもロマンチック。

受け継がれる「アメリカの音」

 ここまでチェット・アトキンスの話でしたが、最後に少しだけ「アメリカの音」を受け継ぐアーティストをご紹介します。

Masters of War/Charles Lloyd&The Marvels ft. Bill Frisell

大ベテラン、チャールズ・ロイドのバンドにギタリスト、ビル・フリゼールが参加し,
曲はボブ・ディランの”Masters of War”。フォークソングの深い部分を表現しています。

Scarlet Town/Chris Thile&Brad Mehldau

ピアニスト、ブラッド・メルドーとマンドリン奏者クリス・タイルによるデュエットで”Scarlet Town”。こちらもフォークソングですが、より現代的なアレンジになっています。

Persian Rag/Julian Lage

若手ギタリスト、ジュリアン・ラージのトリオで”Persian Rag”。巧みなダイナミクスでエネルギッシュな側面と哀愁の側面を表現しています。

落ち着いた時間に+いい音楽

 いかがだったでしょうか。カントリーやブルース、フォークはアメリカの音楽においては非常に重要な要素であり、またそれが「アメリカらしさ」の根源であるともいえます。自分の好きな空間を自分で演出するためにいい音楽を一つ加えてみるというのはいかがでしょう?

 それでは締めくくりに、チェット・アトキンスがグラミー賞を受賞した盟友レス・ポールとのデュエットを。

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都内で文学を学ぶ大学生です。アート、映画、音楽も含めた4本柱でものごとについて考えています。

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