現役美大生が紹介する日本を代表する有名デザイナー・アートディレクター15人
世界からも高い注目を集めている日本を代表する有名デザイナー・アートディレクターを美大生の視点から紹介します。デザイナーそれぞれの特徴と代表的な作品も合わせて紹介します。代表的な作品は知っていても、デザイナーの名前を知らない方が多いことと思います。是非この機会にデザイナーの名前も覚えて注目してください。
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素敵な作品の裏には素晴らしいデザイナーたち
ポスターやCM、雑誌など今やデザインは私たちの暮らしと密接な関係になってきています。ユニークなものから洗練されたデザインをするデザイナーの方々は各々に独特な考え方を持っており、それが多くの人々の心を動かす作品を生み出してきました。そのように日本のデザインの歴史を築いてきた、またはこれから築いていく日本の有名なグラフィックデザイナー・アートディレクターを今回紹介していきます。
中島信也
アートディレクター、映画監督、ミュージシャン。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達学科卒業後、東北新社入社。現在は東北新社専務取締役の傍ら、武蔵野美術大学の客員教授や広告学校の教授などを務めています。
その少し強面な印象とは裏腹、非常に温厚な方で何よりもトークが面白いです。クライアントとクリエイターそして鑑賞する人々、これら全員が楽しめる作品を目指して、「喜ばせイズム」という独自のテーマのもと制作をしています。
日清カップヌードルのCM「hungry?」シリーズ
彼の代表作でもあるCMシリーズです。腹を空かせた原始人が、獲物を捕まえようと必死に駆け回るCM。そんな苦労をしなくても手軽でかつ美味しいラーメンがあります、ということを伝えているウマイCMです。即席ラーメンの良さを上手く活かしています。当時まだ主流ではなかったデジタル技術を用いたことでも有名です。
サントリー燃焼系アミノ式のCM「グッバイ、運動。」シリーズ
これも懐かしいですね。色々な人がオーバーな運動をすることでインパクトがあるこのCM。出てくる方々の常人離れした運動には驚かされます。中島信也さんのCMはどれもオリジナリティ溢れ、一度見れば忘れないものばかりです。ちなみに内村光良さんがこのCMのパロディを演じたことで話題になりました。
佐藤可士和
出典:4knn.tv
クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業後、株式会社博報堂に入社。2000年に独立し、クリエイティブスタジオ「株式会社サムライ」を設立し、同社代表取締役に就任。慶應義塾大学環境情報学部特別招聘教授、多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン学科客員教授も務めています。
彼はブランディングを得意としており、それはデザインだけにとどまらずその働き方や生き方にも影響していて、そこに焦点を当てた著書も多く出版されています。その仕事に対する考え方はデザイナー以外の方にも参考になります。
有名ブランドのロゴマーク
彼のブランディング代名詞となっているロゴマーク。普段から目にするロゴのほとんどは彼がデザインしていると言っても過言ではないです。また、今は解散してしまいましたが、SMAPのジャケットのデザインも手掛けていました。シンプルながらもインパクトのあるデザインが彼の特徴です。
服部一成
アートディレクター、グラフィックデザイナー。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業後、ライトパブリシテイ入社。2001年4月よりフリーランスのアートディレクター、グラフィックデザイナーとして活動しています。
彼は偶然性をテーマに作品を制作しています。決めるという何かに捉われることはある意味縛られることであるため、道にそれて紆余曲折することはいいデザインを生み出すための「近道」であると彼は言っています。
キューピーハーフ
出典:sumally.com
キューピーハーフの商品の新鮮さを表現しようと思った彼は、いかにもデザイナーがデザインしたものはもう慣れが見えて新鮮さがなくなってしまうと感じ、手書きのタイポグラフィやコラージュ写真の切り方など、あえて素人感を演出することで作品の新鮮さを演出したそうです。洗練されたグラフィックが時代の流行りになっている中でのアナログ的な表現はとても印象に残りますし、マヨネーズの味の優しさや食感の滑らかさも同時に表現されている素敵な作品です。
流行通信
