辛口好きでも楽しめる!晩酌でもいける人気の梅酒10選
梅酒好きにとってはあの甘さとほどよい酸味が美味しいのですが、いわゆる「呑兵衛」、特に辛口の日本酒好きの方にとっては甘すぎるので飲みたくない、という印象もあるようです。しかしそういう方にでも好きになっていただける「辛口向け」の梅酒も中にはあります。今回はそんな辛口の方が料理と一緒に楽しめる梅酒を10品目紹介します。
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梅酒はなぜわざわざ甘く作るのか?
甘さには甘さの理由があった!
さて、まずその前にそもそもの話です。なぜ梅酒は甘いのか、ということをご存知ですか?筆者は甘いものも好きですが、やはり料理と一緒の時には梅酒は苦手ですので、いつもこの甘さがなかったら晩酌として楽しめるのに、と思っていました。しかし、あの甘さは、梅とホワイトリカーに、氷砂糖などを入れるからなのですが、それは何も「梅酒好きの人は甘いもの好き」というような趣味嗜好の定説に沿ったものではないのです。実は、氷砂糖を入れるにはきちんとした科学的な根拠がありました。
梅のエキスがお酒の中に溶けだすメカニズムとは?
梅酒であるからには梅のエキスが梅の実から溶けださなくてはなりませんが、単純にお酒に梅を漬け込んでもそれは起こりません。それを可能にするのが氷砂糖なのです。
具体的には、まず1段階としては、お酒と梅を一緒に入れると、梅の実の中の糖分の濃度のほうが、漬かっている液体の濃度よりも高い状態にあります。すると「浸透圧」によって、梅の実がアルコールと水分を取り込んで濃度を外と同じにしようとします。これによって梅の実はパンパンにふくれあがります。ここまでが第1段階で、この時にはまだ氷砂糖は溶けていません。
そして第2段階ですが、氷砂糖がゆっくり溶け始めます。すると今度は梅の実の中より外側の液体のほうが濃度が高くなるので、またもや浸透圧がによって、今度は梅の実から水分が梅のエキスと一緒に溶けだします。この2つのプロセスを通じて、梅のエキスがお酒の中に溶けだして「梅酒」になるわけです。したがって、ゆっくり溶け出す氷砂糖で濃度を上げるというところがポイントなので、梅酒は甘くならざるを得ない、ということなのです。
辛口好きのための梅酒にする方法は?
ここまでの話だけでいきますと、梅酒と甘さとは不可分の関係なので、辛口好きのための梅酒というものはそもそもあり得ないのではないか、ということになりますが、梅酒づくりの人やメーカーはその点をいくつかの方法でクリアして、できるだけ甘くない梅酒を可能にしています。
その1つは、氷砂糖が必要なのは2段階目の浸透圧のためなので、それを起こすほかの方法を考えるということです。具体的には各メーカーそれぞれの「秘法」ですが、甘さがくどくない蜂蜜で代用したり、1段階目はお酒だけ入れて梅の実がパンパンになったらさらにお酒を入れて外側の液体の濃度を高めたり、といったことです。
もう1つの方法は、梅の実に最初に細かい穴をあけて、第1段階から梅のエキスが外に出るようにしてしまうということです。これは穴をわざわざ開けなくてもできそうですが、実は梅の実の表面に自然に開いている穴は非常に小さくアルコールの分子は通れても梅のエキスの分子は通れません。そこで、いったん水分の分子を取り込み、今度はその水分の分子と梅のエキスを一体化させ小さい分子にして、外に溶けださせる、という2段階をとっているのです。これに対して物理的に最初から穴をあけてしまうことで、第2段階を不要にする、という方法です。
さらにもう1つ、アルコールの濃度を上げる、という方法があります。そのお酒が甘口か辛口かという表記は、日本酒メーカーとしては酸度と日本酒度のマトリックスでだいたい決まっていますが、実際に人間が飲んだ時に甘い、辛いを感じるのはそれよりもっと感覚的な問題です。そして、その感じ方を左右するのは「アルコール度数」の要素が結構大きいのです。つまりアルコール度数が高ければ糖度が多少高くても辛いと感じやすいわでです。この点を押さえて、梅酒を漬け込むお酒をブランデーなどのアルコール度数の高いものにして、辛口好きの人でも美味しく飲める梅酒を作っているのです。
いかがでしょうか。この方法がすべてではなく、各メーカー、各梅酒づくりの人がほかにも工夫している点もあるかもしれませんが、いずれにしてもこのような方法を駆使した、辛口の人でも楽しめる梅酒を以下にご紹介します。
