映画史に残る大作は戦前にあった！戦前のアカデミー賞受賞5作

古いのが新しい

「古いのが新しい」という言葉がありますが、今回ご紹介する映画は1932年のものもあります。80年以上前の映画に出演した人たちはすでに亡くなり、私たちに語りかけてくるということは不思議な気がしないでしょうか。昔の人がどのように話をしたのか、どのような背景が写っているのかなど、ストーリーと共に新鮮なものが古い映画にはたくさん入っています。現代とは全く違う世界に「新鮮な驚きを感じたい」と思ったなら、ぜひ古い映画をたくさんご覧になってください。その魅力の虜になるかもしれません。

グランドホテル　1933年受賞

グランドホテルは、当時珍しい手法で描かれていたことなどでヒットした映画です。ホテルという場所は、多くの人の人生ドラマが集まってくるところです。全く関係のない宿泊客がそれぞれの人生の問題を抱え、本来は交わることのない他人の人生と関わることになります。ロシアから来たと思われる落ち目のバレリーナは当時の大スター、グレタ・ガルボが演じました。

他には男爵、倒産寸前の会社社長、経理、秘書など様々な人が当時し、このホテルでの出来事を境に新しい人生を迎えることになります。主役のグレタ・ガルボは1905年スウェーデン生まれで、貧しいスラム街で育ちましたがモデルから演劇学校、女優というコースをたどり、ハリウッドで大スターとなりました。酒場の女やマタ・ハリなど女スパイを演じ、ミステリアスな熟女の雰囲気があり、たちまちアメリカ人の男性の心をつかんだようです。

日本ではあまり人気が出るタイプではなかったかもしれません。その後30代で引退宣言し、人目から隠れるような生活をしたため、マスコミや世間からますますミステリアスな女性として話題を提供し続けました。この映画により、空港や駅、客船、港など多くの人が集まる場所を主体とした映画やドラマ、小説が流行したということです。

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風と共に去りぬ　1940年受賞 　

「風と共に去りぬ」は、戦前映画の傑作として名高い映画といえます。小説家マーガレット・ミッチェルの一部自伝的な小説で、主人公の性格は自分に重ねて書いたと後日述べています。アメリカ南北戦争の頃を描いており、貴族的な暮らしをしていた主人公の女性が、戦争ですべてを失いながらも勝気な性格を武器に、家族や家を気丈に守り抜くという話です。

彼女は、ある男性の愛に助けられているものの、男を利用はしても愛することはできません。実のところ、他に愛している男がいました。ストーリーは、単純な三角関係に留まらず、戦争や男の弱さなど人間の本質について考えさせられる物語を含み、見ている人をグイグイと引き込みます。映画の最後にぽつりと彼女がつぶやく言葉が名言です。

全体を鑑賞しなければ最後だけでは意味不明な映画となりますので、どうぞ最初から最後までご覧下さい。また、この映画の主人公役は別の女優が決まっていました。しかし、ヴィヴィアン・リーは主人公のスカーレットの衣装メイクで監督の家に押しかけ「直談判」し、主役を勝ち取ったという話は有名です。

風と共に去りぬは、近年になって続編が別の作家により書かれ、ドラマにもなりましたが不評に終わっています。主人公はどんな苦境に合ってもたくましく生きることの出来る女性で、その姿を最後にメッセージとして見せたシーンは感動的です。これに何かを付け加える必要はないと感じます。

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レベッカ　1941年受賞

レベッカは、アルフレッド・ヒッチコックによるミステリーです。富豪の男の妻となった主人公の女性が、前妻のレベッカの死因に疑いを抱いたことから話は始まります。心理的な恐怖を描くことでは「ヒッチコックをおいて右に出るものはいない」というくらいうまい手法で、見る人の心を虜にします。演じているのは、大人しい従順なイメージのジョン・フォンテーンと、イギリスが誇る名優ローレンス・オリヴィエです。人の死が描かれているのに深刻さを感じさせない「古き良き時代のミステリー映画」という雰囲気の傑作といえないでしょうか。

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わが谷は緑なりき　　1942年受賞

炭鉱の町のある一家と、取り巻く人々との出来事を描いています。「谷」というのは炭鉱のある場所を指しています。炭鉱夫として生計を立てる一家の幸せを象徴しているのが「わが谷は緑」という言葉です。その幸せは永遠ではなく、世の中の不景気の影響から人間関係も変化していきます。家族がひとり、ふたりと炭鉱(谷)を出て行き主人公も心が揺らいでいきます。美しい景色と対比するような炭鉱というイメージは、そのまま幸、不幸を連想させ、人生とは何なのかを感じさせる名作です。

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カサブランカ　1944年受賞

カサブランカは、北アフリカのモロッコにある都市です。時代背景は第二次大戦中で、ドイツが支配するカサブランカでストーリーは進みます。レジスタンス運動に関わる人間と、逃亡を手助けするはめになる男と元恋人をハンフリー・ボガードとイングリット・バーグマンが演じました。ストーリーはあまり展開がなく、ロケもほとんど動かないのですが、主人公を演じる２人の見事な雰囲気作りが成功した理由といえます。

この映画で、主役ふたりの人気は共に最高潮となりました。この後ハード・ボイルドをイメージさせる代表となったハンフリー・ボガードの男っぽさは探偵役で開花します。また、イングリッド・バーグマンの美しさは日本人のファンを増やしました。そして２人のファッションの「トレンチコート」も大流行しています。また、主題曲の「時の過ぎゆくままに」は現在でも有名で、よくいろいろな場所で流れていますので、聴いたことがある人も多いのではないでしょうか。いろいろな意味でヒット作を生み出した映画といえます。
　
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古い時代を知る

いかがでしたでしょうか。戦前とひとくちにいってもサイレント、トーキー、白黒、カラーなど映画の世界は時代と共に技術的に進歩しました。ストーリーも徐々に変化したように感じます。それぞれその時代に影響を受けていますから、現代の状況をそのままに移してみることは出来ません。時代背景がわからなければ理解できないように思います。

少し映画の中のストーリーの時代と、映画が作られた時代を知ってから見ることをお勧めします。今回ご紹介した映画は1932年のものもありますが、タイムスリップして当時の言葉遣いや物の考え方を知ることができるのも映画の醍醐味ではないでしょうか。これを機会に人類最初のサイレント映画を見たいと感じていただければ幸いです。