【京都の酒蔵・蔵元巡り】お土産にもおすすめの京都の地酒9選
京都にはうまいものがたくさんありますが、地酒もその1つ。京都まで行って楽しんでもよし、お取り寄せで飲んでもよし、の超絶にうまい地酒を9品目ご紹介。
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京都の地酒
出張や旅行をしたときに、その土地の観光地に行くのも楽しいですが、それと同じくらい楽しいのが、その土地ならではの「うまいもの」に巡り合うことです。特に、日本酒は、その土地その土地で古くから酒造りにいそしんでいる酒蔵と、そこで醸される様々な地酒があり、味ばかりではなくパッケージを見るだけでも楽しめるものです。
もちろん、その土地でそれを味わうのもいいですが、そういう地酒を自分のお土産にするのもよし、あるいは知り合いへの手土産にしても大変に喜ばれます。
そこでここでは観光の名所であると同時に、日本屈指の酒造りの土地でもある京都の地酒を厳選して9品目ご紹介します。
伏見の地酒編
京都の地酒と言えば、外せないのは名水が湧き出す土地として古くから蔵元が軒を並べる伏見でしょう。この伏見からとっておきの地酒をまずは6品目ご紹介します。
1.北川本家「富翁 大吟醸純米 吟麗」
北川本家は1657年創業の非常に歴史のある蔵元です。その中でもおすすめしたいのが、「富翁 大吟醸純米 吟麗」です。通常、大吟醸1.8Lですと、5000円してもおかしくありませんが、この吟麗は3890円です。それが品質にどう影響しているかというと、これが非常に大吟醸らしい大吟醸で、口当たりがマイルドするっと飲めてしまう銘酒です。大吟醸らしい華やかな香りと、一方で大吟醸としては少し甘めの、米のコクをしっかりと感じさせる味わいが特徴です。
■蔵元情報
【住所】〒612-8369 京都市伏見区村上町370-6
【TEL】075-611-1271
【FAX】075-611-1273
【URL】http://www.tomio-sake.co.jp
2.小山本家酒造「京姫 純米吟醸 匠」
小山本家酒造も創業1808年なので、「伏見としては」やや新規参入の蔵元です。しかしあくまで伏見として、なので200年続いているわけですから、十分に老舗です。ここからご紹介したいのは、「京姫 純米吟醸 匠」です。この酒の特筆すべき点は、「ワイングラスでおいしい日本酒アワード」で最高金賞を受賞したことでしょう。このアワードは、日本酒をお猪口ではなく、ワイングラスで飲んでみて、それまで味わうことが少なかった日本酒の品のある華やかな香りを楽しむことを主旨に始まったものです。その中での金賞受賞ということは、「京姫 純米吟醸 匠」の持つ香りの力が高く評価されたということでしょう。
ひとくち口に含んでみるとまさにその通りで、非常に上質な純米酒ならではの、ぱっと目の前が明るくなるような香りと、それでいてワインとは違う柔らかな感じが鼻腔から抜けていって、とても豊かな気持ちになります。その一方で味わいはあくまで穏やかで、どのような料理にも合わせやすいのが特徴です。まさに小山本家酒造の200年の歴史が醸した味、といった雰囲気です。
■蔵元情報
【住所】〒612-8367 京都市伏見区山崎町368-1
【TEL】075-622-2323
【FAX】075-621-8486
【URL】http://koyamahonke.co.jp/
3.齊藤酒造「英勲 井筒屋伊兵衛 祝米三割五分磨き」
次にご紹介するのは、1、2番手が地味だったわけではありませんが、3番はクリーンナップということで、とっておきのものを用意しました。「英勲 井筒屋伊兵衛 祝米三割五分磨き」です。これについては、2つの意味で3番バッターにふさわしい理由があります。