第1選 吟撰梅酒(栄光酒造)
これは漬け込むお酒を日本酒にすることで、日本酒の酸味を利用し、すっきり爽やかなテイストにした梅酒です。また、酸味料、着色料、香料は無添加ですので、自然な味わいを楽しめます。肉料理でも魚料理でも、相性が良い梅酒です。
第2選 樽熟梅酒 天空の月 12°(老松酒造)
これは樽麦という種類の焼酎に漬け込んだ梅酒です。方法は明記されていませんが、甘ったるくなくすきっとした味に仕上がっています。この梅酒は2009年にモンドセレクションで最高金賞を受賞しています。ボトルもデザイン性が高いので、プレゼントにしても最適です。
第3選 角玉梅酒 12度 (佐多宗二商店)
この梅酒は、辛口の人には辛いお酒を、ということではなく、しっかり梅のうま味とコクがあることで選びました。ある意味、本格派の梅酒です。そのコクとうま味が強いので甘さは少なく感じると思います。食中酒では難しいですが、ウィスキーの代わりの食後酒にはぴったりです。
第4選 萬歳楽(加賀梅酒)
これは日本経済新聞 NIKKEIプラス1「何でもランキング」で全国1位に選ばれた実績や、ANAの北米線や欧州線のファーストクラスで提供されているという実績から、選びました。これも辛くはありませんが、梅本来の濃密なうま味が甘みに勝つと思います。またアルコール度数も高めなので、飲み口もクリアです。
第5選 星舎無添加上等梅酒(本坊酒造)
これは、氷砂糖に蜂蜜を加えることで、糖度は高いものの甘さはすっきりとしたさせ、そしてブランデーを加えて1年以上熟成させることで豊かなコクも手に入れた梅酒です。ブランデーの風味がしっかりとした大人の味わいを感じさせてくれます。これも食後酒や、寝酒にぴったりです。
第6選 紀州の辛口梅酒「男」(中田食品)
これは砂糖を抑え、漬け込むお酒を純米酒にすることで、梅の酸味と日本酒の酸味によって、すっきり辛口の梅酒にすることに成功したものです。書中酒として、特に白身の魚などのあっさりした料理に合わせるとぴったりです。従来のの梅酒のイメージとはかなり違うことに驚かれるでしょう。
第7選 超辛口梅酒 皇帝 27度(笹一酒造)
これは漬け込むお酒を、全量ブランデーの原酒にすることで、アルコール度をほかの梅酒の倍以上の27度まで上げた、まさに辛口の梅酒です。これであれば、梅酒を甘いからと言って敬遠してきた、辛口好きの人も食中酒として飲めるでしょう。寝酒としても最適です。ロックなどがおすすめの飲み方です。
第8選 三州 梅酒 辛口(角谷文治郎商店)
これは梅をみりんに漬け込んで濃度を高め、その代わりに砂糖無添加にすることで、辛口に仕上げたものです。みりんに漬け込むというのはほかには余り例のない製法です。砂糖を使っていない分、爽やかな香り、クリアなのど越しが特徴です。
第9選 甘えてられない人生梅酒 しょうが(中野BC)
ネーミングが秀逸なので、新聞などでも取り上げられていました。しかし製法に関しては非常にまじめで、同社の現行品よりも糖分を39%カットし、それによって強くなってしまう苦味と酸味を、しょうがを加えることでクリアした梅酒です。その結果、しょうがの香りと辛みが、甘さを抑えた梅酒の苦味と酸味にマッチし、辛口の人でも十分に楽しめる仕上がりになりました。
第10選 無添加(無糖)・じゅんまいうめざけ
これは、全くの砂糖無添加で、純米酒と梅だけで漬け込んだ梅酒です。このあたり、どうやって梅のエキスを抽出したのかは企業秘密ですが、飲んでみると、香りにはややトロピカルな感じがあり、日本酒らしいうま味とコクがあって、あっさりと軽く飲める仕上がりです。当然酸味もほどよくあるので、梅酒と言われなかったら、フランスの地中海沿岸のどこかで作ったデザートワインかと思ってしまうほどです。「梅酒」ではなく「うめざけ」とネーミングしているところにも、そのこだわりを感じます。
いつもの食卓に梅酒でバリエーションを
いかがですか。
とにかく自分は日本酒党なので日本酒しか飲まない、という方でなければ、毎日、今日はワイン、明日は焼酎、などのように料理に合わせてお酒もセレクトしていきたいのではないかと思います。そんな時に、辛口好きでも楽しめる、食中酒としてもいける梅酒があったら、さらにバリエーションが増えて楽しいのではないでしょうか。また、もちろん食後にビターチョコレートなどのスイーツと合わせて食後酒として飲むのもおすすめです。
お酒のある人生を、梅酒の導入によってさらに豊かにしてください。