ヨーロッパの紳士のスポーツ・馬術の魅力と奥深さに触れる
馬術という言葉は乗馬を趣味でやる人以外は普段あまり馴染みがないかもしれません。紳士のたしなみでもあるヨーロッパの伝統的な馬術とは、どのようなものなのでしょうか。
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ブリティッシュとウエスタンの違い
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乗馬には大きく分けると「ウエスタン乗馬」と「ブリティッシュ乗馬」の2種類があります。日本の乗馬クラブではブリティッシュ乗馬を教えているところが主流ですが、ウエスタン乗馬もできる乗馬クラブや、ウエスタン乗馬専門の乗馬クラブもあります。ウエスタンは使う鞍も乗り方もブリティッシュと全く違います。「ウエスタン乗馬」はカウボーイが実際に仕事で馬を乗りこなさなければならないため、鞍もジーンズでそのまま乗りやすいように実用的にデザインされています。馬も人も自由な状態で乗るラフなスタイルが特徴です。
オリンピックで競われるヨーロッパの伝統馬術
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日本ではセレブなイメージもある乗馬。ヨーロッパでは日本よりもポピュラーなスポーツですが、伝統的な格式のあるスポーツであることには違いはありません。
ヨーロッパでは古くから紳士のたしなみでもあった乗馬は単なるスポーツというだけでなく礼儀作法や美を重んじるスポーツです。
オリンピック競技で競われる馬術はブリティッシュ乗馬です。ブリティッシュと言ってもイギリスだけでなくヨーロッパの伝統的なスタイルととらえた方が良いでしょう。馬術の歴史は古く古代ギリシャまでさかのぼり、近代の馬術の基礎は19世紀にフランス人の馬術家によって確立されました。
馬術には馬に乗って演技を披露する「馬場馬術」と障害物を落とさず飛ぶことを競う「障害飛越」そしてこの2つと「クロスカントリー」という自然に近い状態に作られた池や竹の柵などを飛び越える競技の3つの競技の総合得点を競う「総合馬術」があります。
人馬の動きの美を競う馬場馬術
「馬場馬術」は馬場の中であらかじめレベル別に決められた経路があり、指示通りに馬をどれだけ完璧に美しくしなやかに動かせるかを競う競技です。フィギュアスケートのように音楽に合わせて演技するものもあります。見た目の美しさも大事なので馬の毛並みも美しく整えられ、たてがみやしっぽは三つ編みにしてお洒落をします。
馬場馬術では馬の首をきゅっと曲げて後ろ足が大きく踏み込めるようにお尻が高くなったような状態にします。この状態を「収縮」といい馬のエネルギーが凝縮された状態になっています。オリンピックなどの馬術競技の馬の状態は車で言えばちょっとアクセルを踏んだだけですごく馬力の出るポルシェのようです。さりげなく動いているように見えても普通に歩くだけでも馬場馬術の競技中の馬はものすごくエネルギーを使っています。難しい技を行っていても何気なく優雅に見せるという点もフィギュアスケートと似ていますね。またこのような状態に馬を調教することも非常に難しいのです。
人と馬との信頼関係が試される障害馬術
「障害馬術」は様々な高さや幅で作られた障害を落とさないように飛べるかを競う華やかな競技です。鐙を短めにして、飛ぶ時に馬の負担が軽くなるように調節し、鞍も馬場馬術とは別のタイプの鞍を使います。
障害馬術は障害の大きさが高くなる程、また幅が広くなる程難易度が高くなります。また経路にも難易度があり、難しい経路になると助走をつけにくいような場所に高い障害が置かれることもあります。そのため馬が飛びやすい状態にタイミングを持っていけるように騎手が上手に馬を制御することが要求されます。馬が障害の前で逃げたり止ってしまっても減点され、それが繰り返されると失権になります。馬場馬術同様、人と馬とが信頼関係が試される競技です。
馬術を総合芸術にまで高めた「ジンガロ」
馬術を音楽や舞踏と組み合わせて、人と馬が演じる幻想的でエキゾチックなパフォーマンスを行うのがバルバタス氏主宰の騎馬スペクタクル「ジンガロ」です。パリ郊外のオーヴェルヴィリエの劇場を拠点に世界各国でも上演、日本にも来日しています。ジンガロのメンバーは普段から馬と一緒に共同生活をしています。その日常の馬との信頼関係があってこそなり立つと言える人馬が一体となったショーは圧巻。
1993年にバルバタス氏が監督から出演まで手がけた映画「ジェリコー・マゼッパ伝説」では馬に魅せられた画家、ジェリコーの半生を馬と人の官能的な美しさを通して描き、カンヌ映画祭最優秀芸術貢献賞を受賞しました。
馬術をもっと楽しむために
馬術というと日本では敷居の高いイメージがありますが、乗馬クラブに行けばどこでも体験乗馬を実施しているので気軽にトライすることが可能です。実際に乗るだけでなく観戦する競技としても華があって楽しめるスポーツです。来るオリンピックに向けて馬術について知っておくと競技観戦もより楽しめますね。
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この記事のライター
面白いものや美しいものをいつも探して生きています。