非日常な時間を味わえる！おすすめ短編実写映画15選

短編映画とは、どんな映画のこと？

日本ではそこまで馴染みがない短編映画。ショートフィルムともよばれるこの映画のジャンルは、主に30分にも満たないぐらいの短い作品のことを指します。2時間ほどの普通の映画とは違って、低予算で製作することができるため、若手監督の登竜門でもあるのだとか。映画祭に出品された短編映画を観て、プロデューサーが新人監督を発掘する、ということも多いそうです。

ディズニー映画を劇場に観に行くと、本編の前に数分の短編作品が上映されていますよね。実はディズニーは昔は、短編映画がメインに製作されていたんです！今でもアカデミー賞には“短編実写映画部門”、そしてヨーロッパでは短編映画限定の映画祭が開催されるなど、欧米では一般的に親しまれている短編映画。実は有名映画に出演している俳優たちも出演していることもしばしば！
今回は短い時間で非日常な空間に浸ることができる、気分を切り替えられる、そんなおすすめ短編映画を15作品厳選しました。

1. アンダルシアの犬 (1929)

最初にご紹介したいのが、“元祖シュールな映画”として知られているフランスの作品『アンダルシアの犬』。独特の作品や奇行で知られているスペインの画家、サルバドール・ダリと1950〜70年代に活躍した映画監督ルイス・ブニュエルによる21分のサイレント映画です。
男と女のもつれあい・・・というおおまかなストーリーはあるものの、その映像は奇妙の極み。衝撃のオープニングから始まり、不気味で衝撃的な場面が次々と映し出されます。アップになる虫やグロテスクなものが苦手な人にはかなりキツい作品ですが、癖になってしまう人もいるかも？ダークで詩的な『アンダルシアの犬』、ゾッとしたい時にご覧になってみてはいかがでしょうか。

公開 : 1929年
監督 : ルイス・ブニュエル
出演 : ピエール・バチェフ、シモーヌ・マルイユ
上映時間 : 21分

2. 全てを失う前に (2013)

とある日の午後、息子と娘を慌ただしく車に乗せ、上司に退職すると告げて街を出て行こうとする女性。いきなりのことに戸惑う周りの人々ですが、彼女は暴力をふるう夫から逃げようとしていて・・・
暴力的な父親から逃げる母親と子供たちを描いたフランスのショートフィルム『全てを失う前に』。その巧みなストーリー展開と息も切れそうなスピード感が話題となり、クレルモンフェラン国際短編映画祭でグランプリを受賞しました。短い時間でどっと緊張を味わえる作品です。

公開 : 2013年
監督 : グサヴィエ・ルグラン
出演 : レア・ドリュケール、アンヌ・ブノワ、ミリヤン・シャトラン
上映時間 : 31分

3. 合唱 (2016)

アカデミー賞で短編実写映画賞を受賞したハンガリーの作品『合唱』。
とある学校に転校してきた10歳の少女、ジョフィー。その学校は合唱の強豪校で、ジョフィーも校内の有名な合唱団に入ることを決めます。たちまち人気者のリザという少女とも仲良くなるジョフィー。しかし彼女たちはある不条理な出来事に直面し、団結して立ち向かうことになるのです・・・
1990年代のブダペストを舞台に描かれているこの作品。“団結”とは、“指導”とは、そして“リーダー”とは？短い時間で様々なことを考えさせられる『合唱』。短くまとめあげられたそのストーリーに脱帽すること、間違いありません。

公開 : 2016年
監督 : クリストフ・デアーフ
出演 : Dorka Gáspárfalvi、Zsófia Szamosi
上映時間 : 25分

4. ザ・ブラック・ホール (2008)

もしいきなり不思議な力を手に入れたら、どうしますか・・・？SF作品やファンタジーを観ていて、きっと誰でも考えたことがあるはずです。もしこんな力を手に入れたら、きっとだいたいの人がこんな行動をしてしまうだろうと思わせる作品が『ザ・ブラック・ホール』です。
主人公は残業で疲れているサラリーマン。そんな彼の前に“ブラックホール”が出現します。その穴を使えば、どんな壁でもすりぬけることができる！“ブラックホール”を手に入れたサラリーマンがとる行動とは、果たして？
滑稽でもあり、「ああ〜」と思わず声をあげたくなってしまうこの作品。異様な空気に一気に包まれる、短編ならではの面白さを味わえます。

公開 : 2008年
監督 : フィリップ・サンソム、オリー・ウィリアムズ
出演 : ナポレオン・ライアン
上映時間 : 2分48分

5. 死の影 (2012)

