まさに花!エーロ・サーリネンの可憐な家具4選
一人暮らしをしていても、部屋にカラフルな家具があるだけで普段の寂しさは紛れるものです。今回は、カラフルな家具を手がけるデザイナー エーロ・サーリネンの家具をご紹介します。
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華やかなデザイン
フィンランドの建築家エリエル・サーリネンの子としてヘルシンキに生まれたエーロ・サーリネンは、のちアメリカに渡り、20世紀を代表する建築家となった人です。サーリネンは曲面を表現主義的に用いた多様な建築スタイルを展開しますが、その多様さの一方で、家具デザインに関しては「チューリップ」を思わせる華やかな色彩とフォルムで一貫した作品を生み出しました。第二次世界大戦後のわずか十余年という短い時代に生み出された珠玉の椅子たちは、時代を超えて今も世界中の人々に愛されています。
「ウームチェア」でゆりかごに眠る赤子になりたい
サーリネンの代名詞ともなっている「チューリップ」を思い出させる可憐な椅子の数々の出発点は、この「ウームチェア」でした。ミース・ファン・デル・ローエらの巨匠のデザイン家具を手掛けたKnoll社の「クッションの中で丸くなれる、バスケットのような椅子」という要望に応えて生まれた1946年の作品です。ウーム(womb)とは子宮の意味で、文字通り子宮の中で守られているような、精神的にも生理的にも安らかな心地で座れる最高の使用感を形にした製品でした。シェル成型FRPに、クッションはフォームラバー芯ポリエステル綿が使われているため、座った時の圧力に応じた自然な柔らかさが実現されています。
Medium Womb Chair [1946](ミディアムウームチェア)のページ。Knoll・Mobimex・girsbergerの日本輸入総代理店。バルセロナチェアをはじめとするKnollの名作家具、カーテン等のテキスタイルや、イタリア、スイスのモダン家具を販売。オフィス・ヘルスケア等コントラクトから住宅まであらゆるシーンに対応します。
可憐に咲く一輪のチューリップ椅子
いわゆる「チューリップチェア」は、サーリネンの代表作シリーズであると同時に、デザインメーカーKnoll社のシンボルともなり、また20世紀半ばのアメリカデザイン史にその名をとどめた重要な作品となりました。座面を支える脚部のラインが美しく、あたかもチューリップをモデルにして考案されたかのように思われますが、実際は、椅子やテーブルの脚の混乱を回避するために、シンプルに一本脚で自立する椅子の理想的な形に取り組んだ結果が、このチューリップのフォルムだったのです。用途と機能性から合理的に導き出された結果としての、植物のような自然な曲線。これがチューリップチェアの美につながっているのです。
カラフルにそろえたい可愛らしいスツール
チューリップチェアにみられる自立する一本脚のフォルムは、チェアだけでなくスツールにも応用されました。現代では一本脚のスツールは決して珍しいものではありませんが、当時は座った時に足の自由が確保されるために極めて使いやすく、回転式の座面が有効に機能するスツールとして画期的なデザインとなったのです。しかも機能面だけでなく、花の房のような美しいベースが時代の嗜好にぴったり合い、今でも多くのファンを魅了しています。色鮮やかな座面のバリエーションでこのチューリップスツールをそろえると、リビングやダイニングが華やかな気分につつまれるでしょう。
Tulip Stool [1957](チューリップスツール)のページ。Knoll・Mobimex・girsbergerの日本輸入総代理店。バルセロナチェアをはじめとするKnollの名作家具、カーテン等のテキスタイルや、イタリア、スイスのモダン家具を販売。オフィス・ヘルスケア等コントラクトから住宅まであらゆるシーンに対応します。
チェアと一緒にそろえたいダイニングテーブル
椅子やテーブルの下で脚が混乱する問題を解決するために、サーリネンは椅子だけでなくテーブルの脚も一本脚にしました。それがこのラウンドダイニングテーブルです。天板の重さを支える十分な強度を保障し、なおかつ一本脚でも安定する構造を実現するために、サーリネンは5年の歳月をかけて研究したといわれます。ゆるやかな曲線の優雅で上品な一本脚は、一見すると華奢な女性の脚のようでありながら、素材にヘビーモールドキャストアルミニウムを使うことで耐久性を実現しています。このテーブルのまわりにチューリップチェアを並べたダイニングは、あたかも花畑に群生する可憐な花々のように見えるでしょう。
女性にも好かれるチェア
エリエル・サーリネンは、ミシガン州クランブルック美術大学で学んでいた若い頃にチャールズ&レイ・イームズと知り合っています。確かに彼の作品にはイームズとの類似性をみることもできますが、イームズの椅子が合理的で男性的とすれば、サーリネンの椅子たちは抒情的で女性的な作品群といえるでしょう。一脚の椅子で豊かな時間を過ごすより、二脚しつらえたリビングで、愛する人との語らいの時間を過ごすのに最適の椅子といえるでしょう。
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この記事のライター
藝術文化系のコラム、論評の執筆を多くこなしてきました。VOKKAではインテリアなど、アートに関わる記事を中心に執筆しています。