実在する企業をモデルにした昭和初期が舞台の企業小説5選
実在する企業をモデルにした企業小説はたくさんあります。今回はその中でも、近代日本経済の礎を築いた、今も名を残す有名企業の昭和初期を中心とした企業小説をご紹介します。
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百田尚樹『海賊と呼ばれた男』
出光興産の創業者出光佐三をモデルとした小説です。「永遠の0」で有名な百田尚樹によるベストセラーとなった経済歴史小説で、2013年4月には、第10回本屋大賞を受賞しています。
「ならん、ひとりの馘首もならん!」--異端の石油会社「国岡商店」を率いる国岡鐵造は、戦争でなにもかもを失い残ったのは借金のみ。そのうえ大手石油会社から排斥され売る油もない。しかし国岡商店は社員ひとりたりとも解雇せず、旧海軍の残油浚いなどで糊口をしのぎながら、逞しく再生していく。20世紀の産業を興し、人を狂わせ、戦争の火種となった巨大エネルギー・石油。その石油を武器に変えて世界と闘った男とは--出光興産の創業者・出光佐三をモデルにしたノンフィクション・ノベル
玉岡かおる『お家さん』
鈴木商店の女主人「鈴木よね」を主人公とした小説。
鈴木商店は総合商社の双日の前身の日商岩井の前身。戦前に存在した財閥・商社で、絶頂期の売上は当時の日本のGNPの約一割と言われています。当時、三菱商事や三井物産を遥かに上回っていました。鈴木商店の流れを汲む会社は、神戸製鋼所、帝人、サッポロ/アサヒ、太平洋セメント、IHI、昭和シェルなどがあります。
舞台化やテレビドラマ化もされています。
読売テレビ開局55年記念ドラマ「お家さん」より
大正から昭和の初め、鈴木商店は日本一の年商を上げ、ヨーロッパで一番名の知れた巨大商社だった。扱う品は砂糖や樟脳、繊維から鉄鋼、船舶にいたるまで、何もかも。その巨船の頂点に座したのは、ひとりの女子だった。妻でない、店員たちの将でもない。働く者たちの拠り所たる「家」を構えた商家の女主人のみに許される「お家さん」と呼ばれた鈴木よね。彼女がたびたび口にした「商売人がやらねばならない、ほんまの意味の文明開化」とは、まぼろしの商社・鈴木商店のトップとして生きた女が、その手で守ったものは…。激動の時代を描く感動の大河小説。
城山三郎『粗にして野だが卑ではない』
日本の経済小説の開拓者と言われている城山三郎による、三井物産の社長となり、のちに日本国有鉄道(国鉄)の総裁となった石田礼助(石田禮助)の生涯を描いた作品です。
三井物産に35年間在職し、華々しい業績をあげた後、78歳で財界人から初めて国鉄総裁になった“ヤング・ソルジャー”―。明治人の一徹さと30年に及ぶ海外生活で培われた合理主義から“卑ではない”ほんものの人間の堂々たる人生を著者は克明な取材と温かな視線で描いた。
小島直記『まかり通る』
「電力王」「電力の鬼」と言われた松永安左エ門を主人公とした作品です。
政・官の抵抗勢力を向こうに回し、電力会社分割を成し遂げるなど戦後日本の屋台骨をつくった快男児・松永安左エ門。昭和の激動期を勝ち抜いた反骨精神あふれる豪快な生き方を描く。
森瑶子『望郷』
2014年秋よりスタートしたNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」が話題になっていますが、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝とその妻リタがモデルとなっています。朝の連ドラ「マッサン」の原作はなく、脚本家・羽原大介さんのオリジナル作品ですが、モデルとなったニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝とその妻リタを主人公とした小説は昔から多数出版されています。本作はそのうちの一つ。
1920.1.20、グレートハミルトン街にあるカールトン地区登記所で、ひっそりと署名による結婚―日本人で初めて、モルト・ウイスキーの製法を学ぶため、スコットランドに留学していた竹鶴政孝と運命的に出合ったリタの生涯を描く。肉親との愛を断ち切り、極東の日本で、男の夢を共に生きたリタの心に棲む“望郷”とは何だったのか?人間の孤独とはどういうことか?
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