【連載小説】死の灰被り姫 第9話
料理バトル開始! 絶対不利の王女に勝機はあるのか?
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「あら王女さん、食材は集まって?」後ろから声を掛けられる。王様だった。王様の持っているかごには、ブラウンマッシュルーム、ポルチーニ茸、クレソン、アサリ、シャコなどが入っていた。しまった、この城の近くには海があるのか。王女はあせった。
「焦らなくてもいいのよ、料理は食材が全てじゃないから」王女の青々とした顔を見て、王様はあざけりに近い笑顔で言って、「でも私、もうちょっと食材を探すわ」と、森に入っていった。
「くそっ!」王女は釣り竿を叩き折った。「ヤマメ二匹じゃ、どうにもならんぞ……」空が薄暗くなり、鈍く光っていた。「どうにもならんぞ!」
「諦めんなよ!」
後ろから、声を掛けられた。
その頃一方、王様はレシピを頭の中で組み立てながら、もう一品を考えていた。
「前菜は蒸しキノコかな。そして二皿めに貝のスープ……シャコは、ちょっとさびしいけど魚料理として出すしかないわねえ、このままじゃ。まあ、自給料理勝負なんだし、しかたないか……」
草が動く音がした。
王様は反射的にそちらの方を向いた。なんと、食べ物かごを持った、和牛が、うろうろしているではないか。
「牛……!」王様は一瞬戸惑った。こんなところに牛などいるはずがなかった。しかし、そんなことはどうでもよかった。「牛……!!」
…………そして……二人は厨房に入り……午後五時五十分になった!
「終了! 両者、料理を持って王子の前へ!」大臣が言う。
フロアの中央には王子が座り、前には白いクロスのかかったテーブル。周りにはスタジアムのように客席が設けられ、花嫁対決の料理バトルを観戦に来た紳士淑女で溢れ返っている。
ギャラリー「うおお~~~っ!! 興奮がとまらねえ! 寒々とするぜ!! (ざわざわ)」
ギャラリー「極貧被爆者からの玉の輿と、近親男装フェチ変態娘の一騎打ちだぁ(ざわざわ)」
ギャラリー「ダークホースに牛もいるって噂、流したの誰だぁ~~!? (ざわざわ)」
王女「(料理の腕で負けるつもりはない……! 継母にこきつかわれていた数年間、さんざん炊事もしたのだから!)」
王様「(フフ……この勝負、もうついている! 王女、あなたに勝ち目はない!)」
大臣「それでは料理を出してもらうが……こういう変則マッチだ、フルコースは要求してない。皿数に会わせて、柔軟に点を競おうと思うが……」
「わたくし、フルコースの準備がありますので、なんでもかまわなくてよ」王様は言った。
ギャラリー「なっ……!! (ざわ……ざわ……)」
ギャラリー「一日の……食材探しでっ……フルコースっ……(ざわ……ざわ……)」
大臣「ようがす! では、王女は!?」
王女「よ、4皿です!」
ギャラリー「4皿か……(ざわ……ざわ……)」
ギャラリー「王様と比べると霞むが……それでもその根性はすさまじい……(ざわ……)」
王女「私の四皿は、『前菜』『スープ』『魚料理』『肉料理』の四つ!」
大臣「よろしい! では、この四品で、それぞれ勝負とする! 二勝二敗となった場合、より皿数を多く準備できた事を王様に実際に料理で出してもらう事で証明してもらい、王様の勝利とする!!」
王女「(……ということは、私は3勝しなきゃだめってことか……)」
大臣「では、まずは一皿め! 『前菜』!!!」
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この記事のライター
小説家。「ネオ癒し派宣言 劇団無敵」主宰。油絵も描いてる。