主人公は第一次世界大戦で命を落とした男、ナタン。彼は生と死の間をさまよいながら、“ある使命”を背負って過ごしています。それは様々な時代を移動しながら、死にゆく人々の影を集めるというもの。生まれ変わりをかけて死の影を集めるナタンですが、思わぬ出来事が起こって・・・
アカデミー賞短編実写部門にノミネートされた『死の影』。黄泉の国を表現した幻惑的な美しい映像と物悲しいストーリーが、短編映画とは思えないほどの重厚感を生み出しています。主人公を演じるのは『リリーのすべて』や『君と歩く世界』などに出演するベルギーの俳優、マティアス・スーナールツ。彼の切ない表情にも注目です。

公開 : 2012年
監督 : トム・ヴァン・アバルバニエト
監督 : マティアス・スーナールツ
出演 : 20分

6. 代理教師 (2006)

ごく普通の高校の教室に現れた、自称代理教師の男。生徒が大事にしているサッカーボールを奪ったり、ドーナツを勝手に食べたり、ギリギリ笑えないジョークを飛ばす彼に生徒たちはびっくり！そんな代理教師の驚きの正体とは・・・？
代理教師が引き起こす騒動をコミカルに描いた作品ですが、そのハイテンションっぷりは狂気を感じてしまうほど。代理教師のまさかの正体に「やられた！」と思うはずです。アカデミー賞短編実写部門にノミネートされたジェットコースターのような作品『代理教師』、ユーモラスでシニカルなストーリーをお楽しみください。

公開 : 2006年
監督 : アンドレア・ジュブリン
出演 : Valentino Campitelli
上映時間 : 17分

7. 廊下の彼氏 (2009)

あなたの元恋人が、あなたの家の廊下に住み着いてしまったらどうしますか？主人公は別れた彼女の家の廊下に居座ってしまった青年。何をするわけでもなく、食事も睡眠も全て廊下でゴロゴロ。しかし元カノはついに新しい男性を連れてきて・・・
元カノの家に居座る青年を演じるのは、『ソーシャル・ネットワーク』や『バットマン vs スーパーマン』に出演する若手俳優、ジェシー・アイゼンバーグ。ユーモラスでほのぼのとしているのに、泣きたくなるような切ない余韻が残る恋愛短編映画です。子犬のようなジェシー・アイゼンバーグがとにかく可愛らしいので、女性にとくにおすすめしたい作品です！

公開 : 2009年
監督 : マギー・カイリー
出演 : ジェシー・アイゼンバーグ
上映時間 : 17分

8. スリ2人と1人の少年 (2008)

危うく逮捕寸前だったスリの2人組、リシャールとフィリップ。彼らは近くにルーマニア人の少年がいたことにより親子と間違えられ、罪を咎められずにすみます。なぜか離れようとしない少年とリシャールとフィリップは、やがて協力してスリを働くようになり・・・
ひょんなことから仲間になった、ルーマニア人のスリ2人組と1人の少年。3人の絆をコメディタッチで描いた作品です。おかしくて思わずほっこりさせられる、ヨーロッパならではの独特な空気感も魅力です。

公開 : 2006年
監督 : フィリップ・ポレ＝ヴィラール.
出演 : フィリップ・ポレ＝ヴィーラル
上映時間 : 30分

9. ミラクル・フィッシュ (2010)

8歳の少年ジョーは、母親と貧しい生活を送っています。学校でも同級生にからかわれ、どこにも居場所がないと感じる毎日。ある日保健室で眠り込んでしまったジョーは、目覚めると校舎に誰もいないことに気がつきます。
「みんないなくなってしまえばいいのに！」そんないじめられっ子の願いが現実のものとなりますが、事態はそんな優しいものではありませんでした。なぜ誰もいなくなってしまったのか？短編映画ならではのスピード感とショッキングな内容が評価され、『ミラクル・フィッシュ』はアカデミー賞短編実写部門にノミネートされました。

公開 : 2010年
監督 : ルーク・ドーラン
出演 : キーラン・ダルシー・スミス、タラ・モーリス
上映時間 : 18分

10. アブラカタブラ (2008)

親と同居するニートの青年、トーマスは手品師を夢見る25歳。ある日彼は母親を使って手品を試してみるのですが、母を病院送りにしてしまいます。そんな中隣に引っ越してきたシングルマザーに、息子の誕生日回に手品を披露してほしいと頼まれるトーマス。彼はやがてシングルマザーに惹かれていって・・・
ニートの青年が恋をしたことからはじまるドタバタ劇をコミカルに綴った、スウェーデンからやってきた短編映画『アブラカタブラ』。どこかファンタジックな、絵本のような映像も魅力的です！観終わったあとはすっきりと明るい気持ちになれる作品です。

