スーパー凄腕ピアニスト「マルク・アンドレ・アムラン」!おすすめの名演を紹介
現在アムランというピアニストがとても注目されています。「スーパー・ヴィルトオーソ」という名を欲しいままにし、演奏先々で拍手喝采で迎えられているピアニストには演奏不可能な作品はないようです。アムランの演奏の中から名演を5つご紹介します。
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マルク・アンドレ・アムランというピアニスト
出典:pixabay.com
マルク・アンドレ・アムランは、1961年カナダに生まれています。現在は発音から「マルカンドレ・アムラン」と表記することもあるようです。父親がピアノの達人であったことから幼少時からピアノの才能があり、いわゆる神童として知られています。鍵盤上で両手の左右を対照的に動かすなどの特殊な練習法をとっており、「スーパーヴィルトオーソ」(超名人)という呼び名にふさわしい技術の持ち主です。
あらゆる難曲を弾きこなすことで有名ですが、「マイナーな作曲家」の作品を好んで演奏し紹介することで「光が当たってこなかった名曲」を広めるなどの功績は賞賛に値します。カナダでは勲章も多数で、国際的にも現在最も注目すべきピアニストの1人であることに間違いはありません。
演奏は、昔のピアニストが行っていた「他の作曲家の作品の中にオリジナルの部分を混ぜる」「カデンツァという短いちょっとした即興的な装飾」をするというスタイルをとることもありますが、これはピアニストの自信の表れを意味します。
また、コンポーザーピアニスト(ピアニスト兼作曲家)であることから、他の作曲家の作品の編曲や全くのオリジナル作品も手がけています。目も眩む技巧の他に暖かい音色を出すことの情緒的な表現なども歳をとると共に円熟味を増してきたと評されています。
アムラン作曲 パガニーニの主題による変奏曲
「パガニーニ」という人は、ショパンやリストのロマン派の時代に活躍したヴァイオリニストですが、その超絶技巧で一世風靡した作曲家でもありました。彼の作曲の主題はいろいろな人が編曲しており、リスト、ラフマニノフのものが有名です。アムランの「パガニーニの主題による変奏曲」には、リスト、アルカン、ラフマニノフ、スクリャービン、ジャズなどの自身のレパートリーの中の数々の作風が盛り込まれており、それらを聴きなれた人であれば気がつくような興味深いものに仕上がっています。
シュトラウス作曲 ゴドフスキー編曲 「ワイン、女と歌によるメタモルフォーシス」
ゴドフスキーは、編曲の作曲家兼ピアニストとして有名です。自身が大変凄腕のピアニストであるため作品はほとんどすべては難曲となっています。シュトラウスはオーストリアの作曲家でウィンナーワルツで知られていますが、この曲は親しみやすく明るい陽気なメロディが楽しい作品です。アムランにとっては、技術的には何の問題もなく楽々とこなしているのはもちろんですが、ダイナミックな音色の中に旋律を優雅に歌わせています。ちょうど社交界の舞踏会で女性の長いドレスが揺れる様子が見えてくるようです。
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カプースチン 「演奏会用エチュード 作品40の8」
カプースチンは、ロシアの作曲家ですが近年急激に人気が出てきている人です。長い間、ほとんどロシア国内で活動していたため知られていなかったようですが、アムランなどの「あまり知られていない作曲家の作品を好んで演奏する」ピアニストにより知名度があがってきたといえます。また、アムランはかなり以前からカプースチンとは親交があるということです。
カプースチンの作風は、「クラシックとジャズの融合」といわれ現代の音楽の志向に合っているもので、一口にいえば「とてもカッコいい音楽」なのです。メロディの上手さとスピード、リズム感は「サーキットのレーサー」気分を味わえるという例えがぴったりだと感じます。ただ、上手くこなすことは難しくアムランのような「凄腕」ピアニストでなければ、音のバランスを崩して台無しにしてしまうのです。アムランにとっては、困難さは全く感じさせることなく作曲家の意図を裏切ってはいません。
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トレネ作曲 ワイセンベルク編曲 「四月のパリ」
ワイセンベルクは、ブルガリア出身のピアニストで戦前戦後に活躍した技巧派のピアニストです。ジャズにも興味を示しオリジナル作品も残していますが、このトレネ作曲の「四月のパリ」はアムランのピアノで生き生きと輝き、古き良き1900年初頭のパリを彷彿とさせています。アンコールなどで演奏される短い曲ですが、クラシック以外のどのようなピアノ曲もこなすアムランの趣味の良さがうかがえます。
アムラン作曲 「短調による12の練習曲より第11番 メヌエット」
アムランは、作曲家兼ピアニストとしても知られていますが本格的な活動をしていることが、この曲集で証明されたのではないでしょうか。興味深いことには、12曲の題名のほとんどがショパンやチャイコフスキー、アルカン、ロッシーニ、スカルラッティなどの作曲家の作品から主題を元にしています。例えば一番のショパンによるとされるものはエチュードの作品から木枯らしなどいろいろな曲が聴こえてきます。
三番はリストの「ラ・カンパネラ」の主題を元にしていますが、難しさは倍以上でしょう。編曲集と言ってしまえばそうであるかもしれませんが、エチュードという意味合いは「演奏会用の技巧のもの」ですのでほとんどの曲は、アムランが技巧的に難しく作曲しているものです。ただ、11番の「メヌエット」は少し趣が異なります。
古風な様式の静かな主題部分のメヌエットは途中から長調に変わり、旋律部分は左手が担当していきます。右手のキラキラと輝く伴奏部分の和声が左手と一体に重なり響く部分は、息を呑むほどの美しさを放ちます。
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歴史に残るピアニスト
いかがでしたでしょうか。ピアニスト、アムランは通常のヴィルトオーソとは違っていると感じます。古い巨匠の作曲家の作品を必死に追い、忠実に再現するというのが通常であるなら、彼は型にはまったコンクールなどは不向きで無意味なことに過ぎないでしょう。アムランのピアノは、「絶対的な技巧」の素晴らしさだけではない温かみと情緒的な表現が加わり、聴衆はそれを共有することで拍手喝采しているのではないでしょうか。彼の演奏は歴史に残るものだといえます。
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この記事のライター
検査技師をしておりました。現在は家庭に入り、ライター、アンティークドールのディーラー、人形関連の制作と売買、ピアノ講師などをしています。趣味の薔薇や犬、鳥の世話と夫と子供の世話に忙しい毎日です。