リニューアルに伴い、ディレクションを担当した作品。リニューアルということで、以前の田中一光さんが手掛けたロゴや当時の流行通信の冊子の内容を見て、もっと前衛的にしようと思い、今までの閑静な雰囲気とは異なる表現を目指したそうです。ちなみにキューピーハーフの手書きというアナログな柔らかな感じの反動もあったそうです。しかし、コラージュを取り入れているところなど、キューピーハーフの頃との関連性も見られます。
原研哉
出典:googooyt.com
グラフィックデザイナー。武蔵野美術大学大学院修了後、日本デザインセンター入社。幅広いデザインプロジェクトを手がける傍ら、武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科教授、株式会社日本デザインセンター代表取締役を務めています。
ロンドンやパリで展覧会を開くなどグローバルな活動をしています。2020年夏季オリンピックのロゴも制作したことで名前をご存知の方もいると思います。彼はデザインに関してとても哲学的な思考をしており、デザインとは見えないものを可視化できる唯一の方法であると言っています。
無印良品
出典:www.muji.net
無印良品の一切の無駄を削ぎ落とし機能性とデザイン性を追求したシンプルな商品を表現したポスター。空と大地、そして人という最低限の要素のみで構成されたその写真には、バウハウス以降のポストモダンに見られる単純化をテーマにプロダクトデザインをする無印良品のらしさが全面にアピールされています。彼はシンプルというのは簡素なのではなく凝縮であり、その集合性がシンプルなデザインへと繋がると言っています。また質素であることは受け取る側の自由性も兼ね備えているため、消費者に使い勝手の良さも商品に込められていることを、何もない殺風景の写真を使用し受けての想像の余地を与えることで表現しています。
佐藤晃一
グラフィックデザイナー。東京藝術大学卒業後、資生堂へ入社。その後資生堂を退社し、独立。東京芸術大学非常勤講師や多摩美術大学の教授を務めていました。2016年5月に逝去されました。
デザインという概念が浸透されていなかった頃から活動を続けていて、彼の印刷技術を最大限に利用したグラフィック作品は「超東洋的」と呼ばれ、今もなお寂れることなく、多くのデザイナーに影響を与え続けています。
映画「利休」のポスター
彼の作品は主に蛍光色が多く利用されており鮮烈でありながらも、背景との調和が保たれています。そして何よりも、彼の詩的な文章がグラフィックを際立たせています。大胆でありながらも、統一された雰囲気は独特です。その特徴が表されている一例が、歴史より受け継がれてきた有名茶人の千利休をテーマに制作された映画のポスターです。利休の、今もなお語り継がれるその伝説性を揺るがない美として表現した作品です。
永井一正
グラフィックデザイナー。東京藝術大学彫刻科中退、大和紡績に入社。1960年日本デザインセンター創立に参加。現在、最高顧問。JAGDA理事、ADC会員、AGI会員。2020年東京オリンピックエンブレムのデザイン選考の審査員代表でもあります。
多くのCI、マークのほか80年代後半より動物をモチーフにしたグラフィック作品『LIFE』シリーズを制作し続けています。彼の作品が生き物や自然の風景をモチーフにしているものが多いのは、彼が文化や伝統など取り巻く環境から着想を得ていることが影響しています。
「JAPAN」
独特な波の波形や日本の伝統を感じさせる生物の柄は風情が溢れます。自然の風景やそこにいる生物の模様や姿、色は全てある理論によって基づかれていると彼は考えおり、自らの中にそれらを落とし込み、ろ過し、再編していきます。それが彼の作品の独自的でありながらも均衡のとれたレイアウトや配色を創造しています。その文化を重んじた作風は、世界からも日本文化・伝統性が感じられると高く賞賛されています。
森本千絵
アートディレクター、コミュニケーションディレクター。武蔵野美術大学卒業後、博報堂へ入社。博報堂クリエイティブ・ヴォックスを経て、2007年に「goen°」を設立し、主宰となり独立。以降多くの社内プロジェクトを手掛けてます。また武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科客員教授でもあります。
感覚によるアイデアから、理屈や理論が付帯してくる、行動が発想の種であるという彼女の独特な考え方は、制作した作品の生命力や創造性の根源だと思います。現在結婚しており、一児の母でありながらも精力的に活動されてます。
Mr.Childrenのアルバム「HOME」
出典:parismag.jp
家系図を視覚化させた作品。とある家族に年代順に並んでもらい撮影し、編集して家系図のように線を引いただけという作品。その単純な表現でありながらも、込められたメッセージ性の深さとそのアイデアに多くの人の心に感動を呼びました。この作品ををきっかけに彼女は注目を浴びることになります。