公開 : 2008年
監督 : パトリック・エークルンド
出演 : サイモン・J・バーガー
上映時間 : 22分

11. ヘリウム (2014)

主人公は不治の病にかかっている少年、アルフレッド。遊びたい年頃なのに病室で寝たきりの毎日を送っています。そんな彼が入院する病院で清掃員として働き始めた青年、エンゾ。エンゾはアルフレッドに“ヘリウム”という魔法の世界があると聞かせます。エンゾの話を楽しみにするアルフレッドでしたが、ある日様子が急変して・・・死に直面する少年と清掃員の青年の友情を描いたこの作品は、アカデミー賞短編実写部門で賞を受賞しました。
監督のアンダース・ウォルターは短編映画のほかに、ミュージックビデオも多々手がけている人物。“ヘリウム”の世界を再現した、幻惑的な美しい映像をお楽しみください。

公開 : 2013年
監督 : アンダース・ウォルター、キム・マグナソン
出演 : キャスパー・クランプ
上映時間 : 23分

12. 一人多い (2005)

いきなり妻に出ていかれた主人公、ホアキン。息子のフェルナンドとの生活が始まりますが、家事に不慣れな2人は料理も掃除も全ておろそかになってしまいます。ホアキンとフェルナンドは老人ホームから義母を連れてきて、家事を手伝ってもらうことに。父と息子、そして義母の奇妙な生活を映し出した作品です。
ホアキンが義母になぜか抱く違和感の理由とは？コメディですが狐につつまれたような気分になる不思議なスペインショートフィルム『一人多い』。タイトルの意味を考えながら、じっくりご覧になってみてください！

公開 : 2007年
監督 : ボルハ・コベアガ
出演 : ラモン・バレア
上映時間 : 16分

13. 結婚式の朝 (2014)

大事な用事があるのに寝坊してしまった！パニックになって頭が真っ白になるってこと、誰でも1度は経験があるのではないでしょうか？この物語の主人公は結婚式に行かなければならないのに、大寝坊してしまったとある家族。子供達の服は見つからない、こんな時に限ってシャツにコーヒーのシミをつける、慌てて走れば転んでしまう・・・思わず「こんなこと、あるある」と笑ってしまうようなネタがいっぱいのドタバタコメディです。
サクッと笑えて、最後はほっこりさせられるコメディ『結婚式の朝』。ちょっと気分転換をしたい！という時におすすめの作品です。

公開 : 2013年
監督 : セルマ・ヴィルフネン
出演 : ヨアンナ・ハールッティ、サントゥ・カルボーネン
上映時間 : 7分

14. 男と女 (2011)

『アデル、ブルーは熱い色』や『美女と野獣』、『グランド・ブダペスト・ホテル』などに出演する人気フランス人女優、レア・セドゥ。そんな彼女の魅力をぎゅっと堪能できる短編映画が『男と女』です。
とある男と女が出会い、恋に落ち、そして別れていく。1組のカップルの姿を時間軸をバラバラに、情緒的に描いた作品です。手をとりあいステップをふむダンスシーンは、何度でも観たくなる美しさ。台詞は少ないものの、画面から主人公たちの感情を感じとることができます。フランス映画が好きな人はお気に入りの作品に追加されること、間違いありません。

公開 : 2011年
監督 : バンジャマン・ミルピエ、エイサ・マダー
出演 : レア・セドゥ、バンジャマン・ミルピエ
上映時間 : 13分

15. 森の中の狂気 (2000)

主人公の男にかかってきた謎の電話。その声に導かれるがままに男は、車の中に入っていた死体を森の奥に埋めることに・・・彼に待ち受けている衝撃の結末とは？わずか10分ほどで送られる、緊迫のサスペンス映画です。
主演は『アンタッチャブル』や『ダンス・ウィズ・ウルブズ』などに出演するオスカー俳優、ケビン・コスナー。謎の声に脅され、破滅への道をたどっていく男の姿を狂気たっぷりに演じきっています。短い時間でどっと疲れが出るほどのスリリングさを堪能できる『森の中の狂気』。ケビン・コスナーの1人芝居も圧巻です。

公開 : 2000年
監督 : ピル・ストーレ
出演 : ケビン・コスナー
上映時間 : 13分

短い時間で極上の映画体験を！

短い時間と侮るななかれ、緻密に練られたストーリーや圧倒的な映像を楽しむことができるショートフィルムたち。ネット社会である今、短編映画が再び映画界で大きく注目されようとしているんです。お仕事の休み時間に、夜寝る前に、長い間電車に乗る時に。今回ご紹介した作品で、濃密な映画の世界へトリップしてみてはいかがですか？