1つは、「祝」という酒米を使っている点です。「祝」は地元・京都で栽培されている酒造好適米で、もともとは昭和8年に京都府立農業試験場丹後分場で生まれました。太平洋戦争前には京都府内である程度栽培されていましたが、戦争になって人間の食料優先ということで作られなくなり、それが平成4年に伏見酒造組合の働きかけによって再び栽培されるようになったという歴史を持っています。酒米の性質としては低タンパク質なので、辛口の酒造りに向いている吟醸酒らしい吟醸酒を醸せる酒米です。この祝を使った酒はほかの地方では飲めませんので、京都ならではのお土産としてはとてもふさわしいといえるでしょう。
2つめの理由は、「三割五分磨き」という精米割合です。これは1粒の酒米の65%を精米して削ってしまい、残りの35%だけで醸している、といことです。吟醸酒の基本が50%精米ですから、その「磨きっぷり」がお分かりいただけるでしょう。これがどう「酒飲み」にメリットがあるかというと、酒の雑味が本当になくなるのです。まさに、深山幽谷のせせらぎを流れている清らかで透明な水のような味わいです。もともと吟醸酒に向いた酒米を使ってこの精米割合ですから、もうお分かりのように吟醸酒らしく、味わいは極めて清澄でありつつも米のうま味は芳醇に感じられ、なおかつ華やかな吟醸香はしっかり立つ、というまさに3番バッターにふさわしい風合いになっています。
■蔵元情報
【住所】〒612-8207 京都市伏見区横大路三栖山城屋敷町105番地
【TEL】075-611-2124
【FAX】075-602-8331
【URL】http://www.eikun.com
4.招德酒造「招德 純米大吟醸 延寿万年」
あまりに強力な3番バッターだったので、4番に何を持ってくるか悩みましたが、これです。「招德 純米大吟醸 延寿万年」。3番とはまた違う魅力でしっかりと主砲の役割を果たしてくれるはずです。
特徴は酵母にあります。日本酒というと、興味が行くのはせいぜい酒米ですが、「山廃づくり」というものがあるように酵母に何を使うか、ということも非常に重要です。その中で、この「招德 純米大吟醸 延寿万年」は一般的な大吟醸に使われる酵母ではなく、あえて江戸時代によく使われた「香露」という酵母を使用しています。その理由は、招德酒造という蔵元として、自社の最高級の大吟醸酒には、日本酒のもつわずかな酸味や、米のうま味をしっかりと持たせようという意図があったからです。また、その酵母を生かすために、ほかの酒であれば部分な工程を機械に任すところ、これに限ってはすべて手作りで、杜氏の昔ながらの技術で醸しました。
その結果、精米割合35%ということも相まって、非常に上品でかすかに遠くの方で感じられる酸味と、米本来のうま味、そして大吟醸ならではのフルーティーな香りが楽しめる酒に仕上がりました。まさに4番バッターにふさわしい日本酒です。
■蔵元情報
【住所】〒612-8338 京都市伏見区舞台町16
【TEL】075-611-0296
【FAX】075-611-0298
【URL】http://www.shoutoku.co.jp
5.松本酒造「桃の滴 五百万石 純米大吟醸」
京都の地酒というと、3本指を折るうちには必ず上がってくるのが、「桃の滴」です。その中で「桃の滴 五百万石 純米大吟醸」という大吟醸酒を選択しました。桃の滴、というと吟醸酒が有名なのですが、そこへ出してきたのが大吟醸酒なので、どうかと思っていたところ、期待にたがわず、桃の滴の銘酒に共通しているほどよくバランスのとれた濃醇さと、おそらくそのブランド名のもとになっている果実を思わせるような香りは守りつつ、そこに大吟醸酒らしい端麗なシャープさが加わって、グレードアップした辛口に仕上がっています。お土産としては、純米吟醸も捨てがたいのですが、ここではその蔵元のチャレンジ精神にも感銘を受けてこちらにします。
ちなみに、松本酒造の建物は「近代化産業遺産」に認定されています。見学も受け入れているので、ぜひ1度訪ねてねてみてもいいのではないでしょうか。