松任谷由美「POP CLASSICO」
出典:parismag.jp
彼女の作品の特性としてディレクションをする際に、ただ平面でグラフィック構成するのではなく、空間を意識しており自らオブジェのデザインや映像制作を手掛けており、このPOP CLASSICOの創作物の全てのデザインも彼女が担当しています。ユーミンのPOPに彼女の独創性がマッチしているファンタジーな作品です。
亀倉雄策
グラフィックデザイナー、アートディレクター。新建築工芸学院卒業後、日本工房に入社。 日本宣伝美術会(日宣美)の創設や日本デザインセンター創立に参加するなど幅広く活動していました。1985年には株式会社リクルートに入社、取締役を務めていました。1997年に逝去されました。
彼のシンプルながらも迫力さに欠けることないそのグラフィックは魅力的で現代のデザインにも引けをとりません。彼はデザインに対し、絵画とは異なりただ表現するのではなくクライアントや企業の期待に応えることがデザイナーの職業であると言っていました。
1964年夏季東京オリンピックのポスター
2020年の夏季東京オリンピックのポスター選考にあたって、亀倉雄策のポスターが持ち上げられ話題になりました。白地に赤い円という単純でありながらもこれほど力強いオリンピックのロゴは過去にも類を見ません。また隣のポスターに使われている写真は短距離走のスタートダッシュした時の躍動感を演出するために、あえて画質が荒いものを使用しています。
浅葉克己
グラフィックデザイナー、アートディレクター。神奈川県立神奈川工業高等学校図案科を卒業後伊勢佐木町の松喜屋百貨店(後のピアゴイセザキ店)宣伝部に入社。その後数々の研究所を経てデザインを学び、ライトパブリシテイに入社しアートディレクターとして注目を浴されます。1975年に浅葉克己デザイン室を設立し、独立しました。現在は桑沢デザイン研究所10代目所長を務めています。
広告、タイポグラフィ制作の第一人者。社会に資するデザインを生み出すには独自の視点を持つことであると言います。ちなみに卓球六段という腕前で大会にも出場するほど。ファッションセンスも素敵です。
反戦広告「まず、総理から前線へ。」
広告批評の編集長が日本の代表的な広告制作者の人たちに「反戦をテーマに広告を作って欲しい」と依頼されたときにつくってもらった十数点の中のひとつです。なかなか衝撃的な作品です。キャッチコピーはかの有名な糸井重里さんです。これが制作された当時、憲法第九条の改定が問題となっていました。数十年も前の広告ですが、インターネットが発達して無責任な発言や非情な行為が簡単に発信できてしまう現代社会となった今だからこそもう一度掲げるべき作品だと思います。
西武百貨店の広告「おいしい生活」
高度成長から大量消費へと移り変わろうとしていた当時、大衆の豊かな生活への希求を刺激するために制作された広告。西武実は浅葉さんと、糸井重里さんが飛行機の機内食に対し、「お茶漬けを食べたい、お茶漬け食べれる生活っておいしい生活だよね」と会話していた時に、思いついたそうです。
田中一光
グラフィックデザイナー。京都市立美術専門学校(現:京都市立芸術大学)卒業後、鐘淵紡績社、 産経新聞社、ライトパブリシティ社を経て、1963年に独立し田中一光デザイン室の主宰に。数々のディレクターを務めました。2002年に逝去。
彼の作品は琳派を軸として、モダンデザインを上手く日本的なものへ昇華しており、そのデザインは多くのデザイナーにとっての指標となっています。また無印良品発案者でもあります。
「Nihon Buyo」のポスター
出典:openers.jp
日本舞踊の女形の表情を抽象化して表現した作品。4x3の四角形に分割し、シンプルな幾何学的表現ながらも、しっかりと女形の表情を再現しています。彼は時代を超えても廃れることのない優美さを保っている琳派の絵画に影響を受け、そこに潜む規則性、画面構成を自らのデザインに取り入れていました。日本舞踊のイメージを保持しながらもモダンであるこのポスターは世界でも賞賛されました。
長嶋りかこ
出典:meoto.co
グラフィックデザイナー。武蔵野美術大学造形学部視覚伝達デザイン学科を卒業後、博報堂に入社。2014年に自信のデザイン会社「village®」設立。
彼女の感覚的な作品表現は見るものに確かなインパクトを与えながらも、その作品の主題を明確に伝えるのが彼女の作品の特徴です。デザインの理論や企画の主旨を重んじながらも、「なんかいい」という感覚な情緒が人の心に響くと彼女は言います。
原宿「ラフォーレ」のポスター
顔をオブジェとして装飾を施しているその作品はなんとも印象的です。それは女性が持つ生命の持つ躍動感、創造力を繊細かつ激動に美的に表しています。当時東日本大震災があって社会のイメージがネガティブだったため、それを一新させようと、この作品を制作したそうです。
大貫卓也