■蔵元情報
【住所】〒612-8205 京都市伏見区横大路三栖大黒町7
【TEL】075-611-1238
【FAX】075-611-1240
【URL】http://www.momonoshizuku.com/
6.東山酒造「坤滴 純米酒 特別栽培米山田錦」
酒米といえば山田錦、山田錦と言えば酒米、といほどの代表選手ですが、「坤滴(こんてき) 純米酒 特別栽培米山田錦」で使っている普通の山田錦は少し違います。
有機栽培、という栽培法はお聞きになったことがあると思いますが、あの認証を受けるには煩雑な手続きとそれを維持する手間とコストが必要です。ですので、その認証をとるのは非常に大変なのですが、それとほぼ同じ農法、すなわち無農薬で有機肥料を使って栽培しつつも有機栽培の認定をあえて受けない、というものに「特別栽培」というものがあります。この「坤滴 純米酒 特別栽培米山田錦」で使っているのは、鳥取県にある「田中農場」でその特別栽培で生産しているものです。
■蔵元情報
【住所】〒612-8046 京都市伏見区塩屋町223
【TEL】075-604-1880
【FAX】075-604-1886
有機栽培、あるいは特別栽培というのは何がいいのかというと、もちろん農薬を使わないので安心・安全ということもありますが、なにより栽培法が、1本1本の苗をていねいに育てるものなので、その稲の太さや力強さが違い、したがってできる米の味わいの強さも段違いになることです。さらにこの「田中農場」では、刈り取りも、稲が倒れて使えなくなってしまうリスクと戦いながら、ほかの農家よりも遅いぎりぎりのタイミングで行うので、米は完熟し、それによって酒になってからも、特に新酒ではなく熟成したときのうま味の乗りが違ってくるのです。
そういう農法で栽培した特別栽培米の「山田錦」を使っていますので、この「坤滴 純米酒 特別栽培米山田錦」も、味わいが非常に力強く仕上がっています。米の持っている甘みとうま味がとても強く感じられる、端麗辛口とは一線を画したまさに芳醇系中の芳醇さ、そして香りもいやらしい強さではなく、ゆがみのない素直で強い吟醸香になっています。
伏見以外の地酒編
さて、ここまでが伏見で醸される銘酒でした。京都の地酒イコール伏見、というイメージがあって、確かにいい日本酒も多いのでそれは否定はしませんが、しかし、丹後の方にも、あるいは市内にもいい日本酒を作る蔵元はあります。以下では、その中から、選びに選んだ3品目を紹介します。
7.佐々木酒造「聚楽第 純米吟醸」
VOKKAの読者の方にはふさわしい話題ではないかもしれませんが、少しミーハーな話からです。この佐々木酒造は、昨今「最後の独身二枚目俳優」として独身女性の間で人気の、佐々木蔵之介さんの実家です。それもあって、最近は見学や、直接酒を買いに来る人も多いそうです。
とはいえ、だからここの日本酒を選んだわけではありません。大きく主張したいのは、先に出てきた、京都地元産の酒造好適米「祝」をこの「聚楽第 純米吟醸」も使っている点です。そして、吟醸酒というと、良くも悪くも非常に上品で、するっとした味わいに仕上がることが多いのですが、これは濾過の回数を少なめにして、できるだけ米のうま味を出そうというのが醸造上のコンセプトです。それが裏目に出ると悲惨ですが、ここでは見事に当たって、コクのある米のうま味と、極めてまろやかな口あたり、そしてそれでいて吟醸酒らしいキレの良い喉ごしが実現し、やや辛口という仕上がりになっています。
■蔵元情報
【住所】〒602-8152 京都府京都市上京区日暮通椹木町下ル北伊勢屋町727
【TEL】075-841-8106(代) 0120-71-6930
【FAX】075-801-2582
【URL】http://www.jurakudai.com/
8.木下酒造「Time Machine 1712」
筆者は基本的に、斜陽産業だった日本酒製造を各地の蔵元がそれぞれ製法上の工夫や、マーケティング上の工夫を凝らして、何とか盛り返そうとしているのを応援している立場ですが、時々そのネーミングで「ん?」と思うことはあります。この「Time Machine 1712」も最初はそう思った1本です。しかし、そのネーミングの由来を聞いて納得しました。この「Time Machine 1712」は、江戸時代の日本酒の製法をほぼ100%再現して醸した日本酒なのです。ですので「Time Machine」であり、「1712」はまさに江戸時代の年代です。
味わいは、江戸時代の人はこんな甘い酒を飲んでいたのか、と驚くような超甘口。そう聞くと、糖分でべたべたした味かと思いきや、その一方で吟醸タイプよりも3倍の酸、5倍~7倍のアミノ酸を含ませるという超絶技法で、甘さは濃厚でも、口の中がいつまでも甘くはなく、すっと切れる感じです。ワインにはデザートワイン、あるいは貴腐葡萄を使った貴腐ワインがありますが、まさに日本酒版の貴腐ワイン。食事の最初から最後までこれだと少しきついですが、デザートに飲んだら最高です。ちょっと変わり種の楽しみ方としては、アイスクリームにかけて食べると素晴らしくおいしくなります。さらには、メインディッシュの後に食べるブルーチーズなどとも抜群の相性で、デザートワインの代わりが十分に務まります。
お土産としても話題性が十二分にあって、とても良いと思われます。
■蔵元情報
【住所】〒629-3442京都府京丹後市久美浜町甲山1512
【TEL】0772-82-0071
【URL】sake-tamagawa.com
9.吉岡酒造所「吉野山 特別純米」
ラストバッターは、変わり種の「Time Machine 1712」でもよかったのですが、いろいろ考えて、最後は高倉健張りの「不器用」な渋さがあって、それがうま味になっている日本酒をご紹介します。
吉岡酒造所は丹後地方の山の中にあります。寛政年間の創業とのことですが、まさに山奥で、江戸の商品経済には背を向けて訥々と酒造りをしてきたという蔵元です。訪れると、水車でごとんごとんと精米をしたときに通したであろう小川が敷地内を流れ、そこに沢蟹や河鹿が棲まわっている、ということでイメージがわきませんでしょうか?
そして特筆すべきは、さすがに今は機械精米ですが、その60%に精米した京都産の酒米「五百万石」を丹後杜氏と蔵人が、全量槽(ふね)しぼりで造っているのです。今のほとんど蔵元は効率の良い「薮田式」という方法でしぼっていますが、この酒元は、もろみを入れた酒袋を槽の中に積み上げて上から重しを載せ、その重みだけで3日かけてじっくりしぼるという、槽しぼりを採用しているのです。
なぜそのような非常率で重労働を強いる方法をいまだに取っているのかというと、そのほうが酒が酸素に触れる確率が高くなり、その結果仕上がりに、何とも言えないうま味と柔らかさが生まれるのです。そこに加えて、吉岡酒造所では低温発酵という、これもまた効率の悪い方法で発酵させているので、さらに酒の熟成の仕方がまろやかになります。
■蔵元情報
【住所】〒627-0111京都府京丹後市弥栄町溝谷1139
【TEL】0772-65-2020
【URL】yoshinoyama-tango.com
お土産達人を目指せるお酒でした
いかがですか?
やや独断と偏見がありつつも、しかし自信をもって「うまいですよ」とおすすめできる、京都の地酒を10品目ご紹介しました。京都に出張ないし旅行に行って、自分へのあるいは大切な方へのお土産として購入すれば、間違いなく喜ばれるものばかりです。
しかしその時間がない、でも飲みたい、と思われた方は、幸いにしてネット通販でも購入できるものを選びましたので、ぜひお取り寄せをしてこのうま味、この香り、この味わい、そしてこのストーリーを楽しんでください。