クリエイティブディレクター、アートディレクター、グラフィックデザイナー。多摩美術大学を卒業後、博報堂にに入社。1992年で博報堂を退社し、翌年から大貫デザインを設立し、独立。現在は多摩美術大学グラフィックデザイン科の教授も務めています。
中島信也さんと肩を並べる、広告界の巨匠で、広告メインとして使用したブランディングの第一人者でもあります。既に中島信也さんの紹介で掲載した作品、「hungry?」のシリーズのCMも彼が制作に関わっています。
資生堂「TUBAKI」
洗髪剤の商品のCMながら多くの女性タレントを起用し、話題となったCM。この豪勢な演出はCM業界を唸らせ、相似したCMが多く制作されるほど影響を与えました。ただ商品をアピールするのではなく、その商品によってもたらされる本質「美」を見せたことがこのCMの魅力です。ちなみに日本の女性の美しさを最大にアピールするために美しい髪の見え方を徹底的に研究し、何度も撮影したそうです。
佐藤卓
グラフィックデザイナー。東京藝術大学デザイン科卒業し、同大学院へ。修了後に株式会社電通に入社。1984年に佐藤卓デザイン事務所設立を設立し、独立しました。
デザインについて彼はただ外見的な美しさ、格好の良さを求めるのはデザインではなく、その対象となっている物事の背景にある本質を捉え創造すること、人と人の間に立ち仲介を果たすのがデザインであると言っています。
明治「おいしい牛乳」
出典:www.tsdo.jp
スーパーに行けば必ず置いてあるであろうこの牛乳。そのパッケージのデザインは彼が手掛けています。商品をデザインする際に、その商品の本来の在り方、その機能性を考慮しそれを最低限の調整で際立たせることに気を使っており、このおいしい牛乳も依然とした牛乳のイメージは崩さず、ただその要素を顕在化し伝わりやすいものにするために、フォントの位置も0.1ミリの差まで調整して配置しているそうです。
小杉幸一
グラフィックデザイナー、アートディレクター。
武蔵野美術大学卒業後、博報堂に入社。JAGDA新人賞、カンヌ国際広告祭<DESIGN部門>GOLD、インタラクティブデザインアワードなど数多く賞を受賞されています。
植物栽培やアウトドアなど多くの趣味をお持ちに待っていて、日々様々なことに挑戦しているそうです。しかし常に頭の中は常にデザインの視点を忘れず、そう言った体験を通じて得られた物事からアイデアを得ているそうです。
パルコのマスコットキャラクター「パルコアラ」
出典:twitter.com
CMでおなじみの「パルコアラ」。親しみのあるキャラクターを目指して制作されたそうです。確かにその見た目からは愛らしさを感じられます。彼はブランディングにあたって、そのブランドをキャラクター化することはとても有効であると言います。それは特徴を紡ぎ出すことはブランド全体像を捉えるということになり、その行為がブランドイメージを明確なものにするので、ブランディングをすることが容易になるそうです。またキャラクターを作ることは、ブランドを扱いやすい素材へと転換させることでありコラボやCM、グッズ等様々な方面の展開の可能性を広げてくれると彼は言います。
佐藤オオキ
デザイナーであり、建築家。早稲田大学理工学部建築学科を卒業後、同大学院へ。修了と同時にデザインオフィス「nendo(ネンド)」設立し、独立。いくつかの大学の非常勤講師も務めていました。
Newsweek誌「世界が尊敬する日本人100人」にされたり、世界最年少でデザイン界最高の栄誉であるEDIDAデザイナー・オブ・ザ・イヤー受賞した凄い方です。アイデアのタネは普段の生活の中に潜んでいて、その時点に保たれている均衡を崩すことで生まれると言っています。
LOTTE「ACUO」
出典:isuta.jp
今までのガムのイメージを覆すようなパッケージデザイン。とても清涼感の溢れるそのグラフィックです。英語の「O」は口にも見え、歯にも見えます。ガムのパッケージにありがちのシズル感や雑多な情報をあえて抑え、端正なタイポグラフィのみで構成することで、医薬品のような清潔さを表現しています。ミントの爽快さもうまくグラデーションによって演出されています。商品のみならず、広告なども手掛けイメージの統一を重視されています。
心に響く名作の数々
いかがでしたでしょうか。日頃見かけるものから、歴史に残る名作まで多くの魅力的な作品と作者を取り上げました。素敵な作品群を鑑賞して心動かされるのは勿論、日々の生活で何かに行き詰まったときに、今回挙げた優秀なデザイナー・アートディレクターの方々のモノの考え方やアイデアがヒントになれば幸いです。
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この記事のライター
自己の視野を広げるために、日々勉強中。webとかグラフィックとか色々制作。珍しいものが好きです。